ネタバレ解説 『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』 フィービーの実験は可能? 量子もつれから考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説 『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』 フィービーの実験は可能? 量子もつれから考察

ソニー・ピクチャーズ

『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』のフィービーの仮説は実現可能か?

1984年に公開され、一大カルチャーとなった「ゴーストバスターズ」シリーズだが、他の幽霊が登場する作品と異なる最大の点はゴーストを科学的に捉えたことだろう。ゴーストを捕獲するために小型原子炉や小型イオン加速器で発生させたレーザーで捕獲し、ゴーストトラップに入れて、ゴースト保管庫で隔離する。この宗教性の薄い幽霊退治というポップなSF映画に世界は熱狂した。

第1作『ゴーストバスターズ』の正統続編である『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』では、15歳の天才フィービー・スペングラーによってとある実験が行なわれる。SF映画である『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』だが、その実験は実現可能なのだろうか。

本記事では『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』での実験の描写から考察していこう。なお、本記事は『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』の内容に関するネタバレを含みます。

フィービーによる幽体離脱実験

量子テレポーテーション

フィービーは『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』でゴーストのメロディに触れ合いたいという一心で、自分自身を被検体とした人体実験を行なう。それがゴースト抽出機による幽体離脱だ。これは量子もつれを利用した一種の量子テレポーテーションだと考察できる。

量子テレポーテーションは1993年にIBMの物理学者チャールズ・ベネットとその同僚によって学説が発表され、1997年にオーストリアの量子物理学者・ウィーン大学の物理学教授アントン・ツァイリンガーが率いる研究チームによって実験が成功した。更に2014年にジュネーブ大学の研究グループが25kmの量子テレポーテーションに成功させているというSF映画の世界だけではない技術だ。

量子テレポーテーションと言ったが、実際の人体を瞬間移動させるようなテレポーテーションとは異なる。量子もつれを用いたテレポーテーションは転送したい粒子をAとしたとき、量子もつれの状態にある粒子のBとCを用意する。Aの情報をBに送信するとBと量子もつれの状態にあるCがBと同期される。これを量子テレポーテーションと呼ぶ。

文章にするだけでもこんがらがってくる量子テレポーテーションだが、あくまでも粒子Aの情報と粒子Cの情報が同期されただけであり、人体のテレポーテーションとなれば話は別だ。量子テレポーテーションは簡単な原子などは可能ではないかと言われているが、人体を構成する原子の数は10の28乗と言われている。10の28乗は漢数字に直すとの世界だ。どう考えても単純な原子ではない。その上、量子もつれを維持するのは難しいとされる。

ゴーストと量子の関係性

そこで重要になるのがゴーストの存在だ。「ゴーストバスターズ」シリーズでは、ゴーストは壁を通り抜けるなど原子の構成が人間と異なる存在だ。そして、ゴーストを捕獲するためには小型イオン加速器や原子炉によって生み出された粒子のレーザーで捕縛し、その後にゴーストトラップに入れる必要がある。ゴーストたちは既存の原子の構成を超越している存在なのだ。

しかし、そのようなゴーストたちにも人間と共通しているものがある。それは人格だ。『ゴーストバスターズ』に登場したスライマーは食欲のままに行動し、『ゴーストバスターズ2』(1989)に登場したスコレーリ兄弟は自分たちに死刑執行を言い渡したスティーヴン・ウェクスラー裁判長に復讐すべく現われた。

フィービーは死後の世界に対して懐疑的な見解を有している。しかし、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』で、死後も破壊神ゴーザを止めようとした自分の祖父のイゴン・スペングラー博士を目撃している。そのことから、死ぬと肉体はたんぱく質の塊になってしまうが、人格だけは量子の世界に存在し続けると考察したのではないだろうか。

フィービーの仮説では、ゴーストは量子の世界に残された人間の人格だったのではないだろうか。それでも人格はデータ化するには大量すぎるため、強烈に印象に残った記憶だけがゴーストとして量子の世界に残ると考察できる。それを踏まえ、生きたままゴースト抽出機で自分自身の人格の中のメロディに会いたいという気持ちを抽出することで、フィービーはゴーストになれると考えたと考察できる。

ゴーストは生前の頃と同一人物?

そうなると一つの疑問が湧き上がってくる。それはゴーストが量子の世界に残された人格というデータだった場合、それは故人と同一人物と言えるかどうかだ。この仮説ではゴーストは量子の世界に焼けついた写真のようなものであり、故人のコピーとも言える。これは瞬間移動などのテレポーテーション全体に言えるパラドックスで、同じ物質で構成され、同じ人格を有している場合、それは同一人物と言えるかどうかということだ。

幽体離脱を果たしたフィービーはゴーストになったのではなく、フィービーの人格のコピーを一時的に量子の世界に生み出したと考察することが出来る。ゴースト抽出機には制限時間があり、その時間の間にゴーストトラップに入れないとゴーストは呪物に戻ってしまう。

そのため、ゴーストになったフィービーは一時的に量子の世界にコピーを作り、目が覚めると量子の世界の存在したフィービーのコピーのデータが生きたフィービーに更新される仕組みなのではないだろうか。もしかすると、制限時間以内にフィービーが目を覚ましてしまった場合、生きたフィービーとゴーストのフィービーが同時に存在していた可能性もあり得る。

メタ的なフィービーの仮説

フィービーとメロディの関係性

そのような危険性もあったフィービーの幽体離脱実験。そのような危険を冒してでも、フィービーはメロディに会いたかったのは何故だろうか。フィービーは科学者としては天才だが、15歳の子供としては孤独だった。そこに16歳で永遠の孤独の中にいるメロディに惹かれたのは当然とも言える。

その一方で、2人の同じ世界にいるのに次元の壁で会えないという関係性は同性愛的な要素も感じさせ、2人の別れは花開かなった恋愛とも考察できる。15歳という思春期は自分自身の性自認や性的指向、恋愛的指向について気付く年齢でもある。

「ゴーストバスターズ」シリーズは2016年のリメイク版『ゴーストバスターズ』や、前作にあたる『ゴーストバスターズ/アフターライフ』の双方ともにマイノリティや子供たちに夢や希望を与えたいという作風になっている。そのため、観客にフィービーとメロディの関係性は友情だけではなく、恋愛関係とも取れるような含みを持たせたのではないだろうか。その点も含めて、もう一度『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』を観直しても面白そうだ。

『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』は2024年3月29日より全国公開。

『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』公式サイト

Source
AFP BB News/Nautilus/こども支援ナビ

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鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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