ネタバレ解説『名探偵コナン 黒鉄の魚影』ラストの意味は? 犯人&トリック、灰原哀と黒の組織のアレを考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『名探偵コナン 黒鉄の魚影』ラストの意味は? 犯人&トリック、灰原哀と黒の組織のアレを考察

©2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』公開

人気アニメ『名探偵コナン』(1996-)の劇場版第26作目となる映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』は2023年4月14日(金)に劇場で公開された作品。本作では東京の八丈島に建設された海洋施設パシフィック・ブイが舞台になり、灰原哀と黒の組織がフィーチャーされるストーリーとなっている。

EUの警察機構であるユーロポール(欧州刑事警察機構)が管轄するパシフィック・ブイで起きた事件は、一体どんな結末を迎えたのか。そして、コナンや灰原哀と黒の組織の関係はどうなったのか。映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』のラストを解説&考察していこう。

ここから先は結末に関する重大なネタバレを含むので、必ず本編を観てから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の結末に関する重大なネタバレを含みます。

映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』ラストの意味は?

今回はSFトリック

薬で身体が小さくなり、博士の発明品を駆使して戦うなど、ミステリだけでなくSFシリーズとしての顔も持つ『名探偵コナン』。今回は最新鋭の海洋施設を舞台にしていたこともあり、特にSF色の強い展開になっていた。

パシフィック・ブイは日本とヨーロッパ中の公安とユーロポールが管理する防犯カメラの映像を集約した施設。アメリカ育ちのエンジニア・直美アルジェントが開発した老若認証システムは、骨格をもとに様々な年齢のバージョンの顔を割り出すことができ、誘拐被害者や逃亡犯を探すことに活用しようとしていた。

黒の組織は、そのシステムを改ざんして過去の記録から自分たちの存在を消すことを目的としていた。そのため、開発者の直美アルジェントを誘拐したのだが、老若認証によってシェリーが若返って生きている可能性を知ったジンは、老若認証がシェリーと同一人物だと判断した灰原哀の誘拐を独断で指示する。

ピンガのトリックがバレた理由

黒の組織のウォッカとピンガはその指示に従って灰原哀を誘拐するのだが、これによって計画が狂い始める。灰原哀をさらった際にピンガは蘭姉ちゃんとの闘いで首にアザが残り、更に車で逃亡する様子が防犯カメラに映ってしまったため、この映像を改ざんせざるを得なかった。

グレースに変装していたピンガは、ドイツ出身のレオンハルトからグレースがメインルームにいた時間帯に防犯カメラの映像が改ざんされていることに気づかれ、レオンハルトを殺害。自殺に見せかけるためにカフェテリアに遺体を運び、カフェテリアの防犯映像も改ざんするという暴挙に出る。

ピンガはドイツのフランクフルトでインターポールに侵入した際にもその姿を見られており、意外とドジなところがある。ピンガが変装していたグレースはルージュ(口紅)をしているためコーヒーを飲む際に、飲み口についたルージュを指で拭き取る仕草を見せていたのだが、防犯カメラの映像に映った自殺する直前のレオンハルトもルージュをしていないはずなのにコーヒーカップの飲み口を拭き取る仕草を見せていた。

また、コナンがコーヒーの数を告げた際に、親指と人差し指を立てて「2」の数を示したのだが、グレースはそれを「1」だと勘違いしていた。フランスやドイツでは親指から順番に指を上げて数えていくので、少なくともグレースがフランス出身ではないことをコナンはここで見抜いていた。

そうしてコナンはレオンハルトの自殺時の映像がディープフェイクで作られていることを見抜くと、“眠りの小五郎”で、このディープフェイクが老若認証の顔のモデルを生成する技術を流用したものだと種明かしをしていく。そして、グレースがスカーフで隠していた首元に蘭から付けられたアザがあることが分かり、ピンガが職員としてパシフィック・ブイに潜入していたことが明らかになる(なお、グレースには喉仏があることも指摘されているが、喉仏があるかどうか等、身体的な特徴だけでは性別は判別できないのでご注意を)。

ピンガ/グレースは眠らせたレオンハルトをカフェテリアに運び毒殺した。毒物の匂いを消すためにコーヒーを撒き、遺体の位置に合わせて自ら薬物を飲む芝居をすると、ディープフェイク技術で映像を改竄してレオンハルトが自殺したように見せかけたということだ。

ここまでが今回のトリックの種明かしなのだが、『名探偵コナン』として重要なのはここからの展開だ。

ベルモット、あのお方、黒の組織の狙い

ベルモットの“火消し”

コナンは、逃げ出したピンガが防犯カメラを反転させて逃げたことを見抜き追いつくが、なんとピンガはコナンが工藤新一であることを見抜いていた。コナンを怪しんだピンガは老若認証でコナンを調べ、工藤新一とコナンの顔認証が一致することを突き止めていたのだ。

