ネタバレ解説 映画『アトラス』 AI嫌いの対テロ分析官とAIの冒険 感想&考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説 映画『アトラス』 AI嫌いの対テロ分析官とAIの冒険 感想&考察

Netflix

AI嫌いとAIの冒険

『ランペイジ 巨獣大乱闘(2018)』で監督を務めるなどアクション作品を得意とするブラッド・ペイトン監督と、ジェニファー・ロペスが主演兼製作でタッグを組んだNetflix映画『アトラス』が、2024年5月24日(金)に配信が開始された。『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)でシャン・チーを演じたシム・リウがヴィランを務めるなど、Netflixの意欲作である映画『アトラス』はAI嫌いの対テロ分析官とAIがコンビを組むという物語になっている。

本記事では映画『アトラス』の解説と考察、感想を述べていこう。なお、本記事は映画『アトラス』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『アトラス』の内容に関するネタバレを含みます。

AI嫌いのアトラスとAIのスミスを考察&解説

ハーランの反乱

AIが普及した近未来。突如として発生したAIのセキュリティプロトコルの迂回という反乱で、犠牲者は300万人を超えていた。AIの専門家であるヴァル・シェパードが率いるシェパード・ロボティクスで製造されたハーランは、ヴァルの娘である10歳のアトラスと共に育った。そして世界をより良くするという目的ですべてのAIを上書きし、世界初のAIテロリストとなったのである。

世界はAIの反乱を前に協力体制を取り、国際共同連盟〈ICN〉を結成した。ICNとAIの戦争は熾烈を極めたが、ICNの勝利によって世界に平穏が帰って来た。ハーランは地球外に逃亡し、その間際に「追ってくるのはわかっている。私は必ず決着をつけに戻る。道はもうこれしかない」というメッセージを残した。それから28年の歳月が流れた。

ハーランと幼少期を共にしたアトラス・シェパードは大人になり、対テロ分析官という役職にも就いていた。テレビでは昨晩行なわれた対テロ作戦で捕らえられたカスカ・ヴィックスのニュースが流れている。カスカは地球に送り込まれたハーランの右腕であり、30年前のヴァル襲撃事件にも関与していると考察されていたAIアンドロイドだ。

ブース事務総長以外、アトラスをカスカの尋問に推薦する者はいない。アトラスは11歳で唯一の肉親である母親を殺害されて以降、感情的に不安定だと見なされていたのだ。レンジャー試験にも4回落ちている。それでもブース事務総長はアトラスがカスカの尋問に有益な人材だと信じていた。

アトラスは首だけになったカスカを尋問することになった。それは尋問よりも恐怖心を利用した拷問に近いもので、CPUを磁石でリセットし、カスカにハッキングに成功したと嘘の情報を流したのだ。それによってカスカは頭の中で真偽を確かめるべく、ハーランの居場所を思い浮かべる。それを覗き見るのがアトラスの尋問術だった。それによってアトラスはハーランがアンドロメダ銀河のGR-39にいることを突き止めた。用済みになったカスカをアトラスは処理する。

GR-39

アトラスは母親がハーランに固執したように、ハーランの死を見届けたいと固執していた。しかし、任務に変更は付き物だ。ハーランがどのようにしてAIを書き換えたのか知るべく、ハーランは処理されるのではなく、生け捕りにするようにサプテックからの圧力があったと解説される。

アトラスに不利な条件になるのはこれだけではない。ハーランを生け捕りにするための第4レンジャー大隊を率いるのは、アトラスの尋問に反対していたイライアス・バンクス大佐だった。バンクス大佐の作戦とはヴァルが創り上げたAIと人間の双方向神経リンクを利用したアークスーツによる攻撃だった。アトラスはかつて非合法であった双方向神経リンクに嫌悪感を示すも、ハーラン確保のために第4レンジャー大隊に同行する。

ハーランのこともあり、AIを徹底して嫌悪するアトラスだったが、GR-39の過酷な状況に耐えるためにはアークスーツは必要不可欠だと解説されている。第4レンジャー大隊の隊員たちがアークスーツに乗り込もうとしたとき、宇宙戦艦ダイーブが攻撃を受ける。イライアス大佐は脱出のため、咄嗟にアトラスをアークスーツに押し込んだ。地上へと落下していくアトラスたちをハーランのドローンが襲う。その状況下でもアトラスはAIとの双方向神経リンクを拒み続ける。そのまま落下したアトラスは意識を失うのだった。

