“あの絵画”と衣装の親和性は?『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』ネタバレ考察&解説 | VG+ (バゴプラ)

“あの絵画”と衣装の親和性は?『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』ネタバレ考察&解説

©2023 「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 ©LUCKY LABD COMMUNICANTIONS/集英社

ドラマシリーズから映画の世界へ

週刊少年ジャンプで連載が開始され、現在ではウルトラジャンプにて連載されている荒木飛呂彦原作の大人気漫画シリーズ『ジョジョの奇妙な冒険』(1986-)シリーズ。2023年にはハワイ・オアフ島を舞台に大富豪を目指す少年のジョディオ・ジョースターを主人公にした第9部『The JOJOLands』がスタートし、2012年にはアニメシリーズも放映されるなど、約37年経つ2023年現在でも人気を博している。

 

『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部『ダイヤモンドは砕けない』で初登場して以来、屈指の人気を誇る原作者の荒木飛呂彦の理想の漫画家像である岸辺露伴。その岸辺露伴を主人公にした高橋一生主演のスピンオフドラマシリーズである『岸辺露伴は動かない』(2020-)の映画化作品である『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が、2023年5月26日(金)に全国公開された。

実際の舞台となったフランスのパリにあるルーヴル美術館で撮影が敢行されたことでも注目を集める『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』だが、その衣装デザインも岸辺露伴が「手に負えない」と評したルーヴル美術館に負けないほどこだわり抜かれている。

本記事では衣装デザインなどの美術の点から『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』について考察、解説していこう。なお、本記事は『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の内容に関するネタバレを含みます。

ルーヴル美術館での撮影

“あの絵画”との共演

ルーヴル美術館での撮影が注目を集める『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』だが、その中でも注目すべきは高橋一生演じる岸辺露伴と世界的絵画であるモナリザとの共演である。モナリザといえばレオナルド・ダヴィンチの描いた名画として知らぬ人はいないが、『ジョジョの奇妙な冒険』の読者にとっても切っても切り離せない存在である。

まず、一番有名なのは『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部『ダイヤモンドは砕けない』に登場した岸辺露伴に匹敵する人気キャラクターにして、第4部の最強の敵である女性の手に固執する連続殺人鬼の吉良吉影である。吉良吉影はキラークイーンというスタンド(岸辺露伴のヘブンズ・ドアーと同じ超能力の一種)を有しているが、キラークイーンにはシアーハートアタックとバイツァ・ダストという更なる能力が存在している。

その中でも特筆すべきなのがバイツァ・ダストだ。バイツァ・ダストは吉良吉影が自身の正体を知られずに平穏に暮らしたいという強い想いを抱いたことで発言したスタンドで、スタンド使いではない対象者に自分が吉良吉影だと明かし、対象者が吉良吉影の存在を漏らそうとすると爆発によって時を巻き戻す能力である。

最後の戦いで追い詰められた吉良吉影は血まみれの自分を救護しに来た女性の医者の手をさすりながら、過去にモナリザの手を見て勃起したことを明かし、それによってバイツァ・ダストを発動しようとした。この場面は『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ屈指の不気味な場面であり、これ以降、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズではモナリザが言及されるようになる。

“あの絵画”と『ジョジョの奇妙な冒険』の関わり

第4部『ダイヤモンドは砕けない』で吉良吉影の最低の告白によってはじめて言及されたモナリザ。それ以降の作品でもある意味でスタンドに近しい存在として語られており、岸辺露伴が荒木飛呂彦の思い描く理想の漫画家像だとすれば、モナリザは荒木飛呂彦の思い描く理想の芸術作品だと考えられる。

第6部『ストーンオーシャン』では『ジョジョの奇妙な冒険』におけるジョースター家と100年以上の因縁を持つ吸血鬼のDIOが、かつてモナリザとミロのヴィーナスについて「自分の魂を目に見える形にできる、まるで時空を超えたスタンドだ」だと若い日のプッチ神父に語っている。それほどまでにモナリザという名画は『ジョジョの奇妙な冒険』に影響を与えている作品なのだ。

