ネタバレ解説『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』で語られるヒーロー像とは? | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』で語られるヒーロー像とは?

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2023年4月28日『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』全国公開!

ディズニーの大ヒットアニメ「アナと雪の女王」を越える好調なスタートダッシュを切り、2023年4月28日の日本公開時点で世界興行収入は1000億円を超えている映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023)。日本が生んだ世界的キャラクターを通し、どの世代も楽しめるゲーム映画となっているのが特徴的な映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』だが、その中では様々なヒーロー像が描かれている。

本編中でも、「ヒーロー」という単語が何回も登場する『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』。それでは、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が描くヒーロー像とはいったいどのようなものなのだろうか。

本記事では映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』で描かれているヒーロー像について、作中でヒーローと呼ばれるキャラクターたちの背景なども含めて考察していきたいと思う。なお、本記事には映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のネタバレが含まれるため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の内容に関するネタバレを含みます。

ピーチ姫の抱くヒーロー像

「愛と勇気」のヒーロー

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』において最初に登場するヒーローがピーチ姫だ。ピーチ姫は護身術に長け、マリオが一晩かけてクリアした訓練施設もあっという間にクリアしてしまうというヒロイックなキャラクター性が強調された女性として描かれている。

そのようなピーチ姫の持つヒーロー像は一言で表すならば「愛と勇気」だろう。ここでいう愛とは恋愛などではない。マリオとの恋路が描かれることの多かったピーチ姫だったが、映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』ではワープ土管を通じて迷い込んだ見ず知らずの人間の自分を育て、そして王女のティアラまでくれた心優しいキノピオたち国民への博愛に満ちた人物として描かれている。

かつて自分がそうされたように、見返りを求めず、ピーチ姫が攫われると慌てふためていて使い物にならなくなるキノピオたちを責めず、それどころかキノピオたちの心優しさを敬い、恩返しのために戦う。それがピーチ姫の抱くヒーロー像だ。さらにピーチ姫は自分とのロマンチックな恋路を妄想して近くにいるマリオにジェラシーを燃やし、キノピオを人質に取るようなクッパなどに対しても毅然と立ち向かう勇敢さをと王女としての高潔さ兼ね備えている。

誰よりもヒーローらしいピーチ姫

映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』ではファイアフラワーやアイスフラワーでファイアピーチ姫やアイスピーチ姫など、様々な能力を使いこなすだけではなく、そこに合わせてレーシングスーツなど様々な衣装チェンジも行なうピーチ姫。その姿は登場キャラクターの中で最もヒーローらしい姿と言える。

そのようなピーチ姫をヒーローにしているのは能力だけではなく、キノピオたちへの恩返しと博愛精神、そして自分の前に立ちはだかり、自分の行く道を邪魔する者に毅然とした態度で「退きなさい」という勇敢さと高潔さだろう。

クッパに誘拐されるイメージの強いピーチ姫だが、『スーパーマリオUSA』(1988)の時点でプレイヤーとして登場してゲームにおける「戦うヒロイン像」の先駆けとも言うべきポジションを担っている。『スーパープリンセスピーチ』(2005)では初の主人公作品の中でクッパに誘拐されたマリオとるルイージを救い、任天堂キャラクター勢ぞろいの格闘ゲーム「スマッシュブラザーズ」シリーズではプレイヤーとして人気を博した。

ピーチ姫のヒロイックさが強調されたのが映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』なのかもしれない。子供向け、ファミリー向けの作品だからこそ、多くの観客たちに勇気を与えるヒーローが今回のピーチ姫と言える。

マリオに抱くヒーロー像

「お人好しで諦めない」ヒーロー

「スーパーマリオブラザーズ」シリーズで、誰もが知る世界的なヒーローとなったマリオ。ディズニー社のミッキー・マウスに匹敵する知名度を誇るマリオだが、今回の映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』では家族から馬鹿にされ、父親に認められない一人の青年として描かれている。そのため、最初のマリオはヒーローとは言い難い印象だ