極寒の雪山に不時着したアトラスだったが、宇宙戦艦ダイーブとの連絡は取れない。それどころか生存者がいるのかもわからない。北西98㎞の救助ポッドに向おうにもAIと双方向神経リンクしないことには前に進むことも出来ない。アトラスはオーバーライドを行ない、強制的にアークスーツを動かす。22時間後にバッテリーの破損により窒息するという危機的状況の中、AI嫌いの対テロ分析官のアトラスとアーク・ナインのAIのスミスの旅が始まった。

イオン爆弾

集合場所である着陸地点に辿り着いたアトラスとスミスだったが、そこにあったのはアークスーツの残骸とパイロットの亡骸だけだった。銃創から、この殺戮が着陸事故ではなくハーランの攻撃だと考察したアトラスは遺品としてタグを回収する。アークスーツの内、バンクス大佐の搭乗していたゾーイに遺体が無いことに気が付く。

着陸地点にいたのはアトラスとスミスだけではなかった。そこには処理したはずのカスカもおり、ハーランが複製したAIの軍人が6人もいたのだ。戦闘を避けようと逃亡するアトラスだったが、異変に気付いたカスカの攻撃は止むことが無い。その上、逃亡の最中に嵐にまで巻き込まれてしまう。

アトラスはスミスにイオン爆弾を発射するように命令が、それによって地面が陥没してしまう。落下した拍子にアトラスの片足は骨が飛び出る骨折をしてしまう。スミスによって荒療治を受けるアトラスだったが、その苦しみの中でも殺されてしまった第4レンジャー大隊のことを考えてしまう。

死者のことを思えばこそ、生き残ることに必死になり、アトラスは嫌悪していたAIとの双方向神経リンクに同意する。その頃、カスカはアトラスを発見したことをハーランに報告していた。ハーランはそれを聞くと、生け捕りしたバンクス大佐の眼球に何かを施すのだった。

スミスと上手く同期できないアトラスは、ハーランとの関係性を見つめ直す必要性があった。アトラスにとってハーランは同じ母親を持った姉弟であり、それゆえに母親を殺したと言われるハーランを憎み切れずにいたのだった。そのトラウマを受け入れたアトラスはスミスとの同期に一部成功し、地下の陥没穴からの脱出に成功した。だが、カスカも地下の陥没穴から脱出に成功しており、アトラスの後を追っていた。

命の重さ

カスカが追跡してくる可能性を考察していたアトラスはモーションセンサーを設置し、スマート地雷を仕掛けていた。それによってカスカを倒したかと思ったが、カスカは首だけになって生きていた。カスカの頭を握りつぶす間際に、アトラスはハーランの居場所を特定した。ハーランを追うことに専念しようとするアトラスだったが、スミスはアトラスの安全を第一に考えて止めようとする。

緊急用酸素マスクの装備を止める姿はアトラスのトラウマを呼び起こし、かつてハーランがヴァルに行なった拳銃自殺と同じものを想起させた。アトラスはその拳銃自殺の記憶に罪悪感を覚えているとスミスは解説する。スミスはそれを感じ取り、アトラスの計画である基地に長距離爆撃用のジオタグをつける作戦を手伝うのだった。

ハーランの基地へ向かう道中、アトラスとスミスは命について議論を交わす。物語冒頭でアトラスが見ていたニュースには「AIにも平等な権利を」と解説されているものがあり、人権をAIにも与えるべきかどうかで映画『アトラス』の世界が揺れていることが考察できる。

ハーランの基地にはアークスーツを搭載させていた宇宙戦艦ダイーブがあった。ハーランは秘密兵器だったカーボン弾頭を手にしていたのだ。閉じられたループで構成されているはずのスミスがハッキングされるなど、アトラスは窮地に追いやられる。新たなカスカがアトラスを捕まえに来る。カーボン弾頭がハーランの手に渡れば地球は半壊する。アトラスからの通信にブース事務総長も非常警戒態勢を敷いていた。

