『アイ・アム・マザー』が問う想像力——AIが人間を作り直す?

ライター

豪発SF『アイ・アム・マザー』が配信開始

Netflixからまた新作SF映画

オーストラリアのグラント・スピュートリ監督が手がけたSFスリラー『アイ・アム・マザー』が2019年6月7日(金)よりNetflixで配信を開始する。4月30日(火)に配信を開始した『流転の地球』、5月24日(金)に配信を開始した『リム・オブ・ザ・ワールド』、6月5日(火)に配信開始となった『ブラック・ミラー』シーズン5等の作品に続き、またもNetfixから注目のSF作品が公開される。

『アイ・アム・マザー』が描く世界

『アイ・アム・マザー』は、シェルターに住む一人の少女を残し、人類は滅亡したとされる世界が舞台。クララ・ルガード演じる少女はシェルターでドロイドに育てられ、育ての親であるドロイドを“マザー”と慕っていた。ドロイドはシェルターを「人類がやり直すための施設」と呼び、少女に教育を与えていた。そこに突如、ヒラリー・スワンク演じる負傷した女性が現れ、外界の人類は滅亡していなかったことが判明する。少女は“母”と慕ってきたドロイドに疑問に抱き始め、人間とマザーのどちらを信じるべきか、選択を迫られる。

『アイ・アム・マザー』が描く“差異”

注目すべきは、同作の中で描かれる人間の間の差異だ。作中ではAIに育てられ、自分以外の人間を見たことがない少女と、外の世界しか知らず、AIに育てられるという経験をしたことがない女性の交流が描かれる。『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)での主演女優賞を含む二度のオスカー受賞歴を誇るヒラリー・スワンクは、Black Girl Nerdsのインタビューに以下のように語っている。

いかに私たちが自分の経験を通してこの世界を見ているか、というのは興味深い点ですね。自分が知っていることが“現実”になる。その外の世界について考えたり、誰かの気持ちになって考えたりすることは、緊張関係を作ったり、状況を変えたりすることになります。

この映画では、倫理と道徳について、人間にとって何が“完璧”なのかという点について疑問を投げかけているんです。

デジタルネイティブ世代との共演

現実においても、少女役のクララ・ルガードは21歳のデジタルネイティブ世代。7月で45歳を迎えるヒラリー・スワンクとは、生活のスタイルやITに対する考え方も違って当然だ。スワンクは、Parade誌のインタビューにこう話している。

(学生時代に)レポートを書くときは、本を見つけるために図書館に行っていました。今は44歳ですがテクノロジーに全く触れずに育ってきたんです。コンピューターといった類のものが全くなかったんです。でも、夕食時にスマホを見るのではなく一対一のふれあいを持てたことは、とてもありがたいことでした。今の子たちには辛いと思いますけどね。

デジタルネイティブ世代とそれ以前の世代は、AIに育てられた少女と人間がいる世界で生きてきた女性という『アイ・アム・マザー』の設定にそのまま置き換えることができる。人類はその“種族”という繋がりを基に協働できるのか、それともAIが“作り直した人間”はこれまでの人間とは異なる存在なのか。そして人間は、自分の“経験”を超えた世界や他者に想像力を及ばせることはできるのだろうか。

『アイ・アム・マザー』は、テクノロジーの台頭によってパラダイムシフトを経験している様々な世代が共存する現代だからこそ生まれた映画なのかもしれない。

『アイ・アム・マザー』はNetflixで2019年6月7日(金)より配信開始。

『アイ・アム・マザー』(Netflix)

– Thumbnail –
Netflix
– Source –
Black Girl Nerds / Parade

VG+編集部

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