縞田理理 スペシャルインタビュー「私とSF」 | VG+ (バゴプラ)

縞田理理 スペシャルインタビュー「私とSF」

「私とSF」と題したスペシャルインタビューをお届けする。各フィールドで活躍する4名のクリエイター・表現者の方々に、人生において影響を受けた作品と、ご自身のSF観について話を伺った。小説『霧の日にはラノンが視える』シリーズ、漫画『台所のドラゴン』の原作者であるファンタジー小説家の縞田理理は、ヨーロッパを舞台にした作風で知られる。これまでどのような作品に触れ、現在の世界観を獲得していったのだろうか。

縞田理理
ファンタジー小説家。2001年に『小説Wings』掲載の「裏庭で影がまどろむ昼下がり」でデビュー。小説『霧の日にはラノンが視える』シリーズ、漫画『台所のドラゴン』の原作で知られる。第58回日本SF大会「彩こん」では、SF創作講座にゲスト講師として参加予定。

――まずは簡単な自己紹介をお願いします。

はじめまして。縞田理理と申します。主に少女向けレーベルでファンタジー小説を書いています。よろしくお願い致します。

――縞田さんはヨーロッパを舞台にしたファンタジー作品を中心に手がけてこられましたが、過去に影響を受けた作品や原体験はあるのでしょうか。

中学校の図書室で読んだブライアン・W・オールディスの『地球の長い午後』(1962)が私のSF原体験です。それ以前にも子供向けのSF叢書は読んでいたはずですが、『地球の長い午後』で自分が好きなのはSFというものなんだ、という気づきを得たのです。それからC・L・ムーアとアンドレ・ノートンにハマりました。アンドレ・ノートンの『魔法の世界エストカープ』(1963)で異世界ファンタジーを知り、フィリップ・ホセ・ファーマーの「階層宇宙」シリーズ(1965-1970)、ロジャー・ゼラズニイの「真世界アンバー」シリーズ(1970-1977)にドはまり。他の人からは『階層宇宙』はファンタジーじゃないよ、と言われましたけど、わたしにはファンタジーなのです。

漫画では萩尾 望都、花郁 悠紀子、佐藤 史生の著作が三大バイブル。どの作品も特別なのですが、なかでも花郁 悠紀子作『フェネラ』(1977)から特に強い影響を受けたのではないかと思います。『フェネラ』は、SF的な要素と妖精伝説が見事に融和した名作です。

どうもわたしは「SFとファンタジーの混ざった感じ」がいちばん好きだったようで、長い年月ののちに自分でものを書き始めたとき、SFとファンタジーの両方の要素を含んだものになったのはたぶんそのせいです。

ヨーロッパを舞台にしたのは子供の頃から翻訳物に親しんでいたことと、もう一つは私が逃避的な読者だったからです。今いる場所から遠い世界へ読者さんをご案内したいけれど、行くのが無理なほど遠いところではなくて、もしかしたら行けるかもしれないと感じられる場所がいいと思った。そんな場所として現実と少し違う架空のヨーロッパを舞台に選んだのです。

——異世界と現実のはざまとしてのヨーロッパだったのですね。そのお話は『僕たちは同じひとつの夢を見る』(2016)の“現実世界と異次元が繋がっている”という、よりSF的な設定とも繋がりますね。では、そういった想像力が可視化される映像作品ではいかがでしょうか。影響を受けた映画やドラマ、アニメ作品はありますか。

そうですね……アニメでは『デビルマン』(1972-1973)と『バビル二世』(1973)の存在が大きかったと思います。実写では『仮面ライダー』(1971-1973)などの特撮変身もの。ウルトラシリーズも好きでしたが、仮面ライダーや戦隊ものは等身大なので親近感があった。ウルトラ怪獣は大き過ぎて触れあえませんが、ショッカー怪人はいつかこの町にも来てくれるかもしれない、というわくわく感があったのです。

それから、海外ドラマをよく見ていました。当時は地上波でも海外ドラマをよく放送していたんですよね。『奥様は魔女』(1964-1972)と『かわいい魔女ジニー』(1965-1970)で魔女ものにハマりました。『かわいい魔女ジニー』は宇宙飛行士と壺から出てくる魔女のラブコメで、落ちモノ系の先祖ともいえるアメリカのテレビシリーズです(空から落ちてきたのは宇宙飛行士の主人公の方ですけど)。宇宙飛行士と魔女という取り合わせのギャップがとにかく面白かった。

『謎の円盤UFO』(1970-1971)『スタートレック』(1966-1969)には夢中でした。それと『超人ハルク』(1977-1982)。現在のMCUハルクとは違う1話完結のシリアルもので、毎回どきどきしながら見てました。

映画では『エクスカリバー』(1981)『ダーク・クリスタル』(1982)でしょうか。どちらもCGのなかった1980年代初頭の映画ですが、素晴らしい映像だった。見ることのできないものを内的に視覚化するということを学んだと思います。

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——縞田さんの作風からすると意外な感じもする作品の名前も挙がりましたね。「わくわく」「どきどき」という言葉で表現されていましたが、縞田さんにとってSFファンタジー作品は、ワンダー(驚き)を与えてくれるもの、というイメージでしょうか。

意外でしたでしょうか? わたし的には矛盾のないセレクトなのです。

わたしはフィクションには現実に起きないことを求めます。SFファンタジーにはいつも喜ばしい驚き(ワンダー)がありました。中学校の図書室で夢中になったときからずっとそれを求めています。つまり、どきどきとわくわくです。若くて悩み多かったとき、つらい時間から救ってくれたのはSFファンタジーでした。本のページをめくるだけで遠い星々やモンスターでいっぱいの世界や魔法の国に行けるのですから。

だからわたしも、どきどきやわくわくに満ちた世界に読者さんをご案内したいのです。

——これからSFファンタジーについてもっと知りたいと思っている若い方々へ、メッセージをお願いします。

ご自分のどきどきやわくわくを大切になさってください。他の人が面白いと言うものは他の人にとって面白いものです。まずご自分の「好き」を見つけてください。そうすればその先ずっと自分にとって面白いものが見つけられるはずです。

——近著や連載等のご案内がありましたらお願いします。

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——ありがとうございました。今後の作品も楽しみにしています。

VG+編集部

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