『現代思想』に小松左京
9月8日(水) 発売の『現代思想』2021年10月臨時増刊号は小松左京の総特集だ。各界の著名人が集い、小松左京作品や小松左京が見据えていた未来、小松左京という作家について記した論考や討論が掲載される。
「未来学、ふたたび――実践から問う小松左京のアクチュアリティ」では、現代美術の齋藤帆奈、『未来は予測するものではなく創造するものである―考える自由を取り戻すための〈SF思考〉』(2021, 筑摩書房) の樋口恭介、『SF思考――ビジネスと自分の未来を考えるスキル』(2021, ダイヤモンド社, 共著) の宮本道人が対談。
小松左京の秘書を34年間務め、現在は株式会社イオの代表である乙部順子は「『四つ目』の小松さん」を寄稿。2021年9月25日(木) に青土社から『魔法使いは誰だ(仮): 平成のポップ・カルチャーとフェミニズム批評(仮)』が発売される小谷真理は、「そこに異世界があった――ジェンダーSF作家としての小松左京」を寄稿している。
また、『時のきざはし 現代中華SF傑作選』(2020, 新紀元社) の立原透耶による「小松左京作品と中国SF」も収録。宮本道人による資料「小松左京ブックガイド――最初にして最大のSFプロトタイパー」も要注目だ。
『現代思想2021年10月臨時増刊号 総特集=小松左京』の目次は以下の通り。
『現代思想2021年10月臨時増刊号 総特集=小松左京』目次
【巨人の幼年期】
「四つ目」の小松さん / 乙部順子
【討議I】
〈廃墟〉の思想家――小松左京と戦後日本 / 長山靖生+成田龍一
【作品】
結ばれる様式 / 生環境構築史(テクスト:中谷礼仁+松田法子/グラフィック:小阪淳)
【思想の深宇宙】
あの頃の未来に、「われわれ」は立っている / 小泉義之
事故・内向・形相――小松左京の構想 / 福嶋亮大
存在することの居心地悪さ――『果しなき流れの果に』の歴史認識 / 加藤夢三
【歴史の測量者】
終わる日本と終わらない日本――聖戦・革命・核戦争 / 山本昭宏
理想の挫折、「廃墟」の台頭――赤本マンガ『大地底海』の作者はいかにしてSF作家となったか / 森下達
戦後文学としての『日本アパッチ族』/ 村上克尚
アパッチ族はメガイベントの夢をみない――「破局の精神史」のための断章 / 酒井隆史
『首都消失』と天皇制――小松左京SFが描く日本の「地平」 / 藤崎剛人
【列島の時空論】
放送人、小松左京――一九六〇年代のメディア論的想像力 / 飯田豊
小松左京の鳥の眼――「SFルポ」と真鍋博の視覚 / 佐藤守弘
近未来は〈すこし・ふあん〉――楽観と憂患のジュヴナイルSF / 大久保ゆう
海をもう一度――小松左京『大震災’95』から / 平山洋介
【討議Ⅱ】
未来学、ふたたび――実践から問う小松左京のアクチュアリティ / 齋藤帆奈+樋口恭介+宮本道人
【文学の実験場】
そこに異世界があった――ジェンダーSF作家としての小松左京 / 小谷真理
能楽師が読む小松左京の芸道小説 / 安田登
次は宇宙へでも行くさ――1977-1984〈SF映画の夢〉を小松左京と見た時代 / 切通理作
小松左京作品と中国SF / 立原透耶
【惑星の政治学】
普遍生物学――小松さんへのレポート / 金子邦彦
地球科学者が読みとく『日本沈没』――「大地変動の時代」の日本列島をイメージするために / 鎌田浩毅
地球的災害の知の物語――『日本沈没』における科学と社会 / 伊藤憲二
エコクリティシズムで読む小松左京の気候変動小説 / 芳賀浩一
『復活の日』とSFの終わりの始まり――科学史から見た小松左京 / 塚原東吾
【資料】
小松左京ブックガイド――最初にして最大のSFプロトタイパー / 宮本道人
2021年は小松左京の生誕90年、没後10年に当たる。10月20日(水) には小松左京が製作・原作・脚本・総監督を務めた映画『さよならジュピター』が初めてBlu-rayで発売され、同月にはTBSの日曜劇場にて小栗旬主演の新ドラマ版『日本沈没ー希望のひとー』の放送がスタートする。
『現代思想2021年10月臨時増刊号 総特集=小松左京』は、2021年9月8日(水)発売。
なお、7月28日に発売された『現代思想2021年8月号 特集=自由意志』では、牧眞司の「SFにおける自由意志――「私」をめぐる問いから他者論そして時間論へ」が収録されている。SFファンはこちらも要チェックだ。
小松左京『日本沈没』はハルキ文庫版が上下巻で発売中。