ネタバレ解説&考察『ザ・ウォッチャーズ』ラストの意味は? 続編はある? 〇〇の正体とは… | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&考察『ザ・ウォッチャーズ』ラストの意味は? 続編はある? 〇〇の正体とは…

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映画『ザ・ウォッチャーズ』公開

イシャナ・ナイト・シャラマン監督の長編監督デビュー作『ザ・ウォッチャーズ』が2024年6月21日(金)より日本の劇場で公開された。ダコタ・ファニングが主演を務め、監督の父であるM・ナイト・シャマランがプロデューサーを務める鉄壁の布陣で製作された本作は、A・M・シャインの同名小説を実写映画化した作品だ。

米国では6月7日に封切りされた『ザ・ウォッチャーズ』は、監督デビュー作としては上々の評価を受けつつも、ストーリーが少々複雑との評価もある。『ザ・ウォッチャーズ』は続編に関する話題も出ており、すでに鑑賞した皆さんには気になるところだろう。

今回は、『ザ・ウォッチャーズ』のラストについて、ネタバレありで解説および考察をしていこう。以下の内容は本作の結末に関する重大なネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

まだ観ていない人はこちらのネタバレなしのレビューをどうぞ。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ザ・ウォッチャーズ』の内容に関するネタバレを含みます。

映画『ザ・ウォッチャーズ』ラストの意味は?

ウォッチャーズの正体とは

映画『ザ・ウォッチャーズ』はアイルランドを舞台に、一度入ると抜けられない不思議な森に主人公のミナがオウムのダーウィンと共に迷い込み、そこで“鳥カゴ”と呼ばれる建物に辿り着くというところから物語が動き出す。ミナは、そこで先に暮らしていたキアラ、マデリン、ダニエルと共に毎晩やってくる“ウォッチャーズ”という謎の存在から監視を受けながら、なんとか森から抜け出す方法を探っていく。

『ザ・ウォッチャーズ』の二つのポイントは、①ウォッチャーズの正体と、②鳥カゴの4人が森から抜け出せるのか、ということだった。しかし、本作のクライマックスでは、その①と②を巡る思わぬ展開が待っていた。今回は、この3つのポイントを順に解説していこう。

まず、ウォッチャーズの正体は、冬を迎えてミナら4人の関係が悪化した後に明らかになる。ダニエルがミナとマデリンを外に置いたまま日没を迎え、ミナとマデリンはウォッチャーズが人間の姿に擬態する、いわゆる“シェイプシフター”であったことを知るのだ。ちなみにこの4人の関係悪化は、いわゆる“キャビン・フィーバー”と呼ばれるもので、長期間狭い空間で生活していることで情緒が不安定になる現象や症状の結果だと考えられる。

劇中ではキアラの夫のジョンが裸で鳥カゴに戻ってきて助けを求めるシーンがあるが、このジョンはキアラに二人だけが知る思い出の本の名前を聞かれても答えることができなかった。実はジョンは『ザ・ウォッチャーズ』の冒頭に登場しており、何者かによって画面の向こう側へと引きずり込まれる様子が描かれていた。おそらくジョンはこの時にウォッチャーズに殺されており、鳥カゴを訪れたジョンはウォッチャーズによる擬態だったと考えられる。

教授の研究室で明かされる真実

日没後に外に出ていたり、時間になっても4人揃って整列していなかったりしたことで、4人はウォッチャーズの怒りを買い、ウォッチャーズは鳥カゴへの侵入を試みる。そこでドアを塞ぐためにテーブルを移動させたことで、4人は地下への入り口を見つけたのだった。

その地下は要塞のようになっており、この鳥カゴを作ったローリー・キルマーティン教授の研究室だった。そこには教授の研究記録が動画で残されており、教授はウォッチャーズを研究するためにこの森へ来たこと、毎日13人の作業員を雇って日中に鳥カゴの建設作業をさせ、夜が来ると外に締め出してウォッチャーズの餌食にしていたことなどが語られる。

ウォッチャーズの正体は妖精やチェンジリングと呼ばれる古代の種族であり、教授はウォッチャーズが人間の姿を模倣する能力について研究しようとしていたという。ウォッチャーズを研究すれば人間の複製を作ったり、死を欺くことができると考えたのだ。ウォッチャーズが人間に擬態する時に指の数を間違えることがあるという話は、画像生成AIが指の数を認識するのが苦手という弱点を思い出す。

そして教授は、ある時、特殊な個体と関係を築くことに成功したと語る。しかし、教授はこの研究がいかに愚かなことだったかということに思い至り、その個体と銃で殺して自分も死ぬことを決めていた。動画は上階で教授がその個体相手に発砲したと思われる場面を捉えて終わっていた。

森の外へ出る方法

だが、ミナたちにとって収穫だったのは、教授がこのビデオを見た生存者に、自分の大学の研究室へ行ってこの研究を葬るよう依頼し、この森から脱出する方法を提示してくれていたことだった。教授によると、回帰不能点134を越えて川に進むとそこに舟があるというのだ。

