シーズン4第4話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』ホームランダーのオリジンに迫る。ブッチャーのアレは… あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

シーズン4第4話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』ホームランダーのオリジンに迫る。ブッチャーのアレは… あらすじ&考察

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『ザ・ボーイズ』シーズン4第4話はどうなった?

Amazonプライムビデオで配信中のドラマ『ザ・ボーイズ』(2019-) は、世界的な人気を得て2024年6月よりシーズン4に突入。シーズン5は最終シーズンとなることが発表されており、シリーズはクライマックスへと向かっている。

今回は、配信2週目となる『ザ・ボーイズ』シーズン4第4話をネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容は本編のネタバレを含むため、必ずAmazonプライムビデオで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

また、本作は視聴対象が18歳以上の成人向けコンテンツになっている。露骨な残虐描写や流血描写、性描写が含まれるので、注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4第4話の内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第4話「時の知恵」ネタバレ解説

ブッチャーの危機とホームランダーの帰郷

ザ・ボーイズを追い出されたブッチャーとは逆に、“ホーム”に帰ることにしたホームランダー。地下の研究所の壁には「ホームランダー1987」と書かれたデザイン画が飾られている。また、書類には「Project Odessa」という計画の名前があり、機密厳守を指示する内容が確認できる。

そこに現れたのはアメリカの人気アイス店カーヴェルのアイスクリームを持ったホームランダーだった。帰省するような雰囲気で帰ってきたが、迎え入れる側は戦々恐々である。それにしても、ホームランダー支配のヴォートになってもこの研究所は閉鎖されずに続いていたようだ。

古株のマーティ副所長やフランクとの再会を喜ぶホームランダー。不在だったバーバラ所長も呼び出して同窓会がしたいという。一見するとホームランダーは平和な対話を望んでいるように見えるが、研究所側の人々にはそうとは思えない過去があるのだろう。

シャワーを浴びているブッチャーの背中の皮膚内では、寄生虫のような生き物が蠢いている。シーズン4第2話のラストではこめかみ付近に同じ症状が見られた。シャワールームで倒れたブッチャーにベッカが立ち上がるよう呼びかける。満身創痍のブッチャーがかろうじて生きていられる理由は、ベッカへの思いだけなのだろう。

ヒューイの父ヒューは脳死状態となり数日で延命措置を終えるという。ブッチャーも危機的な状況にあるが、父の死も目前にある。そして、ヒューイが見つめる先には点滴があり、何かを思いついて病室を出るのだった。

テレビ番組の意味は?

テレビでは“V52エキスポ”の宣伝をやっている。参加するのはセブンの一部メンバーとアダム・バーク監督、そしてケイトとサムの名前もある。ケイトとサムはスピンオフドラマ『ジェン・ブイ』(2023-) に登場した能力者で、紆余曲折ありヴォートから有望なスープスとして認定されている。

次に番組は『ジェン・ブイ』に登場したテックナイトの犯罪捜査番組『テックナイト 真実の全貌』に切り替わる。ゴドルキンの惨劇の後、マリー・モローら4人は暗い穴に消えたかのようにいなくなったと語られている。『ジェン・ブイ』のラストでは主人公マリーらが謎の施設に収容されたこと、テックナイトが“穴依存症”であることを重ねたギャグである。

続いてキャメロン・コールマンのニュース番組では、ボブ・シンガーによって反ヒーロー法が発表されたことが報じられていた。そのシンガーに会いに来たのはアニーで、PR面で法案の成立に手を貸すという。『CSI:ベガス』(2021-2024) に広告を流しているという話が出ているが、同作は3月でフィナーレを迎えている。

アニーは、自らの影響力を行使してデモを行い、スターライトの新しいヒーロースーツを着ることも辞さないという。見返りはヴォートを葬るという約束をしてもらうこと。アニーがここまで追い詰められているのは、前話でファイアクラッカーがアニーの過去の闇を知っていることが明らかになったからだろうか。

