『ラブ、デス&ロボット』シーズン1全18話レビュー【解説・考察・小ネタあり】 | VG+ (バゴプラ)

『ラブ、デス&ロボット』シーズン1全18話レビュー【解説・考察・小ネタあり】

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『ラブ、デス&ロボット』シーズン1を振り返る

Netflixオリジナルの大人向けSFアニメアンソロジーとして人気を呼んだ『ラブ、デス&ロボット』シーズン1。衝撃的な映像表現とストーリーで構成された短編アニメ作品18本は話題を呼び、公開から約3ヶ月でシーズン2の制作が発表された。今回は『ラブ、デス&ロボット』が華麗なデビューを果たしたシーズン1の全話をプチ解説付きでレビュー。すでにシーズン1は何周も観たという方にも、小さな発見があるかもしれない。

ネタバレ注意

以下の内容は、アニメ『ラブ、デス&ロボット』シーズン1の内容に関するネタバレを含みます。

ソニーの切り札

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舞台はさん然と光り輝く未来都市……の外れにあるゲットーの地下闘技場。主人公のソニーは唯一の女性ファイターにして、17連勝中のトップファイターだ。ソニーはその悲痛な過去を背景に、男たちへの復讐のためにリングに上がる。
地下闘技場では、カーニヴォーと呼ばれるモンスターに憑依 (リンク) し、圧倒時な強さを見せるソニー。
だが、実はソニーの本体は既にカーニヴォーになっていた。闘技場で彼女だけが命をかけてリングに上がっていたのだ。
「死に対する恐怖」こそが「ソニーの切り札」だ。

ロボット・トリオ

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個性豊かな3体のロボットが、人類が滅びた後の街を見物する。体育館やレストラン、民家など、かつて人が生活していた場所を巡っては、人間たちの暮らしに思いを巡らせる。3体は、一匹の猫や先祖との出会いを経て、ツアーの最終地点である兵器工場にたどり着く。
各所でロボットの客観的な視点から人間の愚かさを指摘しているが、それぞれのロボット (とその声優) が個性あふれる名演技を見せ、悲観的にならない作りになっている点が「ロボット・トリオ」の特徴だ。
人間が滅びた理由が、猫が親指を使えるように遺伝子改良を施した結果だった……という設定も笑える (?)。

目撃者

主人公の女は、ホテルの一室から向かいの建物の室内で起きた殺人事件の現場を目撃してしまう。犯人に気づかれた女は職場に逃げ込むが犯人に見つかってしまい、サイバーパンクな街を舞台に逃走劇を繰り広げる。
滑らかなCG映像に、サブリミナル的にアニメーションが入り混じる全く新しい映像体験を提供してくれる作品だ。

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物語自体も、SFでは定番の“ループもの”でありながら、「ループから抜け出せない恐怖」や「次に殺されるのは主人公」ということを視聴者だけが認識できる、ゾッとする作りになっている。誰も救われる余地がないのだ。

スーツ

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主人公はアメリカの古き良き農場主たち。普通の農場主たちと一味違う点は、エイリアンの襲来に備えて、戦闘ロボットを準備しているということだ。
豪快なハンクとメカオタクのジェイク、彼らをサポートするそれぞれの妻・ベスとヘレン、葉巻をくわえた勝気な女性・メル……とステレオタイプなキャラクター設定とは裏腹に、迫り来るエイリアンの大群と戦闘用ロボットとのスリリングな戦いが繰り広げられる。
クライマックスで明かされる衝撃の事実は、ステレオタイプなキャラクター像にも見えた農場主たちの健気さに気付かせてくれる。

魂をむさぼる魔物

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“魂をむさぼる魔物”の墓に潜入した研究者と護衛兵の一団。そこに本物の魔物が現れ、研究者の助手・サイモンは殺されてしまう。逃げ惑う一団の最終兵器は……なんと猫。魔物は猫を食べると皮膚が焼けてしまうのだ。
遺跡を舞台にしたスリラー作品でありながら、実は「ロボット・トリオ」に続く猫推し作品だ。「ロボット・トリオ」では人類は猫の手で滅ぼされたという描写があったが、「魂をむさぼる魔物」では、猫は人間側の救世主に。やはり人類の命運を握っているのは、猫のようだ。

ヨーグルトの世界征服

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研究者が最も進化したDNAをデルブリュック乳酸桿菌に移植。実験は失敗に終わったが、研究者がヨーグルトの容器に入れて持ち帰り、冷蔵庫に保管した (『猿の惑星: 創世記』(2011) のオマージュ) ことで、知性を持ったヨーグルトが誕生した。
進化し続けるヨーグルトは国家の最高権力の地位につき、人類に健康で豊かな社会をもたらすが、いつか人間が虚栄心からヨーグルトに逆らい始めることを察知した彼らは、ヨーグルトの容器型のロケットに乗って別の惑星を目指す。
作中、アメリカが抱える問題を解決する報酬として、ヨーグルトはオハイオ州を手に入れるのだが、SNS上でオハイオをネタにする投稿も相次いだ。
また、Twitter上では “@Yogurt2020” を名乗る公式マーク付きのアカウントも登場している。2020年はアメリカで大統領選が実施されるが、果たして……?

