自主制作からAmazonへ
Amazonオリジナル映画として日本で2020年6月12日(金)に公開された『ヴァスト・オブ・ナイト』。元は自主制作で発表された作品で、2019年にインディペンデント映画が集まるスラムダンス映画祭で観客賞を受賞している。その後Amazonが権利を獲得し、コロナ禍の2020年5月29日(金)にアメリカでドライブインシアターでの公開と同時にAmazonプライムビデオで配信を開始した。
『ヴァスト・オブ・ナイト』は1958年のニューメキシコを舞台に、若きラジオDJと電話交換手が奇妙な現象に遭遇するという物語。当時を完全再現した録音機材・電話交換台などのアイテムや、登場人物がそれらを「ガチャガチャ」と使いこなす様、そして独特のカメラ回しは必見。
『ヴァスト・オブ・ナイト』のあらすじ
1958年11月のある日の夜、ニューメキシコ州のカユーガ (架空の街) では高校のバスケの試合が行われていた。この町中から人が集まる一大イベントだ。地元のラジオ局でDJを務めるエベレットは、録音機材を手に入れたばかりの高校生フェイに機材を使ったインタビューの仕方を教えていく。スマホもない時代、二人はSF的な未来の話をしながら歩き、エベレットは夜のラジオ放送へ、フェイは夜勤の母に代わって電話交換手の作業に就く。
慣れた手つきで電話交換台を操作し、電話を繋いでいくフェイ。電話は1960年代にコンピュータ化されるまで、電話交換台が電話をかける人と受ける人を媒介し、電話交換手がケーブルを用いて手動で両者を繋いでいた。一般的に、電話交換手には女性が多く雇用されていた。
電話交換の作業を続けていたフェイだったが、突然、謎の音を受信する。電話をかけてくる町の人々の様子もおかしい。フェイは躊躇しながらもラジオ放送中のエベレットに連絡を入れ、エベレットはその音をラジオで流して情報を募ることを提案する。そして、人々の証言を通して、怪奇現象の正体が徐々に明らかになっていく。
集まる高評価の『ヴァスト・オブ・ナイト』
元は自主制作映画ということで、独特なつくりが特徴となっている『ヴァスト・オブ・ナイト』。米レビューサイトのRotten Tomatoesでは、2020年6月13日(土)時点で批評家によるスコアは188人が評価を行い、92%という非常に高い数字を残している。一方で、オーディエンスからの評価は63%。批評家からの評価が非常に高い作品だと言える。
なお、Netflixで2020年5月29日(金)に配信を開始したSFコメディ『スペース・フォース』は、批評家のスコアが40%、オーディエンスの評価は77%と、逆の現象が起きている。詳細は以下の記事をチェックしていただきたい。
新進気鋭の監督・俳優にも注目
『ヴァスト・オブ・ナイト』の監督を務めるのはアンドリュー・パターソン。本作が初の長編作品で、1982年生まれながら、『ヴァスト・オブ・ナイト』ではオールドスクールな怪奇SF映画を作り上げた。今後の作品にも期待がかかるSF映画界の新星だ。
フェイ役を演じたのは『天才学級アント・ファーム』(2011-2014)などディズニーチャンネルのドラマ作品で活躍してきたシエラ・マコーミック。演技力もさることながら、『ヴァスト・オブ・ナイト』では見事な“走りっぷり”を見せている。エベレット役は舞台『夏の夜の夢』(2014)やドラマ『マニフェスト 828便の謎』(2018-)に出演したジェイク・ホロウィッツが演じている。
自主制作映画からAmazon作品へとのし上がった映画『ヴァスト・オブ・ナイト』。次世代のSF映画界を担う新たな才能をチェックしておこう。
映画『ヴァスト・オブ・ナイト』は、2020年6月12日(金)よりAmazonプライムビデオで独占配信中。