フレンチーと過ごしているコリンが部屋で流している曲はレイ・チャールズ「Crying Time」(1966)。二人の未来を予言するように「君は私から離れていく」「涙の時間までそう遠くない」と歌われている。

コリンは父との思い出を口にすると、母がロシアン・マフィアによる凶悪事件を担当した連邦判事だったこと、女ボスを厳罰に処そうとして見せしめにあったこと、自分もいた家で両親と妹が殺されたことを告白する。女ボスというのは『ザ・ボーイズ』シーズン3に登場したロシア人のリトル・ニーナのことだと思われる。

ベッドの下に隠れていたコリンは、犯人の足の傷と火傷の痕を見たと言い、フレンチーはとっさに足首を布団で隠している。コリンがベッドの下に隠れていなければ、フレンチーはコリンも殺してしまっていただろう。

アニーはデモについての発表を進めようとするが、スターライト・ハウスの前にはファイアクラッカーの番組「真実の爆弾」のセットが組み立てられていた。ネット番組だったものがファイアクラッカーのセブン入りによって、ヴォートニュースネットワークの番組として放送されることになったのだ。極右政党や陰謀論者がごくわずかでも“席”を得ることで影響力を強める、現実でも見た展開だ。シーズン4第4話は、街宣車のように凸してきたファイアクラッカーとの対決が描かれる。

これもシスター・セージのSNS戦略の一環。テレビを通してトレンドを作り、世論を誘導する作戦だ。前回セージに抱かれたディープはセージにアプローチするが、セージはすっかり別人になったかのようにディープを突き放している。ディープの言う「フライドピクルス」とはその名の通りピクルスに衣をつけて揚げたアメリカ料理だ。

ファイアクラッカーはセージに渡されたタブレットを見て興奮を抑えきれないという表情を見せている。この後の番組で使用される何らかの情報がファイアクラッカーの手に渡ったことが分かる。

ファイアクラッカーの番組のオープニングで流れている曲はクリード・フィッシャーの「Stomp My Flag I’ll Stomp Your Ass」(2021)。そのタイトル通り、「私の国旗を踏みつけるなら、お前のケツを踏みつけてやる」と歌われる愛国歌だ。

ゲストの面々

スターライト・ハウスではザ・ボーイズが集合して子ども達を避難させていた。フレンチーは番組収録にジョン・ヴォイトが招かれていると話しているが、ジョン・ヴォイトはアカデミー賞主演男優賞の受賞経験もある俳優で、ハリウッドでは有名な共和党支持者だ。

ちなみにジョン・ヴォイドは保守派でありながら以前から反ユダヤ主義を非難する態度をとっており、2014年にはイスラエルによるガザ侵攻を「虐殺」と呼ぶ動きに「反ユダヤ主義を煽りかねない」という理由で反対した。『ザ・ボーイズ』のショーランナーのエリック・クリプキもユダヤ系で、まさにこのシーンでジョン・ヴォイトの名前をあげたフレンチーを演じるトメア・カポンもイスラエル出身だ。反ユダヤ主義を批判しながらイスラエル軍の非道を批判するという展開は、『ザ・ボーイズ』シーズン4ではまだ見られない。

MMはこの非常事態にブッチャーを復帰させたと言い、「猫の手も借りたい」の最上級バージョンとなる「クソ野郎の手も借りたい」とその理由を述べる。アニーは反対するが、MMの「俺の決断だ」という一言で決裁完了。ドヤ顔でブッチャーがザ・ボーイズに戻ってくる。

ここでブッチャーはアニーにファイアクラッカーの標的にされた理由を聞き出そうとするが、アニーはこれに答えない。前話の展開を見ると、ファイアクラッカーに言われる前に自分で言ってしまうのかとも思ったが、アニーは知られたくない過去を隠し通そうとしているらしい。