 

わし座領域のかなた

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ここでようやく宇宙SFの登場だ。大きく航路を外れた宇宙船。目を覚ました乗組員のトムは、かつての恋人グレタと再開し、本来の航路から遠く離れた“わし座領域のかなた”にいることを告げられる。
トムは再びグレタと愛し合うが、この世界がシミュレーションであることを知らされる。トムは現実を見せるよう偽物のグレタに迫り、荒廃した惑星で自分が命からがら生きていることを知る。
トムとグレタのラブシーンで流れる曲はMatthew Perryman Jonesの「Living in the shadows」。オチが明らかになった後も同曲が流れている。「私は決して沈黙を破らない」「探しても見つからない」「影の中で生きている」というこの曲の歌詞は、グレタ側の心理を描いたものだったのだ。

グッド・ハンティング

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全18作品の中でも特に注目度が高かった「グッド・ハンティング」は、SF作家ケン・リュウの短編小説「良い狩りを」のアニメ化作品だ。
1870〜90年代の香港を舞台に、妖怪退治屋の息子・リアンと妖狐の子・ヤンの物語が描かれる。ストーリーのテーマとなった“進化”がどのように描かれたかという点は、以下の記事を参照していただきたい。

アニメ版で注目すべきは、ラストの1分間。ヤンが手に入れた力を活用してヴィジランテとして活動する描写は、アニメオリジナルの展開だ。

ゴミ捨て場

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市の検査官は隣にマンションが建つゴミ捨て場の主・デイヴに、立ち退きを迫る。そんな検査官に、デイヴはゴミ捨て場のモンスター・オットーとの出会いの物語を話し始める。
この話を全く信じない検査官は、遅れて登場したオットーに食われてしまう。デイヴはこのモンスターをペットのように飼っていたのだ。
全ては、この検査官がデイヴの話をまともに聞こうとしなかったこと、冒頭でさりげなく登場していた「デイヴとオットーのオフィス」「猛犬 注意」と書かれた看板を気にも留めなかったことが災いの原因だ。

シェイプ・シフター

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シェイプ・シフターは”変化する妖怪”を意味する。この物語のシェイプ・シフターは人狼だ。
圧倒的なパワーと骨が折れてもすぐに治癒してしまう強靭な肉体、匂いを嗅ぎ分ける鼻、暗闇でも不自由のない眼、どの能力においても人間より優れている人狼は、アフガニスタンの戦場で闘う。
人の皮を破り表れる獣の肉体、牙と鉤爪を巧みに扱い、敵の肉体を引き裂き顎で骨を砕く。
とにかく血みどろで迫力のあるバトルシーンが圧巻の作品だ。

救いの手

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宇宙空間をさまよう1本の小さなネジが、人の生死を左右する。
ネジとの衝突で、宇宙に放り投げられた宇宙作業員のアレックスに残されたタイムリミットはわずか14分。
幸運なことに通信機器はつながっていた。しかし、救助隊が到着するまでにかかる時間は58分。
アレックスは、どうにか宇宙船まで戻ろうとするが、万策尽きてしまう。
そして最後に、アレックスが自ら”救いの手”を差し伸べるシーンはとても残酷だがクリエイティブだ。
ハラハラ、ドキドキする展開をわずか10分という尺に収めた素晴らしい作品だ。

フィッシュ・ナイト

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このエピソードは、原作とは異なる結末を迎えている。
原作では、太古の海へと飛び込むのは若い男ではないく、老いた男だ。
また、アニメでは細かくは描かれていないが、海と融合するには条件がある。
原作では老いた男は、文明的(人口的)なシャツやスラックスを脱ぎ、入れ歯を取り外すした後に、純粋な心を持って海へ飛び込む。若い男は、海に飛び込んだ老いた男を現実の世界に戻そうとするが、若い男の背中には事故の代償で背中に金属が埋め込まれているため、海へ飛び込めず、何もできずに時が過ぎ去ってしまう。
肉体的にも精神的にも純粋な人間のみが太古の海に行けるのだ。

