『X-MEN‘97』第5話 ネタバレ解説 ミュータントの楽園と倫理観 感想&考察 | VG+ (バゴプラ)

『X-MEN‘97』第5話 ネタバレ解説 ミュータントの楽園と倫理観 感想&考察

©2024 Marvel

『X-MEN‘97』で描かれる倫理観と現実と地続きのフィクション

ジーン・グレイのクローンであるマデリン・プライヤーの登場やネイサン・サマーズの誕生など、人格といったアイデンティティ問題が描かれてきた『X-MEN‘97』。第5話「覚えておけ」では更に踏み込んだ領域が描かれることになる。ミスター・シニスターによって滅茶苦茶にされた倫理観、そしてミュータントの楽園であるジェノーシャの実態について第5話「覚えておけ」は掘り下げていくようになっている。

本記事ではアニメ『X-MEN‘97』第5話「覚えておけ」について感想と考察、解説を述べていこう。なお、本記事はアニメ『X-MEN‘97』第5話「覚えておけ」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『X-MEN’97』の内容に関するネタバレを含みます。

変容していくX-MEN

X-MENたちの広報

ニュースでミュータントの誕生の要因について報道がされており、そこで記者は核実験の影響か、それとも進化の1つの過程なのかと考察されている。アニメ『X-MEN‘97』の世界には放射線を浴びた蜘蛛に噛まれてスーパーパワーを得たスパイダーマンがいるため、前者の説も捨てがたい。

その取材を受けるのはX-MENのメンバーであり、高名な科学者でもあるビーストだ。他にもジュビリーなども取材を受け、記者はプロフェッサーXの遺した恵まれし子らの学園がミュータントたちにとって現時点で最後の楽園となっていると解説した。この報道はすべてミュータント国家であるジェノーシャの国連加盟にまつわるものだった。

ジェノーシャに向かうのはマグニートー、ローグ、ガンビットの3人だ。かつてのボリバル・トラスクの独裁政権時代の面影はそこになく、プロフェッサーXとマグニートーの像が自由のシンボルとして建設されている。ジェノーシャでは様々な容姿のミュータントたちが迫害されることなく暮らしており、X-MENを迎え入れていた。

ミュータントの楽園「ジェノーシャ」

ジェノーシャの代表として参加したのはジーン・グレイのクローンであり、ゴブリン・クイーンでもあったマデリン・プライヤーだ。マデリンはジーン・グレイの代理としてジェノーシャの国連加盟の祝賀会に参加するのだった。アメリカの国家安全保障担当大統領補佐官であるヴァレリー・クーパー博士はマグニートーを少し警戒しているようだ。

マグニートーがジェノーシャのミュータント評議会と内密に会談をする間、ローグとガンビットを案内するといって現れたのはナイトクローラーだ。ナイトクローラーはその悪魔的な容姿に反し、かつてX-MENと共に戦った敬虔なクリスチャンでローグとは義理のきょうだいでもある。現在のナイトクローラーはその信仰心を活かし、ジェノーシャで宗教団体の支援を担当しているとヴァレリー・クーパー博士が解説した。

瞬間移動でジェノーシャを案内するナイトクローラーは、ジェノーシャこそミュータントにとっての故郷だと呼ぶ。ローグはそのことをマグニートーに聞いていたような態度を取り、ガンビットはそれを怪しむ。ガンビットが怪しんでいるのはローグの浮気だけではない。それは一夜にして生まれた国家の英雄が何故マグニートーなのかということだ。

ナイトクローラーはそんなガンビットとローグの関係を見て、ガンビットに結婚したらどうかと話す。しかし、ガンビットは盗賊だった過去と、ローグのミュータント能力によって肌と肌で触れ合えないことを理由に結婚の話をはぐらかしていた。それだけではなく、ガンビットはやはりローグとマグニートーの浮気を疑っていたと考察できる。

