VGプラスのワークショップ「小説や記事における表現の選び方を考える 〜誰かの足を踏まないために〜」を開催します
VGプラスのワークショップ「小説や記事における表現の選び方を考える 〜誰かの足を踏まないために〜」を開催します。
小説であれウェブの記事であれ、あらゆる種類の文章表現は、社会や政治と結びついています。自分の表現によって意図せぬ形で誰かを傷つけてしまったり、差別に加担してしまったりすることがないように、表現の選び方について考える会を開催します。
SFメディアVG+(バゴプラ)で、多数の海外SF映画/ドラマの考察記事を執筆している齋藤隼飛さん、オンラインSF誌Kaguya PlanetやSFレーベルKaguya BooksでSF短編小説の編集をしている井上彼方さん、そして出版社で主に海外翻訳書籍を担当している編集者さんから、それぞれ普段大切にしていることや気をつけていることを話しいただきます。
※こちら、諸般の事情により、講師をお願いしていた出版社の編集者の方が当日登壇することができなくなってしまいました。つきましては、ワークショップの内容を下記の通り変更いたします。
【日時】12月11日(日) 14時から16時半
【参加費】500円
(Kaguya Planetの会員の方には無料で参加できるコードを発行しております。詳細はこちら)
【開催方法】Zoom(当日までに参加用のURLをPeatix経由でお送りします)
マイクはオフで、カメラのオン/オフは任意でご参加いただきます。
開催から一週間、アーカイブを視聴することができます。
【対象】
・ライター
・作家、作家志望の方
・編集者
・翻訳者
・その他、執筆に携わっている方
【講師】
齋藤隼飛(VG+)、井上彼方(Kaguya Planet)
【内容】
第一部 14:00~14:50(ライター向け)
講師:齋藤隼飛
・どんな表記を用いるか
・言葉が蓄積してきた政治性を考える
・メディアの影響力を意識する
・指摘を受けたときにどうするか
(10分間の休憩)
第二部 15:00~16:30(作家・作家志望の方向け)
講師:井上彼方
(前半)日本語で執筆される小説の編集に携わる上で大切にしていること
・「ポリコレ」と創作にまつわる基本的な姿勢
・いわゆる「正しくない」登場人物を出すときにどんなことに気をつけているか
・SF的想像力とジェンダーについて
前半では、「正しくない」登場人物の表現の仕方の例として、『SFアンソロジー 新月/朧木果樹園の軌跡』(Kaguya Books) に収録されている吉美駿一郎「盗まれた七五」の執筆/編集の過程における、吉美さんとのやり取りを具体例にあげて話をします。(作品を読んでいなくても分かる内容になっています)
(後半)翻訳SF短編小説の翻訳/編集/宣伝において大切にしていること
・クィアな登場人物が出てくる小説の翻訳で気をつけていること
・作中で批判的に書かれているものを、あえて差別的に翻訳するときにどうするか
・作品の宣伝で使わないようにしている言葉、大切にしている価値観
後半では主に、R.B.レンバーグ「砂漠のガラス細工と雪国の宝石」と、ジェーン・エスペンソン「ペイン・ガン ある男のノーベル賞受賞式に向けたメモ」(どちらも翻訳は岸谷薄荷)の翻訳と編集を事例に話をします。
どちらもウェブで無料で公開されている作品なので、読んでからご参加いただけると嬉しいです。(読んでいなくても分かる内容にはなっています)
当日聞きたいことや質問がある方は、参加申し込みの際にフォームからお送りください。
質問は、回答の準備するため、【12月7日(木)まで】にお送りいただけますと幸いです。
【主催】VGプラス合同会社
【問い合わせ】info@virtualgorillaplus.com
以下のフォームから申し込みをしていただくことができます。また、こちらのイベントページからもお申し込みいただけます。
VGプラスのワークショップとは
VGプラスのワークショップは、ライターや作家など、執筆に関わる方々に対する様々な差別やハラスメントを看過しないというメッセージを社会に向けて発信し、自分の身を守るために必要な知識を身につけ、また、自分たちの記事や小説によって誰かの足を踏んでしまうことがないように、一緒に勉強していきませんか、ということを趣旨としたワークショップです。それらの趣旨に関係する様々なワークショップや講演会を開催しています。
