全米に波及する抗議運動
アメリカ黒人のジョージ・フロイドが警察からの不当な暴力によって殺害された事件に端を発し、全米に再び #BlackLivesMatter を訴える抗議運動が広がっている。アメリカの一部地域では警察の強硬な対応を見せ、暴動に発展している地域も存在する。アメリカの40都市では外出禁令も発令された。ドナルド・トランプ大統領は反ファシズム運動である“ANTIFA”をテロ組織に指定すると表明し、更なる反発を招いている。
SF界でも抗議の声
米SF界でも、黒人女性作家で一貫して反レイシズムを掲げてきたN・K・ジェミシンはじめ、マイク・コール、サラディン・アフメド、ウェズリー・チューら、数多くのSF作家がSNS上で抗議の声をあげている。
米時間2020年5月31日(日)にはSFファンタジーの最高賞ネビュラ賞の第55回受賞作品が発表されたが、長編小説部門を受賞したサラ・ピンスカーは全米に広がる暴動について触れ、「私の作品をフィクションに戻してください」というスピーチを行った。
エンタメ企業が抗議声明
コミック界でも著名なイラストレイターがジョージ・フロイドの絵を描いてTwitterに投稿するなど、個人の抗議活動は広がりを見せていた。更に動きを見せたのはアメリカに拠点を置くエンターテイメント企業だ。Netflix、Amazonプライムビデオ、Hulu、YouTubeといった配信プラットフォームや、コロンビア・レコード、ユニバーサル・ミュージック、ワーナー・ミュージックといった音楽レーベルが抗議声明を発表している。
そして、米時間5月31日(日)、ディズニーはTwitterアカウントで以下の画像を投稿した。
— Disney (@Disney) May 31, 2020
私たちはレイシズムに抗議します。私たちは共生を支持します。私たちは黒人の従業員、作家、クリエイター、そして黒人コミュニティを支持します。私たちは団結し、声をあげなければなりません。
ディズニー傘下にあるマーベルも同じ画像を投稿している。
— Marvel Entertainment (@Marvel) May 31, 2020
また、DCコミックスは一足早く「決して戦いをやめない」という言葉で締めくくられる「アクション・コミックス」の一節を引用した示唆的なツイートを投稿。数時間後には親会社のワーナー・ブラザースのTwitterアカウントが「#BlackLivesMatter」のハッシュタグをつけた投稿を行い、DCコミックスもこれをリツイートしている。
Dreams save us. Dreams lift us up and transform us. And on my soul, I swear… until my dream of a world where dignity, honor and justice becomes the reality we all share — I’ll never stop fighting. Ever.
– Action Comics #775
— DC (@DCComics) May 31, 2020
“Somebody has to stand when others are sitting. Somebody has to speak when others are quiet.” – Bryan Stevenson
We stand with our Black colleagues, talent, storytellers and fans – and all affected by senseless violence. Your voices matter, your messages matter. #BlackLivesMatter
— Warner Bros. (@warnerbros) May 31, 2020
米政府は強硬姿勢を見せ続けているが、エンターテイメント業界が恐れるのは政府ではない。クリエイターたちの権利や安全が脅かされることの方が重大な問題だ。作家、出演者、プロデューサーら、黒人のクリエイターなしには成り立たない業界で、「沈黙は裏切り」との声が広がりを見せている。
なお、日本でも在日クルド人が渋谷署の警察から不当な暴力を受け、これに抗議するデモが5月30日に行われた。同じ社会を構成する誰かへの不当な暴力は、決して他人事ではない。世界で、日本で、人々が、企業が、声をあげている。