全曲解説! 実写版『アラジン』で流れた歌まとめ 英語&日本語吹き替えで音楽を紹介 | VG+ (バゴプラ)

全曲解説! 実写版『アラジン』で流れた歌まとめ 英語&日本語吹き替えで音楽を紹介

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実写版『アラジン』の音楽に注目

2019年に公開されたディズニーの『アラジン』は、1992年に発表されたアニメ映画の実写版だ。アラジンとジャスミン役にメナ・マスードとナオミ・スコットというニューカマーを抜擢し、魔人のジーニーにウィル・スミスを起用した同作は、興行収入10億5,000万ドル超という大ヒットを記録。原作アニメのキャラクター達を見事に再現しながらも、現代版にアップデートされた物語は話題を集めた。

今回は、実写版『アラジン』の音楽に注目したい。実写化にあたって、おなじみの曲がゴージャスにアレンジされているだけでなく、実写版だけのオリジナル曲も登場。日本語吹き替え版の声優達も見事に歌いあげている。早速、実写版『アラジン』で歌われた曲を英語版と日本語吹き替え版で、解説付きで見ていこう。

実写版『アラジン』で流れた歌まとめ

「アラビアン・ナイト (Arabian Nights)」

物語の冒頭、ジーニーを演じるウィル・スミスが子ども達にお話を語り始める際に流れるのは「アラビアン・ナイト (Arabian Nights)」。ラッパーとしてグラミー賞も受賞したウィル・スミスが冒頭からその歌声を披露している。『アラジン』はアラブ系の架空の国を舞台にしており、この曲では「ラクダ」「砂漠の国」、インド料理によく使われるスパイスの「カルダモン」など、舞台となるアグラバーの国のカルチャーが紹介される。

ウィル・スミス演じるこの人物は、歌詞でこの国を「故郷」と呼んでいる。また、この曲が流れている場面では主人公アラジンやジャスミン、猿のアブー、虎のラジャー、オウムのイアーゴにサルタン王など、原作ファンならすぐに分かるキャラクターが一斉に登場し、視聴者を『アラジン』の世界に引き込んでいる。

『アラジン』の原作である寓話『アラジンと魔法のランプ』は、イスラム世界の説話集である「アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)」の内の一作品として知られる(実際には「アラジンと魔法のランプ」はヨーロッパで追加された作品であり、「アラビアン・ナイト」の原典には載っていない)。『アラジン』で歌われる「アラビアン・ナイト」は、この説話集のタイトルからとったものであり、“お話”として語り出される冒頭にぴったりの曲になっている。

日本語吹き替え版では山寺宏一が流石の歌声を披露。山寺宏一は原作アニメ版でもジーニーの吹き替えを担当していたが、原作の冒頭ではランプの持ち主である行商人が「アラビアン・ナイト」を歌っている。

「ひと足お先に (One Jump Ahead)」

アラジンが街中でパルクールを見せながら逃げ回るシーンで歌われている曲は「ひと足お先に (One Jump Ahead)」。このシーンは原作アニメで同曲が流れる場面を意識した演出になっており、特に登場する女性たちはほとんどそのまま再現されている。一方で、ストリートパフォーマー達に対して理不尽に迷惑をかける描写はなくなり、歌詞も微妙に変わっている。

原作アニメでは他者のために盗みを働いたのではなく、自分のためにパンを盗んでいるため、「食べていくための盗みは許してくれ」と繰り返す内容になっている(アニメ版もパンを食べようとしたところで腹を空かせた子ども達を見つけてパンを譲る)が、実写版ではその要素は薄められている。また、原作アニメでは「友達はアブーだけ」と歌われているが、実写版では「友達は一人か二人だけ」に変更されている。

