ラストネタバレ考察&解説『ブルービートル』 家族愛が生み出す新世代のヒーロー | VG+ (バゴプラ)

ラストネタバレ考察&解説『ブルービートル』 家族愛が生み出す新世代のヒーロー

DC LOGO, BLUE BEETLE and all related characters and elements(C) & DC. Blue Beetle (C)2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved

有色人種にとっての希望の星、ブルービートル

2023年に公開された映画『ブルービートル』はヒスパニック系のショロ・マリデュエニャを主人公にしたヒーロー映画で、DCEU(DCエクステンデッドユニバース)の末期の作品だ。しかし、DCEUからDCU(DCユニバース)への移籍が決まっている作品でもあり、映画『ブルービートル』にはDCUの未来が詰まっていると考えることができる。

本記事ではそのような映画『ブルービートル』のラストを考察と解説をしていこう。なお、本記事は映画『ブルービートル』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ブルービートル』の内容に関するネタバレを含みます。

DCUの新世代のヒーロー映画『ブルービートル』

ハイメ・レイエス、旅のはじまり

考古学者ダン・ギャレットが宇宙から来た魔法のスカラベを発見し、それをテッド・コード率いるコード産業が支援していた頃、街にはスーパーヒーローがいた。甲虫型のバグシップを操り、犯罪者に立ち向かうヒーローの名前はブルービートル。コード産業は環境保全活動に力を入れ、世界に平和が訪れるはずだった。突如、コード産業CEOのテッド・コードが失踪。彼の後任を務める妹のビクトリア・コードは軍事産業を再開させ、魔法のスカラベの捜索に力を入れるようになる。そしてスカラベの原理を利用し、中止されていた民間警察OMACを復活させはじめた。

それから月日は流れ、ゴッサム法科大学を卒業したばかりのハイメ・レイエスは窮地に立たされていた。故郷のパルメラ・シティに帰り、家族に大学卒業を報告するはずが、家族から祝いの席で家の退去命令が出ていることが知らされたのだ。頼みの綱である車の修理工場はコード産業の進出と父親のアルベルト・レイエスの心臓発作が重なり倒産してしまった。学生ローンで進学していたハイメは大学院進学を諦め、就職する道を選ぶ。

ビクトリアの屋敷で清掃員をしていたハイメは、ビクトリアたち富裕層から無視される透明人間のような扱いを受けていた。これは実際のヒスパニック系の人々の実体験から来ていると考察できる。裕福な白人にとって、使用人を務める有色人種は透明人間なのだ。これは第96回アカデミー賞で白人俳優たちがアジア系俳優たちからオスカー像をもぎ取り、白人俳優同士で抱き合い、アジア系俳優を無視した事件を想起させる。

その矢先、ハイメはテッド・コードの娘のジェニー・コードとビクトリアの口論を目撃する。ジェニーはコード産業の軍事産業化に反対しており、民間警察OMACを止めようとしていた。その口論に図らずも首を突っ込んでしまったハイメは仕事を解雇される。しかし、ジェニーの口添えでコード産業の面接の機会を得る。それが新たなるブルービートルのはじまりだった。

家でハイメの祖母のナナがテレビを見ているがそこは小ネタの宝庫となっている。まず、最初に見ているドラマが『マリア・ラ・デル・バリオ』(1995-1996)で、これは使用人の女性のマリアが、若い金持ちのルイスと結婚して成り上がっていく物語である。その次に移るのはギレルモ・デル・トロ監督作『クロノス』(1992)で、こちらは血を吸う金属製の甲虫に魅了された男のホラー映画だ。これらは今後のハイメがブルービートルになってどうなるかを暗示していると考察できる。

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新しいブルービートル、誕生

コード産業に就職面接に来ていたハイメは、ジェニーが持ち出した魔法のスカラベの入った箱を託される。スカラベが入っている箱はビックベリー・バーガーの箱で、ビッグベリー・バーガーはDCコミックスの世界において有名なチェーン店だ。好奇心から箱を開けてしまったハイメは、魔法のスカラベに寄生されて宿主〈ホスト〉になってしまう。魔法のスカラベはハイメの前身を金属で覆い、ハイメはブルービートルへと変身した。

魔法のスカラベの宿主〈ホスト〉になってしまったハイメは、ブルービートルの姿で街を大暴走してしまう。何とかして家に帰れたハイメだったが、パニックを起こしてジェニーに背中の魔法のスカラベを摘出してもらおうとする。しかし、ジェニーは銃を持った特殊部隊に追われていた。ジェニー曰く、父親のテッド・コードは魔法のスカラベを“世界を破壊する兵器”と呼んでおり、それだけではなく“魔法のスカラベは選ばれし者にしか起動できない”と語っていたとのことだ。何とかして取り外そうとするハイメだったが、そこに魔法のスカラベを狙うビクトリアの魔の手が迫る。