テレビではファイア・クラッカーがゲストと思われるカニエ・ウェストの名前を叫んでいる。現在の名前はイェ(Ye)だが、誰もそう呼んでいないと言うネタでもある。カニエは近年トランプ支持に傾倒し、反ユダヤ主義の発言をTwitterに投稿、イーロン・マスク政権下のTwitterでアカウントをバンされたことは話題になった。2023年12月にはInstagramで反ユダヤ発言を謝罪したが、その後に「黒人はユダヤ人だから」反ユダヤ主義になることはできないと意味不明な弁明をしている。

ステージにはエゼキエルが呼び込まれる。宗教団体のサマリタンズ・エンブレイスを率いていたエゼキエルはシーズン1以来の登場だ。エゼキエルはアニーの過去を知っていると紹介されているのは、アニーは昔エゼキエルが率いるケープス・フォー・クライストに所属していたためだ。

ホームランダーの復讐

地下の研究所ではホームランダーがフランクを相手に紙くずをゴミ箱に投げ入れるゲームを始める。この研究所には試験炉があり、幼いホームランダーは皮膚が焼けるかどうかの実験を受けていたと言う。泣き叫ぶホームランダーをよそにフランクは紙ずくをゴミ箱にシュートする遊びに興じていたというのだ。

この指摘にフランクは「自分の仕事をしたまでだ」と、一番言ってはいけないセリフで弁明してしまう。この言葉はアウシュビッツでのホロコーストに指揮的な役割で関与したアイヒマンが戦後の裁判で語ったもので、人間性を捨てて疑問を持たずに仕事を果たすことで、一人の人間が虐殺に加担することになるという教訓を人類に与えた。

ホームランダーが言う「同じ出来事でも視点が違えば記憶が異なる」とは、歴史や社会の見方とも重なる。ホームランダーは紙くずシュートを覚えていなかったフランクに失望すると、フランクをオーブンに入れて焼いてしまう。ホームランダーを演じるアントニー・スターの怒りの表情の演技が見事だ。

ヒューイはキミコと共にAトレインと接触していた。セブンタワーでの会議中にAトレインが連絡を受けた相手はヒューイだったようだ。ヒューイは危篤の父親を救うためにAトレインにコンパウンドVを手に入れるよう依頼する。全てはシーズン1第1話でAトレインがヒューイの恋人を轢き殺したことから始まっており、それを清算するよう迫るのだ。

死ぬはずじゃなかった愛する人(恋人)を殺された代償として、死ぬはずの愛する人(父親)を救ってくれと言うのがヒューイの要求だ。ヒューイはこの仕事が済めば全てチャラにすると約束し、Aトレインは仕事に取り掛かるのだった。

ところが、ここでヒューイとキミコが光解放軍から襲撃を受けることに。シーズン4第3話でフレンチーとキミコで光解放軍を襲撃したことへの報復だ。ヒューイにはとんだとばっちりである。さらにヒューイは、撃たれてとかでもなくフォークリフトに足を引っ掛けて負傷。キミコは近くのオフィス内で物差し&テープでヒューイに応急処置を施すと、引き出しを使って盾を、鋏を二つに割ってナイフを、裁断機の一部から剣を作り出す。ものすごいサバイバル力だ。

今までで一番良い言葉

その頃、ファイアクラッカーとディープは中継中にジョー・コッカー&ジェニファー・ウォーンズの「愛と青春の旅だち」(1982) を歌っている。日本ではこの曲が主題歌になった士官候補生学校を舞台にしたリチャード・ギア主演の映画が同名のタイトルで公開された。1999年には郷ひろみがこの曲をカバーしている。

