アメコミと猫【スーパーアニマル編〜猫はなぜ闘うのか〜】

フィクションと日常の狭間で

フィクションで描かれる日常

日本でもSFジャンルの一つとして認知されているアメコミ。歴史を積み重ねていく中で、アメリカの文化やライフスタイルの変化の過程を描いてきた。戦時中や9.11の直後など、アメコミを見れば当時のアメリカ国内の空気感を知ることができる。壮大なフィクションのディテールの中に、個人であるクリエイターと民間企業の合作だからこそ見えてくる“日常”が、散りばめられているのだ。

ペット大国アメリカ

ところで、アメリカがペット大国と呼ばれていることはご存知だろうか。APPA(American Pet Products Association = 米国ペット製品製造者協会)によると、アメリカでなんらかの動物を飼っている世帯の数は8,460万世帯。実に全体の68%にあたるというから驚きだ。この内、約6,000万世帯が犬を、約4,700万世帯が猫を飼育している。
そして、アメコミヒーローのペットにも、犬が多いことはご存知だろうか。スーパーマンに登場するスーパードッグのクリプトや、バットマンの忠犬エース、スパイダーマンの家で飼われているミス・ライオン(名前に反してオス犬である)など、犬のキャラクターが多いのだ。

猫の活躍が見たい!

これらのデータを見て、猫派の読者の方はガッカリされたかもしれない。しかし、アメコミは勇敢な犬が優遇されがちなマッチョな世界観であるからこそ、VG+では、アメコミで活躍した猫に焦点を当てたい。超獣的な力を持った“スーパーアニマル”と呼ばれるアメコミジャンルの中で、猫はどのように描かれたのだろうか。

「ペット・アベンジャーズ」に参加した猫

リーダーは犬のロックジョー…

APPAの調査によると、2017-2018年、現実のアメリカでペットを飼っている世帯数は1988年と比べて56%増となった。そうした世間の流れを反映するかのようにして結成されたのが、2009年の「ペット・アベンジャーズ」である。リーダーは、マーベル製作のドラマ『マーベル インヒューマンズ』(2017)にも登場するブルドックのロックジョーだ。

このチームには前述のミス・ライオンも参戦しているため、やはり犬が優遇されているようだが……それでも、7匹のメンバーの1匹に堂々と名前を連ねるのが、猫のヘアボールだ。

実験により得たスーパーパワー

“スピードボール”の名前で知られるヒーロー、ロビー・ボルドウィンは、科学実験中の事故によってあらゆる運動エネルギーを吸収するというスーパーパワーを手に入れた。そして、その実験に居合わせていた科学者の飼い猫・ニールスも同様の能力を得て、スーパーアニマルの“ヘアボール”となったのである。ヘアボールという名は、スピードボールに引っ掛けたネーミングだが、英語で「猫が吐く毛玉」を意味している。ジョークでつけられたような名前だが、「ペット・アベンジャーズ」シリーズでは、スマートかつ正義感が強い一面を見せる。チームでトラブルを引き起こしがちなミス・ライオンを時には無視しながらも面倒をみるなど、猫らしい愛されるキャラクターとして存在感を発揮している。

最も有名なヒーロー猫

最も有名なスーパーキャット

スーパーアニマルの中でもっとも有名な猫のキャラクターは、スーパーマンに登場するスーパーキャットだろう。日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、1960年代のDCコミックでは、スーパードッグにスーパーモンキー、そしてスーパーホースといったスーパーパワーを持った動物たちが誕生している。
スーパーキャットのストリーキーは、もともとはスーパーガールの飼い猫。クリプト星で採取されるクリプトナイトを利用した実験に失敗したスーパーガールは、実験材料のクリプトナイトを窓の外に放ってしまう。このクリプトナイトが発する放射線を浴びたストリーキーは、スーパーパワーを手に入れたのだ。とんでもない話である。

猫界の王様! その能力は!?

ストリーキーの能力は、スーパーマンやスーパーガールの下位互換といえる。空を飛ぶ能力や、透視、怪力や高速移動といった力が備わっているのだ。現在でも、「スーパーガール」シリーズに登場している他、ストリーキーが主役の子ども向け絵本シリーズも発売されている。幅広い層から愛されている人気者だ。

現在放映中のドラマ『SUPERGIRL/スーパーガール』(2015-)にもストリーキーが登場しているかどうかは、その目で確かめて頂きたい。

猫界のアンチヒーロー

なぜ闘う? 悲痛な過去を持つデクスター

DCコミックスの「グリーン・ランタン」シリーズから派生した“レッド・ランタン”部隊は、怒りを力に変えて戦うアンチヒーローのチームだ。メンバーはそれぞれ、故郷を破壊されていたり、父親を殺されていたり、誘拐され拷問された過去を持っていたり、各々の復讐心をエネルギーに変えている。その中でも、猫なのに正規メンバーとしてレッド・ランタンに参加しているのが、デクスターだ。
デクスターはかつて捨て猫であったが、そんな彼を拾って育ててくれた心優しい飼い主と共に、地球で平和に暮らしていた。だが、ある日突然、その飼い主が強盗に殺されてしまう。デクスター自身も人間から虐待を受けるが、怒りを力に変える“レッドリング”に選ばれ、スーパーパワーを持った猫として生まれ変わった。彼の目的は、主人を殺した犯人を見つけ出すことだ。

まさにアンチヒーロー、デクスターの生き様

デクスターは、高い戦闘力に加え、念力や飛行、テレバシーといったレッドランタンのメンバーが持つ能力を身につけている。猫の特性を活かして(?)残虐に敵を仕留めるシーンも多く、上記のヘアボールやストリーキーとは一線を画す猫キャラクターだ。決して人間に仕えるわけではなく、復讐のために戦う。デクスターは自分を虐待した人間にも復讐を果たし、犬を瞬殺してしまうシーンも登場するなど、まさに猫界のアンチヒーローなのだ。

 

今回は、アメコミ作品に登場する、スーパーアニマルとしての猫をご紹介した。それぞれ、能力を得た経緯と、人間との関係性がキャラクターに影響を与えていることが分かった。それにしても、3匹ともにオス猫であることは偶然だろうか。“女性性”と“猫の特性”を結びつけて描かれた、猫をモチーフにしたアメコミヒロインを扱った記事も、合わせてご覧いただきたい。

– Source –
American Pet Products Association, Inc.CBR.comMANDATORY.COMFANDOMCBS Interactive Inc. (*1) / CBS Interactive Inc. (*2)

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