郝景芳「最後の勇者」が映像化
中国SFにまたも新たな動きがあるようだ。ヒューゴー賞を受賞した「折りたたみ北京」で知られる郝景芳 (ハオ・ジンファン) の小説「最後の勇者 (原題: 最后一个勇敢的人, 英題: The Last Brave Man)」の映像化が進んでいる。China Dailyが新型コロナウイルスに関する報道の中で明らかにしている。
中国最大の映画スタジオである横店影視城 (Hengdian World Studios) は、2020年2月中旬に運営を再開。1月26日から新型コロナウイルスの拡大防止を目的として閉鎖され、20プロジェクト以上の映画やドラマの撮影が中断されていた。
第66回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した『長江 愛の詩』(2016)を手がけた映画プロデューサーのGuo Jingは、「演者やスタッフらがホテルから出られない間も、報酬を支払い続けなければいけない」と製作陣の苦労を語っている。
幸い、Guo Jingは撮影中の作品を抱えていなかったようだが、現在は郝景芳の「最後の勇者」を映像化するプロジェクトに取り掛かっていることが紹介されている。「最後の勇者」の映像化作品は、映画ではなく「オンラインシリーズ」と紹介されており、配信でリリースされるようだ。
郝景芳は、現在、自らが立ち上げたスタジオ、郝景芳影视工作室 (Hao Jingfang Film & TV Studio) でNetflixの『ブラックミラー』形式のドラマシリーズ『未来之尘』の製作に取り組んでいる。2019年4月には、同スタジオがベンチャーキャピタルから300万元 (約5,000万円) の投資を受けたことが明らかになっている。詳細は以下の記事に詳しい。
現在Guo Jingが手がけている「最後の勇者」の映像化作品は、『未来之尘』の一作品として製作されている可能性もある。
「最後の勇者」は、2013年に「最后一个勇敢的人」の原題で中国のSF誌『科幻世界』に掲載された作品。2016年に発売された郝景芳の短編集『孤独深处』に収録され (この短編集をもとに日本で発売された『郝景芳短篇集』(2019, 白水社)には未収録)、2018年に中国の外文出版社から発売された『中国SF作品集』に四谷寛による日本語訳が掲載されている。
新型コロナウイルスの影響が広がる中で飛び込んできた思わぬ朗報。劉慈欣の小説「さまよえる地球」を映画化し、空前の大ヒットを記録した『流転の地球』以来、中国SFの映像化が続いている。郝景芳の「最後の勇者」はどのような作品に仕上がるのだろうか。無事に完成し、公開される日を待とう。
郝景芳の日本語訳短編集『郝景芳短篇集』は白水社から発売中。
Source
China Daily