【全曲解説】映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』で流れた音楽まとめ【ネタバレ】 | VG+ (バゴプラ)

【全曲解説】映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』で流れた音楽まとめ【ネタバレ】

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映画『ハーレイ・クイン』で流れた音楽は?

映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』が2020年3月20日(金)より公開された。インディーズ映画『デッド・ピッグス (原題: Dead Pigs)』(2018)で知られるキャシー・ヤン監督が指揮をとり、『アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたマーゴット・ロビーが主人公ハーレイ・クインを演じた。

DCコミックスの「バットマン」シリーズに登場するヴィラン、ハーレイ・クインを主役に据え、カラフルでポップなガールズギャング映画に仕上がった『ハーレイ・クイン』。そのサウンドトラックに参加したアーティストの豪華な面々も注目を集めている。

今回は、映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』の劇中で流れた楽曲を、その場面と合わせて全曲紹介する。その曲に込められたメッセージを知れば、作品を更に楽しめること間違いなしだ。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』の内容に関するネタバレを含みます。

映画『ハーレイ・クイン』で流れた音楽まとめ

ハーレイの説明シーンで流れる「I Hate Myself for Loving You」

映画の冒頭、ハーレイがジョーカーとの別れとハイエナのブルースとの出会いについて語るシーンで流れているのは、ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツ「I Hate Myself for Loving You」(1988)。タイトルの通り、「あなたに夢中な私が嫌い」という歌詞で、ジョーカーと別れたばかりのハーレイ・クインの心情を表現している。

「I Hate Myself for Loving You」では、「嫉妬はしてないし、ピエロのように見られるのも嫌」と、「clown (=ピエロ)」という言葉を使う歌詞が出てくる点もポイントだ。「あなたのやることから逃れられない」と、“ジョーカーの道化師 (=ハーレイ)”として扱われる苦悩を代弁している。

ジョーン・ジェットは言わずと知れたロック界のレジェンド。“クイーン・オブ・ロックン・ロール”、“ロックの女王”と呼ばれ、1982年に「I Love Rock N Roll」のカバーを大ヒットさせたことでも知られる。

クラブで流れる「Boss Bitch」

ブラックマスクことローマン・シオニスのクラブで流れるのはドージャ・キャット「Boss Bitch」(2020)。映画『ハーレイ・クイン』のサウンドトラックにも収録されている曲で、映画の公開前にコラボMVも公開されている。「私はビッチでボス、私はビッチでボスでグロスのように輝いてる」と繰り返すこの曲は、「私はあんたみたいにクールになろうとしてない」と、“ありのまま”の姿でいることによってその場を支配するハーレイにピッタリの楽曲だ。

一方で、この直後のシーンではハーレイは「ボスキャラになびく女」と陰口を叩かれる。ジョーカーと別れたことを世間に知らしめ、“ジョーカーありき”の視線を浴びる雪辱を晴らすため、ハーレイはある行動に出る。

工場の爆破シーンで流れる「Joke’s on You」

ジョーカーとの思い出の化学薬品工場にトラックで突っ込むハーレイ・クイン。ここで流れている曲はシャーロット・ローレンス「Joke’s on You」(2020)だ。こちらも「Boss Bitch」と同じく映画に合わせて制作され、コラボMVが公開されている。

「Joke’s on You」とは、人をからかったり悪さをしたりしたことが、その人の身に返ってくるという意味の言葉で、「悪ふざけはあなたに返ってくる」と歌われている。ハーレイはこの曲で「あなたの為に嘘をついた、でもそれも好きだった」と回顧しながらも、「私の心はボロボロ、もうあなたに鼓動は高鳴らない」「私が親切であろうとしていたことは神様が知ってる、私は作った笑顔のままで死んでいくことはしない、悪ふざけはあなたに返ってくる」と、ジョーカーとの決別を宣言する。

殺人現場の再現シーンで流れる「Sweet Dreams (Of You)」

刑事のレニー・モントーヤがクロスボウによる殺人事件現場を検証するシーン、レニー・モントーヤによって殺人シーンが再現されるバックで流れているのは、パッツィー・クライン「Sweet Dreams (Of You)」(1963)だ。