6時間の生放送の間、5万ドルあれば3時間で蹴りをつけると言っていたブッチャーはMMと共にバックステージにいた。5万ドルは「ウェブウィーバーの肛門に消えた」と言っており、「ヘロイン浣腸」をしたというが、もはや『ザ・ボーイズ』でもカットされるくらいの所業なのか……。ちなみにウェブウィーバーは原作コミックではスパイダーマンのような見た目をしたヒーローで、ドラマではシーズン4第3話のライアンがプレイしているゲームのキャラクター選択画面で絵が登場している。

二人はファイアクラッカーの方へと向かうが、限界が近づいているブッチャーは動きを止めてしまい、自分が途中で倒れれば、代わりにライアンを取り返して欲しいとMMに頼む。「お前は最高の父親だ」というブッチャーからのMMへの信頼が泣ける。MMも「今までお前に言われた一番良い言葉」としつつ「ライアンが望まなかったら?」と、ライアンの意思も尊重している。この時、ブッチャーはずっとMMの後ろのベッカの幻覚を見ており、残りの人生のほとんど全てをベッカのために費やそうとしていることが分かる。

そこにファイアクラッカーが現れ、一行はシーズン4第2話以来の再会を果たす。ブッチャーは筆者もちょっと分かんないレベルのコックニー(ロンドンの労働者階級の英語)アクセントで話し、ファイアクラッカーは「アメリカ語で話せ」とイライラを隠せない。

そして、ブッチャーはファイアクラッカーが28歳の時に15歳の少年と性交渉を持った証拠の動画を突きつけてファイアクラッカーを脅す。しかし、意外にもファイアクラッカーは自らその動画をSNSに投稿するのだった。

ファイアクラッカーの逆襲

テレビではエゼキエルが「STARLIGHTは9文字、ひっくり返せば6になる。Annie Januaryは12文字で割ると6と6になり、6が三つ並ぶ。666は悪魔の数字」とスピーチしている。エゼキエル、久しぶりの登場ですっかりファイアクラッカーの手法を取り入れている。

ファイアクラッカーはここに割って入ると、少年と不適切な関係を持ったことを告白。それを反省したことによって罪が清められたと、スキャンダルを逆手に取った(取れてる?)演説を披露すると続け様にスターライトが初めての救助活動で人質を失明させたことを暴露する。カメラに微笑んでいたと付け加えて。

フレンチーらとテレビを観ていたアニーは、当時は力の使い方を学んでいたと主張するが、この場の空気に耐えられず部屋へと戻ってしまう。当時まだ13歳で力を制御できなかったのだろうし、微笑んでいたというくだりは、ステージママである母親の指導によるものだろうから、そこまで責められるようなことでもない気はするが、それでも社会の目というのは心に突き刺さるものだ。

Aトレインはホームランダーの部屋に潜入。また“匂い”で気づかれるのではないかと心配だ。ホームランダーの部屋の引き出しには大量のミルクが。マデリンのものを保管しているのだろうか……じゃあ、あのライアンにあげようとしていたミルシェイクとかって……。

そこに現れたのはCEOを解任されたアシュリーだ。アシュリーはホームランダーへの仕返しとしてトイレに排泄物を残しており、Aトレインとアシュリーは奇しくもお互いがホームランダーに反旗を翻す理由があることを知る。Aトレインとアシュリーという古参キャラによるまさかのチームアップ。ディープは絶対入れないだろうから、あとは扱いに不満を抱いている新人ノワールを取り込みたいところだ。

次々問われる過去

ホームランダーの復讐は続いている。次はマーティだ。マーティは自慰行為をしていた若い頃のホームランダーに「飛ばし屋」とあだ名をつけて笑っていた罪で罰を受ける。実際、これはホームランダー少年に対する性的虐待であり、先ほどのフランクのオーブンによる虐待と合わせて、ホームランダーは幼い頃に受けた虐待への復讐を果たしていっているということだ。

マーティはホームランダーと研究者たちの前で自慰行為をするよう強要されるのだが、このシーンのホームランダーの爆笑が恐ろしい。うまくできないマーティをホームランダーは許したかと思いきや、突然ビームでマーティの股間を焼き切ってしまう。なんという回だ、シーズン4第4話……。

