ディズニー最新作 実写版『ムーラン』
ディズニー映画最新作『ムーラン』。同作は、1998年に製作されたアニメ映画『ムーラン』の実写映画作品。中国系アメリカ人のリウ・イーフェイが主人公ムーラン役を務め、ニキ・カーロ監督が指揮をとった。
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— ディズニー・スタジオ (@disneystudiojp) February 21, 2020
『ムーラン』はかつてディズニーが製作したアニメ映画が原作。1998年に公開されたアニメ版をニキ・カーロ監督はどのように生まれ変わらせるのだろうか。
今回は、『ムーラン』実写化にあたって、アニメ版に大幅な改変を加えたあらすじと、みどころ、注視したいポイントを原作アニメと比較しながら紹介しよう。
実写版『ムーラン』のあらすじ
実写版『ムーラン』の冒頭は、中国のある村を舞台に各家一人の男子が徴兵される中、主人公ムーランが足の悪い父に代わって男子を装って兵役につくというもの。ムーランには妹がいるという原作にはない設定も加わっているが、ここまでは原作アニメとほぼ同じあらすじ。大きく異なるのはここからだ。
実写版『ムーラン』では、アニメ版でムーランとのロマンスが描かれるリー隊長は登場せず、コン・リー演じる敵軍の魔女が中心的な役割を果たすことになる。この魔女は「本当の姿を知られたらどんな罰が待っているか」とムーランに語りかける。ムーランにとっては、自軍の兵も女性を差別し排除する“敵”だ。
魔女から「自分を偽る者に生きる資格はない」と“正論”を突きつけられるムーランだが、「自分の生き方は自分で決める」と力強く言い放つ。ムーランと同様、魔女もまた男性が支配する軍に所属しているが、二人の関係はどのように展開されるのだろうか。
アニメ版原作に登場したリー隊長に代わって実写版『ムーラン』に登場するのは、ドニー・イェン演じるタン司令官とムーランの同僚になるチェン・ホンフェイ。チェン・ホンフェイはムーランの理解者としての役割を担う。また、アニメ版でムーランをサポートしたドラゴンのムーシューも登場せず、代わってフェニックスが登場することが明らかになっている。フェニックスが担う役割にも注目だ。
以上が、現時点で判明している実写版『ムーラン』のあらすじだ。原作アニメ版の設定にはいくつもの変更が加えられている。アニメ版と違い、実写版はミュージカルにもなっていない。なぜ、ここまで変更を加える必要があったのだろうか。
『ムーラン』が乗り越えるべき原作アニメのポイント
アニメ版原作が制作されたのは、今から20年以上も前にあたる1998年。バリー・クックとトニー・バンクロフトが監督を務め、パム・コーツがプロデューサーとして加わった同作は、今見るには辛い描写が並ぶ。
アニメ版『ムーラン』では、序盤からムーランは村の中で性規範を押し付けられる。その村では、「いい家に嫁いで面目を保つ」というのが女性の役割とされている。ディズニーミュージカルの軽快な歌に合わせ「男は国守り、女は家守る」と歌いあげられ、ムーランは「やせすぎで丈夫な男の子は産めそうにない」と身体と性役割を結びつけて非難される。
ムーランは軍に入隊した後、ホモソーシャルなノリが蔓延するキャンプでしごきを受け、「男らしくない」という理由でいじめを受ける。そしてドラゴンのムーシューもそうした価値観を助長するような発言を続ける。自身が女性であることがバレる前も、バレた後も、ムーランは男社会で認めてもらうことを請い続ける。
女性差別/性差別が蔓延する社会を描いているが、問題は、アニメ『ムーラン』の中ではこうした序盤の描写が反省されたり解決されることが全くないまま物語の幕が降りるという点だ。
物語の終盤、ムーランを女性だからという理由で差別し排除した軍は、正義感から忠告に現れたムーランの助言を無視した挙句、敵軍に追い詰められてしまう。それでも彼らを見捨てなかったムーランに軍は助けられ、必要に迫られて女性性を利用した作戦で窮地を脱する。
国を救ったムーランは皇帝から勲章を与えられるが、それは国を救ったから。根本的な女性差別に対する批判はなされないまま、なぜかムーランとリー隊長のロマンスが描かれて物語は終わる。皇帝は「こんな娘はそうめったにおらん」と、ムーランの父は「心配ばかりかけおって」と、年配の男性たちは最後まで上から目線。謝罪も反省もないままだ。
一方で、異なる時代の作品を批判しているだけでは前進できない。実写版『ムーラン』のみどころは、これらのモヤモヤをいかに解消してくれるかという点だ。ディズニーでは、2019年に『アラジン』や『ライオンキング』を実写化し、その内容やメッセージは現代社会に合わせてアップデートされていた。性暴力を扱った映画『スタンドアップ』(2005)の監督として知られるニキ・カーロ監督は、『ムーラン』をどのようにアップデートするのか、そこに注目しよう。
なお、アニメ版『ムーラン』は最後まで男女二元論で構成され、セクシャルマイノリティの存在はないものとして描かれていた。ディズニーは、実写版『ムーラン』の公式サイトで「『本当の自分でありたい』と願うすべての人々の共感を呼ぶ作品となる」と紹介している。多様な性のあり方を排除しない作品になっていることを期待しよう。
実写版『ムーラン』は近日公開予定。
なお、ディズニー/ピクサー最新作『2分の1の魔法』では、ディズニー/ピクサーで初めてセクシャルマイノリティのキャラクターが明確に描かれ、話題となっている。