ドラマ『高い城の男』劇中で使用した全てのナチス旗を切り刻む動画を公開 | VG+ (バゴプラ)

ドラマ『高い城の男』劇中で使用した全てのナチス旗を切り刻む動画を公開

『高い城の男』全エピソードが公開

2019年11月15日(金)、ドラマ『高い城の男』のファイナルシーズンとなるシーズン4の配信がAmazonプライムビデオで開始した。2015年から続いていたAmazonの人気シリーズもこれで幕を閉じることになる。同作はフィリップ・K・ディックによる小説『高い城の男』(1962) を実写ドラマ化した作品で、第二次世界大戦でナチスドイツと大日本帝国が勝利した世界のアメリカを舞台にしている。

ナチス旗を破棄する動画が話題に

『高い城の男』の全エピソードの撮影と公開を終え、製作陣による“後片付け”も行われたようだ。同作でナチスの将軍ジョン・スミスの妻ヘレン・スミスを演じたチェラ・ホースデールが、Twitterに一本の動画を投稿し、大きな話題を呼んでいる。以下がその動画だ。

丁寧にハーケンクロイツ (ナチスの紋章) を切り刻み、最後には「BURN PILE」という言葉と共にバラバラになったハーケンクロイツの山が映し出される。ツイートには「『高い城の男』は、ドラマのために制作された全てのハーケンクロイツを誇りを持って破棄しました」とのコメントが添えられている。

動画に70万“いいね”

撮影用に製作され、使用されたハーケンクロイツが悪用されることなく処分されたことをファンに伝える配慮だ。この投稿には、日本時間の11月19日現在、70万近くの“いいね”が付いており、ユダヤ人のユーザーを始め、多くの人々が製作陣の判断とこの動画を公開したチェラ・ホースデールへの感謝を述べている。

ナチス旗の“原意”主張も

一方で、オルタナ右翼と思われるユーザーからは、批判の声があがっている。「愚かなポリコレ」「スワスティカ (ハーケンクロイツ) はサンスクリット語で “健康で幸福な状態” を意味する。仏教でも使われている」と、ハーケンクロイツの“原意”を主張するアクロバティックな理論も飛び出している。

ハーケンクロイツが歴史的にどのような意味を“獲得”してきたかという事実も無視しているが、『高い城の男』ではストレートに“ナチスの象徴”としてハーケンクロイツが使われている。ナチスの非人道的な行いを非難するのであれば、その象徴が再利用されない形で破棄されることに何の異論もないはずだ。チェラ・ホースデールは、「“ナチスの紋章は悪だ” という立場を取ることでこんな論争になるなんて、誰が知ってた?」と呆れ果てた様子のツイートを投稿している。

過去には批判も

ドラマ『高い城の男』を巡っては、シーズン1公開前の2015年、電車広告にナチスの国章のワシと旭日旗に似たデザインの旗を使用したとして批判が起こり、この広告はすぐさま撤去されている。この時はハーケンクロイツの紋章は使用されていなかったが、それでも血に塗れた歴史を鑑みれば、それぞれのシンボルの扱い方にはセンシティブでいる必要がある。

「現実世界が『高い城の男』に」

また、ドラマ『高い城の男』シーズン3には、現実世界のアメリカで起きた事件で白人至上主義グループがとった行動が作中にも登場したとして話題となっていた。このシーンはその事件が発生する前に撮影されており、『高い城の男』のプロデューサーでフィリップ・K・ディックの娘としても知られるイサ・ディック・ハケットは、「現実世界が『高い城の男』の内容に近づいてきている」とのコメントを残している。詳細は以下の記事に詳しい。

ナチスの将軍であるジョン・スミスを演じたルーファス・シーウェルは、「私たちが注意深くいなければ、人間の善良な部分を沈黙させ、凶悪な部分を引き出すメカニズムが動き出します。そのメカニズムが餌とするものは、人間が醜い世界に慣れていく力です」と話している。詳細は以下の記事から確認できる。

「現実の世界に語りかける」

また、イサ・ディック・ハケットは、父であるフィリップ・K・ディックは「常にファシズムのことを考え、また恐れていた」とし、『高い城の男』シーズン4は、右派ポピュリズムが台頭する現実の世界に語りかけるものになると話している。オルタナ右翼が台頭する時代に、ナチスドイツと大日本帝国が勝利した世界というセンシティブな内容を扱うからこそ、徹底した注意と配慮が必要となるのだ。

今回チェラ・ホースデールが公開したハーケンクロイツを破棄する動画にオルタナ右翼が過剰な反応を見せていることは、やはりルーファス・シーウェルが言うように油断ならない状況が続いているという事実を示している。チェラ・ホースデールが率先して動画を投稿したように、積極的に立場を示していく姿勢が必要だ。

『高い城の男』全4シーズンは、Amazonプライムビデオで配信中。

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VG+編集部

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