パワーレンジャー30周年記念『パワーレンジャー映画版』パワーレンジャーの成り立ちと歴史を解説 | VG+ (バゴプラ)

パワーレンジャー30周年記念『パワーレンジャー映画版』パワーレンジャーの成り立ちと歴史を解説

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©SCG Power Rangers LLC ©Toei Company, Ltd.

2023年7月1日東映特撮Youtube Officialで配信決定

全盛期には玩具を買うために渋滞が起き、今でもNetflixオリジナル製作番組として『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー:ワンス・アンド・オールウェイズ(原題:Mighty Morphin Power Rangers: Once & Always)』(2023)が配信され、『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017-2018)を題材にした『パワーレンジャー:コズミック・フューリー(原題:Power Rangers: Cosmic Fury)』(2023-)のNetflix配信が決定するなど、根強い人気を誇る「パワーレンジャー」シリーズ。その記念すべき最初の映画『パワーレンジャー映画版』(1995)が2023年7月1日に東映特撮Youtube Officialで配信することが決まった。

「パワーレンジャー」シリーズと聞くと、日本の「スーパー戦隊」シリーズを海外輸出しただけだと思われがちだが、そこには紆余曲折の長い歴史があり、近年の映画界にも通じる玩具業界の映画界への進出などが見て取れる。本記事では、『パワーレンジャー映画版』に至るまでの歴史とその特徴を解説し、『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー:ワンス・アンド・オールウェイズ』の内容にも少しながら触れていきたい。

東映特撮のアメリカ進出

スタン・リーと「スーパー戦隊」シリーズをつないだスパイダーマン

『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975-1977)からはじまった「スーパー戦隊」シリーズ。しかし、当初は現在の「スーパー戦隊」シリーズではお馴染みの巨大ロボットなどは登場していなかった。そこに影響を与えたのが東映とマーベルがタッグを組んだ東映版『スパイダーマン』(1978-1979)だ。そこで登場したスパイダー星人の宇宙戦闘艦マーベラーとそれが変形するレオパルドンは大きな衝撃を与え、「スーパー戦隊」シリーズの巨大ロボットの礎の一つとなった。

これに興味を示したのが、「スパイダーマン」シリーズにも携わったスタン・リーだ。『バトルフィーバーJ』(1979-1980)と『電子戦隊デンジマン』(1980-1981)、『太陽戦隊サンバルカン』(1981-1982)の3作品で東映とマーベル、バンダイが提携した。そこに乗じる形でスタン・リーはアメリカ市場に「スーパー戦隊」シリーズを持ち込むべく、当時のマーベルにおける上司であり、後のフォックスキッズ社長兼CEOのマーガレット・ロエシュと共に吹替版を製作して関係者に持ち込んだ。だが、評価は散々であり、一度目の「スーパー戦隊」シリーズのアメリカ上陸は断念された。

新たな発見をしたハイム・サバン

一度はアメリカ上陸を断念した「スーパー戦隊」シリーズだが、ハイム・サバンという人物によって「パワーレンジャー」シリーズとしてアメリカ上陸を果たす。ハイム・サバンはザ・ライオン・オブ・ジューダというバンドの元ベーシストで、80年代の子供向けアニメの音楽制作を担当していた。ハイム・サバンは1984年に日本を訪れた際にホテルで「スーパー戦隊」シリーズを見たことが「パワーレンジャー」シリーズ誕生のきっかけとなる。ハイム・サバンはヒーローたちがマスクをつけていることに目をつけて「変身後のアクション部分のみ吹替で、変身前のドラマ部分はアメリカ人に馴染み深いものにすれば予算削減にもなってよいのでは?」と思い付いたのだ。

最初は『超電子バイオマン』(1984-1985)を企画案として持ち込むも失敗続き。そんなハイム・サバンが持ち込んだ相手の中にあのマーガレット・ロエシュがいたのだ。そこで契約を結ぶことに成功したハイム・サバンとサバン社だったが、マーガレット・ロエシュの上司はこの契約に否定的な見解を持っていた。その上司を納得させるべく、ハイム・サバンは当時放映されていた『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992-1993)の放映権利を獲得してきた。