11月28日(月)には、「執筆に携わる人がセクシュアルハラスメントについて学ぶ会」を開催します。
なお、VGプラスはSFの企業ですが、VGプラスのワークショップは、SFに限らず、広く執筆活動をしている人やライター、編集者や翻訳者などを対象としています。普段SFに馴染みのない方でもお気軽にご参加ください。
「なにか」が起きる前に
VGプラスのワークショップは、ハラスメントや差別的な言動を予防していくための取り組みを日常的に行っていきたいと考えて企画しました。「予防的な日常の取り組み」をしたいと思っている理由はたくさんあります。
1つ目は、当たり前のことですが、防げる被害は未然に防ぎたいということです。何がハラスメントなのか、何が差別なのかを知ることで、悪意なく誰かを傷つけてしまうことを防ぎたいです。また、ハラスメントは許さないという風潮を作ることも予防につながると思います。
2つ目は、被害に遭った時にそれを「被害である」と認識し、必要な措置を取るには事前に知識を得ていた方がよいということです。
3つ目は、事前の勉強は、問題を指摘された際に適切に対処する助けになるということです。被害に遭った人から相談を受けた際や自分の加害を指摘された際に適切に対処するためには、「何が問題となっているか」をきちんと認識する必要があります。そのために、日頃からハラスメントや差別について勉強しておくことが大切です。
また、何が差別に当たるのか、何がハラスメントになりうるのかということが共有されているコミュニティにおいては、実際に加害が起きてしまった際に周囲が適切に対応できる可能性が高いと思います。認識が共有されることで、被害者本人が必要としている措置にアクセスしやすくするとともに、周囲からの二次加害を減らすことができるように思います。
4つ目は、自分の中にある「当たり前」な価値観を見直すためには、安心して内省できる場所が増えるといいなと思っているからです。
ジェンダー規範など社会で支配的な価値観は、社会のあちこちに浸透していて、私たちはそれを気がつかないうちに内面化してしまいます。社会問題やハラスメントについて勉強することは、自分の中で「当たり前」になっている感覚を疑うことでもあり、そこには当然不安や苦痛が伴います。場合によっては自分の人格そのものを否定されているような気持ちになるかもしれません。だからこそ、問題が起きて/起こしてしまった後の緊急時ではなく、時間的にも心理的にも少しでも余裕のある日常において勉強することに意味があると思います。
※「落ち着いて内省できる環境があると良い」という主張は、「加害者の学び直しと更生のために、加害者の自己防衛的な感情を過度に刺激しないよう、被害者は丁寧で分かりやすい冷静な説明をするべき」という意味ではありません。被害者には、加害者の更生とケアを担う責任は一切なく、それは第三者がすべきことだからです。
5つ目は、被害に遭った時に備える努力も、社会問題や差別について学び直すための努力も、個人に委ねられすぎず、アクセスしやすい様々な窓口や手段を社会全体で保障するべきであり、そのために自分たちができることをしたいと思っているからです。
多くの人は、マイノリティとしての側面とマジョリティとしての側面の両方を持っていますし、被害者にも加害者にもなり得ます。たとえ悪意がなくても。また、子どもの頃から繰り返し教えられて当たり前になっている価値観が、誰かの足を踏みつけるものということもあります。「機会さえあれば学び直せたかもしれない人」を出さないためにも、被害者の負担を軽減するためにも、社会全体で一つでも多くの学びの機会を提供できたらいいなと思っています。
ハラスメントを予防するために、表現活動によって誰かの足を踏まないために、すでに多くの方や団体が様々な取り組みをされていると思います。VGプラスも自分たちの足元から、可能な取り組みを行っていきます。
今後の展開
VGプラスのワークショップは、今後も継続して様々なテーマで企画をしていきます。こんなことをやってほしいとか、こんな企画の主催をさせてくださいなど、ご意見やご提案があればお寄せください。
一連のワークショップは、VGプラスの知識や経験を一方的に「教える」ためのものではありません。多くの人の経験や知恵を共有しながら、ベターなコンテンツを世に送り出していることを目的としています。私たち自身、至らないことも知らないことも認識が甘いこともいっぱいあります。ワークショップを通して、私たち自身もご参加くださる皆様とともに学んでいきたいと思います。