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『ブレードランナー』に『時計じかけのオレンジ』…SF作品の実写化を成功させた巨匠達

難解…! SF作品の実写化

実写化という挑戦

今や、子どもからお年寄りまで誰もが楽しめるコンテンツとなったSF映画。難解にして上質な文学として登場したSF作品たちも、すご腕映画監督たちの手によって、エンターテイメントとして生まれ変わってきた。原作を持つ作品の実写化は、“アダプテーション” とも呼ばれる。小説やコミックといったメディアを、映像、それも時間に制限がある映画というメディアに“適応”させるためには、様々な工夫が必要になる。

SF作品を実写化する難しさ

それが、SF作品ということになれば尚更だろう。現実には存在しない作家が創り上げた独特の世界観を、別の人間が、それも異なるメディアで作り直すのだから。だが、アダプテーション論についての議論は別の機会に譲ろう。今回は、そうした難しい状況の中でも、SF作品の実写化を成功させてきた映画界の巨匠たちにスポットライトを当ててみよう。
SF映画の巨匠といえば、ジェームズ・キャメロン監督が挙げられる。『ターミネーター』(1984)や『アバター』(2009)といった作品で知られているが、これらはオリジナル作品。ジョージ・ルーカス監督の「スター・ウォーズ」シリーズも同様だ。では、SFの実写化作品で名を馳せたSF界の巨匠には、どのような監督がいるだろうか。

スティーブン・スピルバーグ監督に舞い込む実写化話

意外なあの作品も実写化作品

SF映画界のもう一人の大巨匠、スティーブン・スピルバーグ監督が手がけた『ジュラシック・パーク』(1993)、『A.I.』(2001)、『マイノリティ・リポート』(2002)、『宇宙戦争』(2005)は、原作小説からの実写化作品だ。デビュー当初は『ジョーズ』(1975)など、SF以外の小説からの実写化作品で実力を示していたスピルバーグ監督。その後は『未知との遭遇』(1977)、『E.T.』(1982)と、オリジナルの名作SFを生み出した。2000年代に入ると、スピルバーグ監督は続けざまに実写化SF作品の指揮をとるようになる。

実写化作品 公開年 原作 原作者 出版年
『A.I.』 2001 『スーパートイズ』 ブライアン・オールディス 1969
『マイノリティ・リポート』 2002 『マイノリティ・リポート』 フィリップ・K・ディック 1956
『宇宙戦争』 2005 『宇宙戦争』 H・G・ウェルズ 1898

スピルバーグ監督に下に集まる名作SF

上記の作品群を見て分かる通り、いずれの原作小説も“クラシック”と呼べる作品で、『宇宙戦争』に至っては原作の出版から100年以上が経過している。こうした作品が今実写化される理由は、現代の映像技術が人間の想像力に追いついてきたということ一因だろう。だが、こうした名作SF小説の相次ぐ実写化の多くが、スピルバーグ監督の手に委ねられた背景には、彼が過去に手がけてきたSF映画作品と実写化作品の実績があったことは間違いないだろう。

スタンリー・キューブリック監督による数奇な実写化

SF三部作の中の実写化作品

言わずと知れたSF映画の巨匠、スタンリー・キューブリック監督 (1928-1999)。全ての作品がヒューゴー賞映像部門賞を受賞した彼の「SF三部作」と呼ばれる作品の内、二作品が実写化作品だ。『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(1964)は、ピーター・ジョージの『破滅への二時間』(1958)を原作としている。1968年に公開された『2001年宇宙の旅』は、SF御三家の一人であるアーサー・C・クラークによる小説も有名だ。だが、実はこの小説の発表は1968年6月。映画の製作と同時に執筆が進められている為、どちらかが原作ということでない。そして、キューブリック監督の代名詞とも言えるSF映画作品が、1962年に書かれたアンソニー・バージェスの同名小説を実写化した『時計じかけのオレンジ』(1971)だ。

『時計じかけのオレンジ』が抱えていた、ある問題

『時計じかけのオレンジ』では、実写化に際してある問題が起きていた。暴力が蔓延する近未来と、そこに生きる若者の姿を描いた『時計じかけのオレンジ』は、公開と共に大きな議論を呼んだ。だが、キューブリック監督が参考にした“原作小説”は、なんと最終章に当たる21章が丸々抜け落ちていたのだ。実はイギリスで書かれた同作をアメリカ版に編集した際に、出版社が独断で21章を収録せず、そのアメリカ版がキューブリック監督の手に“原作”として渡っていたのだ。そして、キューブリック監督はこの経緯を知らずに映画版の脚本を執筆したのだ。この為、原作のポジティブな印象を与えるエンディングは映画に登場しない。
しかし、のちに完全版の原作を読んだキューブリック監督は、そのエンディングを「スタイルに一貫性がない」、「ポジティブすぎる」として、いずれにせよ映画に使う気はなかったとしている。実写化にあたっての原作の改変は、批判を呼ぶことも多い。『時計じかけのオレンジ』の場合は、意図せぬ“改変”が、結果として映画史に残る名作を生んだのであった。

この人抜きに実写化は語れない! リドリー・スコット監督による実写化

スピルバーグのキャリアを凌駕!?

そして、SF小説の実写映画化を語る上で、触れないわけにはいかない存在が、巨匠リドリー・スコット監督と、『ブレードランナー』(1982)だろう。リドリー・スコット監督は1977年、ジョゼフ・コンラッドの短編小説『決闘』(1924)を実写映画化した『デュエリスト/決闘者』でデビューし、カンヌ国際映画祭で新人監督賞を受賞。すると、次作のオリジナルSF作品『エイリアン』(1979)が大ヒット。1982年に満を持して指揮をとったのが、フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(1968)の実写映画『ブレードランナー』であった。SF以外の実写映画化とオリジナルのSF作品を成功させ、名作SFの実写映画化を手がけるというパターンは、前述のスピルバーグ監督のキャリアと一致する。しかし、リドリー・スコット監督の場合は、その流れをデビューからたった3作で完成させてしまったのだ。

「SF」というジャンルに多大な影響を与えた『ブレードランナー』

そして、伝説として語り継がれる『ブレードランナー』の革新的な映像表現については、ここで語りつくせるものではない。リドリー・スコット監督は、アジアン・ヒューチャリズムを取り入れ、後世に残るSF的世界観を創り上げた。映画化についてなかなか首を縦に振らなかったとされる原作者のフィリップ・K・ディックは、制作が進むに連れてその世界観に確信を持ち、制作会社への手紙にこう綴った。

世間の人々とクリエイターに対する『ブレードランナー』の影響は計り知れないものになるだろう――そして、SFというジャンルにとっても。

by フィリップ・K・ディック

実は、映画と小説では、その内容は大きく異なる。それでも、この映像作品がSFそのものに大きな影響を与える――、そう原作者に言わせしめたのが、『ブレードランナー』という作品だったのだ。
リドリー・スコット監督は、2015年にはアンディー・ウィアーの小説『火星の人』(2011)を題材とした『オデッセイ』の監督を務め、2017年には『ブレードランナー』の続編となる『ブレードランナー 2049』の製作総指揮を務めたが、御歳80歳。71歳のスティーブン・スピルバーグも『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018年7月公開予定)で製作総指揮を務める。巨匠達の製作意欲は、まだまだ尽きることはなさそうだ。

– Thumbnail –
via: Steven Spielberg and Ridley Scott Photos by Gage Skidmore on Flickr
– Source –
The Kubrick Site / ©️ 2003-2010 Philip K. Dick Trust

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