しかし、一つ大きな問題があった。アメリカで「ジュウ」というのはユダヤ系の方に対する蔑称と取られかねなかった。そのことを一番理解していたのは自身がイスラエル出身のユダヤ系であるハイム・サバン本人だ。ここで新しい名前が必要とされる。そこで「トランスフォーマー」シリーズや「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」を参考にしてつけられた新しい名前で発表されたのが『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』(1993-1996)だった。

人気全盛期に製作された『パワーレンジャー映画版』

大幅に変更された設定

ファンタジーRPGと恐竜を掛け合わせた設定の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』と『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』の設定は大きく異なっている。『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』では、レンジャーとは善の支配者でエルター星から来たゾードンによって力を与えられた存在となっている。しかし、シーズン2、シーズン3と続くと日本では『五星戦隊ダイレンジャー』(1993-1994)や『忍者戦隊カクレンジャー』(1994-1995)と違う物語になってしまった。

『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』では衣装などを変更すると子供たちが混乱すると判断し、衣装変更は基本的にせずに敵だけを変えていく形に落ち着いた。衣装が変わったのはジェイソン・デビッド・フランク演じるトーマス”トミー”オリバーが、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のドラゴンレンジャーを基にしたグリーンレンジャーから、『五星戦隊ダイレンジャー』のキバレンジャーを基にしたホワイトレンジャーに変更されただけである。そのため『パワーレンジャー映画版』では『恐竜戦隊ジュウレンジャー』の中心に『五星戦隊ダイレンジャー』のキバレンジャーがいるという日本のファンからすると奇妙な状態になっている。

変更されたスーツ

変更されたのは設定だけではない。映画ではこれまでの日本制作の部分とアメリカ製作の部分をうまく組み合わせる手法の『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』とは異なり、製作は20世紀フォックスが主導となって行われている。そのため、スーツの材質や武器にも変化があらわれた。

もともとファンタジーRPGと恐竜を組み合わせた『恐竜戦隊ジュウレンジャー』と中国武術と気功を組み合わせた『五星戦隊ダイレンジャー』、さらには忍者がテーマの『忍者戦隊カクレンジャー』を一つにつなぎ合わせ、なおかつそれらの能力が善の支配者ゾードン由来というSF設定にしないといけない制約が映画には要求されていた。それを解消すべく、『パワーレンジャー映画版』のスーツはSFチックかつアメリカ的なものへと変更されている。

まず、スーツの生地はラテックス加工のされたスパンデックスに変更され、全身革張りといったデザインになった。そこに筋肉を思わせるウレタンやビニールのプロテクターを組み合わせて筋骨隆々なアクションフィギュアよりのシルエットへと変わっていく。更に『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のティラノレンジャーにあたるレッドレンジャーには暗視ゴーグル「パワースコープ」が装備されたものグラスファイバー製のヘルメットが作成され、タイガーレンジャーにあたるイエローレンジャーのヘルメットには車のハイビームのような「パワービーム」という発光ギミックが組み込まれた。

また、装備もファンタジーな『恐竜戦隊ジュウレンジャー』とは異なり、トリケラレンジャーにあたるブルーレンジャーはバットマンのグラップルガンに似たワイヤー発射機「ストリンガー」、プテラレンジャーにあたるピンクレンジャーは「プテロダクティル電撃鞭」を装備するなどSF色が強められている。これが後半の忍術習得とのギャップに一役買っている。また、これらのスーツは2020年12月の「エンターテイメント・メモラビリア・ライブ・オークション」に出品された。