歌詞は「毎晩見るあなたの甘い夢」「なぜあなたを忘れた新たな人生を始められないの」と歌われている。パッツィー・クラインはアメリカの伝説的カントリーミュージックシンガー。1932年生まれで、30歳の時に飛行機事故で悲劇的な死を遂げている。「Sweet Dreams」は彼女の最後のヒット曲でもあった。曲の歌詞とこの場面の描写とは関係がないようだが、若くして亡くなった伝説の女性シンガーへのトリビュートと捉えることができる。

エッグサンドイッチのシーンで流れる「I’m Gonna Love You Just a Little More Baby」

ハーレイ・クインがお気に入りのエッグサンドイッチについて解説するシーンで流れているのは、バリー・ホワイト「I’m Gonna Love You Just a Little More Baby」(1973)。映画『ハーレイ・クイン』では数少ない男性ボーカルによる楽曲だ。

「愛してる、愛してる、愛してる、ただあなたを抱きしめていたい」「もっと近くにきて、もっと近くに」と、ハーレイのエッグサンドイッチへの愛が表現されている。なお、このは女性R&Bシンガーのサマー・ウォーカーによるカバーバージョンが『ハーレイ・クイン』のサントラに収録されている。

バリー・ホワイトは3人組の女性R&Bグループのラブ・アンリミテッド・オーケストラを発掘しプロデュースしたことで知られる。ラブ・アンリミテッドのブレークをきっかけに、自身もソロアーティストとして成功を収めた。

警察署突入シーンで流れる「Danger」

ハーレイ・クインが警察署に突入、大暴れで警察官たちをなぎ払っていくシーンで流れているのは、ジュシー・フルート「Danger」。この映画のサントラに収録されている曲だ。「危険、危険、ウー、ウー」「私は狂ってるんだ ビッチ、と言っても私がそのビッチだ」「誰のケツにもキスしない、蹴り上げるだけ」と、Facebookの投稿動画からのし上がったラッパー、ジュシー・フルートらしい強気のリリックが並ぶ。

ハーレイ・クインが問答無用で警察署で暴れまくるこのシーンにぴったりの選曲だ。

ブラック・キャナリーが歌う「It’ A Man’s Man’s Man’s World」

シーンはところ変わってブラックマスクのクラブに。ここでブラック・キャナリーが歌っている曲は「It’ A Man’s Man’s Man’s World」(2020)。映画『ハーレイ・クイン』のために、ブラックキャナリー役を演じたジャーニー・スモレット=ベル名義でカバーされた曲で、原曲はジェームス・ブラウンが1966年に発表した同名曲。

「男は列車を作り、それが重い貨物を運ぶ」「男は電線を作り、それが光をもたらす」と“働く男”に焦点を当てた歌詞が並び、「ここは男の世界、でも女がいなければ何の価値もない」と歌われる。ブラックキャナリーはブラックマスクにバレないように「女がいなければ何の価値もない」の部分を強調して歌っている。

ジェームス・ブラウンの原曲は公民権法が成立したばかりの当時、人種を問わず大ヒットを記録した。その後、様々な女性アーティストにもカバーされている。

クラブで流れる「Invisible Chains」

ハーレイ・クインとブラックキャナリーがクラブで会話するシーン、ハーレイが初めてジョーカーとの別れを人に話しているバックで流れているのは、ローレン・ジャウリギー「Invisible Chains」(2020)。サントラ収録曲の一つだ。

「見えない鎖」というタイトルのこの曲は、「あなたのおとぎ話はもう信じない」「この痛みにも美しさを見出した、見えない鎖を引きちぎる力をくれたから」と、やはり傷心のハーレイ・クインの心情とリンクしている。

ブラックキャナリーのファイトシーンで流れる「Unwind Yourself」

泥酔してさらわれそうになるハーレイ・クインを助けるブラックキャナリー、そのファイトシーンで流れるのはマーヴァ・ホイットニー「Unwind Yourself」(1968)。「リラックスして」「グルーヴできなきゃ踊れないよ」と歌われている。

マーヴァ・ホイットニーはソウル・ファンク界のレジェンドで、ジェームス・ブラウンファミリーの一員として知られる。2012年に68歳で逝去したが、2006年にはオーサカ=モノレールと共に日本ツアーを実施し、コラボアルバム『I AM WHAT I AM』を発表している。

