米でもSNS上での作家の発言を巡って…
幻冬舎は謝罪文公開も…
幻冬舎代表の見城徹が作家・津原泰水の著作の販売部数を実数で暴露した問題について、5月23日、幻冬舎は同社のウェブサイトで謝罪文を公開した。一方で、騒動の原因であった、津原泰水が『日本国旗』の“コピペ問題”を批判したことから『ヒッキーヒッキーシェイク』の文庫版の発刊を中止したとされる件については、幻冬舎は謝罪文の中では言及を避けた。これが真実であれば、作家が出版社の“翻意”を恐れて発言を自粛するようになることも考えられる。引き続き、同社にはこの根本的な問題と向き合う姿勢が求められている。
「政治的な発言はやめろ」
一方、海を越えたアメリカでも、SFファンタジー作家が自身の発言をめぐる意見をTwitterに投稿した。『Afterwar』(2018) などの著作で知られるリリス・セイントクロウは、自身が“政治的な発言”をやめるよう特定の人々から要請されていることを告白し、以下のように反論を綴った。
“Don’t talk about politics, Lili! Readers don’t like that!”
Fuck you, Rando Calrissian. My readers are empathetic, wonderful human beings who get fired up about injustice and cruelty.
— Lili Saintcrow (@lilithsaintcrow) May 24, 2019
「リリ、政治的な発言はやめろ!読者は望んでない!」
ファ○クユー、ランド・カルリジアン*。私の読者は共感能力があって、不公正と無慈悲に対して怒る素晴らしい人々なんです。
*Rando Calrissian「ランド・カルリジアン」とは、「スター・ウォーズ」シリーズに登場するキャラクターの名前をもじった造語で、「話しかけてもないのに会話に口を挟む奴」を意味する (元のキャラクター名はLando だが Rando と表記することで、“Random=ランダム・手当たり次第”とかけている) 。
セイントクロウは、こうした「政治的な発言をするな」というメッセージを見知らぬ人物からEメールで受け取る他、以前には出版社からも政治的な発言をしないよう求められたことがあると説明している。
「私はSNS上で政治的な発言をします」
リリス・セイントクロウは、この投稿の数時間前にも、イギリスで右翼政治家にミルクシェイクをかける抗議活動が流行していることに言及し、「ファシズムは人を殺すのに、なぜミルクシェイクをかけることにだけ怒るのか」と投げかけていた。彼女は政治的な発言を行う理由について、以下のように説明している。
So yes, on my social media feeds I talk about politics. I talk about bigotry. I speak out and boost because my readers–and the integrity of my own psyche and soul–requires it as a bare minumum.
— Lili Saintcrow (@lilithsaintcrow) May 24, 2019
私はSNS上で政治的な発言をします。偏見について語ります。声をあげて鼓舞しますよ。私の読者が——そして私自身の魂の良心が——必要最低限のこととして要求しているのです。
堂々たる宣言だ。痛みを描いた自身の作品に共感してくれた読者のために、何よりも自分の良心に従い、政治に対する言及を続けていくということが表明されている。
賛同する作家も
もちろん、セイントクロウの発言に賛同する作家も複数現れている。SFファンタジー作家でヒューゴー賞受賞歴もあるキャメロン・ハーレイは、「私の読者たちは政治的なこと“の為に”私の本を読んでるんですよ」と賛同。ロマンス作品で知られるエイミー・ジョー・カズンズも、「私の本を読んだ読者が私の政治性を知って驚くとは思えません。だって全て作品中で書かれていることですから」と、とりわけ「(政治的な発言を) 読者は望んでない」という部分に反論する意見を表明している。
日米で作家の発言を巡る話題が同時に登場したのは、ただの偶然だろうか。作家や編集者たちもSNSを使いこなす時代だ。表現者たちの発言自体を抑制しようとする動きが受け入れられることはないだろう。
Source
Lilith Saintcrow Twitter