日本語版ではオーディションで歌声を評価されてアラジン役を勝ち取った中村倫也が、その歌声を披露する。

「ひと足お先に (リプライズ) (One Jump Ahead Reprise)」

ひとりになったアラジンが歌い始める曲は、「ひと足お先に」の続きである「ひと足お先に (リプライズ) (One Jump Ahead Reprise)」。ブレスレットを盗んだと疑われ、「無価値」と罵られたアラジンは「もっとよく見て」「僕は貧しいだけ?」「気付いてほしい、本当の僕に」と寂しげに歌う。原作ではこの時点でジャスミンは登場しておらず、王子に罵られたアラジンが自室で歌う。アニメ版では歌の後には「いつか宮殿に住んで幸せになってやる」と野心を見せているが、実写版ではアブーがブレスレットを盗んでいたことが分かり、ブレスレットを返す方法を考えているようだ。

こちらの日本語吹き替え版も中村倫也がしっとりと歌い上げている。

「スピーチレス~心の声(パート1) (Speechless)」

「(女は)王になれない」「(女に)必要なのは美しさだけ、意見はいらない」と性差別を受けるジャスミンは自室に戻り、「スピーチレス~心の声(パート1) (Speechless)」を歌う。この時、ジャスミンの部屋には本や資料が広げられている。いくら努力をしてもガラスの天井に拒まれる。「声は雷にかき消された」と歌うが、それでも「どんなに打ちのめされても、声をあげよう 口を塞がれて怖くて震えても」と、ジャスミンは口を閉ざす(=スピーチレスになる)ことは選ばない。

「ひと足お先に (リプライズ)」と「スピーチレス」で、アラジンとジャスミンの境遇をリンクさせているが、原作アニメにはこの歌は存在しない。フェミニズムを基調に置いた実写版『アラジン』のオリジナルソングである。

日本語吹き替えでは木下晴香が見事な歌声を披露している。

「フレンド・ライク・ミー (Friend Like Me)」

魔法の洞窟でランプの魔人ことジーニーが歌い上げるのは名曲「フレンド・ライク・ミー (Friend Like Me)」だ。冒頭で歌われる歌詞「アリババには盗賊、シェヘラザードには千の物語」とは、前述の「アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)」の登場人物達だ。実写版の「フレンド・ライク・ミー」はヒューマンビートボックスにラップとヒップホップダンスも加えたアレンジになっており、ラッパーとして一斉を風靡したウィル・スミスが本領を発揮している。

ジーニーがブラックカルチャーに則ったパフォーマンスを見せるシーンは、原作アニメでは踊り子の女性達を魔法で登場させてアラジンを喜ばせるシーンになっている。女性を物扱いするシーンをウィル・スミスがレペゼンするカルチャーに合わせて差し替えており、この辺りもしっかりアップデートされている。

日本語吹き替えでは原作アニメ版に続き、山寺宏一が歌い上げる。実写版ではハモりも多用されている他、山寺宏一のラップも聴くことができる。

なお、「フレンド・ライク・ミー」にはDJキャレドがリミックスした別バージョンが存在し、エンディングに登場する(後述)。

「アリ王子のお通り (Prince Ali)」

一つ目の願いで王子になったアラジンの登場シーンで歌われるのはアリ王子のテーマ曲「アリ王子のお通り (Prince Ali)」。ジーミーと召使いで歌うこの曲は、「黄金のラクダ75頭 紫のクジャク53羽」「ペルシャの猿 95匹」とアリ王子の財産も紹介される。この曲は、ジャスミンの合図で変調してクライマックスを迎える。原作アニメでも変調する箇所はあるが、実写版ではジャスミンを巻き込むアレンジを入れている。

日本語吹き替え版では、「フレンド・ライク・ミー」と同じく山寺宏一がアニメ版に続いて再演している。

「ホール・ニュー・ワールド (A Whole New World)」

魔法の絨毯に乗ったジャスミンとアラジンが歌うのは、主題歌「ホール・ニュー・ワールド (A Whole New World)」。「どこへ行くのも自由」と心に従い、広い世界、新しい世界を見る素晴らしさを伝える曲だ。ジャスミンは性差別によって、アラジンは貧困によって、それぞれ囚われの人生を送っており、自由を求める二人の心境を表している。

原作アニメ版は アカデミー歌曲賞を受賞した。アニメの日本語吹き替え版はサビの「A Whole New World」の部分も「素敵な新しい世界」と日本語で歌われているが、実写版では原曲通り英語で「A Whole New World」と歌われている。