そこに現れた所長のバーバラは、マーティを楽にするようホームランダーに指示すると、ホームランダーはマーティの頭を踏みつけて“楽”にする……。ここまでの残虐描写はホームランダーの過去のトラウマと、ヴォートの人間たちの罪の重さを表現していると言える。とはいえ、新しく来た研究員たちにはとばっちりのような気もするが。

キミコはグレネードランチャーで身体を吹き飛ばされながらも、光解放軍との戦いに勝利。ヒューイは4シーズン経ってもなかなか強くならないが、今回はキミコから即席で教えてもらった戦い方で勝利している。最後に残った日本人の女性は、クレジットによるとタラという人物で、演じているのは日系カナダ人のエリカ・プレヴォーだ。キミコは旧知の仲であるタラに手を差し伸べるも、タラはキミコへの小さい頃の恨みをぶつけられる。

キミコによって家族から引き離され、闘技場に引きずり込まれたと主張するタラに対し、キミコは涙を流してその場を去るしかなかった。キミコにも向き合うべき過去の罪があったのだ。なんだかシーズン4になって続々登場するザ・ボーイズメンバーの罪。まぁ誰にでも掘られたくない過去はあるということか。

あれは誰の力?

トレイラーに潜入したフレンチーは、セージがファイアクラッカーに渡していたタブレットを手に入れるが時すでに遅し。ファイアクラッカーはアニーが妊娠し、中絶したという過去を医療記録と共に暴露してしまう。中絶反対派のキリスト教原理主義の人々のヘイトを集めるのに有効であるというだけの理由で、ファイアクラッカーは最も尊重されるべきプライバシーを公表したのだ。

これに怒ったアニーはファイアクラッカーをカメラの前でボコボコにしてしまう。アニーがファイアクラッカーにトドメを刺そうとしたところでMMが止めに入るが、生放送中の暴行は全国に放送されてしまった。一方のフレンチーはゴムゴムのエゼキエルに負けてしまうが、駆けつけたブッチャーがスープス・キラーぶりを見せてエゼキエルの腕を破壊。それでももう一方の腕で首を絞められ、限界を迎える。

この時、ブッチャーの顔の皮膚の中を蠢く寄生虫のようなものが苦しむように顔中を駆けずり回っており、最後には目の方へと降りてきている。そしてエゼキエルは謎の爆発で死んでしまうのだが、もしかしてあの寄生虫、ブッチャーの目から外に出たのではないだろうか? だとすればブッチャーの寿命は伸びた、ということになるかもしれない。

エゼキエルの爆発はニューマンか、それと同じ能力を持つ『ジェン・ブイ』の主人公マリー・モローによるものだろうか。だが、マリーは捕まっているし、ニューマンにはブッチャーを生かしておく動機はそれほどないように思われる。もしかしてブッチャー自身のパワーかも?

ホームランダーのオリジン

バーバラと一緒に“悪い部屋”に入ったホームランダーは、バーバラから諭すように話をされている。バーバラは、かつてホームランダーを作り出した科学者のフォーゲルバウムや、ヴォート社のCEOだったスタン・エドガー、そしてバーバラに責任があるとホームランダーに言うが、「誰も間違っていると言う勇気がなかった」とその意見を一蹴する。今ホームランダーが周囲がイエスマンばかりになっていることにイラついている理由は、この研究所の人々のことを思い出すからなのかもしれない。

バーバラは、ホームランダーの胚はどこかの家出娘の子宮で育ち、彼はそれを引き裂いて生まれたと話す。生まれてきた時から恐れられている忌み子、しかし愛と承認に飢えており、承認欲求を利用して制御し、従順になるよう育てられた——それがホームランダーのオリジンだった。バーバラは、ホームランダーが愛を渇望しており、それは人間的なもので克服できないと主張するが、前話のラストで語ったように、ホームランダーはその人間的な感覚を克服するためにここに来ていた。

