全曲解説『アナと雪の女王』で流れた歌まとめ レリゴー、雪だるまつくろう… 英語&日本語吹き替えで音楽を紹介 | VG+ (バゴプラ)

全曲解説『アナと雪の女王』で流れた歌まとめ レリゴー、雪だるまつくろう… 英語&日本語吹き替えで音楽を紹介

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『アナと雪の女王』で流れた歌は?

2013年に公開されたディズニーの長編アニメーション映画『アナと雪の女王』は、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話『雪の女王』(1844) を原作としながら、内容を大きくアップデートした作品。世界累計12億ドル超の歴史的ヒットを記録し、2019年には続編『アナと雪の女王2』も発表されている。

ミュージカル映画としての人気も高く、「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」や「雪だるまつくろう」など、今後も歌い継がれるであろう数々の名曲を生み出した。今回は、映画『アナと雪の女王』で歌われた曲を全曲、日本語版と英語版の両方を紹介していく。

以下は、『アナと雪の女王』の内容に関するネタバレを含むので注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『アナと雪の女王』の内容に関するネタバレを含みます。

『アナと雪の女王』で流れた歌まとめ

氷の心/Frozen Heart

『アナと雪の女王』の冒頭、男達が氷を採取するシーンで歌っているのが「氷の心/Frozen Heart」だ。幼い頃のクリストフとトナカイのスヴェンもこの仕事を手伝っている。「氷の心」と聞くと“冷たい”といったイメージが浮かびがちだが、この氷運びの人々にとって氷は生活を支えてくれる大事な存在だ。

歌詞の内容は「美しい パワフル 危ない そうだ 氷の力」「誰にも支配できないぞ」と歌われており、氷に対する敬意が示されている。クリストフこうした価値観を育み、エルサが持つ氷の力を忌避するのではなく、尊敬し、共存すべき相手と考える土台が自然と育ったのだろう。

私たちの中にもある“氷=冷たい”というイメージを、冒頭から“強くて美しい”へと変換しつつ、クリストフのバックグラウンドを表現する見事な選曲である。

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雪だるまつくろう/Do You Want to Build a Snowman?

アナを傷つけてしまい、両親がその力を危険視したことからエルサは自室に引きこもる。トロールの治療によってエルサの魔法の記憶を失ったアナだったが、部屋にこもったエルサを以前と同じように遊びに誘う。その時に歌われるのが、あの有名な「雪だるまつくろう/Do You Want to Build a Snowman?」だ。

アナは成長しながらも「雪だるまつくろう」とエルサに呼びかけることをやめない。一方でエルサは父親から言われ、手袋をはめて自分の持つ力をより一層隠すようになる。アナは壁に飾られたジャンヌ・ダルクの絵に話しかける。ジャンヌ・ダルクは力を持った女性であったがゆえに迫害を受けた代表的な人物である。

「雪だるまつくろう」は、姉妹の間のすれ違いを描きながらも、語りかけることをやめようとしないアナの強さを示した曲でもある。その言葉は「ドアを開けて」「そばにいれば支え合える」と変わりゆき、エルサを見捨てないという姿勢を崩さない。扉を挟んで背中合わせに座るシーンは、本人達の意思ではなく、この二人を取り巻く世界が二人を遠ざけているという事実を想起させる。「雪だるまつくろう」は現代を代表するシスターフッドソングと言える。

日本語版の「雪だるまつくろう」を歌っているのは、アナ役の神田沙也加、幼いアナを演じた稲葉菜月、子供時代のアナを演じた諸星すみれ。英語版の「Do You Want to Build a Snowman?」はアナ役のクリスティン・ベル、幼いアナを演じたアガサ・リー・モン、子供時代のアナを演じたケイティー・ロペスが歌っている。

生まれてはじめて/For the First Time in Forever

海難事故で両親を失い、成人したエルサは女王として即位する。貿易相手の諸外国の要人を招いた戴冠式が行われ、二人は13年ぶりに外の世界に触れることに。ここでアナとエルサが歌う曲が「生まれてはじめて/For the First Time in Forever」だ。

「生まれてはじめて」をワクワクする出来事として捉えているアナに対し、自分の持つ力を恐れているエルサは消極的な言葉を並べる。アナが「今日だけでも夢をみたい」と歌うのに対し、エルサは「今日だけはうまくやろう」と歌う。アナが高音パートを、エルサが低音パートを担当しているのも特徴的だ。

特にアナの出会いを求める心と、エルサの孤独を求める心は対照的。最後にはアナの「生まれてはじめて自由だから」と歌うソロパートで終わり、自由を求めるアナは止められないということを示す。『アナと雪の女王』を見ている人たちは「雪だるまつくろう」と「生まれてはじめて」の二曲で、アナとエルサのどちらかに(あるいはどちらにも)自分を重ね合わせることができるだろう。

なお、日本語版の「生まれてはじめて」はアナ役の神田沙也加と共に、大人のエルサを演じる松たか子が歌う一曲目の歌となっている。英語版の「For the First Time in Forever」はアナ役のクリステン・ベルとエルサ役のイディナ・メンゼルが歌っている。