回帰不能点というのは、鳥カゴから半日歩いて辿り着ける場所で、これを越えて先に進むと日没までに鳥カゴに戻ることができなくなり、それはウォッチャーズの餌食になることを意味する。この数ヶ月間、絵が得意なミナはこの回帰不能点の場所を記録していたため、一同は教授が示した回起点134を目指すことができた。

一同は最後の夜を過ごしてついに森を脱出することを決める。その夜にダニエルは、酔っ払って暴力を振るう父から逃げて家を出たことを明かしている。また、家に残っていたら父を殺していたとも語っている。ここまではルールを守って鳥カゴから出ないことが良しとされてきたが、鳥カゴから自由にならなければならない時もあるというメッセージが提示されている。

キアラもまた偽者と思われるジョンが登場した時に、ジョンが本の名前を言えなかったのにすぐに決断を下せず、けれど最後はジョンを中に入れなかった。キアラの場合はジョンとの幸せな思い出という鳥カゴにとどまることなく、自由を手に入れたと考えることができる。

鳥カゴから出たミナたちは、鳥のカゴからもダーウィンを放ち、ダーウィンを追って川を目指す。その途中、一行は石板を見つけ、ウォッチャーズがかつて翼を持った妖精だったが人間との戦いに敗れて地下に閉じ込められたことを知る。

川に辿り着き、教授が残したボートを見つけた4人だったが、すでに日が暮れておりウォッチャーズに追いつかれてしまう。ここでダニエルが負傷したジョンを装ったウォッチャーズに騙され、殺されてしまうことに。ここでのマデリンは「できるだけ待ちましょう」とやけに冷静だ。

森を抜けることに成功した3人はバスを拾って街を目指す。このバスの中で客の一人が持っていたラジオから流れる曲を聞いたミナは、音量を上げるように頼む。ここで流れている曲は、The Chieftains with The Low Anthemの「School Days Over」(2012)。「学校は終わり」「自分の道を歩むときだ」と歌われており、森の中での“レッスン”を終えて帰路に着く雰囲気を演出している。

終わらない物語、あの人の正体は…

だが、映画『ザ・ウォッチャーズ』の大オチはここからだ。教授の遺言通りにミナは大学の教授の部屋に行くと、そこで教授が残したウォッチャーズの資料を見つける。ウォッチャーズは翼と魔力を失ったのち、人間と平和に暮らしていた時期もあったという。この前の展開では人間と妖精の戦争について触れられていたので、これは意外な事実である。

それに、妖精には人間と交配する者もいたと記されており、人間と妖精の間に生まれた者は「ハーフリング」と呼ばれていたとも。そこで真実に辿り着いたミナはキアラの家を訪ね、研究室で見つけた写真をキアラに見せる。教授と一緒に写っていたのはマデリンだったが、教授の妻マデリンは2001年に亡くなっているという。そう、マデリンの正体は擬態したウォッチャーズだったのだ。

そこに一台の車が到着するが、そこから降りてきたのはキアラだった。ミナがキアラだと思って話していた相手はキアラに擬態したマデリンで、マデリンはミナとキアラを待ち伏せしていたのである。二人を殺してミナに成り代わって生きていくために。

マデリンの正体は、教授が記録に残していたハーフリングだった。妖精と同じ能力を持ちながらも、日光の下で活動できる特別な存在だ。そして教授があの森で出会い親交を深めた特殊な個体はハーフリングであり、後のマデリンだった。本当の名前はアインリクタンというらしい。

アインリクタンという名前は劇中で何度か登場しており、例えばミナが穴の中で自転車を回収した時に現れたウォッチャーは、手を伸ばして「アインリクタン」とその名を呼んでいた。ミナのことをアインリクタンだと思ったのか、ミナにアインリクタンを渡すよう要求したのだろう。

教授がウォッチャーズを研究していた目的は、亡くなった(か病気だった)妻のマデリンのクローンを作ることだったのだろう。だから教授は人間と同じく日光の下で活動できるアインリクたんに目をつけて研究を進めていたのだ。最終的に教授は研究を葬るためにアインリクタンを殺そうとしたが、その時の動画には上階での発砲の光しか映っていなかった。アインリクタンは銃を奪って教授を殺し、一人生き延び、以来地下室を封印して鳥カゴで暮らしていたということだろう。

なぜならアインリクタンは、ウォッチャーズの中でも迫害を受けていたからだ。人間とウォッチャーの間に存在し、どちらにもなれないアインリクタンはウォッチャーズから逃れて鳥カゴで暮らし、そこにやって来る人間たちを観察していたのだろう。森から出る機会を伺いながら。

そうして森の外に出られたマデリンは、ミナを殺してミナに成り変わる計画を遂行しようとするが、ミナはマデリンの説得を試みる。妖精と人間が平和に暮らしていた時代もあったこと、マデリンの半分は人間であり、鳥カゴで自分たちを守ってくれたこと、愛と赦しを与えることもまた人間らしさだということ、そしてマデリン以外にもハーフリンクは存在するかも知れず、一人で生きていくと決め込む必要はないということ——。