コナンの正体ももちろんだが、黒の組織のメンバーは、ベルモットを除いて身体が縮む薬の存在も知らないと思われる。老若認証は年齢の壁を超えていく次世代の顔認証システムということだが、このシステムによって窮地に立たされたのがコナンと灰原哀だった。ジンは二人が死んだと思っていたが、このシステムの登場によりシェリーが灰原哀として生きている可能性に行き当たった。

だが、このシリーズ最大とも言える二人の危機を救ったのはベルモットだった。変装の天才であるベルモットは各地でシェリーの変装をして防犯カメラに映り込み、老若認証が似た人物を同一人物だと誤認してしまう欠陥システムであるとレッテルを貼った。ジンはその嘘を信じ込み、結果的に二人の幼児化の可能性というのは一旦取り消されることになる。

ベルモットはなぜそんなことをしたのだろうか。ベルモットはかつて「工藤新一NYの事件」で新一に命を救われており、それからベルモットは黒の組織でシェリーの命を狙いながらもコナンの味方をしている。また、新一の母・有希子の旧友であることから、子ども時代の新一の姿がコナンと一致することを知っている可能性が高い、というのがファンの間でのセオリーである。

ベルモットは薬の開発者であるシェリー=灰原哀のことは危険視しており、「漆黒の特急」でもシェリー殺害を企んだが、あくまでもシェリーを大人の姿で誘き出すことにこだわっていた。若返りの薬については黒の組織のメンバーに悟られてはいけないと考えているのだ。それは同じく幼児化したコナンの存在を組織に悟られないためということもあるだろうが、別の事情がある可能性も残されている。

「あのお方」の正体

それは、黒の組織のナンバー2であるラムと安室の会話シーンからも読み取れる。老若認証システムに欠陥があることが分かり、ラムは公安から黒の組織に潜入しているバーボンこと安室透に潜水艦の魚雷でパシフィック・ブイを沈めるよう指示を出す。ラムは心の中で「あのお方」の場所を突き止めるのに使えると思ったのにと悔やんでいる。

「あのお方」こと黒の組織のボスは、烏丸蓮耶という名前の大富豪で、『黒鉄の魚影』ではそのシルエットも登場した。半世紀前に99歳で死んだとされていたが、40年前には100歳を超えているともされている。

生きていれば相当な高齢であり、ラムは老若認証システムを使って過去の画像から現在の居場所を突き止めようとしたのだろう。だが、流石に生きているとしても140歳を超えているはずで、若返りの薬(APTX4869)を服用して生き続けている可能性がある。もしかするとベルモットはその秘密を知っており、APTX4869の存在を組織の他のメンバーに知られないようにしているのかもしれない。

安室と赤井、そして灰原哀

安室透×赤井秀一

そして、さらなる胸熱展開が公安警察の安室透と因縁関係にあるFBI捜査官の赤井秀一、そして名探偵コナンの共同作戦だ。黒の組織は魚雷を放って今回の事件をもみ消すことになる。

今回の映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』というタイトルだが、「黒鉄の魚影」というサブタイトルの意味はパシフィック・ブイのことを指しているのではなく、黒の組織が保有していた潜水艦のことを指していたようだ。加えて、漢字が「魚影」であることから、その潜水艦がパシフィック・ブイを沈めようと放った魚雷のことも指しているはずだ。

黒の組織のバーボンとしてウォッカへの伝令を受けた安室は、その情報をコナンへ流して避難を促す。するとコナンは安室の通話と赤井の通話を繋いで協力体制を築き上げる。二人はこの緊急事態に協力することを決定。FBIである赤井が対潜兵器を使うことを黙認するのだった。もちろん現実には他国の領海でそんなことをしてはいけないのだが、一刻の猶予を争う場面だし、せっかくの安室と赤井が協力する機会なので仕方あるまい。

パシフィック・ブイには、魚雷を誘導して目標から引き離すデコイが搭載されており、最初は魚雷を逸らすことに成功するが、これを邪魔したのはベルモットだった。ベルモットはあくまでも組織の人間ということもあるが、有用だった老若認証システムを消し去りたいという思いもあったのだろう。ハッキングでデコイの発射口を閉じると、魚雷は命中してパシフィック・ブイは破壊されてしまうのだった。

このクライマックスのシーンでは、黒の組織のジンが直接現場で指揮をとる姿を見ることができる。コナン、赤井、ジンが現場で動き、安室とベルモットが遠隔から協力する形になっており、名探偵&FBI&公安チームと黒の組織の戦いが繰り広げられている。