日本語吹き替え版は木下晴香と中村倫也のデュエット。二人は2019年末のNHK紅白歌合戦で「ホール・ニュー・ワールド」を歌った。

「ひと足お先に (リプライズ2) (One Jump Ahead Reprise 2)」

自分を偽り続けようとしたことでジーニーと喧嘩別れしたアラジン。自宅に戻って歌い出すのは「ひと足お先に (リプライズ2) (One Jump Ahead Reprise 2)」。1では「本当の自分を見て欲しい」と歌っていたアラジンだが、本当の自分は卑しい人間なのかと疑い始めている。アラジンは「もう偽れない」と歌い、真実を話すことを決心する。

日本語版は引き続き中村倫也が歌い上げる。

「スピーチレス~心の声(パート2) (Speechless)」

ジャファーに国を乗っ取られ、口を塞がれたジャスミンは、再び「スピーチレス (Speechless)」を歌い始める。「身を弁え、美しく見せろ、意見を述べるな」と女性が差別を受けてきた時代を「今終わる なぜなら私は負けないから」と歌い、「声をあげよう」「決して黙りはしない」と叫ぶ。ナオミ・スコットが迫真の歌唱と演技を見せる実写版『アラジン』のハイライトのひとつだ。

前述の通り、「スピーチレス」は実写版のオリジナル曲。プリンセスとして抑圧された人生を送ってきたジャスミンは心の全てを吐き出し、この危機に立ち向かう。

日本語吹き替え版では「黙っていることが賢い生き方だと教えられてきたけど、間違いだと分かった」とアレンジを加えながらも、オリジナルの歌詞のメッセージを残すことに成功している。

「フレンド・ライク・ミー (End Title) feat. DJキャレド (Friend Like Me (End Title)」

ジャスミンが国王になりハッピーエンドを迎えたラスト、「フレンド・ライク・ミー (Friend Like Me)」のインストで一同がキレッキレのダンスを見せて大団円を迎える。そして、エンドロールと共に始まるのが「フレンド・ライク・ミー (End Title) feat. DJキャレド (Friend Like Me (End Title) ft. DJ Khaled)」だ。「フレンド・ライク・ミー」をリミックスしたこの曲では、ウィル・スミスと人気DJのキャレドがコラボレーション。ラッパーとして活動してきたウィル・スミスがガチのラップを披露している。

「ジャスミンの花のように青くて綺麗」「三つの願いを言ってみな」「天気だって変えられる」「そんな友達見たことないだろ」と、『アラジン』の世界観をラップ。一方で、「I’m the Genie with the attitude」と、伝説のヒップホップグループ N.W.A (Niggaz With Attitudes) を意識した歌詞が登場するなど、ジーニー風のセルフボースティングと合わせてヒップホップ色の強い楽曲になっている。ちなみにDJキャレドはいつも通りシャウトを入れるだけでラップはしていない。

流石にこの曲に日本語吹き替えはなく、吹き替え版もエンドロールではウィル・スミスの曲が流れている。

「ホール・ニュー・ワールド (End Title) (A Whole New World (End Title))」

エンドロールの二番目に流れる曲はジャヴァイア・ワードZAYNが歌う「ホール・ニュー・ワールド (End Title) (A Whole New World (End Title))」。ジャヴァイア・ワードは17歳で歌手デビューを果たし、19歳で「ホール・ニュー・ワールド」を歌うことに。ZAYNは、2015年までゼイン・マリクとしてワン・ダイレクションに所属していたアーティストだ。二人が歌う「ホール・ニュー・ワールド」はミュージックビデオが公開されており、2021年5月時点で2億2,000万回以上再生されている。

以上が、実写映画版『アラジン』で流れた楽曲だ。俳優と声優達の見事な歌唱で21世紀にアップデートされた『アラジン』の物語を創り出している。本作は既に続編制作も決まっている。次回作もその歌に期待しよう。

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『アラジン』はMovieNEX+ブルーレイ+DVDが発売中。

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キャストと吹き替え声優のまとめはこちらの記事で。

テーマに焦点を当てたネタバレ解説はこちらから。

『アナと雪の女王』で流れた歌の全曲解説はこちらから。

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