有名SF作家が『ブラックパンサー』で描きたかったもの
『ブラックパンサー』を手がけたSF作家とは?
2018年に公開され、米国内興行収入年間ランキング第一位の大ヒットを記録した映画『ブラックパンサー』。同年に発売されたコミックを、SF作家が手がけていたことをご存知だろうか。2018年に刊行された『ブラックパンサー: ロング・リブ・ザ・キング (原題: Black Panther: Long Live the King)』を手がけたのは、小説『ビンティ (原題: Binti)』(2015)でヒューゴー賞とネビュラ賞のダブルクラウンを達成したンネディ・オコラファーだ。
独創的な世界観を創り出すンネディ・オコラファー
ナイジェリア系アメリカ人二世のンネディ・オコラファーは、アフリカのカルチャーとSF的要素を融合させることで、独創的な物語を創り上げている。いわゆる“マイノリティSF”を主戦場としているのだ。そんな彼女が、オーバーグラウンドで“マイノリティSF”をブレイクさせた『ブラックパンサー』の原作を手がけることは、当然の流れと言えるかもしれない。だが、オコラファー自身は、どのような想いで『ブラックパンサー: ロング・リブ・ザ・キング』のライターを引き受けたのだろうか。
『ブラックパンサー』で描きたかったこと
アメリカはイリノイ州の地方紙、「Homewood-Flossmoor Chronicle」は、米時間の20日、ンネディ・オコラファーが地元のホームウッド公立図書館で行ったスピーチの様子を掲載。そこでオコラフォ自身が“『ブラックパンサー』で描きたかったこと”について語っている。
『ブラックパンサー』の物語は、いつも王族に焦点を置いている気がしていたんです (ブラックパンサーと、植民地主義に走った彼の家族にね)。私が見てみたかったのは、ワカンダの人々がどのように生活しているのかということです。
社会を描くサイエンス・フィクション
確かに、映画『ブラックパンサー』でもフォーカスされていたのは、王族であるブラックパンサーことティ・チャラとその家族の過去をめぐる物語だ。ンネディ・オコラファーはより広い視野を持ち、ワカンダに暮らす人々の生活を描いた。「SF=サイエンス・フィクションには、社会科学も含まれている」とは、オコラファーと同じ黒人女性SF作家で、ヒューゴー賞三連覇を達成したN・K・ジェミシンの言葉。社会を描き出すことは、SFが果たす大きな役目の一つなのだ。
2019年の年明けには、ンネディ・オコラファーは、R&BシンガーのR・ケリーによる性的虐待疑惑に関連して、「女性蔑視は構造的な問題」と指摘した。現実社会への鋭い眼差しが、彼女の作品にも生きているのだ。
現在オコラフォは、ブラックパンサーの妹で天才科学者であるシュリを主人公に据えたコミック『シュリ: サーチ・フォー・ブラックパンサー (原題: Shuri: The Search for Black Panther)』を執筆している。一体どのような物語が描かれているのか、日本での出版を待とう。
Written by @Nnedi Okorafor with art by @Leo__Romero, “Shuri” #1 is making Wakanda proud! Pick it up at your local comic shop or from our Digital Comics Shop today: https://t.co/Khy8H0CG3a pic.twitter.com/k8eBhKpI2G
— Marvel Entertainment (@Marvel) 2018年10月22日
Source
Homewood-Flossmoor Chronicle