ネタバレ音楽解説『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を彩った名曲を考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ音楽解説『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を彩った名曲を考察

℗ 2023 Nintendo. Distributed by Back Lot Music, a division of Universal Studios Music LLLP under license from Nintendo. © Motion Picture Artwork, Title & Photos 2022 Nintendo and Universal Studios

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』2023年12月30日よりAmazonプライムビデオで見放題配信開始

2023年4月28日の日本公開時点で世界興行収入1000億円を越えている『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023)。歴史的な大ヒットを記録した『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が2023年12月30日からAmazonプライムビデオより見放題配信が始まる。

「ザ・スーパーマリオブラザーズ」といえば誰もが口ずさめてしまうキャッチーなBGMだが、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』ではそこに「マリオ」のゲームと共に時代を過ごした名曲たちも映画を彩っている。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』はゲームを今、楽しんでいる世代だけではなく、過去に楽しんでいた親世代、そして子供たちが「マリオ」シリーズのゲームで遊んでいるのを後ろから眺めていた祖父母世代映画の世界に引き込まれるような音楽がチョイスされている。

本記事は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の映画内で流れ、そして様々な場面を彩った名曲たちについて、解説とそのチョイスについて考察していきたいと思う。なお、本記事は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の内容に関するネタバレを含みます。

「ゲームソング」だけではない!マリオ達と共に時代を彩った名曲

布袋寅泰「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY/新・仁義なき戦いのテーマ」(2000)

最初に大魔王クッパ率いるカメ族たちダークランドと『スーパーマリオ64』(1996)の「さむいさむいマウンテン」を思わせる氷の国とペンギンの戦いで流れ、観客を『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の世界に引き込んでくれるのがギタリストの布袋寅泰が2000年に発表した「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY/新・仁義なき戦いのテーマ」だ。

元々は布袋寅泰自身が阪本順治監督作『新・仁義なき戦い。』(2000)に出演し、音楽監督も兼任する際に作曲された楽曲だ。タイトルは極道ものの名作「仁義なき戦い」シリーズを英訳したものである。

「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY/新・仁義なき戦いのテーマ」は『新・仁義なき戦い。』に感銘を受けたクエンティン・タランティーノが、クエンティン・タランティーノ自身の監督作「キル・ビル」シリーズのテーマソングに起用したことで知った人も多いだろう。そのため「キル・ビル」シリーズのテーマと思っている人も多いかもしれない。

「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY/新・仁義なき戦いのテーマ」は「低温火傷」をテーマに作曲されており、雪と氷の王国のペンギンたちと口から吐く火炎で氷の城を一瞬で破壊してしまうクッパとの戦いにぴったりの楽曲と言えよう。

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ビースティー・ボーイズ「ノー・スリープ・ティル・ブルックリン(No Sleep till Brooklyn)」(1986)

ニューヨーク州ニューヨーク市ブルックリン区を駆け回り、ブルックリン区とクイーンズ区の水漏れなら自分たちスーパーマリオブラザーズにお任せと言う二人と共にブルックリン区を駆け巡る楽曲がビースティー・ボーイズ「ノー・スリープ・ティル・ブルックリン(No Sleep till Brooklyn)」だ。

ビースティー・ボーイズは元々パンク・バンドで、ザ・ヤング・アンド・ザ・ユースレスという名義で活動していたが、1981年にビースティー・ボーイズと改名してからは1984年にはデフ・ジャムレーベルと契約してHIP-HOPにフューチャーし、ラップ・ロックのひな型を創り上げた。そのようなビースティー・ボーイズのデビューアルバム『Licensed to Ill』(1986)の6曲目が「ノー・スリープ・ティル・ブルックリン(No Sleep till Brooklyn)」である。

HIP-HOPと言えばブラック・カルチャーと呼ばれるアフリカ系の人々が中心となって育てた文化とされるが、ビースティー・ボーイズのメンバーはユダヤ系である。そしてブルックリン区にはリトルイタリー(小さなイタリア)と呼ばれるイタリア人街が存在しているが、彼ら南部イタリア系の移民が移り住む前までは、ユダヤ系の人々が多く住んでいたとされる。

イタリア系アメリカ人がアメリカの中でも集まったニューヨークのブルックリン区の人種の多様性を体現したようなビースティー・ボーイズの「No Sleep till Brooklyn」。それによってイタリア系アメリカ人のマリオとルイージに様々な人種の人々が自然に感情移入し、現実的だけどどこか不思議な世界に旅立つきっかけを与えてくれる楽曲だ。

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ジョルジュ・ビゼー「ハバネラ(Habanera)」

マリオとルイージのスーパーマリオブラザーズとしての初仕事ではオペラ『カルメン』のアリア(オペラなどで歌われる情的、旋律的な特徴の強い独唱曲のこと)が流れる。「ハバネラ」は冒頭の歌詞から「恋は野の鳥」とも呼ばれ、恋の気まぐれさを歌ったアリアだ。

