『アイ・アム・マザー』 母ドロイドはどうやって作られた? 制作のメイキング映像が公開 | VG+ (バゴプラ)

『アイ・アム・マザー』 母ドロイドはどうやって作られた? 制作のメイキング映像が公開

via: Weta Workshop YouTube

豪州SF『アイ・アム・マザー』が公開

“母娘”の物語

オーストラリアのSFスリラー映画『アイ・アム・マザー』が、Netflixで配信を開始した。『アイ・アム・マザー』はグラント・スピュートリ監督が手がけたポストアポカリプス映画で、“ヒト再増殖施設”でドロイドに育てられた少女と、その“母”であるドロイドの物語が展開される。人類が滅亡したはずの外界から突然傷ついた女性が現れ、少女は“母”に疑問を抱き始める——。

“母”に注目

少女を演じたクララ・ルガードと、外界から現れた女を演じたヒラリー・スワンクの演技もさることながら、やはり同作で強い印象を残したのは、少女の“母”であるドロイドだ。もちろん、現実世界においてはこれだけ滑らかで安定した動きができるロボットは存在していない。この母ドロイドは映画用に制作されたもので、実際には中に人間が入って演技をしている。つまり、コスチュームなのだ。

制作はウェタ・ワークショップ

そして、この母ドロイドの制作を手がけたのは、SF映画界ではすっかりおなじみのウェタ・ワークショップだ。中国のブロックバスターSF『流転の地球』(2019)や、南アフリカ出身のニール・ブロムガンプ監督の『第9地区』(2009)、『エリジウム』(2013) といった作品でコスチュームの制作を手がけてきた。そしてこの度、ウェタ・ワークショップより、『アイ・アム・マザー』におけるスーツ制作のメイキング映像が公開された。母ドロイドは一体どのようにして生み出されたのか、制作のこだわりと苦労が語られている。

「逃げも隠れもできなかった」

『アイ・アム・マザー』のスーツ制作でプロジェクト・スーパーバイザーを務めたルーク・ホーカーは、同作での制作を「今までに経験したことのないやり方で試されることになりました」と話す。映画中、非常に多くシーンで登場する母ドロイドは、あらゆるパーツがアップで映し出されるため、とことんディテールの美しさを追求する必要があったというのだ。ホーカーは「逃げも隠れもできなかった」と語っており、リード・コンセプト・アーティストのクリスチャン・ピアースは「自分が描いたもの全てが映画内で映し出されるということは、プレッシャーもあったが楽しくもあった」と話している。同作でのコスチューム制作が決して妥協の許されない仕事だったということが分かる。

Netflix

「これまでで最も複雑」

ウェタ・ワークショップの制作チームが何よりも追求したのは、母ドロイドの「リアルさ」だったという。同スタジオは、現実に存在しないドロイドをいかに違和感のない存在として創り出すか、という難問に挑戦したのだ。細かいパーツはスタジオ内の3Dプリンターで作成されているが、プロジェクト・スーパバイザーのホーカーは、このスーツの仕組みを「今まで経験した中で最も複雑」と述べ、「様々なテクノロジーとテクニックを詰め込んだ」としている。3Dプリントが終わった後、塗色をはじめとする10〜15の作業をこなして、やっと一つのパーツが完成する。加えて母ドロイドの“無機質な表情”を演出する頭部のライトなどメカニクスを要するパーツもあり、想像を絶する数の工程を経て、一台のドロイドを生み出していたのだ。

パーツは一つ一つペイントされ、ブラッシュアップされた。©️Weta Workshop

徹底した検証作業

また、プロジェクトチームは『アイ・アム・マザー』の台本を読み、ストーリーとキャラクターを把握した上で、母ドロイドのデザイン候補を作成したという。デザインを決める作業は、ウェタ・ワークショップのアーティストとグラント・スピュートリ監督の共同で行われた。左右非対称のシェイプなど、様々なタイプのドロイドが考案されたが、最終的にはより人間に近いシェイプのデザインに決定している。シェイプが決まった後も特に頭部については1日に30〜40のデザインを制作しては、どのタイプが最も“母”に適しているか検証を重ねていったという。やはりあのクオリティの裏には膨大な作業が存在していたのだ。

検討された“母”の試デザインのひとつ。 ©️Weta Workshop

オーストラリアSFの強みに?

なお同スタジオは、『流転の地球』においては中国内の撮影チームとは完全に別れて制作作業を行っていた。中国とニュージーランドという離れた場所での共同作業における苦労は、以下の記事に詳しい。

『アイ・アム・マザー』では、グラント・スピュートリ監督が度々スタジオを訪れて確認作業を行っていたそうだ。ニュージーランドを拠点に置くウェタ・ワークショップが地理的に近い位置にいるということは、オーストラリアSFにとって大きな強みとなっていくだろう。

映画『アイ・アム・マザー』はNetflixで2019年6月7日より配信開始。

『アイ・アム・マザー』(Netflix)

VG+編集部

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