このシーンで、ホームランダーは「私は人間ではない」「そのように息子を育てる」と言っており、とりあえずライアンを育てる気はあるようだ。それはよかった。ちゃんと放棄せずにブッチャーと奪い合ってほしい。そしてホームラダーは、なぜここが“悪い部屋”なのかを教えると告げるのだった……。

またも最悪な一日だったフレンチーだが、それにトドメを刺すように、足のアザを見せてコリンに家族を殺したのは自分だということを明かす。コリンはフレンチーの首を絞めて殺しかけるが、すんでのところで踏みとどまった。フレンチーを殺してしまってはフレンチーと同じになってしまうと考えたのかもしれない。あるいはフレンチーを愛していたからか。いずれにせよここでコリンは憎しみの連鎖を止めたことになる。

シスター・セージはまた部屋にディープを呼び出すと、目のよこからロボトミーツールを差し込むよう依頼する。セージの能力は、通常なら25歳くらいで止まる脳の成長が止まらず再生し続けるというものだった。脳限定のヒーリングファクターということだ。前回終盤でセージがだらしなかったのは、前頭葉をぐちゃぐちゃにして別の人格になっていたからだった。

前回の解説でも述べたとおり、ロボトミーは器具を直接脳に挿入して精神病を治療しようとするもので、現在では行われていない。同じようにすればまた二人で楽しめると、セージはディープにロボトミーをやるよう迫り、ディープはそれに応える。ちょっとここは直視できなかった。本当に色々な方法で不快な表現を差し込んでくるのが『ザ・ボーイズ』である。ちなみに最後にテーブルに置かれているのはアメリカのファストフードチェーン、フレイバータウン・キッチンの箱だ。

踏みとどまるか、踏み出すか

ザ・ボーイズの本拠地のオフィスで流れているテレビでは、シンガー次期大統領と手を組むスターライトが暴走したことをニューマンが非難する様子が放送されている。キミコは失語症のリハビリの本を捨て、やって来たアニーにハグをする。キミコからすれば、お互いに過去のことが理由で非難されたばかりだ。公的か私的かという違いはあるが、二人には共有できるものがある。

アニーはヒューイのもとへ行き、中絶という決断には悩んだ、心の準備ができていなかったと語る。もうそんなことは言わなくてもいいのだが、冷静になれないのだろう。周囲の視線が突き刺さり、その視線が同情か批判かは関係なく、あの時のことを思い出すのだという。

中絶に関してはあくまで“罪”ではなく“選択”なのだが、色んなことがごっちゃにされてアニーの心を抉っている。アニーはシンガーから電話を受けると、能力者規制法の成立が危うくなった、協力関係は終わりだと告げられる。シーズン4第4話のアニーのラストは泣いている姿で、なんだかあんまりだ。

一方のヒューイは、路地裏でAトレインからコンパウンドVを渡されると、本当にこれまでのことをチャラにしてやる。二人が握手を交わすなんて、こんな瞬間が来るとは思いもしなかった。ヒューイの「憎しみを抱えて生きたくない」とは、ファイアクラッカーの所業を見て抱いた感情だろう。

そのヒューイの様子を見ていたのはブッチャーだ。ヒューイはVを父親に使うと白状するが、ブッチャーは過去にコンパウンドVを試したが、死期を早めただけだったと語る。問題が悪化するだけだと忠告するブッチャーは、やっぱりヒューイのお兄ちゃんだ。

忠告を受けながらも病院に向かうヒューイを見送ったブッチャーは、またベッカの姿を見ている。「あの時、俺に何が起きた?」と語るブッチャーは、なんとなくエゼキエルを爆破したのは自分の力だったような気がしているのではないだろうか。