家族から嫌味を言われ、馬鹿にされながらも新しい仕事である配管工に挑戦したマリオとルイージたちにとって「ふさわしくない時にはやって来ない。脅してもすかしてもどうにもならない」「規律なんて何のその」という歌詞は恋愛ではなく、二人の新しい仕事の門出を祝う楽曲のように思えてくるから不思議だ。

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ボニー・タイラー「ホールディング・アウト・フォー・ア・ヒーロー(Holding Out for a Hero)」(1984)

ダークランドに迷い込んでしまった弟のルイージを助け出すため、ピーチ姫も過去に使っていた訓練施設に挑むマリオを象徴するような楽曲がウェールズの歌手のボニー・タイラー「ホールディング・アウト・フォー・ア・ヒーロー(Holding Out for a Hero)」だ。日本では『スクール☆ウォーズ』(1984-1985)の麻倉未稀のカバー版が有名だろう。

歌詞の中では「私にはヒーローが必要、ヒーローを待ち焦がれている(I need a hero. I’m holding out for a hero.)」と歌われており、弟のためならば何度でも立ち上がるマリオの姿が重なるようになっている。また、興味深いことに「ホールディング・アウト・フォー・ア・ヒーロー(Holding Out for a Hero)」の中ではヒーローは男性とされているが、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』において最初に登場するヒーローはピーチ姫だ。

ピーチ姫が数回でクリアした訓練施設を一晩かけてクリアし、夜明けの中から現れるマリオの姿は私にはヒーローが必要、ヒーローを待ち焦がれている。夜明けまで。彼は強く、速く、戦い続けている(I need a hero. I’m holding out for a hero. ’til the end of the night. He’s gotta be strong. And he’s gotta be fast. And he’s gotta be fresh from the fight)」というまさしく歌詞の通りだ。

特に「彼は戦い続けている(And he’s gotta be fresh from the fight)」という歌詞は、ダメージを受けて倒れても何度でも再挑戦できるゲームとしての「スーパーマリオブラザーズ」シリーズにもかかっている巧い仕掛けになっている。

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A-ha「テイク・オン・ミー(Take On Me)」(1984)

ープ土管で国中が繋がっており、それを移動手段としているキノコ王国のキノピオたちとは異なり、「マリオカート」シリーズを思わせる道路が国中に張り巡らされ、そこで「ワイルド・スピード」シリーズか、「マッドマックス」シリーズのような車社会を過ごすジャングル王国のコング族たち。そこでのバギーカートでの移動場面で流れるのはノルウェーのシンセポップ・バンドA-ha「テイク・オン・ミー」だ。

「テイク・オン・ミー」は「僕を受けいれて(Take on me)」と連呼し、君は恥ずかしがってる。だけど、僕は君を迎えに行くよ(You’re shying away. I’ll be coming for you anyway)」などと歌っており、それがチャラついた白いジャケットに薄い色のサングラスの恰好をしたコング族に迎え入れられ、初めてコング族の車社会に触れたピーチ姫やキノピオにマリオたちの心情を表している。

そのような場面で「テイク・オン・ミー」が流れることで、その強いキーボードと優美な歌声のおかげで戸惑いとジャングル王国のキノコ王国とは違う美しさが観客たちにも伝わってくるようになっている。制作陣はゲームのイースター・エッグだけではなく、かつてゲームをプレイしていた人々がノスタルジーに浸るような選曲も行なっているように思える。

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グラント・カークホープ「モンキーラップ(DK rap)」(1999)

ジャングル王国と同盟を結ぶための決闘にて、コング族のヒーローのドンキーコングJr.が自身のテーマソングとしているのが「モンキーラップ(DK rap)」だ。こちらは『ドンキーコング64』(1999)のオープニング・テーマである。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』では熱狂的なドンキーコングJr.のファンたちが歌う楽曲として扱われている。

こちらは完全にゲームプレイヤーのノスタルジーを誘うもので、ニンテンドー64の頃と比べてはるかにクオリティの上がったCGを観ることで、そのノスタルジーは加速する。「モンキーラップ(DK rap)」は最大のファンサービスと言えるだろう。

AC/DC「サンダーストラック(Thunderstruck)」(1979)

マリオやピーチたちがドンキーコングと共に「マリオカート」シリーズのカートのセレクト場面と「ワイルドスピード」シリーズのような機械油の臭いがしそうなエンジンなどのパーツの選びの時に流れるのがAC/DC「サンダーストラック(Thunderstruck)」だ。AC/DCといえばロック好きなら知らない人はいないバンドで、英ローリング・ストーンリストのエッセイをで「史上最高のロックンロールバンド」とも呼ばれたバンドだ。