そのような弱さも持ち合わせた青年のマリオの抱くヒーロー像は自己犠牲、不屈、そして「たった一人の人間にとってヒーローであり続けたい」という家族愛に集約されるかもしれない。マリオにとっては、ヒーローになることよりも大事なことがあるのだと考えられるため、キノピオたちを守るためにヒーローとなったピーチ姫とは似ているようで、どこか正反対の正確だ。

マリオはピーチ姫やキノピオに内気な姿や、弱気な顔を見せながらも反目し合っていったドンキーコングJr.を咄嗟に助けた。初めて会ったばかりのキノピオ族たちのためにも戦うなど、困っている人がいれば放っておけないお人好し、そしてそれを越えた自己犠牲の精神の持ち主として描かれている。それがマリオを物語が進むにつれて自然とヒーローへと変えていく。

しかし、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のマリオはヒーローとしては決して強くない。それでも、何度倒されても立ち上がり、自分を否定してくる相手に果敢と挑むマリオの姿は不屈の精神と何度でも再挑戦できるゲームの「スーパーマリオブラザーズ」を象徴した演出だ。

これまでの行動はすべて弟のルイージを救うためのものであり、その中で困っている人を見たら助けずにいられないというお人好しの人助け精神から来ている。そういった意味では映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のマリオは無自覚なヒーローだと言える。

たった一人のヒーローでありたい

映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のマリオは内気さや弱気な面を垣間見せるような、決して勇敢な性格とは言えない人物だが、とある時だけは誰よりも勇敢な行動を取る。それは自分を信じてついてきてくれた弟のルイージがピンチに陥ったときだ。

マリオがヒーロー像を抱いているとすれば、全員に認められたいのではなく、たった一人の人間にとってヒーローであり続けたいというものだ。父親にも認められず、元上司でライバルの『レッキングクルー』(1985年)に登場したスパイク(ブラッキー)だけではなく家族からも「何もできない」と言われ続けてきたマリオ。そんな打ちひしがれてボロボロのマリオを信じて支えてくれたのが弟のルイージだ。

マリオ同様に夢見がちだが、臆病なルイージ。いじめっ子にいじめられることもあったルイージだったが、そのようなベビィルイージ時代からベビィマリオは弟の危機にはすぐに表れ、非力であってもいじめっ子に立ち向かった。マリオは父親に認められたいという思いを吐露することはあったが、それ以上にマリオにとってはたった一人の弟のルイージにとってのヒーローであり続けたいという思いがあったよう感じられる。マリオにとって重要なのは兄弟の安全であり、映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の主軸にある愛は兄弟愛なのだ。

ドンキーコングJr.

「マッチョでパワフルな」ヒーロー

マッチョでジャングル王国のコング族の間ではセレブのような人気を誇っているドンキーコングJr.だが、既にすべてを持っているようなドンキーコングJr.の抱えるヒーロー像は少し異なっているように思える。ドンキーコングJr.にとってのヒーロー像は周りから失望されたくないという思いと、父親に認められたいという思いの二つが根底にあると思われる。

その点で言えば、国民のためにヒーローになったピーチ、無自覚かつ自然にヒーローになったマリオと比べ、ドンキーコングJr.はヒーローになろうと必死にもがくキャラクターかもしれない。自らをヒーローと称するのも、ヒーローになろうとするが故の行動だろう。

ドンキーコングは「モンキーラップ(DK rap)」と共に登場し、自分の筋肉をファンにアピールするも、その直後に父親であるクランキーコングの方を振り向いて自分が大衆に認められているかを父親であるクランキーコングにアピールしている。それはどうみても父親に認められたい子供のそれだ。

本当の自分に悩む孤独な青年としてのドンキーコングJr.

『スーパーマリオ64』(1996)に登場する巨大アナゴに飲み込まれた際には、父親に認められたいという思いをマリオに吐露し、そしてマリオとの口喧嘩で「短気ーコング」と短気を揶揄されると癇癪を爆発させ、父親からもそれを指摘されて認められていないことに憤慨している。ドンキーコングJr.は短気で癇癪持ちの側面をクランキーコングから指摘されたことが明かされている。

それを見るにドンキーコングJr.の筋肉やそれをアピールする「モンキーラップ(DK rap)」は周囲の人間に失望されたくないという不安感などの裏返しであるのだろう。レインボーロードが砕けて海に落ちた際も、マリオに助けられたことを「誰にも言うなよ」と念押しするなどマチズモに囚われた古典的なマッチョなヒーロー像に囚われている人物として描かれている。

