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映画『MEG ザ・モンスターズ2』公開
2018年に公開された映画『MEG ザ・モンスター』の続編となる『MEG ザ・モンスターズ2』が2023年8月25日(金) より日本で劇場公開されている。本作は、スティーヴ・オルテンのSF小説『メグ』(1997) を実写化した前作に続き、小説の続編『The Trench(原題)』(1999) を原作にしたSFサメ映画だ。
前作に引き続き米中合作で製作されており、『フリー・ファイヤー』(2016) などアクション・コメディを発表してきたベン・ウィートリーが新たに監督を務める。前作からはジェイソン・ステイサムが主演で続投。「ウルフ・オブ・ウォー」シリーズや『流転の地球』(2019) などで知られる中国のスター俳優ウー・ジン(呉京)が新たにステイサム演じるジョナスの相棒ジウミンを演じる。
5年ぶりの「MEG」シリーズの続編にして、夏にぴったりのサメ映画に仕上がっている本作。果たして更なる続編はあるのだろうか。今回はそのラストに注目して解説&考察していきたい。なお、以下の内容は作品の結末に関するネタバレを含むので、必ず劇場で本編を観てから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『MEG ザ・モンスターズ2』の内容に関するネタバレを含みます。
映画『MEG ザ・モンスターズ2』ネタバレ解説&考察
海溝からリゾート地へ
映画『MEG ザ・モンスターズ2』の原題は『Meg 2: The Trench』。「Trench」とは海溝(深く窪んだ溝状の海底)のことで、『MEG2』では北太平洋に位置する世界で最も深い海溝のマリアナ海溝が舞台になる。ジョナスとジウミンらは人類未到の地に探索に出かけるが、そこで複数の巨大ザメのメグと古代の恐竜の生き残りを目にすることになる。
ジウミンは子どものメグに“ハイチ”という名をつけて飼育していたが、ハイチは繁殖期に差し掛かって檻を抜け出し、マリアナ海溝へとついてきてしまう。ちなみに前作の『MEG』では、ラストで2体目のメグが通常のサメたちに食い殺されるシーンでメグの口から小さいサメが出てきている。これはメグの子どもと考えられており、それが育ったのがハイチなのかもしれない。
ジョナスとジウミンは、海洋研究所マナ・ワンの出資者ヒラリー・ドリスコルと、それに買収されたジェスの裏切りに遭いながら、『MEG2』の最終決戦はリゾート地のファン・アイランドに移る。ジョナスらがマリアナ海溝から脱出した際に、3体のメグと両生類の恐竜たち、そして巨大タコを海上に連れてきてしまい、ジョナスチームとドリスコルチーム、そして太古のモンスターチームは三つ巴の戦いを繰り広げることになる。
ラストの意味は?
前作と同じリゾート地でのクライマックスでは、ジョナスが自作の槍爆弾でメグを退治し、ドリスコルと部下のモンテスがそれぞれモンスターに食べられ、そして巨大ダコはハイチが退治することになる。巨大ダコ vs 巨大ザメの戦いは『MEG2』最大の見どころの一つ。ハイチに信頼を寄せているジウミンはハイチに助けられたことを確信している。
最後のメグは、ヘリコプターの羽根で上顎を貫いたジョナスの“ザ・ジェイソン・ステイサム”な倒し方で決着。ジョナスチームの圧勝で片が付いたかに思われた。だが、最後にハイチが海中のジウミンらに向かって突進。ジウミンが装置のボタンを2回押したら「行け」という冒頭のコミュニケーションを試みると、ハイチは直前で方向を変えて行ってしまう。その先にはイルカがおり、ジョナスはハイチが方向を変えたのはコミュニケーションの結果ではなく、イルカのおかげだと主張するのだった。
このラストには、ジョナスとジウミンのスタンスの違いが明確に表れている。ジウミンは冒頭から新開発のパワードスーツを嬉しそうに着こなしていたし、ドリスコルから受けた資金で海底の探検を進めていた。ハイチとのコミュニケーションも装置も利用している。一方のジョナスは自分で作った槍爆弾を使ったり、モンテスをメグに食べさせたり、ヘリの羽根を筋肉の力で武器にしたりと、ジウミンと比べると原始的な道を行く人物だ。
また、ジウミンは人類が進歩してメグとも絆を築けると信じているようだ。一方でジョナスはイルカに助けられたと考えて自然への畏怖を忘れないスタンスをとっている。前作のラストでは通常のサメたちが巨大ザメのメグを食べるという“食物連鎖”を用いた決着の付け方だっただけが、続編の『MEG2』ではジョナスとジウミンの二人を通して人類の二つのスタンスを描いたように思える。
『MEG3』はある?
ジョナスとジウミンの今後に期待
気になるのは、『MEG2』の続編『MEG3』はあるのかどうかという点だ。最後にリガスはハイチが妊娠していると話す。これはハイチが繁殖期の訪れと共に囲いを脱走したことと繋がる展開だ。海溝で別のメグと交尾したことで妊娠したのだろうか。
そもそもハイチは海に放たれたまま。ジョナスもジウミンも生き延びたので、シリーズ三作目となる続編に向けてはしっかり布石が打たれたと言える。続編があるとすれば、ポイントの一つとなりうるのはジウミンとハイチの関係だ。科学の助けを借りてメガロドンと人類は新たな関係を築くことができると考えるジウミンは、メグやその子どもと共闘し、更なる古代の脅威と戦う展開があり得る。
また、このジウミンのスタンスと、自然はあくまで脅威であるという尊敬の念も入った畏怖を持つジョナスの考え方の違いは、次回作で深掘りされることになれば面白い。二人は対立することになるかもしれないが、前作からの続投メンバーの一人であるメイインの存在が二人を繫ぎ留めることになるだろう。
新たな「ジュラシックパーク」に?
なお、原作小説の第三作目は『Meg: Primal Waters』(2004) というタイトルで、第二作目から18年後が舞台になる。この作品ではメグを操る人間の敵が登場するのだが、それを映画版で踏襲するなら、やはりジウミンが敵になるか、ジウミンの技術や飼育法を悪用する敵が現れるかもしれない。
また、小説第四作目の『Meg: Hell’s Aquarium』(2009) では、ドバイの王族が世界最大の水族館を建設してそこに古代生物を入れようとする。映画版で実写化されるとすれば、人類が古代生物を意のままに操ろうとする「ジュラシックパーク」的なテーマを絡めることもできるだろう。
「ジュラシックワールド」が完結した今、「MEG」シリーズは新たな人気SFフランチャイズになり得る。前作『MEG』は5億3,000万ドル超を記録して『ジョーズ』(1975) を超えてサメ映画の最高興収を叩き出した。『MEG2』は日本公開前の時点で製作費1億2,900万ドル〜1億3,900万ドルに対し、興行収入は3億2,000万ドルを突破している。『MEG2』も好調を維持して更なる続編が制作されることに期待したい。
映画『MEG ザ・モンスターズ2』が2023年8月25日(金) より全国の劇場で公開。
前作の原作小説は角川文庫から発売中。
リー・ビンビン演じるスーインが不在だった件についての考察はこちらから。
前作における原作からの改変についてはこちらの記事で。
前作の出演俳優および吹き替え声優のまとめはこちらから。