その歌詞は雷鳴を叫びながら後戻りはできない、ハイウェイをぶっ飛ばせなど、車について歌っている。その雷鳴やドラムの音が車のエンジン音であることがひしひしと伝わってきており、キノピオとドンキーコングのモンスタートラックに挟まれたマリオの心強いような、その一方でどこか恐ろしいような心情も伝わってくる。

そして、この後に始まるダークランドとジャングル王国の運命をかけたレインボーロードの大レースも想起させてくれるため、選曲した人間は「マリオカート」をさらに重厚なものにしてくれている。その点においてAC/DCの「サンダーストラック(Thunderstruck)」は最高の選曲だ。

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エレクトリック・ライト・オーケストラ「ミスター・ブルースカイ(Mr.Blue Sky)」(1977)

エレクトリック・ライト・オーケストラのジェフ・リンがアルプス山中に籠もり、楽曲製作に打ち込んでいた時に閃いた名曲で、ジェフ・リンはその当時の思い出を以下のように語っている。

 2週間ずっと暗くて霧がたっていて僕は何も閃きませんでした。突然、太陽が輝きだして「わぁ、なんて綺麗なアルプスでしょう」と思い、僕は次の2週間で「ミスター・ブルー・スカイ」と他13曲を書きあげました。

霧が晴れるように爽やかなエレクトリック・ライト・オーケストラの「ミスター・ブルースカイ」はマリオとルイージがキノコ王国で新たな一歩を踏み出すときに流れる音楽として、最適だと言えよう。

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まさかのシンガーも

Ali Dee「マリオブラザーズ・ラップ(Mario Brothers Rap)」(2023)

誰もが口ずさめるキャッチーなBGMを数多くの映画の音楽を担当したAli Deeが歌ったのが「マリオブラザーズ・ラップ(Mario Brothers Rap)」だ。元ネタはかつてカートゥーンネットワークで放送されていた「スーパーマリオブラザーズ」シリーズを題材にしたアニメのテーマソングだ。

しかし、今回の「マリオブラザーズ・ラップ(Mario Brothers Rap)」は一味違う。なんと、こちらはマリオとルイージが立ち上げた配管工会社「スーパーマリオブラザーズ」のCMソングであり、歌詞も完全なCMソング仕様となっているのだ。こちらは何と公式で配管工会社「スーパーマリオブラザーズ」のCMも公開されている。

そのため、ギャグ的な演出として冒頭では扱われていたが、なんとここで語っていた「ブルックリン区とクイーンズ区を守ります!」というキャッチコピーがマリオを奮い立たされる伏線になるのだから素晴らしい。なお、このCMソングの制作のためにマリオとルイージは無一文になってしまっているのが、何とも生々しく滑稽だ。

クッパ「ピーチ(Peaches)」(2023)

ピーチ姫に対する思いをクッパが一方的に歌ったラブソングだが、何とこちらの楽曲は公式でMVが製作されているほか、原語版で声優を務めたジャック・ブラックによる実写版MVも制作されているのだから驚きだ。

ジャック・ブラックといえば、「ロックへの情熱は人一倍あるが身勝手な振る舞いでバンドを追い出された男が教員資格のある友人の振りをして名門学校の教師になりすまし、子供たちと共にバンドを組む」という映画『スクール・オブ・ロック』(2003)でロックなコメディアンとして名を馳せたことでお馴染みだ。その歌唱力は折り紙付きと言える

ジャック・ブラックのロックなど音楽とコメディの掛け合わせへの想いは映画だけにはとどまらず、私生活でも友人で俳優のカイル・ガスとコメディ・バンド「テネイシャスD」を組んでいる。

他にもジャック・ブラックは『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のワールドプレミアで自作のクッパ風スーツを着るなど、ミュージシャンとして、コメディアンとしても、そして一人のファンとしても『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』に力を注いでくれている人物だ。その後のインタビューでは続編でクッパ役を再演したいとまで語っている。

日本語吹替版においても声優を務めた三宅健太が限りなくジャック・ブラックの声質と歌い方に寄せてくれているため、どちらを聞いてもその情熱を味わえる。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』をもう一度見るときは、その背景で流れている音楽にも注目し、音楽、映像美、ゲームへのノスタルジーが混ざり没入感を与えてくれる映画体験を味わってみてはいかがだろうか。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』Amazonプライムビデオ公式ページ

「ピーチ」も収録されている『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のサウンドトラックは配信中。

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『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は2023年4月28日より絶賛全国公開中。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』ユニバーサル・ピクチャー公式サイトはこちらから。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』任天堂公式サイトはこちらから。

ラストとポストクレジットシーンの解説はこちらの記事で。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』で描かれる各キャラクターのヒーロー像についての考察&解説記事はこちらから。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』キャストと吹替声優、そしてキャラクター紹介の記事はこちらから。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』続編に関する記事はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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