とびら開けて/Love is an Open Door

ハンス王子と出会ったアナによるデュエット曲「とびら開けて/Love is an Open Door」は、二人の一致する部分を確認している間に、短い曲の中で婚約まで辿り着いてしまう一曲だ。2分ちょっとのこの一曲がこの後の『アナと雪の女王』の物語につきまとい続けるという展開は、一時の高揚が尾を引き続ける恋愛というものをよく表している。

注目すべき点は、ハンス王子の歌詞の多くがアナが言ったことのおうむ返しになっている点だ。アナが「出口のない日々が突然に変わりそう」と歌えば、ハンスは「僕も同じこと考えてた」と返す。アナが「サンドイッチ」が好きと歌うと、ハンスは「僕と同じじゃないか」と歌うのだ。ハンスは最後に自分から「僕と結婚してくれ」とプロポーズする。

物語の終盤で明らかになるが、ハンスは時刻で13人兄弟の末っ子だったことから、アナと結婚して王位を手に入れようとしていた。アナを愛する気持ちなどはなく、この「とびら開けて」の歌詞の内容もアナの言葉に合わせていただけだったと考えられる。アナが偶然だと思っていた“運命の出会い”は作られたものだったのだ。

日本語版の「とびら開けて」をアナ役の神田沙也加と共に歌っているのはハンス王子役の津田英佑。英語版の「Love is an Open Door」はクリステン・ベルとハンス王子役のサンティノ・フォンタナが歌っている。

レット・イット・ゴー~ありのままで~/Let It Go

「レリゴー」の呼び名でお馴染みの「レット・イット・ゴー~ありのままで~/Let It Go」は、自分の力を解き放ったエルサが歌い上げる一曲。冒頭は「真っ白な世界に ひとりのわたし」「このままじゃダメ」と、孤独であることに向き合う。そして、自分を隠して生きることをやめ、「ありのままの自分になる」ことを選ぶ。

「もう自由 なんでもできる」とは、他者との関わりを求めていたアナとは違い、自分の力を偽らずに、自分に嘘をつかずに生きられる“自由”に対する喜びだ。冒頭の「氷の心」で歌われたように、氷の力を持つ自分を強くて尊い存在だと認めたエルサは、「氷の結晶のように輝いていたい」と歌う。

そして、曲終盤の「自分を好きになって」という言葉が最大のメッセージだろう。他者を傷つけた過去のトラウマ、周囲の声や視線に追い詰められ、身を隠して生きてきたエルサが「レリゴー=ありのままで」と歌う姿は多くの人々を勇気づけた。エルサの持つ魔法の力は現実に重ね合わせれば、知識やフェミニズム、持って生まれた才能などに置き換えることができるだろう。立場や性別によってそれを押さえつけられた人々にとっての解放の歌が「レリゴー」なのだ。

日本語版の「レット・イット・ゴー~ありのままで~」は松たか子が、英語版の「Let It Go」はイディナ・メンゼルが歌っている。アカデミー歌曲賞を受賞したこの曲は、25ヵ国で歌われたバージョンが公開されている各国のエルサ役声優が歌う圧巻の映像となっている。

トナカイのほうがずっといい/Reindeer(s) Are Better Than People

所持金が足りずお店を追い出されたクリストフが歌うのは「トナカイのほうがずっといい/Reindeer(s) Are Better Than People」。英題でははっきりと「人間よりも」という枕がついている。冒頭の「氷の心」のシーンでも登場した相棒のトナカイのスヴェンとクリストフは、幼い頃からずっと一緒。50秒の短い歌の中で、スヴェンに代弁させる形でクリストフの思いが吐き出されている。

曰く、人間は意地悪だが「あんただけは違う」。クリストフは自分は偏狭な他の人々とは違うと自負している。一方で、人間は臭くないが「あんただけは違う」。この曲は、人里離れて生きてきたクリストフのプライドと劣等感が同時に描写されている曲であり、後の「愛さえあれば」で歌われる、クリストフは「完璧じゃない」という歌詞と重なる。

今のクリストフにとってはっきりしているのは、相棒のスヴェンが大事な存在だということだけ。「グッナイ 風邪ひくなよ」とスヴェンを思いやるワンフレーズが、クリストフという人間をよく表している。

日本語版「トナカイのほうがずっといい」を歌うのは、クリストフ役の声優を務めた原慎一郎。英語版「Reindeer(s) Are Better Than People」はジョナサン・グロフが歌っている。

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あこがれの夏/In Summer

オラフが歌う「あこがれの夏/In Summer」は、“暑い夏”に憧れるオラフの純粋さを表した一曲。オラフは雪だるまなので、もちろん夏の暑さの中では生きられない。だが、生まれてこのかた夏を知らないオラフは、「暑い夏と寒い冬 二つ合わせたらもっといい」と無邪気に妄想を膨らませる。雪の中で生まれたがゆえに、“ここではない場所”を追い求めているのだろう。自由と人とのつながりを求めるアナの姿に重なる。