サイクロップスとジーン・グレイ

ガンビットたちがジェノーシャを敢行していた頃、サイクロップスは取材を受けていた。ジェノーシャのことを話そうとするサイクロップスだが、記者の興味はそこにはない。記者はマーベル・ガールことジーン・グレイとの恋愛話を聞きたがっていた。だが、クローンと自分の記憶の曖昧さによるアイデンティティ問題に瀕していたジーン・グレイは取材を拒否する。

ジーン・グレイは湖でフェニックス・フォースに取り憑かれたことや、その経験でサイクロップスに本当の意味で心を許したことなど、その重い口を開けた。それを聞いていたウルヴァリンは過去に囚われるのではなく、前に進むべきだと進言する。そして、自分が出会ったジーン・グレイは彼女のみだと続けた。

サイクロップスの苦悩

ジーン・グレイはその勢いでウルヴァリンにキスをする。ウルヴァリンにとってジーン・グレイは想い人ではあったが、サイクロップスとのことを考えて身を引いた。その頃、記者はサイクロップスにネイサン・サマーズについて尋ねていた。ネイサンの問題はサイクロップスにとって最も触れられたくない話題だと考察できる。

自分が父親のように我が子を捨てるような真似しかできなかったことや、愛した妻が別人だったこと、更には我が子を怪物呼ばわりされたこと。そのすべてが爆発し、サイクロップスは「人間はX-MENに感謝していない」と怒りをあらわにする。

そして、人類の平穏はX-MENの活躍の上にあるものであり、それにも関わらず記者がミュータントと人間を同等だと示すチャンスだと語ったことに憤慨した。記者からすればミュータント差別撤廃のための発言だったのかもしれない。しかし、この言葉は裏を返せば今はミュータントと人間は同等ではないという事実を示している。

そして、そのために努力を重ねてきたサイクロップスにとって、この取材でミュータントのためにより一層努力しろという旨の発言が逆鱗に触れたと考察できる。サイクロップスは取材を放棄し、部屋を後にした。

ミュータント評議会

ヘルファイア・クラブ、モーロックス、ミュータント研究センター

マグニートーはミュータント評議会とここ最近の出来事について話していた。そこには様々なミュータント組織のリーダーが顔を揃えていた。ヘルファイア・クラブのセバスチャン・ショウモーロックスのカリストもいる。他にもミュータントの専門家でミュア島にミュータント研究センターを立ち上げたモイラ・マクタガートとその恋人でミュータントのバンシーも参席している。

評議会の目的は昨今の事件を鑑み、ミュータントの共同体として声明を発表することだった。ヘルファイア・クラブのエマ・フロストはその代表として、X-MENのリーダーであるマグニートーを推薦していたのだ。エマ・フロストの計画はそれだけではない。現在、まだ国家として未熟なジェノーシャの王としてマグニートーを据えようという腹積もりだった。それに対してマデリンは反対し、あくまでも国家元首であると強調する。

マグニートーはブラザーフッド・オブ・ミュータンツのリーダーとしても名を知られ、更には国連にジェノーシャの加盟を認めさせた人物だ。評議会はマグニートーならばプロフェッサーXの代わりに外交問題の解決が出来ると思い、なおかつX-MENのリーダーをプロフェッサーXから託されたということはジェノーシャの未来も託されたのではないかと考察していたのだ。

ミュータントの女王

マグニートーはとある条件を提示し、それ次第でミュータントの玉座に就くと語る。その条件とは女王としてローグを据えることだった。マグニートーに対して、ローグはそれでヨリを戻せるつもりかと問い詰めるが、マグニートーはX-MENのメンバーであり、触れることで記憶から他者の痛みを理解することができるローグこそ女王に相応しいと解説した。

ローグはマグニートーが国家を乗っ取るつもりだと考え、一度はそれを拒絶する。マグニートーはプロフェッサーXの最後の約束だと言って引かない。そしてローグを愛していることを語ると、ローグの手を取った。そのとき、ローグの心が揺れ動く。

ジーン・グレイの怒り

恵まれし子らの学園で、サイクロップスは取り乱したことを恥じていた。それを慰めるジーン・グレイに対し、サイクロップスは手放してはいけないものがあると語る。そして、心の内に秘めたネイサンのことを続けて語った。ジーン・グレイとサイクロップスがキスをした瞬間、マデリンがテレパシーで割って入る。サイクロップスは打ちひしがれていただけではなく、テレパシーでマデリンとも対話をしていたのだ。

