先行公開日:2021.7.31 一般公開日:2021.8.28
伊藤螺子「警告! 読め!」
221字
この学校へテレポート事故で来た人へ
まず落ちついて、帰れる可能性はある
ここは危険
音を立てるな 叫ぶな
かがみを見るな
カベにメモのこして、こんなふうに ←ナイフとか。なければゆびと血
こどもを見たらすぐにげろ
一人きたら一人かえれる、それまでねばって!
ずっと夜 朝はこない
しんだほうがまし
カギはしょくいんしつ
出口はたぶんない、とにかくにげろ、かくれろ たいいくそうこにポータルがあるよ
こうないほうそうはちゃんときこう
トイレはあんぜんだよ
↑ぜんぶウソ ワナ
たすけて
北野勇作「トイレの怪談」
200文字
娘が二歳くらいの頃かな、道端を指さして「おばけっ」なんてよく言ってて、見ると工事現場にあるような仮設トイレがあるんだ。電話ボックスみたいなやつね。子供には見える、なんて言うから、あの中に何かいるのかな、とか思ってた。でもそうじゃなくて、あれ自体がそうだったんだな。しかし仮設トイレに擬態する生き物なんているんだね。まあ切羽詰まった人間が飛び込んで来るもんな、こんなふうに。今頃わかっても遅いんだけど。
伊藤螺子
プロフィール
会社員兼小説家。 2011年に『オクターバー・ガール 螺旋の塔に導くものは』(徳間文庫)でデビュー。2013年には『秘密結社来夢来人 まほうびんぼう』(徳間文庫)を出版。その後同人活動に移り、『ビンダー』(発行:ククラス)や『トラベシア』(発行:鈴木並木)など、複数のリトルプレス・同人誌に寄稿。自身のサークル・ホテルニューオバケから、2019年に短編集『UFOを待っている』、2021年にはツイッターで書いた140字小説を100本まとめた掌編集『エイプリルフールの国』を刊行した。
北野勇作
プロフィール
1962年生まれ。小説家、SF作家、役者。1992年に『昔、火星のあった場所』で第4回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。2001年、『かめくん』で第22回日本SF大賞を受賞。近年はマイクロノベルの伝道師として、ほぼ毎日Twitterに【ほぼ百字小説】をあげており、2020年にはそのうち200編を収録した『100文字SF』(早川書房)を出版。毎週水曜日21時より、谷脇クリタ、蜂本みさと共に「犬と街灯とラジオ」(通称:犬街ラジオ)をツイキャスで配信。トークと共に朗読を披露している。