『映画 パワーレンジャー・ターボ 誕生! ターボパワー』パワーレンジャーの歴史の転換期を解説 | VG+ (バゴプラ)

『映画 パワーレンジャー・ターボ 誕生! ターボパワー』パワーレンジャーの歴史の転換期を解説

©SCG Power Rangers LLC ©Toei Company, Ltd.

「パワーレンジャー」シリーズ30周年記念配信決定

東映特撮Youtube Officialにて「パワーレンジャー」シリーズ30周年記念と題し、『パワーレンジャー映画版』(1995)に続き、『映画 パワーレンジャー・ターボ 誕生!ターボパワー』(2000)が2023年7月8日に配信されることが決定した。『映画 パワーレンジャー・ターボ 誕生!ターボパワー』は『パワーレンジャー・ジオ』(1996)と『パワーレンジャー・ターボ』(1999-2000)をつなぐ物語となっている。

独立した世界観を有していた『パワーレンジャー映画版』とは異なり、『映画 パワーレンジャー・ターボ 誕生!ターボパワー』は作品同士をつなぐための映画となっている。しかし、それ以上に『映画 パワーレンジャー・ターボ 誕生!ターボパワー』は作品同士をつなぐだけではなく、「パワーレンジャー」シリーズの歴史の一つの転換期の作品と考えられることが多い。本記事ではそれも含めて。『映画 パワーレンジャー・ターボ 誕生!ターボパワー』について解説していこう。

「知っていることを忘れろ」

この衝撃的なキャッチコピーは、『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』(1993-1996)の続編として、『超力戦隊オーレンジャー』(1995-1996)を基に製作された『パワーレンジャー・ジオ』の広告として玩具雑誌などに掲載されたキャッチコピーだ。坂本浩一アクション監督がプロデューサーに掛け合ったことで『パワーレンジャー・ジオ』をきっかけに「パワーレンジャー」シリーズも日本と同様、毎年スーツのデザインが変更されることになる。

そして、『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』とは異なる作品であることが強調された『パワーレンジャー・ジオ』。悪の帝王ことロード・ゼッドやリタ・レパルサは登場するがメインヴィランはマシン・エンパイアになり、1996年に売上が頭打ちになった『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』より対象年齢を少し上げてハイティーン向けに製作されたとされる。

レッドレンジャーには『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』で大人気キャラクターとなったジェイソン・デビッド・フランク演じるグリーンレンジャーとホワイトレンジャーに変身したトーマス・”トミー”・オリバーがジオレンジャー5・レッドとして起用された。ハイティーンを対象にし、追加戦士枠であったトーマス・”トミー”・オリバーをレッドレンジャーに起用するなど抜本的な改革が行われた『パワーレンジャー・ジオ』だったが、『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』ほどの爆発力はなく、映画化の企画も頓挫した。

少年戦士加入

『パワーレンジャー・ジオ』を受け、更なる起爆剤の投入が必要だと判断したサバン社。その起爆剤の一つが、対象年齢を下げることだった。そのような企画ではじまった『パワーレンジャー・ターボ』だったが、基となる『激走戦隊カーレンジャー』(1996-1997)が明るい作風だったため、それを活かした作品づくりが行われた。

一方で、戦闘場面は『激走戦隊カーレンジャー』のアメリカ人の目にコミカルすぎると映った作風をを控え目にするため現地撮影が増え、善の支配者ゾードンや引き続きレッドレンジャーを務めていたジェイソン・デビッド・フランク演じるトーマス・”トミー”・オリバーが降板。セルウィン・ウォード演じるシリーズ初の黒人リーダーのT.Jことセオドア・ジェイ・ジャービス・ジョンソンの登場など、作品全体の刷新が図られた。

ハイティーン向けとしていた『パワーレンジャー・ジオ』とターゲットの年齢層を下げた『パワーレンジャー・ターボ』をつなぐ橋渡し役として製作されたのが、今回配信される『映画 パワーレンジャー・ターボ 誕生!ターボパワー』だ。子供たちに共感されやすいキャラクターとしてブレーク・フォスター演じるブルーレンジャーことジャスティン・スティワートは12歳の少年という設定になり、高校に通う理由も飛び級ということになった。

『映画 パワーレンジャー・ターボ 誕生!ターボパワー』は起爆剤となったか

ジャスティン・スティワート役のブレーク・フォスターは、1998 年のヤング・アーティスト・アワードで長編映画主演若手俳優賞にノミネートされたものの、『パワーレンジャー映画版』ほどの衝撃は観客に与えられなかったと当時の批評家は判断した。

『パワーレンジャー映画版』ではスーツのデザインから一新され、生地はラテックス加工がされたスパンデックスの革張りのスーツにウレタンとビニール製の筋肉を思わせるプロテクター、グラスファイバー製のヘルメットに仕込まれたギミックやバットマンのようなガジェットが目を引いた。しかし、『映画 パワーレンジャー・ターボ 誕生!ターボパワー』ではそのようなスーツの変更は行われず、重きが置かれたのは『パワーレンジャー・ジオ』とターゲットの年齢層を下げた『パワーレンジャー・ターボ』をつなぐ橋渡しであることだった。

そのため、「パワーレンジャー」シリーズらしさを評価するファンと独立した映画としての完成度を求めるファンの間で意見は真っ二つに割れた。否よりの賛否両論といった状態になった『映画 パワーレンジャー・ターボ 誕生!ターボパワー』だが、この後に「パワーレンジャー」シリーズの放映権利はサバン社から20世紀フォックス、ディズニーなど渡り歩くことになる。その評価は是非自分の目で確かめてほしい。

『映画 パワーレンジャー・ターボ 誕生!ターボパワー』は2023年7月8日より配信開始。

『パワーレンジャー映画版』と「パワーレンジャー」シリーズの歴史に関する記事はこちらから。

同じく東映特撮作品の記念作品である『シン・仮面ライダー』のラストに関する考察&解説記事はこちらから。

同じく東映特撮作品の記念作品である『仮面ライダーBLACK SUN』の第1話と第2話に関する考察&解説記事はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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