それらを踏まえると、ドンキーコングJr.は国の跡取りという重責から必死にヒーローになろうとジャングル王国内で同胞のコング族からの人気取りに励んでいたのかもしれない。しかし、そのような行動も国を治める父親のクランキーコングからは「息子を甘やかすな」と一蹴されてしまう。

さらには人気取りのためにマチズモなキャラクターを演じ続けた結果、本当の気持ちを打ち明ける相手がいなくなってしまっているように見える。映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のドンキーコングJr.は自分のアイデンティティに悩む孤独な青年と取れる。

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ルイージ

「ずっとそばにいてくれた」ヒーロー

ルイージだけは映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の中で唯一、抽象的ではない明確なヒーロー像を持っている人物と言える。それは他でもない兄のマリオその人だ。ルイージはベビィルイージの頃から自分が勝てないとわかっていても立ち向かう兄のベビィマリオの背中を見てきて育ってきた。

そして、周りからは「お前たちは何もできない」と言われてマリオと兄弟ともに落ち込んでも、「二人だったら何でもできる」というマリオの言葉を信じてマリオについて行く。それが『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』でのルイージだ。ルイージにとってはマリオこそが憧れのヒーローそのものなのだ。

そのため、ルイージは囚われても何があってもマリオが助けに来てくれると信じている。そして会社をやめて、全財産をはたいてCMを放送して「スーパーマリオブラザーズ」という配管工の会社を立ち上げてもそれを疑うことなくついてきてくれた。そして、家族からも貶されて落ち込むマリオに対しても、必ず立ち上がると信じているのだ。

一人ぼっちよりも大魔王よりも二人の兄弟愛

ある意味でいえば、マリオを不屈のヒーローにしているのはルイージであり、ルイージこそがマリオにとってのもう一つのヒーロー像なのかもしれない。ルイージがいたからこそマリオは何度でもクッパに立ち向かうことができた。ルイージがいなければキノコ王国を含め、すべてがダークランドによって滅ぼされていたかもしれない。

ルイージはその点ではマリオ、ピーチ、ドンキーコングJr.を集結させ、そしてクッパを撃退した「ブルックリンの救世主」の立役者だ。マリオと同じく、一人ぼっちでは何もできないように思えても、みんなで集まれば大魔王にだって打ち勝てると教えてくれたヒーローらしいヒーローだったのかもしれない。

続編ではどうなる?ヒーローチーム「ブルックリンの救世主」

日本公開前から世界興行収入1000億円を超え、続編の制作の話も持ち上がっている『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』。任天堂は他のIPに関しても、アニメーション映画化の可能性をあげており、さらにはキャンセルされてしまったもののNetflix制作で「ゼルダの伝説」シリーズのドラマ化の話もあがっていた。

これらのことから、マリオ、ルイージ、ピーチ姫、ドンキーコングJr.からなるヒーローチームとしての「ブルックリンの救世主」に他の任天堂キャラクターや「スーパーマリオブラザーズ」シリーズのキャラクターが登場し、参加する可能性もある。もしかすれば、任天堂版アベンジャーズのようなユニバース化もあり得るかもしれない。

そのようなヒーロー映画の側面からも、映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の続編の可能性と、ピーチ姫が語っていた宇宙はまだまだ広がっているという言葉から任天堂ユニバースの展開に期待していきたい。また、映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の制作にもかかわったマリオの生みの親の一人、宮本茂は「クッパを憎めない悪党にしたい」とも言っていたことから、もしかすれば「ブルックリンの救世主」にクッパが入るかもしれない。それも含めて、今後の任天堂とIlluminationに注目していきたい。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は2023年4月28日より絶賛全国公開中。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』ユニバーサル・ピクチャー公式サイトはこちらから。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』任天堂公式サイトはこちらから。

ラストとポストクレジットシーンの解説はこちらの記事で。

キャストと吹替声優、そしてキャラクター紹介の記事はこちらから。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の音楽解説記事はこちらから。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』続編に関する記事はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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