病床の父の元に向かったヒューイはコンパウンドVを取り出すが、躊躇った後、それをポケットに戻す。ブッチャーの忠告を受けて父の死を受け入れたのだ。ここで母が病室に入り、ヒューイはジャケットを椅子にかけている。そう、コンパウンドVをポケットに入れたジャケットを。

ヒューイがコーヒーを取りに行き病室に戻ると、父ヒューに繋がれたチューブに青い液体が流れている。ヒューイが踏みとどまったコンパウンドVの注入を誰かがやったのだ。容疑者は一人しかいないけど! ヒューの目が大きく開いて、シーズン4第4話のヒューイパートは幕を閉じる。

そしてシーズン4第4話のラストシーン。ホームランダーは血まみれでエレベーターに乗っていた。バーバラはバラバラにされた科学者たちの遺体が残された“悪い部屋”に取り残されている。ホームランダー、人間性を捨てるトレーニング回はこれにて完結。ジャンプの主人公なら修行回だったであろうこのエピソード、今回のホームランダーは地上の人に迷惑はかけなかったが、人間性を捨てるという最悪の結末で地下室への帰郷を終えたのだった。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第4話ネタバレ考察&感想

直視するのも厳しい描写が続いた『ザ・ボーイズ』シーズン4第4話だが、ストーリー的にもなかなか重苦しい展開が続いた。各キャラクターが過去の「罪」と向き合っているようにも思えるが、最後のアニーの中絶に関しては別に罪でもないのにかわいそうだ。

フレンチーはコリンの家族を殺した罪を告白し、アニーはデビュー戦でのミスを告発され、キミコは過去の行いから拒絶され、ヒューイとAトレインは過去の遺恨を清算し、ホームランダーは過去に罪をおかした人々に制裁を加えた。色々と罪の重さや程度も入り混じっていて、良くも悪くも清算した人たちも何名かいる。その中で、『ザ・ボーイズ』シーズン4の後半戦では、過去を清算できていないアニーとキミコという二人の女性キャラクターが中心に描かれていくということになるのだろうか。

こうした過去と向き合うパートと無関係にひたすら未来がないブッチャーだったが、シーズン4第4話ではあの寄生虫のような生き物がやたらと動いていた。ブッチャーを締め殺そうとしていたエゼキエルは爆発して死んだが、もしかしてブッチャーはニューマンやマリーと同じ力を手に入れたのではないだろうか。あの寄生虫のように動いていたのは血管の中の血だったのかもしれない。

ホームランダーはそのルーツに迫る回だった。人間を超越するために、“調教”されてきた過去にケリをつけたのだろう。けれどバーバラを殺さなかったのは、やっぱり証人を残したいという承認欲求や母的な存在を殺せないという気持ちが根底にあったのかもしれない。それとも他に狙いがあるのか。

地上ではシスター・セージの作戦がうまく行き、地下ではホームランダーが超越の時を迎えた。ザ・ボーイズはボロボロだし、シーズン4の後半戦は結構やばい状況かもしれない。この状況を覆すのは誰なのか、シーズン4第5話からも目が離せない。

ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4はAmazonプライムビデオで配信中。

原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから第6巻まで発売中。

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『ザ・ボーイズ』シーズン4第5話のネタバレ解説&考察はこちらから。

シーズン4第3話のネタバレ解説&考察はこちらから。

シーズン4第2話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第1話のネタバレ解説&考察はこちらから。

 

『ザ・ボーイズ』シーズン3最終話のネタバレ解説&考察はこちらから。

スピンオフドラマ『ジェン・ブイ』シーズン1最終回のネタバレ解説&考察はこちらから。

 

『ザ・ボーイズ』のシーズン5での終了についてエリック・クリプキ監督が語った内容はこちらの記事で。

『ジェン・ブイ』シーズン2についての情報はこちらから。

「ザ・ボーイズ」フランチャイズの更なるスピンオフ展開についてはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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