そして『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』において漫画版と映画版の両作品で、岸辺露伴はモナリザに似ていると指摘されている。ある意味では、それが容姿の面でも岸辺露伴が荒木飛呂彦の思い描く理想の人物像であることだと言える。映画版『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』では高橋一生が演じる岸辺露伴がモナリザを前にするという、モノマネ番組におけるご本人登場のような贅沢な演出が行われている。

衣装デザインと“あの絵画”

『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の衣装デザイン

庵野秀明監督作品『シン・ゴジラ』(2016)や『シン・仮面ライダー』でも衣装デザインを務め、ドラマシリーズ『岸辺露伴は動かない』でも人物デザイン監修と衣装デザインの柘植伊佐夫は、高橋一生演じる岸辺露伴の衣装デザインにアシンメトリーを入れることで、芸術には真面目な顔と好奇心から厄介事に巻き込まれる顔の二面性を表現している。他にも様々な面でも衣装デザインにこだわりが込められているが、最大の特徴は最後の場面の木村文乃演じる奈々瀬の衣装デザインだろう。

漫画版『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』では最後に実際に奈々瀬は登場せず、回想の中のみとなったが、映画版『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』では山村仁左衛門の真相を語る存在として、本当の姿である山村奈々瀬(岸辺奈々瀬)として登場する。そこでの衣装デザインが漫画版『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の回想のように和服でも、初めて会ったときの服装とも異なるモナリザに似た衣装デザインとなっているのだ。

奈々瀬の衣装デザインの意味

奈々瀬の衣装デザインがモナリザになっている意味として考えられるのが、奈々瀬が約250年以上前の江戸時代の頃から山村仁左衛門が描いた「この世で最も黒く、最も邪悪な絵」の怨念によって、「絵の呪い」ともに囚われている人物だからだと考えられる。奈々瀬は時空を超えた存在なのだ。

第6部『ストーンオーシャン』でDIOがプッチ神父に語ったようにモナリザとミロのヴィーナスは、「自分の魂を目に見える形にできる、まるで時空を超えたスタンドだ」と荒木飛呂彦の描く世界観の中では表現されている。それは怨念や呪いによって囚われている奈々瀬も同様であり、一種の時空を超えるスタンドのような存在なのだ。

岸辺露伴はルーヴル美術館のZ-13倉庫で山村仁左衛門の怨念に襲われた際に、その記憶をヘブンズ・ドアーで読み、それによって自分を襲うのを阻止しようとするが死者にヘブンズ・ドアーを使っても意味がなく、書いた文字はすぐに「死」に上書きされてしまう。しかし、映画版『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』では同じく死者であるはずの奈々瀬の記憶を読むことができる。

この矛盾する現象は第4部の『ダイヤモンドは砕けない』でも起きており、かつて吉良吉影に襲われ、幼少期の岸辺露伴を逃がすために命を落とした杉本美鈴の記憶もヘブンズ・ドアーで読むことができていた。杉本美鈴も吉良吉影が岸辺露伴達の住む杜王町にいる限り、歳を取ることもなく、この世に囚われており、奈々瀬と似た境遇の存在だと言える。

映画オリジナルの衣装デザイン

映画版『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』では脚本家の小林靖子も含め、スタッフ全員が漫画版『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズや漫画版『岸辺露伴は動かない』シリーズの世界観を壊さないように細心の注意を払いつつ、オリジナル要素を入れて映画としてまとめ上げている。奈々瀬の独白というオリジナル要素を入れつつ、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ世界観を崩さないようにした結果がモナリザに寄せた演出だったのではないだろうか。

モナリザという原作者の荒木飛呂彦が敬愛し、漫画版のファンにも馴染み深い名画によって、丁寧に奈々瀬の設定を活かしている。今後のドラマシリーズ『岸辺露伴は動かない』でも、これらのような設定の活かし方が行われるのか。注目していきたい。

映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は2023年5月26日(金)より、全国の劇場で公開。

映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』公式サイト

集英社
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映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』のキャスト及び登場人物紹介記事はこちらから。

映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』で描かれた荒木飛呂彦の描く恐怖に関する考察と解説記事はこちらから。

映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の泉京花が持つものに関する考察と解説記事はこちらから。

アニメ『岸辺露伴は動かない』はNetflixにて配信中

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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