なお、日本語で「夏が似合うクールな男」となっている箇所は、オリジナルの英語では「Just imagine how much cooler I’ll be in summer」となっている。直訳すれば「夏だったら自分はもっとクールになるって想像してみる」という意味になる。この後に「Snowman=雪だるま」という単語は出てくるが、前述の箇所では男性性を強調しているわけではないので注意が必要だ。

日本語版の「あこがれの夏」を歌っているのは声優の武内駿輔だが、これは2019年に差し替えられたもの。オリジナルの劇場公開版はピエール瀧がオラフの声優を担当していたが、2019年にコカインの使用で逮捕され、降板となった。配信やテレビ放送はすべて武内駿輔のものに差し替えられている。英語版の「In Summer」はジョシュ・ギャッドが歌っている。

生まれてはじめて(リプライズ)/For the First Time in Forever (Reprise)

雪の城で再会したアナとエルサが歌うのは、物語の序盤で一緒に歌った「生まれてはじめて/For the First Time in Forever」の改変バージョン。オリジナルバージョンと同じように、前向きなアナと後ろ向きなエルサの歌詞が対比となっている。

アナはエルサに「生まれてはじめて分かり合える」「生まれてはじめて力になれる」と、大人になって初めて二人が手を取り合うことを求める。アナはオリジナル曲では自分自身の「生まれてはじめて=自由」を喜んでいたが、この場面ではアナとエルサの二人の間の「生まれてはじめて」を追い求めている。

一方のエルサは「ひとりだけど 自由に生きられる」と、国に戻るよりも、ようやく手にした自由を謳歌することを望む。だが、二人に距離を作ったのが社会だとすれば、二人を結びつけようとするのもまた社会である。雪に覆われたアレンデール王国はエルサの力を必要としている。

アナは改めてエルサに手を取ることを求めるが、エルサはこの求めを拒否するのだった。「雪だるまつくろう」の時から変わらずエルサに向き合おうとするアナと、エルサの抱える闇の深さが示されている一曲だ。

なお、日本語版の「生まれてはじめて(リプライズ)」はAmazon Musicで聴くことができる。

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この「リプライズ」という手法はディズニーのミュージカル映画ではよく取られる手法で、実写版『アラジン』(2019) でも主人公アラジンの心情の変化を表現している。詳しくはこちらの記事で。

愛さえあれば/Fixer Upper

トロールたちがクリストフについて歌う「愛さえあれば/Fixer Upper」は、日本語の題と英題が最も違っている曲だ。英題の「Fixer Upper」は「ボロ家」という意味で、修理が必要な安い家のことを指す。日本語題と合わせれば、「完璧じゃないけれど愛さえあれば大丈夫」という内容だと分かる。

クリストフと一緒に暮らしてきたトロールは、クリストフの欠点を次々と挙げていくが「完璧じゃないけど大丈夫」と豪語する。ここで示されているのは、クリストフが伝統的な“ディズニープリンス”ではないこと。それはハンス王子との対比でもあるが、クリストフ自身が劣等感を抱いているその「完璧じゃなさ」は、一緒に暮らしてきたトロールからは愛されているという点も示されている。

面白いのは、この曲の前のシーンでクリストフがトロールについて「声もでかいし、上から目線だし」と先手を打って留意事項を示している点だ。実際、「愛さえあれば」の歌詞は二人の意思もジェンダーも確認せずに勝手に結婚を勧めるかなりお節介な内容になっている。この曲がなければクリストフとアナの関係に道筋をつけることができないため、やや強引な天海と演出となっている。

日本語版の「愛さえあれば」を歌っているのはトロールのパビーを演じた安崎求とバルダを演じた杉村理加。英語版「Fixer Upper」はキアラン・ハインズとマイア・ウィルソンが演じている。

レット・イット・ゴー(エンドソング)/Let It Go (End Credit Version)

アナは自らの身を投げ打ってエルサを守り、エルサの愛はアナの凍りついた心を溶かした。アレンデール王国に平和が戻り、流れ出すエンディング曲は本業の歌手による「レット・イット・ゴー/Let It Go」だ。日本語版「レット・イット・ゴー」はMay J.が、英語版「Let It Go」はデミ・ロヴァートが歌っている。音楽も変更されており、「ずっと泣いていたけど きっと幸せになれる」といった歌詞が加わっている。

アナと手を取り合い、自分の力をコントロールできるようになったエルサは、本当の意味で「もう自由 なんでもできる」と言えるのだろう。

以上が、映画『アナと雪の女王』で流れた歌だ。「レリゴー」も収録されている『アナと雪の女王』のサウンドトラックは日本語版と英語版が収録されたものが発売されている。あの感動を何度でも楽しもう。

『アナと雪の女王』はMovieNEX+ブルーレイ+DVDが発売中。

ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
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実写版『アラジン』の全曲解説はこちらから。

『アラジン』のネタバレ解説はこちらから。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で流れた曲の解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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