人気を牽引したオリジナルキャラクターとさまよう権利

『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』では魔女パンドーラのリタ・レパルサなどが人気となった。その一方でアメリカ発のオリジナルキャラクターも登場しており、彼らは人気を牽引した。それがジェイソン・デビッド・フランク演じるトーマス”トミー”オリバーと悪の帝王ことロード・ゼッドだ。トミーことトーマス”トミー”オリバーは主人公たちの通うエンジェルグローブ高校に来た転校生という設定で登場し、その後は何と『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のドラゴンレンジャーにあたるグリーンレンジャー、『五星戦隊ダイレンジャー』のキバレンジャーにあたるホワイトレンジャーへと続けて変身した。

更にはトーマス”トミー”オリバーは「パワーレンジャー」シリーズにおける伝説的な存在として他の作品にも登場し、続編の『超力戦隊オーレンジャー』(1995-1996)にあたる『パワーレンジャー・ジオ』(1996)と『激走戦隊カーレンジャー』(1996-1997)にあたる『パワーレンジャー・ターボ』(1997)ではレッドレンジャー、『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003-2004)にあたる『パワーレンジャー・ダイノサンダー』(2004)では司令官のような立ち位置でブラックレンジャーとして登場した。

それと対をなすように登場したのが悪の帝王の異名を持つロード・ゼッドだ。この2人は「パワーレンジャー」シリーズの権利が混迷する中でも人気のキャラクターとして登場し続けた。ハイム・サバン率いるサバン社から20世紀フォックスに移り、更に権利はディズニーに移っていく。一時、アメリカのディズニーリゾートのパレードに「パワーレンジャー」が登場していた。

だが、ディズニーは業績が悪いことを理由に「パワーレンジャー」シリーズの放映権利を手放し、「パワーレンジャー」シリーズの権利は紆余曲折、長い時間をかけてサバン社へと戻ってきた。だが、それとは裏腹にバンダイとの玩具での提携は切れ、「G.I.ジョー」シリーズや「マイ・リトルポニー」シリーズ、更には「トランスフォーマー」シリーズを有するハズブロ社と玩具や放映などに関して提携することになる。ここが日本での『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー:ワンス・アンド・オールウェイズ』の配信を難しくさせている点の一つだ。

『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー:ワンス・アンド・オールウェイズ』の背景

日本では複雑な権利関係のせいか、Netflixでも見ることのできない『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー:ワンス・アンド・オールウェイズ』。この『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー:ワンス・アンド・オールウェイズ』は『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』の続編にあたり、敵の復活により初代イエローレンジャーのトリニー・クワンが死亡。主人公を務めるデビッド・ヨースト演じるビリー・クランストン(ブルーレンジャー)はトリニー・クワンの娘でチャーリー・カーシュー演じるミンに責められ、これまでの人生を振り返る内容だ。

何故、「初代イエローレンジャーの死」という衝撃的な題材が挙げられたかというと、初代イエローレンジャーのトリニー・クワンを演じたサイ・タングが27歳の若さで交通事故により亡くなっているからだ。これは制作陣やファンの心にも深い影を落とし、『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー:ワンス・アンド・オールウェイズ』はそのトラウマと向き合う作品だと考えられる。また、人気キャラクターであるトーマス”トミー”オリバーを演じたジェイソン・デビッド・フランクも49歳の若さで亡くなり、両者は声のみアーカイブ出演となっている。

ある意味で『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー:ワンス・アンド・オールウェイズ』は作品を通して幼少期のヒーローとファンや俳優たちの人生を振り返る作品だと考えられる。今回の『パワーレンジャー映画版』の東映特撮Youtube Officialでの公開に合わせて、日本でも『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー:ワンス・アンド・オールウェイズ』が配信されることを切に願う。

『パワーレンジャー映画版』は2023年7月1日より東映特撮Youtube Officialで配信開始。

『パワーレンジャー・ジオ』と『パワーレンジャー・ターボ』をつなぐ『映画 パワーレンジャー・ターボ 誕生!ターボパワー』についての記事はこちらから。

同じく東映特撮作品の記念作品である『シン・仮面ライダー』のラストに関する考察&解説記事はこちらから。

同じく東映特撮作品の記念作品である『仮面ライダーBLACK SUN』の第1話と第2話に関する考察&解説記事はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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