ラッキー・サーティーン

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”ラッキー(幸運)”と”13(忌み数)”は意味の反する単語だ。
航空団の新入りコルビーは幸か不幸か、曰くつきの戦闘機ラッキー・サーティーンのパイロットに任命される。
若干の不安を抱えながらも、コルビーはあらゆる任務をこなしていく。
そして、どんな困難な状況に陥っても、決して仲間を見捨てず、最良の選択をする。その結果、曰く付きの機体は、幸運の機体へと変わる。
物事が良い方向に転ぶのか、悪い方に転ぶのかは、自分の選択次第で決まるのだ。
余談だが、「ラッキー・サーティーン」は『ラブ、デス&ロボット』13番目のエピソードだ。

ジーマ・ブルー

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富や栄誉そして永遠の命を手に入れた偉大な芸術家ジーマは、地球での芸術活動に飽きてしまい宇宙に目を向ける。
しかし、それでも満足のいく芸術を生み出せないジーマは、”ジーマ・ブルー”と称される独特な青色に取り憑かれる。
100年以上の月日が流れ、彼はある悟りに達する。
自分のあるべき姿について……ジーマは、自分が何モノであったかを記者のカーラに語る。
肉体と精神の両方を最後の作品に解き放ったジーマは、自分のあるべき姿に還る。

ブラインド・スポット

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この作品は、メンバーに指令を出す”忘れっぽい”ボブの存在が物語を面白くしている。
改めてボブの物忘れをおさらいしておこう。

  1. 敵車両の屋根に機動小銃があること
  2. 敵車両に大型のロボット兵器が積まれていること (もしくは、リサーチ不足か?)。
  3. 仲間は脳のバックアップを取っていること (もしくは、契約書を読まされていない)。

中でも「3.」のシーンは色々と想像が膨らむ。
ルーキーのリアクションから察するに、自分の脳のバックアップを取られていないか、契約書を読まされていない可能性が高いのでは?と思ってしまう。

氷河時代

冷凍庫の寒さで、氷河期を迎えることになった冷蔵庫の世界は、とてつもないスピードで文明が進む。原始から中世、そして現代。
そのスピードに関心しているのもつかの間、冷蔵庫の中に核兵器が投下される。
悲惨な惨状に目を当てれなくなったボブたちは、冷蔵庫をそっと閉じる。
しばらく経ってから冷蔵庫を開けてみると、そこはブレードランナー的な近未来都市が建設されていた。しかし、一瞬にしてその都市は消滅してしまう。
現実に生きる私たちの文明では、どのような未来が待っているのだろうか。

歴史改変

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ヒトラーがタイムパラドックスで死んだ後のエラー画面が面白い。
そのメッセージを全文翻訳したので、紹介しよう。

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おっと、やってしまいましたね。あなたは、このクソPCを壊してしまいました。多分、大した操作はしていないでしょう。この恐ろしい”死の青画面”をみてください。私は特に理由もなく、気まぐれに出現します。
今、あなたは焦っていることでしょう。そうですね? 私は、そのザマが大好きです。そこで提案ですが、私はあなたを手助けするオブションを2つ用意しました。どちらもうまくいきませんが、どうぞお試しください。

  • CTRL + ALT + DELキーを押します。
    これで私が再起動します。しかし、これまでのデータはすべて消去されます。
    残念だけど、もし奇妙なGIFをダウンロードしようとしているなら (してますよね)、これは悪い選択ではないと思います。この変態野郎。
  • CTRL + ALT + DELキーを押さない場合は、街のすべてのPC修理屋さんに電話をかけてください。全員ですよ。やらせてみましょう。大丈夫です。待ちます。私はどこにも行きません。私はいつもここにいーまーすーよー。

秘密戦争

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ロシア内戦で赤軍を撃つための兵器として、悪魔”グリシオン”は召喚される。悪魔は村を襲い、無差別に人を喰らい尽くす。
時は流れ、舞台は第二次世界大戦中のロシア・シベリア。悪魔が蔓延した雪原の土地で、もう一つの戦争が行われていた。シベリアに派遣された部隊の任務はただ一つ、悪魔を全て葬り去ること。そして、彼らは悪魔の巣窟にたどり着き、悪魔との無謀な死闘を交える。
史実と並行して“if”を描くこの作品は、なんともSFらしいストーリーだ。

何周しても面白い『ラブ、デス&ロボット』

以上が『ラブ、デス&ロボット』シーズン1で公開された全話のレビューだ。意外な小ネタもあったのではないだろうか。短編アニメながら、見れば見るほど味が出る、そんなアニメシリーズが『ラブ、デス&ロボット』なのだ。
『ラブ、デス&ロボット』はNetlixで独占配信中。

『ラブ、デス&ロボット』(Netflix)

Source
Yogurt Twitter / Netflix

VG+編集部

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