『X-MEN‘97』で語られる人生の意義
アニメ版『X-MEN』(1992-1997)ではマイノリティとして生きることが、ミュータントの視点で描写されていた。その続編である『X-MEN‘97』では、人生の中で繰り返される選択肢とそのリスクが描かれることになる。特に2024年4月3日(水)にDisney+より配信開始された『X-MEN‘97』第4話「モテンドー/生と死(前編)」では、それがゲームという形で深掘りされていく。
本記事では『X-MEN‘97』第4話「モテンドー/生と死(前編)」の考察と解説、感想を述べていこう。なお、本記事は『X-MEN‘97』第4話「モテンドー/生と死(前編)」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。
以下の内容は、アニメ『X-MEN‘97』の内容に関するネタバレを含みます。
別次元からの攻撃
ジュビリーの誕生日
ミスター・シニスターの襲撃後、束の間の平和を楽しむX-MENたち。ガンビットが持つローグとマグニートーの関係性への疑念などはあるが、今は18歳の誕生日を迎えるジュビリーを祝うことに専念しようとしていた。しかし、リーダーのマグニートーはそうはいかなった。
せっかくの誕生日祝いをマグニートーに台無しにされたとジュビリーは憤慨する。どちらの言い分も間違ってはいない。ミスター・シニスターはX-MEN最大の脅威で、彼の襲撃によるジーン・グレイの心の傷も癒えてはいない。しかし、ティーンエイジャーにはその問題は重すぎたため、息抜きを欲するのもわかる。
マグニートーはジュビリーの誕生よりも、ジェノーシャにあるミュータント国家の国連入りを優先した。その文句をジュビリーはロベルトに吐き出すが、彼もジェノーシャの国連加盟の重要性は意識していた。それでもジュビリーの不満は収まらない。
モテンドー
ジュビリーは自分の部屋に知らないゲームソフトが置いてあるのを見つける。そのタイトルは「モテンドー」で、X-MENたちが描かれている。一目で任天堂のパロディであることが考察できるタイトルだ。それをローグのサプライズだと考えたジュビリーはロベルトを誘ってゲームをプレイしようとする。モテンドーをプレイすることが悪夢の始まりだとも知らずに。
突然、テレビ画面に「モテンドー」の文字が映し出され、ゲームハードから触手が伸びてくる。その触手はジュビリーとロベルトを捕縛し、2人の意識を別世界に飛ばしてしまう。突然のことに驚きを隠せないジュビリーとロベルトをセンチネルが襲う。センチネルはすべてが解体されたはずだ。その上、部屋の外にあるはずの恵まれし子らの学園もない。
荒廃した街でセンチネルと戦うジュビリーだったが、ロベルトは協力せずに逃げ回るだけだった。その理由はセンチネルとロベルトの戦いがテレビで放送されたのならば、自分がミュータントであることが母親に明らかになってしまうということだった。ロベルトの抱える苦悩からも、『X-MEN‘97』が持つ現実のマイノリティが抱える問題へのメッセージがうかがい知れる。
ジュビリーとロベルトはセンチネルだけではなく、センチネル銃を持ったフレンズ・オブ・ヒューマニティからも襲撃を受けることになる。そのとき、公衆電話が鳴り、ロベルトが出ると2人は瞬間移動してしまった。この演出は映画「マトリックス」シリーズのオマージュだと考察できる。
過去の悪夢
2人が飛ばされた先は過去のジェノーシャだった。今でこそミュータント国家となったジェノーシャだが、かつてはミュータント国家を装い、世界各地のミュータントを奴隷にしていた独裁国家の時代があった。X-MENによって倒されたかつてのジェノーシャのダム建設現場に、ジュビリーとロベルトは瞬間移動させられた。
ジュビリーはかつてストーム、ガンビットらと共に捕らえられ、ボリバル・トラスクによって働かされた経験を語る。この背景にはモーフが変身したこともあるブロブや日系のヒーローのサンファイアが労働させられているのが映し出され、かつてのジェノーシャそのものだと考察できる世界になっている。そこでトラスクの部下に2人はまた追いかけ回される。
モジョーワールド
謎の女性がトラスクの部下を倒すが、その瞬間にエラーメッセージが鳴り響く。この世界が16ビットのゲームの世界だと悟ったジュビリーのもとに現れたのは、痩せ細ったモジョーだった。モジョーはモジョーワールドという別次元の支配者で、そこではすべてがテレビ番組となっており、その視聴率は何事よりも優先される。
モジョーはかつてロングショットという人物の番組の視聴率低迷を理由にX-MENを誘拐して新番組を制作しようと試みたが、失敗に終わった。そこで制作された番組はどれも有名番組のパロディである。
