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『天空の城 ラピュタ』の声優陣に注目
1986年に公開されたジブリ映画『天空の城 ラピュタ』。宮崎駿監督が指揮した本作は、意外にもスタジオジブリ最初の作品でもある(『風の谷のナウシカ』(1984) はトップクラフト制作)。久石譲が音楽を手がけ、高畑勲が製作として加わった本作は、声優陣も豪華だ。
ジブリ映画といえば、俳優を起用した声優陣が特徴の一つでもあるが、『天空の城 ラピュタ』の時期のジブリはまだ本業の声優がメインで起用されていた。30数年以上前にジブリ作品に参加していた声優には意外な名前も見られる。今回は『天空の城 ラピュタ』で声優を務めたキャストを紹介していこう。
『天空の城 ラピュタ』の声優キャストまとめ
パズー役 田中真弓
主人公パズーの声を担当した声優は田中真弓。現在ではアニメ『ONE PIECE』(1999-) の主人公ルフィ役などで知られる大声優だが、『天空の城 ラピュタ』が公開された1986年にはアニメ『ドラゴンボール』(1986-1989) でクリリン役を演じている。その前には『うる星やつら』(1981-1986) で藤波竜之介役を演じるなど、活躍を続けてきた。
『おそ松くん』(1988-1989) のチビ太役、『南国少年パプワくん』(1992-1993) でパプワくん役、『幽☆遊☆白書』(1992-1995) でコエンマ役、『忍たま乱太郎』(1994-) で摂津のきり丸役など、代表作は枚挙にいとまがない上、多くの国民的人気アニメキャラクターの声優を務めている。なお、田中真弓がジブリ作品に声優として出演したのは『天空の城 ラピュタ』のみである。
2022年8月には「ONE PIECE」映画最新作『ONE PIECE FILM RED』が公開され、いつも通り主人公モンキー・D・ルフィの声優を務めた。Netflix制作の実写版『ONEPICE』(2023-)でもモンキー・D・ルフィの吹替声優も務めており、ルフィと言えば実写やアニメ問わず田中真弓だと言っても過言ではない。
シータ役 よこざわけい子(横沢啓子)
シータ役の声を担当した声優は、よこざわけい子(『ラピュタ』公開時の表記は横沢啓子)。アニメ『若草のシャルロット』(1977-1978) のシャルロット役、『はいからさんが通る』(1978-1979) の花村紅緒役で主演、『ドラえもん』第1期 (1979-2005) のドラミ役で知られる。
『天空の城 ラピュタ』公開の翌年には『エスパー魔美』(1987-1989) の佐倉魔美役で主演声優を務め、原作者の藤子・F・不二雄から「健康的で良い」と声や演技を称賛されたという。よこざわけい子は藤子・F・不二雄作品に出演することが出演することが自身にとっての目標の1つだったと語っており、楽しく演じられたと語っている。
また、『天空の城 ラピュタ』については、宮崎駿作品に出演できたことは現在でも財産になっていることと語っている。2005年に『ドラえもん』の声優陣がリニューアルされた後は出演を減らしているが、2018年に公開された映画『劇場版 はいからさんが通る 後編 〜花の東京大ロマン〜』では終幕のナレーションを務めている。
ムスカ役 寺田農
「見ろ。人がゴミのようだ」や「3分間待ってやる」という台詞でお馴染みのムスカの声を担当したのは寺田農。俳優として活躍しており、岡本喜八監督の『肉弾』(1968) で毎日映画コンクール男優主演賞を受賞した。大河ドラマ『徳川家康』(1983)では明智光秀役を演じていた。『仮面ライダーW』(2009-2010) では風都の大物・園咲琉兵衛/テラードーパントを演じ、劇場版にも出演している。他にも特撮作品に出演しており、複数の「ウルトラマン」シリーズに出演している。
寺田農がアニメ作品で声優を務めたのは『天空の城 ラピュタ』が初めて。その後もアニメ作品に声優としてはOVA『ワイルド7』(1994)など数作しか出演していなかったが、2024年4月12日に公開されたアニメ映画『クラメルカガリ』では朽縄役で声優出演をしている。しかし、同年3月14日、肺がんのため惜しまれながらも逝去した。享年81歳だった。
なお、英語版のムスカの吹き替え声優は、「スター・ウォーズ」シリーズのルーク・スカイウォーカー役で知られるマーク・ハミルが担当している。マーク・ハミルはアニメ作品の声優を務めることも多く、「バットマン」シリーズではジョーカー役を演じることもあった。
