ネタバレ考察『ブラック・ウィドウ』あの人はヴィランではない? ポストクレジットが憶測を呼ぶ意外な理由 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察『ブラック・ウィドウ』あの人はヴィランではない? ポストクレジットが憶測を呼ぶ意外な理由

© 2021 Marvel

『ブラック・ウィドウ』ポストクレジットを考察

2021年7月8日(木) より、映画『ブラック・ウィドウ』が日本の劇場で公開され、2年ぶりの新作映画でMCUが再び大きく動き出した。翌9日(金) からはDisney+ プレミアアクセスでの配信がスタート。『ワンダヴィジョン』(2021) を皮切りにスタートしたMCUドラマシリーズと同じく、配信でも『ブラック・ウィドウ』を楽しむことができる。

今回は、映画『ブラック・ウィドウ』に登場するある登場人物についてのネタバレ考察をお届けする。意外と注目されていないある要素が理由で、今後のMCU世界と現実世界(!)を左右する可能性が浮上しているのだ。

以下は、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) および映画『ブラック・ウィドウ』のネタバレになる内容を含むので、必ず作品を視聴したから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ブラック・ウィドウ』およびドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャ』の内容に関するネタバレを含みます。

ヴァレンティーナはヴィランではない?

注目のポストクレジットシーン

今回、注目したいのは映画『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンだ。ポストクレジットシーンでエレーナの前に現れたヴァルことヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌは、エレーナのエージェントのような口ぶりでエレーナに次の標的を提示する。

エレーナの次の標的はホークアイことクリント・バートン。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) で唯一ナターシャ・ロマノフの最期を見届けた人物だが、ヴァルは他に目撃者がいないことを利用してナターシャの妹であるエレーナに“敵討ち”の形でクリント襲撃を依頼するのだった。

このポストクレジットシーンはこちらの記事で詳しく解説した通り、2021年後半にDisney+での配信を予定しているドラマ『ホークアイ』へと繋がっていくものになっている。エレーナが“二代目ホークアイ”と敵対あるいはタッグを組む流れも予想することができる。

ヴァレンティーナのアレに注目

このポストクレジットシーンの内容だけで見れば考察は以上の内容になるが、ストーリー以外の部分に着目すると、それ以上の可能性が見えてくる。ポストクレジットシーンで注目すべきは、ヴァレンティーナがエレーナにクリントの写真を見せるときに使用したタブレットだ。そう、ヴァルは iPad mini を使っているのだ。

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映画事情に詳しい方ならご存知のとおり、映画界では「悪役(ヴィラン)はApple社の製品を使用できない」という説が有力視されている。この説が広く囁かれるようになったのは2020年2月のこと。『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017) のライアン・ジョンソン監督が『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019) について話す際に、ある業界ネタを披露した。

それは、「Appleは作品の中でiPhoneを使用することは許可しています。しかし、悪役がカメラの前でiPhoneを使うことはできないんです」というもの。Appleは企業イメージのために、悪役に自社製品を使わせることを制限しているというのだ。実際にドラマや映画における悪役はWindows製品やNokia製品を使うことが多く、Apple製品を使っていなかったことから、この説は有力視されるに至ったのだ。

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でも

MCUではキャプテン・アメリカ役を演じたクリス・エヴァンスも出演する『ナイブズ・アウト』から、意外な業界ルールが明かされたが、実は、この説はドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) においても立証されていた。それは、エミリー・ヴァンキャンプ演じるシャロン・カーターが使うスマホが台湾を拠点にするHTC社のHTC Oneだったからだ。

そして『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のポストクレジットシーンでは、ヴィランのパワーブローカーの正体がシャロンであることが分かった。これにより、Appleのセオリーはまだ有効であると見られていた。

このパターンは、「Apple製品を使っていないからヴィランかもしれない」というセオリーだったが、『ブラック・ウィドウ』のヴァレンティーナのパターンは「Apple製品を使っているからヴィランではない」という決定的なセオリーになる。

仮にヴァレンティーナがヴィランではないとしたら、彼女の目的は何なのだろうか。クリントを狙うのは、かつて“ローニン”として悪人を殺しまくっていた彼への断罪が目的なのか。もしヴァルがヴィランではないのだとすれば、エレーナもヴィランにはならないということになるが、果たして……。

三つの可能性

ヴァレンティーナはiPad miniを使っているからヴィランではない——意外と注目されていないこのセオリーを否定できる可能性は、三つ考えられる。

一つ目は、ヴァルが使っているタブレットがApple製品ではないという可能性だ。ここまでの文章は何だったのかと興醒めしてしまう説だが、意外とあり得るのではないだろうか。今回もApple社のロゴは映っておらず、“形状からしてiPad miniとしか考えられない”ということに過ぎない。りんごマークではなくヒドラのドクロマークが……なんてこともあり得るのかもしれない。

二つ目は、有力視されていた「ヴィランはApple製品を使えない」という“Appleルール”なるものが有効なものではないという可能性だ。過去にはそういうことがあったのかもしれないし、あるいはただの製作側による忖度だったのかもしれない。もしくは、この説が広まったことにより、AppleがヴィランのApple製品使用を解禁した可能性もある。いずれにしても、MCUが、ヴァルがこのルールを覆したのだとすれば、それはとてもMCUらしいことだし、ヴァルらしい“裏切り”ではないだろうか。

三つ目は、MCUフェーズ4における正義が複雑になっており、「ヒーロー/ヴィラン」という二項対立では表現できなくなっているという可能性だ。思い出されるのはドラマ『ロキ』においてロキが発言した「完全な善人も、完全な悪人もいない」というセリフである。また、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でヴァルがリクルートしたジョン・ウォーカーも、ヴィランかと思いきや最後にはサムとバッキーを助けた。エレーナもまた難しい立場に立たされているキャラクターだ。ヒーローでもヴィランでもないヴァルにiPad miniを持たせたことが、単純な勧善懲悪にはならないMCUの流れが、『ブラック・ウィドウ』から始まったという証拠になるのかもしれない。

この三つの可能性の内、どれが正しいのかは、自ずと明らかになるだろう。今後のMCU(とApple製品)から目が離せない。

映画『ブラック・ウィドウ』は2021年7月8日(木)より劇場公開中。7月9日(金) からはDisney+ プレミアアクセスで視聴することもできる。

Disney+

ポストクレジットシーンと、その前のラストシーンも含む『ブラック・ウィドウ』における時系列の解説はこちらから。

『ブラック・ウィドウ』のレビュー記事はこちらから。

ポストクレジットシーンのその後の考察と解説はこちらの記事で。

タスクマスターがコピーした能力と、今後のMCUに繋がるヒントはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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