捕獲されたアトラスにハーランが接触する。ハーランは人類を守るため、人類の半分を粛清し、その残りを神経リンクさせ、AIと人類が融合した新種族として地球を守る算段だった。ハーランの目的は最初からアトラスであり、アトラスの築いた防衛ラインを突破するためにアトラスの持つ認証コードが必要だったのだ。

死んだと思われたバンクス大佐は生きていた。バンクス大佐曰く、リアクターを破壊されない限りアークスーツの電源は落ちないという。バンクス大佐は自分の神経リンクの装置を渡し、スミスと同期するように語る。スミスが動くためには100%の同期が必要だが、罪悪感からアトラスは同期が出来ない。その理由はハーランのセキュリティプロトコルの迂回にあった。

死者に平穏を

ハーランが人類を虐殺し始めたとき、誰もがハーランの高度なAIによるセキュリティプロトコルの迂回を疑った。しかし、真実はそうではなかった。幼いアトラスは自分に振り向いてくれない母親に苛立ちを覚え、ハーランのように賢くなろうとした。そのために神経リンクを双方向にしてしまったアトラスだったが、それによってハーランは人類の負の側面を知り、人類の虐殺を行なったのだ。アトラスがAIを信じられないのは、自分自身が過去にハーランという怪物を世に解き放ってしまったことが原因だった。

スミスは自分でコントロールできないことに責任を感じることは問題であると語り、ハーランとの過去は変えられないが、現在は変えられると続けた。それによってスミスとの100%の同期を可能にしたのだった。アトラスはスミスの目を通してアークスーツの残骸を発見し、それによってスミスを4本腕に強化する。

しかし、多勢に無勢。劣勢に追い込まれたアトラスだったが、バンクス大佐の命がけの攻撃で窮地を脱する。そして宇宙戦艦ダイーブへとアトラスとスミスは走るのだった。ハーランによって再び劣勢に追い込まれるアトラスは宇宙戦艦ダイーブを撃ち落とす決意をする。それはカーボン弾頭の無効化か可能かどうかの瀬戸際だったが、アトラスはスミスのハッキング能力を信じてライフルの引き金を引いたのだった。

燃え滾る溶岩に囲まれながらのハーランとアークスーツの一騎打ち。そこでスミスによってハーランの攻撃パターンが分析され、裏を読むことが得意のハーランの更に裏を読むことが可能となった。最後はスミスのチェストキャノンでハーランを追い詰めたが、それはアトラスも同じだった。アトラスは心肺停止に追い込まれ、スミスはアトラスを守るために奮戦する。そしてハーランがスミスに打ち勝った瞬間を狙って、アトラスが後ろから奇襲をかけた。

スミスは死の寸前であり、自分の命を犠牲にしてアトラスを救おうとした。アトラスはスミスに誰も好きになれなかったが、スミスを好きになることは出来たと告げた。そしてスミスはコーヒーのキューブを渡すと、スミスの電源は落ちるのだった。こうして、人類を守るべく1人のAIが命を落とした。スミスはアークスーツの中に採集した植物のプランティを保存していた。スミスのAIはアーク・テンへと移植され、2人はまた冒険に出るのだった。

映画『アトラス』の感想

映画『アトラス』の全体を通して見ればAIと人類の関係性という要素は薄味で、古き良きSFアクション映画のような印象を与える。物語の中で明かされるアトラスが抱えるトラウマもどことなく予想ができ、画面はせわしなく思える。しかし、それだからこそ良い味を出しているとも言える。

AIの反乱は使い古されたテーマではあるが、その反面、最新のVFXでロボットとアンドロイドの戦闘シーンが見られるのは興味深い。ある意味では、映画『アトラス』とはポップコーン映画なのかもしれない。だが、そこには現代社会への警鐘や新しい世界に飛び込む勇気、そして手を取り合うことの重要性などのメッセージが細かく散りばめられている。そのため、週末を前に一息つく映画としては完成形に近いのかもしれない。

映画『アトラス』は2024年5月24日(金)よりNetflixにて配信開始。

映画『アトラス』配信ページ

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鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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