サイクロップスとストームが出演させられた『マイアミ・ミュータント!』は『特捜刑事マイアミ・バイス』(1984-1989)、ローグとビーストの『ローグスター』は「スタートレック」シリーズ、ジーン・グレイとウルヴァリンの「アイ・ドリーム・オブ・ジーン」は『かわいい魔女ジニー』(1965-1970)がモデルだ。
モジョーは深刻な視聴率低下で痩せ、起死回生の案がゲームをモデルにした番組だった。そのためにX-MENとして活動した記憶を持つジュビリーに目を付け、「モテンドー」のプレイヤーにするつもりだった。モジョーはX-MENはもう古くなったと語り、若いジュビリーたちに死のゲームをプレイするように命令する。
ジュビリーの記憶をもとにセンチネルや恐竜が暮らすサベッジランドでの戦いを再現するモジョー。モジョーは視聴者のエネルギーを得て一瞬でもとの体形に戻るが、何者かがジュビリーたちを助ける。六本腕の魔術師スパイラルが侵入者を探すが、技術者がバグを直せなかったという理由で殺されたため、侵入者を見つけることが出来ない。
人生のリスク
ロベルトはモジョーワールドから脱出し、現実で大人へと成長することを望むが、ジュビリーは違った。マグニートーがボスではない、単純だった過去のX-MENの時代を永遠に過ごすというモジョーのアイデアに賛同しつつあったのだ。彼女を諫めるロベルトだったが、ゲームのマグニートーによって瀕死に追い込まれてしまう。
ロベルトはエクストラライフで助かる。それが偶然とは思えない場所にあったことから、ジュビリーは味方がいることを確信する。ジュビリーたちを助けたのは、ゲーム開発の段階で生み出されたジュビリーのデータ版であるアブシッサだった。アブシッサは人生には退屈かもしれないが愛すべき家族や友人がいて、辛いことがあっても救われると語る。
ゲームのバグの産物であるアブシッサにとって、ゲームを壊してジュビリーたちを救うことは自分の死に繋がる。それでもかつての自分を救うため、アブシッサはモジョーに立ち向かう。ロベルトもそれに呼応して能力を発動し、最後は2人のジュビリーによる攻撃でモジョーを倒すのだった。モジョーが倒された後、スパイラルは不敵に笑い、ジュビリーとロベルトはキスをする。ロベルトは人生のリスクを取る決断をしたのだった。
もう一つのゲーム
フォージの償い
その頃、フォージのもとにいるストームは過去を懐かしんでいた。何でも修復することが出来るフォージは義手や義足は体を直したのではなく、工夫したのだと語る。そして、乗馬を通してストームに人生の向き合い方を説くのだった。
フォージは装置でストームに安全にパワーを流し込み、ミュータント能力の回復を試みる。しかし、ストームの呼びかけに天候は何も答えてはくれない。打ちひしがれるストームに寄り添うフォージ。だが、それは純粋な善意だけではなく、罪悪感もあった。
ベトナム従軍後、自身のミュータント能力で思いついた発明品を作ろうとしていたフォージは部品と引き換えに政府に協力した。そこでフォージが作ったのがミュータントを無力化する装置だったのだ。ミュータントの捕獲用の装置の基礎を作ったのはフォージであり、それをもとに政府が改良を進めていった。それがストームのミュータント能力を奪う装置へと繋がったのだ。
裏切られたと感じたストームはフォージからの告白を平手打ちで返す。その夜、ストームは怪物に襲撃される。その怪物の名前はアドバーサリー。フォージがベトナム戦争で呼び出してしまった混沌の魔人で、ネイティブアメリカンのシャイアン族に昔から恐れられていた悪魔だ。圧倒的な力を持ちながら相手を苦しめるゲームを好むアドバーサリーにストームは捕らえられてしまう。
第4話の感想とアドバーサリーとの戦いが描かれる第5話
モジョーとアドバーサリーという2つのゲームを好むヴィランとの戦いが描かれた『X-MEN‘97』第4話「モテンドー/生と死(前編)」。そこではゲームを介して人生のリスクが描かれており、ジュビリーは人生のリスクを取ることで成長する道を選んだ。その一方で、フォージは誤った選択肢を取り、ミュータントを裏切ることになってしまった。
前後編で分けられたアドバーサリーとの戦いは、ストームの人生を見つめ直すものとなることが考察できる。ストームはアドバーサリーに1人で立ち向かうのか、それともX-MENたち家族を頼るのか。それもまた人生のリスクであり、ストームのアイデンティティ問題に繋がる。第5話にも注目だ。
『X-MEN‘97』第4話「モテンドー/生と死(前編)」は2024年4月3日(水)よりDisney+で配信開始。
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