ドーラ役 初井言榮
海賊のドーラ役の声を担当したのは初井言榮。1929年生まれで、1990年に61歳で逝去している。劇団俳優として活動し、青年座第69回公演『謀殺〜二上山鎮魂〜』で第33回文化庁芸術祭賞演劇部門優秀賞を受賞、「新劇界の三大婆さん(役)女優」と呼ばれ親しまれた。映画やドラマでは「姑役女優」と呼ばれて広く知られ、声優としては映画『ティファニーで朝食を』(1961) の吹き替え声優などを務めている。アニメ声優としては『ラピュタ』以外では手塚治虫作品『クレオパトラ』(1970)でアポロドリア役を演じた。
冷徹で手厳しい祖母役などで有名だった初井言榮だったが、プライベートでは正反対の性格であり、温厚で気遣いをする大変優しい人物だったという。青年座では演出や後進の指導にあたり、付き人を務めた俳優の中には「ONE PIECE」シリーズで音楽家ブルックを演じているチョーがいる。
ポムじいさん役 常田富士男
ポムじいさんの声を担当した声優は常田富士男。1937年生まれ、2018年に逝去。俳優としてノンクレジットだが黒澤明監督の『天国と地獄』(1963) に出演。大河ドラマ『源義経』(1966)では喜三太役を演じた。『まんが日本昔ばなし』(1975-1994)では市原悦子と共に二人で全てのキャラクターの声を担当した声優でもある。
1986年に第4回日本アニメ大賞声優部門特別演技賞を受賞し、1995年には第30回モービル児童文化賞を受賞するなど、声優としてアニメ業界に大きく貢献した。また、市川崑監督に重用された俳優としても知られ、市川崑監督作品十数本以上に出演している。
モウロ将軍役 永井一郎
モウロ将軍の声優は永井一郎。『サザエさん』(1969-)の磯波平、『ドラゴンボール』の鶴仙人、「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの佐渡酒造といった数々のキャラクターの声で知られる名声優だ。吹き替えでも「スター・ウォーズ」シリーズのヨーダ、「ハリー・ポッター」シリーズのダンブルドア校長の声などを務めていた。
宮崎駿監督作品ではアニメ『未来少年コナン』でダイス船長役、『風の谷のナウシカ』でミト役を演じている。壮年のキャラクターを演じることが多く、その重厚な声で主役以上の存在感を発揮することもあった。アニメ創世期を支えた声優であるとともに後輩想いな性格で、場を和ませることも多く、舞台では撤収作業を手伝っていた。
2014年に82歳で逝去し、多くの人気キャラクターが後輩の声優達に引き継がれている。代表作の『サザエさん』の磯野波平の声優は茶風林、「スターウォーズ」シリーズのヨーダは多田野曜平が引き継いでいる。
シャルル役 神山卓三
シャルル役の声を演じた声優は神山卓三。『未来少年コナン』ではドンゴロス役、テレビ朝日版の『怪物くん』(1980-1982) でオオカミ男役、『チキチキマシン猛レース』(1970) でケンケン役を演じてきた。コメディリリーフなを得意としており、特撮作品ではコミカルな怪人を演じることが多かった。ラジオドラマ『宮崎駿の雑想ノート』(1995-1996) では語り部を担当。
2004年に72歳で惜しまれながら逝去した。神山卓三が演じてきたキャラクターは後輩声優に引き継がれ、『怪物くん』のオオカミ男は緒方賢一、『チキチキマシン猛レース』のケンケンは上田燿司が演じることになった。
ルイ役 安原義人
ルイ役の声を担当した声優は安原義人。『宇宙戦艦ヤマト』(1974-1975)の太田健二郎役、『ドカベン』(1976-1979) の微笑三太郎役などで知られる。俳優として刑事ドラマを中心に出演を続けた後、『天空の城 ラピュタ』への出演の翌年に、ドラマ『ジャングル』(1987) と『NEWジャングル』(1988) に明石亀男役でレギュラー出演。
声優としては『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(1996-1998) で四乃森蒼紫役を演じるなど活躍を続けている。元ジブリの安藤雅司が宮地昌幸と共同監督を務めたアニメ映画『鹿の王 ユナと約束の旅』(2022) ではトゥーリム役で出演している。吹き替えではゲイリー・オールドマンやカート・ラッセル、ケヴィン・ベーコンらを担当している。
