スピルバーグによる「Netflix作品除外」の報道に、評論家らが相次いでコメント | VG+ (バゴプラ)

スピルバーグによる「Netflix作品除外」の報道に、評論家らが相次いでコメント

スピルバーグに相次ぐ批判

スティーブン・スピルバーグがアカデミー賞からNetflix排除?

『未知との遭遇』(1977)、『E.T.』(1982)など、数々の名作SF映画を生み出してきた映画監督のスティーブン・スピルバーグが、アカデミー賞とNetflixに関する報道で批判を浴びている。スピルバーグが運営するアンブリン・エンターテイメント社のスポークスマンが、米Indiwire誌に以下のように話したのだ。

スティーブンはストリーミングで配信される作品と、劇場で公開される作品の状況が違うものであることに、強い関心を持っています。次回 (アカデミーの理事会で) 議題になった際に、他の方々が (彼のキャンペーンに) 賛同してくれれば、彼は喜ぶでしょう。

かつて、スピルバーグはITV Newsからのインタビューで、Netflixで公開される作品について、アカデミー賞ではなくエミー賞にノミネートされるべきとする旨の発言をしていた。今回、映画界の大物が遂にアカデミー賞からのNetflix排除に動き出すのでは、と注目が集まっているのだ。

ネットミームで揶揄する声

これを受けて、映画批評家やコミック関係者らからは、相次いでスティーブン・スピルバーグを揶揄するコメントが次々と飛び出している。

Twitter上で大きな反響を読んでいるのは、ライターのアンドリュー・ウィーラーのツイート。“コミック界のアカデミー賞”とも呼ばれるアイズナー賞を受賞した経験もあるウィーラーは、今回の報道を引用リツイートする形で、以下のようにコメントした。

老人がクラウドベースのストリーミングアプリケーションに怒鳴ってる。

「雲 (クラウド) に怒鳴る老人」というのは、アメリカで有名なネットミームの一つ。アニメ『ザ・シンプソンズ』(1989-) に登場する一コマで、自分が理解できない現象に対して怒る人を揶揄するネットミームとして定着している。

『アトランティック』誌のジェミール・ヒル記者も、「速報: 雲に怒鳴る老人」とツイートした。

Netflixが果たしてきた役割

これらのツイートには、スティーブン・スピルバーグを嘲笑する声が集まっているが、一方で、Netflixが果たしてきた映画界への貢献を主張する人々も少なくない。

多様なコミュニティの作家やクリエイターを支援する非営利団体、ウィー・ハブ・ストーリーズを主宰するフレデリック・ジョセフがその一人だ。ジョセフは、貧困層の子ども達向けに映画『ブラックパンサー』を上映する#BalckPantherChallengeを主催した人物でもある。今回の騒動について、彼は以下のようにコメントした。

Netflixは多様な物語を発信し、主流から外れたクリエイターや作家たちにチャンスを与えてる。
スティーブン・スピルバーグは、そもそもこうした試みを後退させようとしてるよ。

また、映画評論家のレベッカ・セオドア=ヴァションは、以下のようにツイート。

真剣に疑問だし、不思議に思う。スピルバーグは有色人種の脚本家や映画監督を育てたり、仕事を与えたりした?

ストリーミング配信メディアが、有色人種の人々に多くの仕事をもたらしたという点は、ドラマ『高い城の男』(2015-)に出演する俳優のジョエル・デ・ラ・フエンテも過去に指摘していた点だ。フエンテは、Parade誌のインタビューで以下のように話している。

ストリーミングメディアと、そこで配信されている新しいコンテンツをみると、多くの有色人種の人々が中心的な役割を果たしていることが分かるよね。それは番組のレギュラーだったり、作家だったり、プロデューサーや監督だったりね。

by ジョエル・デ・ラ・フエンテ

2019年の第91回アカデミー賞では、Netflixから『ローマ/ROMA』、『バスターのバラード』がノミネートを果たした。Amazonプライムビデオからは『あの歌、2つの心』もノミネートを果たしている。Netflixオリジナル作品の『ブラックミラー: バンダースナッチ』は、SF最高賞のネビュラ賞で2019年から新設された“ゲームライティング部門”にノミネートされている。視聴者が展開を選べるストリーミングメディアならではの新たな試みは、各所から賞賛を浴びている。

ここまで、スティーブン・スピルバーグ本人からなんらかのコメントがあったわけではない。スポークスマンを通して発信を行い、世間や業界の反応を見ようという計算もあるだろう。今回の反応を受け、スピルバーグはどのような動きを見せるのだろうか。
アカデミーの理事会は、2019年4月に開催される予定だ。

Source
IndieWire / ITV News

VG+編集部

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