第57回ネビュラ賞発表! 長編部門はP・ジェリ・クラーク、ゲーム部門に『Thirsty Sword Lesbians』 | VG+ (バゴプラ)

第57回ネビュラ賞発表! 長編部門はP・ジェリ・クラーク、ゲーム部門に『Thirsty Sword Lesbians』

SFWA

第57回ネビュラ賞受賞作発表

米時間の2022年5月21日(土)、SFWA (アメリカSFファンタジー作家協会) が主催する第57回ネビュラ賞の受賞作品が発表された。ネビュラ賞はSF・ファンタジー関係者で構成されるSFWAの会員が選ぶ賞で、世界SF大会(ワールドコン)の参加者=SF・ファンタジーファンが選ぶヒューゴー賞と対をなす賞である。ネビュラ賞では4つの小説部門に加え、2019年に新設されたゲームライティング部門を置いていることが特徴の一つだ。

長編部門はP・ジェリ・クラーク

第57回ネビュラ賞の長編小説部門を受賞したのは、P・ジェリ・クラークの『A Master of Djinn』。歴史学者デクスター・ガブリエルとしての顔も持つP・ジェリ・クラークは、第54回ネビュラ賞では「The Secret Lives of the Nine Negro Teeth of George Washington」で短編小説部門、第56回ネビュラ賞では「Ring Shout」で中長編部門を受賞しており、3カテゴリー目のネビュラ賞受賞となった。

P・ジェリ・クラークの短編「The Secret Lives of the Nine Negro Teeth of George Washington」は佐田千織の翻訳によって「ジョージ・ワシントンの義歯となった、九本の黒人の歯の知られざる来歴」のタイトルで『SFマガジン』2020年06月号に日本語訳が掲載されている。

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今回ネビュラ賞長編小説部門を受賞したP・ジェリ・クラークの『A Master of Djinn』は、2022年のヒューゴー賞長編小説部門にもノミネートされている。2019年のメアリ・ロビネット・コワル『宇宙【そら】へ』以来のダブルクラウン(ネビュラ賞とヒューゴー賞の同時受賞)にも注目が集まる。

昨年P・ジェリ・クラークの「Ring Shout」が受賞した中長編小説部門では、2022年の受賞作にPremee Mohamed「And What Can We Offer You Tonight」が選ばれた。 インド-カリブ系のPremee Mohamedは、長編『Beneath the Rising』(2020) でローカス賞最終候補にも選出されたことがある。

2020年のnerds of a feather, flock together.のインタビューでは、Premee Mohamedは、2000年から2002年の間に小説を書き始めたが、それは誰かに見せるためではなく「必要だったから」書いていたと話している。15年ほど経った2015年に友人の勧めで初めてアンソロジー『She Walks In Shadows』の公募に投稿し、そこからウェブ媒体での短編掲載が増えていったのだという。そして今回遂に、SF最高賞の名誉を手にすることになった。

中編小説部門を受賞したのはナイジェリアの作家Oghenechovwe Donald Ekpekiの「O2 Arena」。第56回ネビュラ賞では「Ife-Iyoku, the Tale of Imadeyunuagbon」で中長編部門にノミネートされており、同作は優れたジェンダーSFにおくられるアザーワイズ賞を受賞している。

今回ネビュラ賞を受賞した「O2 Arena」は、気候変動により酸素を購入しなければならなくなった2030年のナイジェリアを舞台にした作品。Apex Magazineでは、Oghenechovwe Donald Ekpekiは癌と闘う人々に捧げる作品としている。

短編小説部門を受賞したのはサラ・ピンスカー「Where Oaken Hearts Do Gather」。サラ・ピンスカーは昨年中編小説部門を受賞した「Two Truths and a Lie」に続き四度目のネビュラ賞受賞だが、同賞の短編小説部門は初の受賞になる。

一昨年には長編『A Song for a New Day』で長編小説部門を受賞しており、こちらは『新しい時代への歌』のタイトルで2021年8月に村山美雪の翻訳が竹書房から刊行されている。今回短編小説部門を受賞した「Where Oaken Hearts Do Gather」も歌を題材にした作品だ。

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ゲーム部門は『サースティ・ソード・レズビアンズ』

小説部門と並ぶネビュラ賞のもう一つの部門、ゲームライディング部門ではEvil Hat Gamesの『Thirsty Sword Lesbians』が選ばれた。ネビュラ賞のゲームライティング部門でTRPGが選ばれたのはこれが初めて。

『Thirsty Sword Lesbians』はクラウドファンディングサイトのKickstartarで資金調達が行われ、約200万円の目標額に対して約3,000万円が集まった。同作ではレズビアンの剣士たちを主人公に、何世紀にもわたる紛争を終わらせるために星々を渡り歩く。

映像賞とヤングアダルト賞は?

ネビュラ賞と同時に発表される映像作品を対象したレイ・ブラッドベリ賞に選ばれたのはドラマ『ワンダヴィジョン』。昨年はNetflixドラマ『グッド・プレイス』のシーズン4最終話が受賞したが、今年は『ロキ』も合わせて2作品がノミネートされたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)ドラマが初受賞。『ワンダヴィジョン』は1シリーズでの受賞となっている。

ヤングアダルト作品におくられるアンドレ・ノートン賞は、ダーシー・リトル・バジャー『A Snake Falls to Earth』が選ばれた。ダーシー・リトル・バジャーはリパン・アパッチ族のヤングアダルト作家で、本作もリパンの少女が主人公の作品だ。

各部門の受賞作品は以下の通り。

受賞作品一覧

長編小説部門

P・ジェリ・クラーク『A Master of Djinn』

中長編小説部門

Premee Mohamed「And What Can We Offer You Tonight」

中編小説部門

Oghenechovwe Donald Ekpekiの「O2 Arena」

短編小説部門

サラ・ピンスカー「Where Oaken Hearts Do Gather」

ゲームライティング部門

April Kit Walsh, Whitney Delagio, Dominique Dickey, Jonaya Kemper, Alexis Sara, Rae Nedjadi『Thirsty Sword Lesbians』(Evil Hat Games)

ブラッドベリ賞 (映像作品)

マーベル・スタジオ『ワンダヴィジョン』

アンドレ・ノートン賞 (ヤングアダルト作品)

ダーシー・リトル・バジャー『A Snake Falls to Earth』

Source
SFWA

 

第57回ネビュラ賞のノミネート作品はこちらから。

第56回ネビュラ賞の受賞作品はこちらの記事で。

2022年のヒューゴー賞ノミネート作品はこちらから。

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