飄々としたキャラクターを演じることを得意としているが、安原義人本人は来るもの拒まずという姿勢でいるという。その一方で、好青年などの二枚目よりは癖のある役が好みとのことだ。
アンリ役 亀山助清
アンリ役の声優は亀山助清。『特装機兵ドルバック』(1983-1984)でピエール・ボナパルトなどを演じ、『天空の城 ラピュタ』で劇場アニメ初声優を務める。2003年からは「くまのプーさん」シリーズでプーさんの3代目声優を務めた。2013年に病気のため58歳で逝去している。
その後、亀山助清が演じた人気キャラクターは後輩たちに引き継がれ、「くまのプーさん」シリーズのプーさん役はかぬか光明が、「モンスターズ・インク」シリーズのニードルマンはチョーが引き継いでおり、亀山助清の後を継いだ声優たちの声は東京ディズニーリゾートで聞くことが出来る。
マッジ役 TARAKO
ダッフィー夫妻の娘、マッジを演じた声優はTARAKO。『うる星やつら』の端役でデビュー。『風の谷のナウシカ』で少年B役、『ラピュタ』でマッジ役を演じ、『となりのトトロ』(1988)でも端役で出演している。その2年後より、『ちびまる子ちゃん』(1990-) で40年以上にわたって主人公まる子の声を務めることになる。
その他にも、『まじかる☆タルるートくん』(1990-1992) のタルるート、『探偵少年カゲマン』(2001-2002) のカゲマン/影万太郎、『甲虫王者ムシキング 森の民の伝説』(2005-2006) のチビキング、『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-』(2016) のモノクマなど、様々なキャラクターの声優を務めていた。声優だけではなく、シンガーソングライターとしても活動していた。
2024年3月4日、63歳という若さで逝去した。代表作である『ちびまる子ちゃん』のまる子は菊池こころに引き継がれた。その一方でまる子が登場するCMを放送しているミツウロコとケーズデンキは音声の差し替えなどはせず、追悼の意を込めてTARAKOのライブラリ音声をそのまま使用しているなど、多くの人の心を掴んだ声優であった。
ダッフィー親方役 糸博
親方ことダッフィーの声を担当した声優は糸博。テレビ草創期より俳優として活動しており、吹き替え声優としてジョン・ウェイン、ブライアン・コックス、マイケル・ケインらを担当している。『ラピュタ』が劇場アニメ初出演作品となっている。ゲーム『バイオハザード0 HDリマスター』(2016) では、アンブレラ社創設者の一人のジェームス・マーカスを演じている。
また、ドキュメンタリー番組ではミハイル・ゴルバチョフのインタビューの吹き替えを担当することが多かった。声優活動には熱心に取り組んでおり、90歳を越えてもボイスオーバーや吹き替え声優として活動している。
おかみ役 鷲尾真知子
おかみ役の声優は鷲尾真知子。大河ドラマや「金八先生」シリーズなど、数々のドラマに出演する一方、声優としてはアニメ『うる星やつら』のサクラ役が当たり役に。劇場アニメでは「うる星やつら」シリーズに続いて『天空の城 ラピュタ』に出演し、『となりのトトロ』でも学校の先生役で出演している。
2010年代からは舞台俳優としても活躍を見せている。『大奥』(2003-2019)では「大奥スリーアミーゴス」と呼ばれる三人組の一人、葛岡が好評で、「大奥」シリーズすべてに出演している。
老技師(ハラ・モトロ)役 槐柳二
ベテラン機関士のハラ・モトロの声優は槐柳二。1928年生まれ、2017年に89歳で逝去している。若手の頃から老人役を演じることが多く、『赤毛のアン』(1979)でアンを引き取ったマシュウ・カスバート、「ライオンキング」シリーズではヒヒのラフィキを演じている。
かつてはテアトル・エコー附属養成所の所長であり、コント赤信号、中村有志、野沢直子、ダチョウ倶楽部の上島竜兵と寺門ジモンといった名だたるコメディアンを育て上げた。また、晩年は朗読劇を中心に活動していた。
なお、『天空の城 ラピュタ』では他にも大塚芳忠が特務機関員の黒眼鏡と兵士の声を担当している。大塚芳忠はデビュー当時、声質がルイ役の安原義人に似ているとよく言われることがあったと語っている。
映画『天空の城 ラピュタ』はBlu-rayとサントラが発売中。
主題歌「君をのせて」は配信中。
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