不死身の男、カラパックス

魔法のスカラベを取り外す鍵となるテッドウォッチを奪い、コード産業から逃げようとするジェニーとハイメのもとにカラパックス中尉が現われる。カラパックス中尉はOMACを装備し、ブルービートルと戦闘になる。カラパックスは原作コミックでは2代目ブルービートルであるテッド・コードの宿敵である。原作コミックの展開では、パゴ島でテッド・コードの叔父で悪の科学者ジャービス・コードとの対決の末にダン・ギャレットは戦死する。

そのダン・ギャレットに嫉妬していた考古学者がカラパックスであり、パゴ島までダン・ギャレットの後を追う。そこでジャービスの残したロボットに触れて感電死したカラパックスだったが、その意志はロボットに移り、不死身の男カラパックスというヴィランになったのだ。

映画『ブルービートル』ではアメリカ軍出身で、かつて戦争で酷い怪我を負い、ビクトリアの手でOMACに改造された設定に変わっている。一度は魔法のスカラベの人工知能で勝利しかけたブルービートルだったが、殺しを拒否したことで逆転されてしまう。そしてカラパックスは「家族への愛はお前を弱くする」と言い放つが、この家族愛に対する考え方の違いが、映画『ブルービートル』の物語の軸になっていると考察できる。

カラパックスから逃げ、コード邸に辿り着いたハイメたちはその地下の秘密基地を発見する。そこでハイメと叔父のルディ・レイエスパルメラをホームタウンにしていたヒーローである先代ブルービートルが、テッド・コードであったことを知る。テッド・コードはヒーローではあったが、“選ばれし者”ではなかった。そこでテッド・コードは自分の父親と妹が軍事産業で巨大化させたコード産業の技術を活かし、様々な発明を行なってヒーロー活動をしていた。

受け継がれるヒーロー、ブルービートル

受け継がれる魔法のスカラベ

テッド・コードは父親と妹が築いた軍事産業を引き継いだが、ジェニーの母親である妻と出会い、世界を守る道を選んだ。しかし、妻が亡くなると魔法のスカラベに執着しはじめるようになり、失踪してしまったとのことだった。それはジェニーの心に深い傷を残し、貧乏だが家族に恵まれたハイメと富豪だが家庭崩壊したジェニーが対比的に描かれていることが考察できる。

ルディはテッド・コードの遺したデータファイルから初代ブルービートルが、魔法のスカラベを見つけたダン・ギャレットだったことを突き止める。ダン・ギャレットは魔法のスカラベことカージ・ダーに選ばれたブルービートルであり、テッド・コードはダン・ギャレットがカージ・ダーの宿主〈ホスト〉になることで何が起きるのかを調査していた。

そこではカージ・ダーは宿主〈ホスト〉の脳にまで神経を行き届かせると、共生関係を結ぶことが記録されていた。カージ・ダーは細胞単位で宿主〈ホスト〉と結びつくため、死ぬ以外で取り外す方法はなかった。ここでカージ・ダーを生んだのがエイリアンだと解説するジェニーにルディが難色を示すが、これはエイリアンに移民という意味もあるからだと考察できる。

それに一度はパニックになるハイメだったが、ルディの口から移民として父親であるアルベルトがどのような苦労をしていたかを聞く。アルベルトはその苦労を家族と暮らすための運命だと考えていた。映画『ブルービートル』には家族愛、そして移民たちにとってのヒーローがテーマにあることがルディの発言から考察できる。ブルービートルとは、ヒスパニック系の人々にとって希望の星でもあるのだ。

3代目ブルービートル

コード産業はレイエス家に特殊部隊を送り込んでいた。それを察知したハイメはビクトリア率いるコード産業と対決する覚悟を決める。3代目ブルービートルとして、不殺のヒーローになったハイメに対し、ビクトリアは能力を確かめるために特殊部隊を差し向ける。最初はハイメが優位だったが、父親のアルベルトが心臓発作を起こしたことで生まれた隙を利用して、カラパックスは特殊な鉤爪でハイメを確保する。

アルベルトの死によって失意の中にいるレイエス家だったが、祖母のナナはビクトリアからハイメを助け出すために戦うべきだと発破をかける。ジェニーはテッド・コードが遺した甲虫型飛行艇バグシップと装備を使い、コード産業が所有するパゴ島に向った。3代目ブルービートルとはハイメ・レイエスが1人でなるヒーローではない。レイエス家やテッド・コードやダン・ギャレットの意志を継ぐ者たちが協力することで3代目ブルービートルというヒーローになるのだと考察できる。

OMACのデータのサンプルのために殺されそうになっていたハイメのもとへ、レイエス家が向かう。甲虫型飛行艇バグシップには文字通り虫のように動くビーストモードが搭載されており、それによって特殊部隊の隊員を蹴散らすのだった。