ボロアパートで流れる「Collage」

ボロアパートに帰ったブラックキャナリーは、その廊下で里親の喧嘩に耐えるカサンドラ・ケインと話す。カサンドラを励ます背後で流れているのはザ・スリー・ディグリーズ「Collage」(1970)。「太陽は奇妙な落ち方をして、赤信号がともり、もうやめにする、ただ歌うための歌を探すだけ」と、切なくもポエティックなリリックが並ぶ。

ザ・スリー・ディグリーズは、1970年代に日本でも人気をよんだ3人組の女性ソウルグループだ。

街で流れる「Sway With Me」

ビクター・ザーズと共に行動することになったブラックキャナリーは、街中でスリに勤しむカサンドラを発見し、忠告を与える。カサンドラが颯爽とスリを働くこのシーンで流れているのは、サントラ収録曲であるSaweetie & GALXARA「Sway With Me」(2020)。この映画のCMやトレーラーでもおなじみの曲で、カサンドラを演じたエラ・ジェイ・バスコが出演するMVが公開されている。

「マリンバのリズムが流れ出したら踊りましょう、私を揺らして、だらしない海が砂浜を抱きしめるように」と歌われている。

モンローコスのハーレイが歌う「Diamonds Are A Girl’s Best Friend」

ブラックマスクに捕らえられたハーレイ・クイン。椅子に縛り付けられ、殴られたハーレイは脳内でマリリン・モンローのコスチュームで踊り出す。ここでハーレイが歌っているのはマリリン・モンロー「Diamonds are A Girl’s Best Friend」(1953)。映画『紳士は金髪がお好き』(1953)でマリリン・モンローの姿を再現し、「ダイヤモンドは女性にとって最高の友達」と歌っている。

なお、ハーレイ・クインを演じたマーゴット・ロビーは、劇中で一番気に入っているコスチュームはこのシーンのマリリン・モンローのコスチュームだと語っている。

同シーンで流れている「Diamonds」

「Diamonds are A Girl’s Best Friend」が流れる中、ハーレイの朦朧とする意識の中でこの曲と重なるようにして流れているのはミーガン・ジー・スタリオン「Diamonds」(2020)。サントラの収録曲だ。

「Diamonds are a girl’s best friend」というラインをフックでまんま使いしたこの曲は、「ダイアモンドが私の新しいボーイフレンド、あんたとはもう終わり、もういらないんだから離れるのは簡単」と、原曲の世界観を拡張して歌っている。

警察署で流れる「Experiment on Me」

ハーレイ・クインが警察署からカサンドラ・ケインを助けようと奮闘する中、降り注ぐスプリンクラーの水とともに流れている曲はホールジー「Experiment on Me」(2020)。こちらもサントラ収録曲で、「私は衝突事故みたいにイケてて、子守唄みたいに醜い、試してみたいでしょ、私の実験」「私は決して良いお手本じゃない、「よく見ておくべき、耳を貸すべきじゃない」って奴らは言ってる」と歌われている。

このシーンもまたハーレイ・クインが大暴れするアクションシーンだが、作品を通じて流れる反骨精神がよく現れた一曲だ。

ハイウェイシーンで流れる「Love Rollercoaster」

カサンドラを連れ出したハーレイは、車で追手から逃げる。ここで流れている曲は、オハイオ・プレイヤーズ「Love Rollercoaster」(1975)。「愛のローラーコースター」の邦題でも知られており、1996年にはレッド・ホット・チリ・ペッパーズがカバーしている。

「Love Rollercoaster」では、「あなたを愛するのって本当にワイルド、まさに愛のローラーコースター」と、陽気に歌い上げられている。

ハーレイの決意後に流れる「Hit Me With Your Best Shot」

自宅を襲撃され、信用していたドクに裏切られ、「ビジネスはビジネス」とカサンドラを売ることに決めたハーレイ。ブラックマスクに連絡を入れ、物語が動き出す。このシーンで流れているのは、サントラ収録曲であるアドナ「Hit Me With Your Best Shot」(2020)

パッド・ベネターが1979年に発表した「強気で愛して」の邦題で知られる曲をカバーした作品で、原曲はロックで「最高の一撃を食らわせてよ!」というノリの曲。『ハーレイ・クイン』では「ベストショットで仕留めて、私を焼き尽くして」とアドナがダークに歌い上げることで、自暴自棄になったハーレイの心情とリンクさせている。