それに激怒したジーン・グレイは部屋を飛び出す。この複雑かつ奇妙な関係は1か月以上前から続いていたという。ジーン・グレイは妻だが、息子の母親はそのクローンであるマデリンという事情が、この倫理的な問題をより複雑にしていた。2人を愛しているというサイクロップスを受け止められないジーン・グレイ。しかし、直前に彼女もウルヴァリンにキスをしている。

倫理的に危うい関係

ジェノーシャではパーティーを前にローグがガンビットにすべてを打ち明ける。ローグはかつてブラザーフッド・オブ・ミュータンツのメンバーだったとき、マグニートーと肉体関係を持っていたのだ。その理由はマグニートーの能力であり、彼の発生させる磁場がローグの吸収能力を防ぐことが出来たのだ。

しかし、プロフェッサーXと同じ年で師と仰がれている年齢のマグニートーとまだティーンエイジャーだったかもしれない家出少女のローグのカップルはグルーミング(未成年への性的虐待を行おうとする者が、被害者となりうる未成年に近づき、親しくなって信頼を得る行為)と言われてもおかしくない。

マグニートーとの関係はローグの吸収能力の強大化で終わりを迎えたが、マグニートーのミュータントの女王にするという提案にローグは乗るつもりのようだ。肌ではなく、心で繋がっていたと思っていたガンビットはローグを拒絶する。その晩のパーティーでローグは公衆の面前でマグニートーと熱い抱擁とキスを交わした。

センチネルの襲撃

パーティーに突如としてネイサンの大人になった姿であるケーブルが現われる。ジーン・グレイとマデリンに警告を促していたのはケーブルだったのだ。彼の警告も虚しく、ジェノーシャを新たなマスターモールドとセンチネルが襲撃してくる。それにより、バンシーやナイトクローラーといったX-MENの仲間たちを含む多くのミュータントが負傷し、命を落とす。

マグニートー、ガンビット、ローグがセンチネルを倒そうとするが犠牲者は増えるばかりだ。マグニートーはその惨劇でナチスによって家族を奪われた過去を思い出し、ミュータント能力の最高レベルであるオメガレベルの力で対抗する。しかし、マグニートーはモーロックスの子供を庇いながら命を落とすのだった。犠牲者はそれだけにとどまらず、ガンビットは自爆によってすべてのセンチネルを倒した。

第5話の感想と第6話で描かれる更なる憎悪問題

ジェノーシャの壊滅という衝撃的なラストを迎えたアニメ『X-MEN‘97』第5話「覚えておけ」。有名なヒーローたちが命を落とし、ミュータントの楽園は火の海と化した。その惨状はウクライナやガザを想起させ、現実の社会がマイノリティに対してどれほどまで残酷かを思い知らせるエピソードだったと考察できる。

また、ジーン・グレイとマデリン・プライヤーの関係性、サイクロップスが持つ称号へのコンプレックス、マグニートーとローグの肉体関係など、倫理観を問われる描写も多かった。現実の私たちは『X-MEN‘97』をフィクションとして見ることが出来るだろうか。第6話でどこまで深掘りされるのかに注目したい。

『X-MEN‘97』第5話「覚えておけ」は2024年4月10日(水)よりDisney+にて配信開始。

『X-MEN’97』配信ページ

『X-MEN’97』の情報解禁はこちらから。

『X-MEN’97』で登場するX-MENのメンバーはこちらから。

『X-MEN’97』第1話「来たれ、我がX-MEN」のネタバレ感想と考察はこちらから。

『X-MEN‘97』第6話「生死 第2部」のネタバレ感想と考察はこちらから。

『ファンタスティック・フォー』に関する発表はこちらの記事で。

『デッドプール&ウルヴァリン』と旧「X-MEN」シリーズの繋がりについての考察はこちらから。

MCU最新タイムラインの解説&考察はこちらの記事で。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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