アメコミの会社に詳しくなろう! 【DCの歴史編】 | VG+ (バゴプラ)

アメコミの会社に詳しくなろう! 【DCの歴史編】

元祖アメコミ出版会社 DCの歴史を振り返る

アメコミの出版社に詳しくなろう!

アメコミヒーローの元祖を作り出した出版会社といえば、DCコミックスだろう。スーパーマンやバットマンなど、アメコミファン以外の人々にも知られるスーパーヒーローたちを生み出し、長らくアメコミ界を牽引してきた。今回はそんなDCが、会社としてどのような歴史を残してきたのかを振り返ってみよう。出版/制作会社について詳しく知らない人も、DCコミックスの歴史をたどればアメコミ作品の見方が少し変わるかもしれない。

アメコミ界の生ける伝説、その成り立ちは?

マーベルコミックの前身にあたるタイムリーコミックスの設立から遡ること5年、1934年にマルコム・ホイーラー=ニコルソンによって、DCコミックスの前身にあたるナショナル・アライド出版社が創業された。翌年には「Fun: The Big Comic Magazine」を創刊。これがのちに「Adventure Comics」と名前を変え、実に50年近く続くアメコミ雑誌となった。

「DC」って何の略? 創業直後のピンチを乗り越えて

1937年には「Detective Comics」が創刊され、後にバットマンがデビューすることになる。そして、この雑誌名のイニシャルが「DC」の由来である。「Detective Comics」は、「テーマ性を持ったアメコミ作品」という新しい波を作り出した。

その一方で、創業者のホイーラー=ニコルソンは金策に苦しみ始め、実業家のハリー・ドネンフェルドから資金援助を受けることになる。さらに、ドネンフェルドとその会計士と組み、新会社としてディテクティブ・コミックス社を設立。これによって「Detective Comics」の廃刊は免れ、同誌の継続にこぎつけたのだった。

実業家ドネンフェルドの経営手腕

創業者の退場、スーパーマンの誕生

しかし、ホイーラー=ニコルソンは負債を返済することができず、その一年後にはアメコミ業界を去ることになる。経営の才に恵まれていたのは実業家のハリー・ドネンフェルドだ。経営破綻に陥ったホイーラー=ニコルソンのナショナル・アライド社を買収すると、1938年には『Action Comics #1』(1938)を創刊。第一号からスーパーマンをデビューさせ、大人気作品を生み出すことになった。

別会社のキャラクターだったスーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン

同年、ドネンフェルドはオールアメリカン出版社という新会社の設立に出資する。オールアメリカン出版社は、「フラッシュ」や「グリーンランタン」、「ワンダーウーマン」といったのシリーズを生み出している。1946年には、「スーパーマン」を抱えていたナショナル・アライド社と「バットマン」を抱えていたディテクティブ・コミックス社を合併させ、ナショナル・コミックス社に社名変更。ナショナル・コミックス社は先のオールアメリカン出版社を吸収し、1961年に、一旦の最終形態となるナショナル・ペリオディカル出版社が誕生した。

ここまで駆け足にご紹介してきたが、ドネンフェルドが出資・起業・合併した会社を簡単に述べると、以下の通りになる。

  1. ディテクティブ・コミックス社 – バットマンを生み出した会社
  2. ナショナル・アライド社 – スーパーマンを生み出した会社
  3. オールアメリカン出版社 – グリーンランタンやワンダーウーマンを生み出した会社
  4. ナショナル・コミックス社 – 1.と2.が合併
  5. ナショナル・ペリオディカル出版社 – 4.が3.を吸収。DCの直接の前身

様々なスーパーヒーローたちを生み出した、ディテクティブ・コミックス社、ナショナル・アライド社、オールアメリカン出版社、その全てが一つの会社になり、現在のDCの前身となるナショナル・ペリオディカル社が誕生したのだ。

繰り返す合併や社名変更の中で変わらなかったもの

このように、複雑に変形しながら形作られていくことになるDCコミックスだが、変わらなかったことが一つだけある。ディテクティブ・コミックス社の流れを組む出版会社は、いずれも「DC」マークのロゴを使用し、愛称としても「DC」が使用されていたのだ。

テーマ性を持った長編作品というアメコミの大きな流れを作り出した「Detective Comics」の名を、人々は愛していたのである。そして、この時代から会社のブランディング戦略を意識していたドネンフェルドの才覚は言わずもがな。1977年、晴れて「DC」の名は正式な社名として採用された。

ワーナーブラザースによる買収、そして「vs マーベル」

ワーナーによる買収と、新たな潮流

1961年に上場した後、1969年にはワーナーブラザースがDCを買収。大規模なリストラや経営改革、相次ぐマーベルからのクリエイター移籍なども経て、ワーナーブラザースの配給で『スーパーマン』(1978)、『バットマン』(1989)を皮切りとした映画シリーズが制作された。

コミックの方でも、1986年の「バットマン:ダークナイト・リターンズ」、「ウォッチメン」といったダークな作風を持ったタイトルは、アメコミ界に新たな潮流をもたらした。一方で、90年代にはアメコミ業界全体が不況に陥いる。DCは買収や吸収合併を繰り返し、会社としては再編期へと向かうこととなった。

vsマーベル! 映画戦争の時代へ

冬の90年代を乗り越え、コミック界は新たな時代に突入する。経営破綻したマーベルが再生プランに乗り出した2000年代、『バットマン ビギンズ』(2005)、『スーパーマン リターンズ』(2006)が公開され、DCはマーベルと共に一大アメコミヒーロー映画ブームを巻き起こす。ワーナーブラザースを親会社に持つということは、映画化においては有利に働くはずであった。

しかし、必死に再生プランを履行していくマーベルが驚きの快進撃を見せる。夢のヒーロー大集合を実現した『アベンジャーズ』(2012)は、歴史的な大ヒットを記録。DCも『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)で巻き返すが、DCヒーローが集結した『ジャスティス・リーグ』が公開されたのは、『アベンジャーズ』の大ヒットから5年が経過した2017年のことであった。

マーベルと異なるDCの戦略

時系列で見ると、DCがマーベルに遅れをとっているようにも見える。だが、DCEU (DCエクステンデッド・ユニバース) では、先にヒーローを集合させて観客に関心を抱かせ、個々の物語は追って公開するというマーベルのMCU (マーベル・シネマティック・ユニバース) とは逆のシステムを採用した。映画化の版権をワーナーブラザースが管理している為、マーベルのようにユニバースに参加できないキャラクターもいない。じっくりと腰を据えた戦略で製作に臨むことができるのだ。

一方で、スーパーヴィランを集合させた映画『スーサイド・スクワッド』(2016)の製作や、作中でクロスオーバーを見せる『ARROW/アロー』(2012-)や『THE FLASH/フラッシュ』(2014-)といったドラマ製作にも力を入れている。「元祖アメコミ」の名に驕ることなく、新しいアイデアを探求し続けていることが分かるだろう。

合併や買収を繰り返し、様々な会社の歴史を背負いながら、「DC」という一つの看板を背負って戦ってきたDCコミックス。創業者のホイーラー=ニコルソンはわずか数年でアメコミ業界を去ることになった。しかし、彼が生み出した新しいアメコミの精神は、今でもその名前と共にあらゆるコミックに宿っている。

VG+編集部

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