遊園地で流れる「バラクーダ」

遊園地で追い詰められ、「狙われているのは個人ではない、私たち全員だ」と、ついにチームを結成したハーレイ・クイン一行。ハード・ロックバンドのハートによる「バラクーダ」(1977)と共にチームプレーで敵を退けていく。

ハートは、アン・ウィルソンとナンシー・ウィルソンの姉妹が率いたバンドで、女性が中心になったロックバンドとして先駆的に活動していたことで知られる。2013年にはロックの殿堂にも選ばれている。白人男性が中心になってきたハリウッドの世界でも、多様なバックグラウンドを持った女性による映画を完成させる重要なシーンでその楽曲が使用されることになった。

この「バラクーダ」という曲は、ハートが所属していたレコード会社を批判した楽曲だ。ハートは女性が核になったバンドという理由で、曲の内容とは関係のない性的な内容をほのめかす広告を打たれるなど、耐え難い仕打ちを受けていた。そうしたプロモーションを行っていたマッシュルームレコードを離れたハートが真っ先に出した曲がこの「バラクーダ」なのだ。

バラクーダとは凶暴な魚のことで、マッシュルームレコードを「バラクーダのようだ」と揶揄している。「これで終わりじゃない、また会ったね」「あんたは皆に笑顔を振りまいてキスをする、そんで“お話”を作り上げる」「あんたらが売ってたのはコソコソ話って曲」と怒りをぶつけている。

こうした、服従しなかった女性たちの戦いの歴史を背負い、物語はいよいよクライマックスに突入する。

エピローグで流れる「Woman」

ブラックマスクを倒した一行は、各々の道を歩み始める。ハーレイがメンバーのその後を語るシーンで流れている曲はズバリ「Woman」(2017)。ポップシンガー、ケシャの楽曲だ。「自分のものは自分で買うし、請求書も自分で払える、ダイヤモンドの指輪も、車も自分で買ったもの、男の子たちは私の愛を買えない」「私のキャデラックでドライブしましょう、女の子は前に乗って、男の子は後ろね」と歌われている。

その他にも「私はクソ女、私を強く抱きしめる男なんていらない、女友達と楽しむだけ、私はマザーファッカー」「何も奢るな、自分で稼いでる」「ハニーなんて呼ぶな」と、経済的にも精神的にも自立したハーレイ・クインの状況とクロスオーバーする歌詞が並ぶ。

クレジットタイトルで流れる「Diamonds」

最初のクレジットタイトルで流れるのは、マリリン・モンローのシーンでも少し流れたミーガン・ジー・スタリオン「Diamonds」。「ダイアモンドが私の新しいボーイフレンド、あんたとはもう終わり、もういらないんだから離れるのは簡単」というリリックが、ここに来てハーレイの心情とリンクしている。

エンディングロールで「Smile」

次に流れてくる曲はサントラに収録されているメイシー・ピーターズ「Smile」(2020)。「これは私のパーティ、私の身体、私の問題、私の街、私の暗殺リストに入っている私の道化師」「私の女友達、私たちが決めてる」と歌われている。

最後に流れる「Bad Memory」

エンディングロールの最後に流れるのはサントラ収録曲であるKフレイ「Bad Memory」(2020)。「あんたが二日酔いで裸でフロアに横になってるのを見つけた、手のひらには消えかかった電話番号、もう終わり、あんたがどういう人間かやっと分かった、嘘つきだって」というリリックから始まり、フックでは「あんたはただの悪い思い出」と繰り返されている。「バイバイ、私は自由」という歌詞からも、ハーレイが自由の身になったことが分かる。

以上が、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』で流れた楽曲たちだ。前半の曲の内容からはジョーカーへの未練もうかがえるが、物語が進むにつれて、その内容はより明るく、強く、自由なものになっていく。今やハーレイを邪魔するものは何もない。今後どのような物語を紡ぎ出してくれるのだろうか。

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サントラに参加した新進気鋭のアーティストたちの情報は以下の記事から。

映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』は2020年3月20日(金)より全国で公開中。

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』公式サイト

『ハーレイ・クイン』に出演したキャストの情報は以下の記事に詳しい。

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