第41回日本SF大賞発表
日本SF作家クラブが主催する日本SF大賞の第41回受賞作品が発表された。大賞を受賞したのは菅浩江『歓喜の歌 博物館惑星Ⅲ』(早川書房)、林譲治《星系出雲の兵站》全9巻 (ハヤカワ文庫JA)。特別賞に「立原透耶氏の中華圏SF作品の翻訳・紹介の業績に対して」が選出され、2020年11月23日に逝去した小林泰三に功績賞がおくられた。
第41回日本SF大賞は、2019年9月1日から2020年8月31日までに発表された作品や出来事が対象。一般の読者も参加したエントリーの中から選ばれた最終候補について、選考委員が議論を行い受賞作を決定した。発表は日本SF作家クラブの公式YouTubeチャンネルにて、同クラブ会長の池澤春菜が行った。
最終候補は以下の通りだった。
『歓喜の歌 博物館惑星Ⅲ』菅浩江(早川書房)
《星系出雲の兵站》全9巻 林譲治(ハヤカワ文庫JA)
『タイタン』野﨑まど(講談社)
立原透耶氏の中華圏SF作品の翻訳・紹介の業績に対して
『時のきざはし 現代中華SF傑作選』立原透耶(編)(新紀元社)
《日本SFの臨界点》全2巻 伴名練(編)(ハヤカワ文庫JA)
『100文字SF』北野勇作(ハヤカワ文庫JA)
選考会での声
池澤春菜会長は、大賞を受賞した両作について、以下のように選考会での声を紹介した。
『歓喜の歌 博物館惑星Ⅲ』については、「ポップカルチャーの感性を芸術論へのカウンターパンチとして持ってきた」「偽物や遺伝子改変、アートの基準を超えるものへの挑戦」「ドライなアートと泥臭い人間劇のその融合であった」。
《星系出雲の兵站》については、「ジェンダー問題がクローズアップされた昨今だからこそ読まれるべき作品」「異星人の造形がおもしろい」「あえて少し古いテクノロジーを使うことで却って古びない時代性があった」。
「どちらの作品も“一長一長”。並んだライン上では競えない、それぞれが素晴らしい作品であった」「どちらも来年以降に与える影響を考えれば、先駆けになるような作品である」とのコメントを紹介している。
また、特別賞の立原透耶については、「中国SFの勢いは今がまさに黄金期。リアルタイムで我々が体験できるのは、立原さんがいるからこそ。そうでなければ英米圏を経由して時差があったのではないか。余人を持って変えがたい存在である」「様々なイベントへの積極的な参画やアンソロジー、『時のきざはし』におけるまだまだ知られていない作家の紹介など、かつての伊藤典夫さんを思わせる素晴らしい活躍であった」と紹介した。
第41回日本SF大賞の結果
大賞
『歓喜の歌 博物館惑星Ⅲ』菅浩江(早川書房)
《星系出雲の兵站》全9巻 林譲治(ハヤカワ文庫JA)
特別賞
立原透耶氏の中華圏SF作品の翻訳・紹介の業績に対して
功績賞
小林泰三