“強い女キャラ論争”はウンザリ——米SF作家が提案する3つのアイデア

ライター

米SF作家が説く“魅力的なキャラクター”とは…?

“強い女性キャラ”ではなく…

有名SF作家のチャーリー・ジェーン・アンダースが、近年続いている“強い女キャラ論争”についてある提案を行い、注目を集めている。チャーリー・ジェーン・アンダースは、「Six Months, Three Days」(2011)でヒューゴー賞中編小説部門を、『All the Birds in the Sky』(2016)でネビュラ賞長編小説部門を受賞したことでも知られるSF作家だ。これまでに何人もの多様な性を持つ主人公を描いてきた彼女が、“強い女性キャラ”ではなく、“複雑な女性キャラクター”を描くよう呼びかけたのだ。

ミームとなった”強い女キャラ”

近年、海外の映画やドラマでは、女性を主人公に据えたSF作品が増えている。SFドラマでは、『高い城の男』や『ウエストワールド』などが例として挙げられるだろう。

女性の主人公だけでなく、敵キャラやサイドキックとして作中で活躍を見せる女性キャラクターも増加傾向にある。一方で、寡黙で無慈悲なエージェントや忍者といった、固定的な役割を担わされることも多い。“気が強い”女性キャラは、女性蔑視の視点を伴って描かれることもある。もはや、”強い女キャラ”という言葉は、”SFC = Strong Female Characters”というミームとして定着し、その扱われ方は度々論争の的になってきた。

「“強い女キャラ”は忘れろ!」

今回、チャーリー・ジェーン・アンダースが議論の対象としたのは、ヒロイックに描かれる女性主人公だ。“強い女キャラ論争”を「数ヶ月ごとに起こる」として、“tired debate”と表現。自身が共同創設者でもあるio9に寄稿した文章を紹介した。

「“強い女キャラ”は忘れろ! 私たちに必要なのは、とんでもないことを (たくさん) しでかす複雑な女性キャラクターだ」と題したこの文章では、アンダースが望むキャラクターは、「強い女性 (またはトンランス/ノンバイナリー) よりむしろ、ややこしいキャラクター」だと表明されている。失敗を犯し、めちゃくちゃなことをしでかし、他人を傷つけ、その失敗から学ぶような、読者が“生きている”と感じられるキャラクターを求めている、と説明した。

魅力的なキャラクターとは?

続けて、愚行に走らず、与えられた試練を全て乗り越えていくような”強い女キャラ”の設定は退屈ですらあると主張。完璧な人間よりも、むしろ状況を悪くしてしまうようなキャラクターにこそ魅力がある、“アンチヒーロー”というジャンルが確立されたように、めちゃくちゃなことをしでかしたり、自己中心的に振る舞ったりすることは、男性キャラクターには許されてきたと指摘した。
アンダースが主張するのは、興味深いキャラクターを作り出すメソッドは、女性であろうが男性であろうが、どんなキャラクターであろうが同じだという点だ。物語を通して変化し、「この人は次に何をするのだろう」と思わせるキャラクターが魅力的だとしている。人々に必要とされているキャラクターは、自分や周りの人々の姿を重ね合わせられるキャラクターであり、完全無欠の人物ではないのだ。

うまく描かれてこなかった“他者との関係性”

そしてアンダースは、これまで、女性キャラクターやセクシャルマイノリティーのキャラクターにおいては、“他者との関係性”がうまく描かれてこなかったという問題も指摘している。コミュニケーションがうまくいかず、友人を失うような展開があまり見られないというのだ。恋愛においても、男性以外のキャラクターが自己中心的な行動を取り、過ちを犯すことがあってもよいという点を、改めて主張している。

複雑で魅力的なキャラクターを生み出す三つのアイデア

最後にアンダースは、複雑で欠点があって、それでいて魅力的なキャラクターを生み出すための三つのアイデアをあげている。

①  複雑な要素を抱えたキャラクターを設定し、その複雑さを物語の軸にする (ドラゴンを倒し続ける必要はなく、登場人物の感じ方や選択に興味を持たせるストーリーを設定する)

②  様々な“強さ”や“複雑さ”を示すために、十分な数の女性またはトランス/ノンバイナリージェンダーのキャラクターを登場させる

③  それらのキャラクターは自己中心的であってもよく、時には間違った選択肢を選んだり、とんでもない判断を下したりしてもよい

上記の指摘は、あくまでも英語圏のSFやファンタジーといったジャンルフィクションに焦点を当てた内容だ。作品によっては上記のようなキャラクターを描いているものも存在する。だが、私たちが改めて確認しておくべき点は、特定の性別のキャラクターにステレオタイプな役割を押し付ける時代は終わったということだ。同時にそれは、女性キャラクターを“強い存在”として描き続けるという意味ではないということを、今回アンダースが改めて指摘したのだ。
性別にかかわらず多様な生が描かれることで、“強い女キャラ論争”は、その役割を終える日が来るだろう。

チャーリー・ジェーン・アンダースの新著、『The City in the Middle of the Night』は、Tor Booksより2019年2月12日発売。

– Source –
io9

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