大量生産されたOMACへのデータ転送によって死の淵をさまようハイメだったが、死んだはずの父親のアルベルトと意識の中で再会する。そこでアルベルトはまだ死ぬのには早いこと、そして宇宙がハイメを認めたこと、3代目ブルービートルになるのは運命だったことを告げる。父親の言葉によって迷いを断ち切り、再起したハイメはカージ・ダーと完全に同期することに成功する。ここで指を触れる場面は、ミケランジェロの『アダムの創造』を想起させる。『アダムの創造』はDCEUで用いられるテーマで、『ジャスティスリーグ』(2017)でもワンダーウーマンとフラッシュで再現されている。

パゴ島に取り残されたジェニーと妹のミラグロを救うべく、3代目ブルービートルとしてハイメはコード産業の特殊部隊と立ち向かう。3代目ブルービートルは最初こそ優位に立っていたが、完全なOMACを装備したカラパックスに家族を侮辱され、傷つけられてしまう。怒りのままカラパックスを殺害しようとするハイメをカージ・ダーがそれを止める。そして、カラパックスの記憶を見せるのだった。

それぞれの道

カラパックスはグアテマラの元少年兵であり、コード社のつくった兵器で家族を失ったところをビクトリアに利用されたのだった。どこで道を間違えたのか。もしかしたら、自分も家族を失った悲しみで同じ道を歩んでいたかもしれないと思い、ハイメはカラパックスの殺害を思いとどまる。

祖母のナナが血を流した革命の経験を持つなど、映画『ブルービートル』は移民たちのヒーローだけではなく、不安定な南米情勢による難民たちのヒーローでもあったのだと考察することが出来る。ハイメはカラパックスが立ち上がるのに手を貸し、「家族への愛はお前を弱くする」へのアンサーとして「家族への愛は俺を強くしてくれる」と返すのだった。

カラパックスは家族への愛を思い出し、自分のようなOMACが大量生産されないため、自爆する道を選んだ。それによってパゴ島は崩壊。最後までヒスパニック系の研究者の名前をサンチェスと覚えようともせずに呼び続けた白人の支配者は去り、貧しいヒスパニック系の家族が白人の巨大企業を打ち倒したのだ。

ビクトリアの後を継いだジェニーは、コード産業の軍事産業からの撤退を発表した。レイエス家は地域の助けも在り、アルベルトの死から立ち直ろうとしていた。貧困地域だったエッジ・キーズはコード産業の買収から自由になり、それぞれが新しい道へと歩み出すのだった。

ミドルクレジットの意味を解説! 感想&考察

ミドルクレジットで、コード邸へと通信が入り、2代目ブルービートルであるテッド・コードの生存が明らかになる。このミドルクレジットは映画『ブルービートル』の続編制作を意味しているのだろうか。映画『ブルービートル』はDCEUの作品だ。その一方で、ジェームズ・ガン共同CEO率いるDCUへと移籍するヒーローでもある。それについてはこちらの記事が詳しい。

そのことから映画『ブルービートル』の続編制作の可能性はあり得ると考察できる。映画『ブルービートル』は各国で配信スルーやビデオスルーになってしまい、劇場未公開の国も多いが、2024年5月29日(水)のNetflixでの配信ではDVDやBlu-rayには付属していなかった日本語吹替版が制作されるなど、高いポテンシャルを秘めた作品だ。

また、映画『ブルービートル』の作風は南米系の移民やヒスパニック系の人々、それだけではないすべての移民の人々に勇気を与える作風となっている。そして、自身のルーツを誇りに思うべきというメッセージも込められている。これはDCEUで最も高い興行成績を記録した「アクアマン」シリーズにも見られる傾向だ。そのことから、まだ映画『ブルービートル』に触れていないだけで、ファンになってくれる可能性の高い観客は多いとも考察できる。

これはワーナー・ブラザーズとDCスタジオも予測しているのか、映画『ブルービートル』はドバイでエジプト方言のアラビア語吹替版が上映されている。今後、映画『ブルービートル』がどのようにしてDCUを引っ張っていくのかにも注目したいところだ。

『ブルービートル』は11月29日(水)デジタル先行配信、12月20日(水)Blu-ray&DVD2枚組セット発売。

『ブルービートル』公式サイト

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『ブルービートル』の韓国での配信に関する記事はこちらから。

DCEU最後の作品『アクアマン/失われた王国』の公開日決定の記事はこちらから。

『ブルービートル』予告編第1弾の解説&考察はこちらから。

『ブルービートル』予告編第2弾の解説&考察はこちらから。

同じラテン系ヒーローとして繋がる『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』との関係性に関する記事はこちらから。

『ザ・フラッシュ』公開までの経緯のまとめはこちらから。

DCU10年計画『神々と怪物』の全作品の紹介はこちらから。

ヘンリー・カヴィルのスーパーマン降板に関する経緯はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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