一方、赤井がヘリの上から潜水艦を攻撃するためには、潜水艦の位置を知る必要があった。コナンは海中から映画シリーズではお馴染みの花火ボールを発動させると、海底からの光で潜水艦の影を浮かび上がらせて見せる。ここに赤井がグレネードランチャーを撃ち込んで勝負ありとなる。

ジンとウォッカらは潜水艦から脱出するが、潜水艦の方は自爆装置を起動しており、そこで合流するはずだったピンガは爆発に巻き込まれてしまう。ピンガは工藤新一=江戸川コナンという可能性を黒の組織に持ち帰ろうとしていたが、ジンは自分を蹴落とそうとしてたピンガをこの機会に始末してしまおうと考えたのだろう。コナン自身は自分の正体を知られているという心配からは一旦解放されることになった。

このシーンでキールはピンガに爆破のことを伝えたのかとジンに聞き、ジンは「さぁ、どうだったかな」と曖昧な返事をしている。これは、「漆黒の特急」/『名探偵コナン 灰原哀物語~黒鉄のミステリートレイン~』で駅のホームに爆弾を仕掛けたことをベルモットとバーボンに伝えたのかとウォッカに聞かれた時の態度と同じだ。隙あらば仲間もろとも始末してしまおうとするのがジンという人物である。

灰原哀の思いと14番目の標的

この作戦の中で、コナンは海底で意識を失ってしまうが、それを助けたのは灰原哀だった。灰原哀は人工呼吸で酸素を送り込んでコナンの意識を復活させるが、自分の正体が漏れたと思っているため、ここで死を選ぼうとする。しかし、目を覚ましたコナンは灰原哀をいつもの「余裕の表情」で勇気づけると、共に海面へ上昇していくのだった。

この人工呼吸シーンは、映画第2弾の『名探偵コナン 14番目の標的』(1998) のワンシーンを彷彿とさせる。水中で意識を失ったコナンに蘭が口付けをして空気を送ってコナン意識を取り戻すのだ。これは灰原哀登場前のエピソードなのだが、今回の哀は「キスをしてしまった」ということに非常にナーバスになっている。

二人は海上に出るが、次に襲ってきたのは潜水艦の爆発で起きた波だった。コナンはこの波をいつものシュートで割ってみせ、二人に降りかかるのを防いでいる。なお、サッカーボールは先ほど使ったので、ここでは飛んできたブイのようなものを蹴っている。

灰原哀は助けに来た蘭姉ちゃんにおもむろにキスをする。「唇を返した」のだそうだ。ファンにとっては『14番目の標的』を連想させるセリフである。だが蘭もコナンも何がなんだか分からない(性別・年齢に関わらず、必要のない場面で合意なくキスをするのはハラスメントなので気をつけよう)。一方で、灰原哀がコナンに対して非常に複雑な思いを抱いていることが分かる展開だった。

エンドロールとポストクレジットシーンは?

エンドロールでは、直美の父が黒の組織から狙撃されながらも一命を取り留め、意識が回復したことが報じられている。冒頭のフランクフルトでの死者を除けば、パシフィック・ブイ事件における死者はレオンハルトとピンガの二人ということになる。

エンドロールの途中には、直美が新たな国へ旅立つシーンも。小さい頃の恩人だった灰原哀に感謝を述べた直美は、灰原哀=宮野志保ということを確信している様子だった。また、コナンは安室からベルモットがシェリーの変装をして老若認証について組織を欺いたこと、ピンガが消息不明になったことを聞いている。コナンも灰原哀も組織に正体が知られたと思っていたが、安室のおかげで組織の認識がリセットされたことを知ったのだ。

コナンは、ベルモットが老若認証を葬った理由には心当たりがないようだったが、冒頭で灰原哀が整理券を譲ったおばあさんの正体がベルモットだったことが明らかになる。ベルモットはコナンになぜコナンを助けるのかを突き止めてほしそうだった。最後にベルモットがつけているイチョウのアクセサリーが映って本編は幕を閉じる。

このイチョウについては、過去の人気エピソード「イチョウ色の初恋」の内容を含めてこちらの記事で考察している。

なお、この後、劇場版では映画『名探偵コナン』第27弾の予告が入っていた。服部平次の「許さへんで」、怪盗キッドの「なんで?」、そしてコナンの「キスじゃね?」というやり取りが入り、ハートのAが半分に切れられるというものだ。映画第27弾は、現在劇場公開中の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』だ。

コナンと灰原哀、そして黒の組織をめぐる攻防には大きな前進があった『名探偵コナン 黒鉄の魚影』。ここからどんな展開が待っているのか、漫画とアニメシリーズも見逃さずに追っていこう。

『黒鉄の魚影』と同時期に発売された漫画『名探偵コナン』103巻では、灰原哀を巡り、沖矢と若狭とコナンが対峙。キッドvs安室も描かれる。

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