最注目の海外SF『第五の季節』
SF最高賞の一つであるヒューゴー賞で前人未到の長編部門三連覇を達成したN・K・ジェミシンの「Broken Earth」トリロジー。その第一弾である『第五の季節』の日本語訳 (翻訳 小野田和子) が東京創元社より2020年6月12日(金)に発売される。
『第五の季節』の舞台は、〈季節〉と呼ばれる天変地異が繰り返し発生してきた世界。“オロジェニー”と呼ばれる特殊な能力を持った“ロガ”と呼ばれる人々だけが、“父なる地球”の怒りともとれるこの異常現象を治めることができる。新たな〈季節〉が到来しようとする中、オロジェニーを持つ42歳の主人公・エッスンは、同じく能力を持つ幼い息子を夫に殺され、復讐の旅に出る。
そこからは三つの物語が並行して語られ、息もつかせぬ展開の連続、エッスンを取り巻く世界の正体が徐々に明らかになっていく。N・K・ジェミシンによって緻密に構成された独特の世界観に魅了されること間違いなしだ。
書籍の紹介は、以下の記事からチェックしていただきたい。
『第五の季節』映像化は?
「Broken Earth」トリロジーは2017年に出版された『The Stone Sky』で完結したが、今、海外のSFファンが心待ちにしているのは、『第五の季節』のドラマ化作品だ。
『第五の季節』のドラマ化は2017年8月に明らかになった。ワーナー参加のTNT (ターナー・ネットワーク・テレビジョン) が製作を手がけ、ドラマ『スリーピー・ホロウ』(2014-2015)や『24: Legacy』(2017-)でプロデューサーを務めたリー・ダナ・ジャクソンが脚本に携わる。
以降、詳細な情報は出ていないが、米Book Riotは配役を予想、主人公のエッスン役に『ブラックパンサー』(2018)でオコエを演じたダナイ・グリラ (2020年現在でエッスンと同い年の42歳になっている)、重要な役割を果たすアラバスター役に同じくMCUでウォーマシン役を演じるドン・チードルを推している。また、シャファ役にマッツ・ミケルセン、イノン役にイドリス・エルバ、トンキー役にジェイミー・クレイトンなど、『第五の季節』を読んだ人には納得の具体的な名前が挙がっている。
ドラマ製作は進行中?
では、第一報が出た2017年以降、『第五の季節』のドラマ化には進展があったのだろうか。2019年6月にN・K・ジェミシンは自身のTwitterに以下のように投稿している。
Yesterday was busy too and didn’t get a chance to mention, but had a great convo yesterday with the writers/directors who will be working on the Fifth Season TV show. Progress is progressing! Just slowly. 🙂
— N. K. Jemisin (@nkjemisin) June 15, 2019
忙しすぎて昨日は触れることができなかったんですが、『第五の季節』ドラマ版の脚本家、監督たちと、素晴らしいミーティングを持つことができました。進んでますよ! ただゆっくりね 🙂
『第五の季節』のドラマ化については「ゆっくり」だが、進行しているようだ。
追記(2021年6月5日):ドラマ化の話については上記のツイートが削除され、ソニー傘下のトライスターが映像化の権利を獲得したと発表された。詳細はこちらから。
そうこうしている間に、現実世界では新型コロナウイルス感染症の拡大によって、現実でも『第五の季節』に登場する〈季節〉のような時代が到来した。N・K・ジェミシンは、『第五の季節』のことを「災禍を生き延びようとする人々の物語」と説明している。
『第五の季節』は、今こそ人々に必要とされる物語だ。
小野田和子による『第五の季節』の日本語訳は、2020年6月12日(金)に東京創元社より発売。
N・K・ジェミシンの来歴については以下の記事に詳しい。
Source
Book Riot / N. K. Jemisin