映画『トゥルーマン・ショー』続編は?
ジム・キャリー主演の名作コメディ映画『トゥルーマン・ショー』(1998)をご存知だろうか。典型的なアメリカ白人男性として描かれている主人公のトゥルーマン・バーバンクは、その人生の全てが隠し撮りされ、リアリティ番組として世界220カ国で放送されているが、そのことを知らずに巨大なスタジオ内で平穏な人生を生きているという設定の作品だ。箱庭の中で生き、そこに疑問を抱き始めるトゥルーマンと共に、視聴者はプライバシーや自由について考えることになる。
自分の生活が撮影されているのではないかという恐怖を感じる症例が、“トゥルーマン・ショー症候群”と呼ばれるようになるなど、『トゥルーマン・ショー』は社会にも大きな影響を与えた。
ラッパーのエミネムが2002年に発表したアルバム『ザ・エミネム・ショウ』も、『トゥルーマン・ショー』からインスパイアを受けて製作された作品である。
同アルバムは、人々に注目される自分の人生を、開き直ってショーにしてしまおうというコンセプトで製作された。2014年にはエミネムのInstagramに「私の人生はサーカスのようになっていて、常に誰かに視聴されているように感じていました。要するにジム・キャリーがこのアルバムを書いたってことです。」と記された写真が投稿されている。
その『トゥルーマン・ショー』の公開から22年の時を経て、ジム・キャリーが同作の続編について語っている。2020年2月14日(金)にアメリカで公開された『ソニック・ザ・ムービー』(日本では近日公開予定)でドクター・ロボトニック役を演じたジム・キャリーは、各媒体のインタビューで『トゥルーマン・ショー』に触れている。
以下の内容は、映画『トゥルーマン・ショー』の内容に関するネタバレを含みます。
ジム・キャリーが『トゥルーマン・ショー』の“その後”を語る
映画『トゥルーマン・ショー』では、物語のクライマックスで世界の端にたどり着いたトゥルーマンが番組のプロデューサーから引き止められながらも、自由になる道を選ぶ。トゥルーマンは、外の世界を知らない、守られながら生きてきたという事実を突きつけられながらも、見事な切り返しで、その世界にとどまることを拒否してみせる。
映画史にも残る素晴らしいエンディングが用意されていた『トゥルーマン・ショー』。その続編があるとすれば、どのような作品になるのだろうか。米Colliderのインタビューを受けたジム・キャリーは、インタビュアーからの「どの作品をリメイクしたいか」という質問に、以下のように話している。
どうでしょう……。『トゥルーマン・ショー』はマクロな話でしたが、今では身近なレベルで起きていますよね。皆が配信のチャンネルを持っていて、それぞれが自分のトゥルーマンの世界を持っている。既に存在しているんです。
トゥルーマンが壁の外に出た後にどうなったかということは、たまに考えるし、よく聞かれることなんです。少し経ってから気づいたんですが、彼は壁の外でも孤独になったと思います。なぜなら他の人々が皆あの壁の内側に入っていくからです。皆、あのドームの中で暮らしたがるんです。
こんな続編があったとしたら、滑稽でもあるが、少し哀しい話でもある。プライバシーと保護、そして自由を天秤に掛けた哲学的な問いが『トゥルーマン・ショー』の醍醐味だったはずだ。
だが、今では多くの人が世間の注目を獲得するためにプライバシーを切り売りしている。220カ国に放映されるショーに出演できるなら、人々は喜んで『トゥルーマン・ショー』の出演者となるかもしれない。生まれながらプライバシーを持てず、それを求めて外の世界へ飛び出したトゥルーマンは、この世界では再び孤立してしまうというのがジム・キャリーの見解だ。
また、ジム・キャリーは、ドイツメディアのCineNewsには以下のようにも語っている。
『トゥルーマン・ショー』は映画作品でしたが、今では現実になっています。皆が自分の配信チャンネルを持っていて、(世間の) 関心を引こうとしています。でも、誰も本当に手に入れたいものについては知らないんです。
2020年で58歳を迎えたジム・キャリーだが、世間を見る鋭い目は衰え知らずのようだ。現代社会の姿を捉えた『トゥルーマン・ショー』の続編は製作されるのだろうか。それとも、現実社会の奇妙さがSFの発想を追い抜いていってしまうのだろうか。
なお、『トゥルーマン・ショー』における設定は、SF作家フィリップ・K・ディックの『時は乱れて』(1959)との類似点も指摘されている。気になる方はこちらもチェックしておこう。
映画『トゥルーマン・ショー』はDVD&ブルーレイが発売中。