こうした言葉に突き動かされたマデリンもといアインリクタンは、翼を生やすと飛び去っていくのだった。妖精は大昔に翼を失ったはずだが、ハーフリンクには翼が生えるのかもしれない。人間にも妖精にもなれなかったアインリクタンは、森のウォッチャーズのように人間を殺すことをせず、また、人間に成り替わることもなく自分の道を生きることにしたのだろう。

ラストシーンの意味を考察

映画『ザ・ウォッチャーズ』のラストシーンは、ミナが疎遠だった姉のルーシーと二人の息子と自室で仲睦まじく遊んでいる場面だ。ルーシーもミナと同じくダコタ・ファニングが演じており、二人が双子だったことが示唆されている。ルーシーの顔には大きな傷跡があり、これは幼い頃に二人が交通事故で母を亡くした時にできたものだと思われる。

この事故はミナが母に反抗的な態度を見せたことがきっかけで起きており、ミナはこれまで、自分とそっくりな顔を持つルーシーの顔に残った傷と向き合うことができなかったのだろう。鳥カゴにも巨大な鏡があったように、『ザ・ウォッチャーズ』の重要なモチーフの一つは鏡だ。

ミナにとってルーシーは自分の過去の罪や心の傷を映した鏡のような存在で、ミナはあの森での経験を経て、その傷と向き合うことができるようになった。人間の醜さや弱さを暴くあの森で、ミナは向き合うべきは他者ではなく、鏡に写る自分自身だと気づいたのではないだろうか。

もう一つのモチーフは鳥カゴだ。『ザ・ウォッチャーズ』のラストでは、オウムのダーウィンはもう鳥カゴに入っていない。これはミナ自身が自分の心の鳥カゴから解放されたことを示唆している。そう考えれば、アインリクタンも翼を生やして飛び立っており、アインリクタンもまた自身が抱えるコンプレックスやトラウマという鳥カゴから飛び立つことができたと考えられる。

ラストシーンには、ミナやダーウィンらがいるアパートの窓を外から眺める少女の姿のアインリクタンの姿があった。アインリクタンはこうしてミナのことを人知れず見守ってくれているのだろう。あるいは、アインリクタンが探すハーフリングがあの部屋の中にいるのかも知れない……。

『ザ・ウォッチャーズ』は、“父の不在”も物語の特徴で、ミナとルーシーの父親も、ルーシーの子どもの父親も劇中には登場していない。そうして描かれていない部分が、アインリクタン以外のハーフリングの存在へとつながる可能性もあるだろう。

『ザ・ウォッチャーズ』続編はある?

これは続編やスピンオフにつながる展開なのだろうか。この『ザ・ウォッチャーズ』のエンディングについて、イシャナ・ナイト・シャマラン監督は米The Movie Blogでこう語っている。

私にとっては、本作のラストはより大きな世界を作り出すためのものでした。皆さんはまだ足を踏み入れただけで、私たちは劇中の神話をもっと先まで構築しています。本作に映っていないところでも、見たことのない複雑な世界が広がっているんです。

イシャナ・ナイト・シャマラン監督は、あのラストについて、より大きな世界の存在を示すための演出だったと語っている。人間社会には他にもハーフリングがいるかも知れないというアイデアが、続編やフランチャイズ化に広げていけるような余地を残したということは確かだ。

イシャナ・ナイト・シャマラン監督は、同じインタビューで続編についても聞かれ、「分かりません。まだ何も言えないんです」としつつもA・M・シャインによる原作の続編小説が刊行を控えていることについては、「とても楽しみです」と回答している。A・M・シャインによる原作続編は「Stay in the Light(光の中に留まる)」と題されており、2024年10月15日の発売を予定している。

スリラー/ホラーというジャンル設定でありながら、歴史と人種にまつわるファンタジックでサイエンスなフィクションを作り上げたイシャナ・ナイト・シャマラン監督。張られている伏線の数は凄まじく、観るたびに発見のある作品に仕上がっている。『ザ・ウォッチャーズ』公開時点で24〜25歳と、まだまだキャリアの先は長い。次は一体どんな作品を見せてくれるのか、それはミナやアインリクタンのストーリーになるのか、引き続きウォッチを続けよう。

映画『ザ・ウォッチャーズ』は2024年621日(金)より劇場で公開。

映画『ザ・ウォッチャーズ』公式サイト

『ザ・ウォッチャーズ』作品情報
■監督:イシャナ・ナイト・シャマラン
■製作:M・ナイト・シャマラン、アシュウィン・ラジャン、ニミット・マンカド
■製作総指揮:ジョー・ホームウッド
■脚本:イシャナ・ナイト・シャマラン
■出演:ダコタ・ファニング、ジョージナ・キャンベル、オルウェン・フエレ、アリスター・ブラマー、オリバー・フィネガン

【ネタバレ注意】映画『バッドボーイズ RIDE OR DIE』ラストの解説はこちらから。

【ネタバレ注意】映画『ブルー きみは大丈夫』ラストの解説はこちらの記事で。

 

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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