シーズン4第1話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』ホームランダーの憂鬱、あの画像の意味は? あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

シーズン4第1話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』ホームランダーの憂鬱、あの画像の意味は? あらすじ&考察

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『ザ・ボーイズ』シーズン4配信開始

2019年に配信を開始した人気ドラマ『ザ・ボーイズ』のシーズン4が2024年6月13日(木) より、Amazonプライムビデオで独占配信を開始した。『ザ・ボーイズ』は、ガース・エニスとダリック・ロバートソンによる同名コミックをエリック・クリプキが実写化した作品。MCUをはじめとするスーパーヒーロー全盛の時代に、腐敗したヒーローとそれに挑む一般人の戦いを描いて一世を風靡した。

2023年にはスピンオフドラマ『ジェン・ブイ』も配信され、こちらもシーズン2への更新が決定した。一方で本編の『ザ・ボーイズ』はシーズン5での終了が発表されており、いよいよクライマックスを迎えることになる。

今回は、新たに配信されたドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4第1話をネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容は本編のネタバレを含むため、必ずAmazonプライムビデオで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。また、本作は視聴対象が18歳以上の成人向けコンテンツになっている。露骨な残虐描写や流血描写、性描写が含まれるので、注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4第1話の内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第1話「卑劣の極み」ネタバレ解説

ニューマンの新たな船出

2年ぶりに帰ってきた『ザ・ボーイズ』。これまでのあらすじ、というよりこれまでの残虐描写盛り合わせで視聴者の周波数を強制的に『ザ・ボーイズ』に合わせるサービス(?)から幕をあける。その後のあらすじでは、息子のライアンを手に入れて開き直ったホームランダー、セブンを脱退したスターライト、時効性V(V24)を使って余命数ヶ月となったブッチャー、ホームランダーに葬られたブラック・ノワール、ソルジャー・ボーイを葬ると共にパワーを失い引退したクイーン・メイヴらの姿が描かれている。

そして、『ザ・ボーイズ』シーズン4第1話の冒頭は、ビクトリア・ニューマン議員の演説から幕をあける。大統領選の日だろうか、そうであれば時期は11月の初週頃ということになる。ニューマンはシーズン3でホームランダーとタッグを組み、養父のスタン・エドガーを失脚させ、ディープを使って副大統領候補を殺害して自身が副大統領候補となっている。

ニューマンが登場する場面で流れている曲はセックス・ピストルズ「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」(1977)。『ザ・ボーイズ』安定のUKロックだ。同曲は言わずと知れた名曲で、「神は女王を守る/彼女はヒトじゃない/お先真っ暗/イギリスは夢の中」と英国女王を揶揄する内容から、当時は英国や日本で放送禁止にされていた。

このシーンでの「クイーン」とはニューマンのことを指していると考えられ、「彼女はヒトじゃない」という歌詞は、ニューマンが能力者であることを指摘しているように聞こえる。ちなみに2023年6月には、バイデン大統領が演説の終わりに唐突に「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」と発言してスピーチを終え、謎の発言として話題になった。

ニューマンがサポートしている大統領候補はダコタ・ボブことロバート・シンガーで、ここではコロラドとネバダを制したことが明かされている。現実においては、コロラドもネバダも民主党が強い州だ。ちなみにニューマンは能力者だが非能力者のふりをしており、スピンオフドラマ『ジェン・ブイ』では、シンガー陣営が勝利すれば能力者に政府内での地位を約束すると表明している。

帰ってきたアイツら

この演会場に潜入していたのはザ・ボーイズの面々。キミコ、MM、フレンチー、ヒューイ、スターライトことアニー、そしてブッチャー全員で任務についている。その事実だけで微笑ましい。しかし、ブッチャーは見るからに体調が悪く、嘔吐している。シーズン3ではブッチャーは即効性Vの副作用についてヒューイに伝えようとしたこともあったが、結局できずじまいだった。キミコ、フレンチーと共に行動するブッチャーは、建物の警備員に「Evening, cunts.(やぁ、クソども)」とご挨拶。ブッチャーが帰ってきたという感じがする。

ホームランダーも帰ってきた。シーズン4はトイレで初登場。ホームランダーが持ち上げたのは、白髪の陰毛だった(ちょっと分かりにくいが、英語の音声ガイドでも「白髪の陰毛」と説明されている)。不穏な音楽と共に、ホームランダーにも老いが忍び寄っていることが示唆されている。

そして、シーズン3でホームランダーを父として選んだライアンも登場。大きくなったねー! 演じているのはパーカー・コルノで、シーズン1ラストでの初登場からもう5年も経つのだ。ホームランダー親子もニューマンのパーティに来場している。ホームランダーは緊張しているライアンに、人間は「ゴキブリ」「私達のオモチャ」と英才教育を施しているようだ。

ニューマンにもニューマンの娘ゾーイにもライアンにもセクハラ発言を放つホームランダーは、過去16年すべての新政権を支持してきたということで、ニューマン陣営の勝利は確実視されているようだ。しかし、ホームランダーはシーズン3のラストでライアンにペットボトルを投げたスターライト支持者をビームで殺したことから殺人容疑で捜査を受けているという。一方で、ソルジャー・ボーイを退治したのはホームランダーということになっており、支持は得られているらしい。

このシーズン4でのホームランダーの状況は、現在のドナルド・トランプ前大統領と重なるところがある。トランプもまた複数の事件で裁判を抱えており、有罪判決も受けているが、支持者からの支持を背景に公的な活動を続けている。

前シーズンでの取引を「過去のこと」と突き放されたホームランダーは、聴衆の注目を集めて、ニューマンを「ホワイトハウスの頼れる女性」と紹介する。英語では「Girls get it done in the White House.」と言っている。

「Girls get it done」は『ザ・ボーイズ』シーズン2で話題になったミームで、スターライト、クイーン・メイヴ、ストームフロントを「Girls get it done=頼れる女性」として売り出そうとするヴォート社に対し、キミコ、スターライト、クイーン・メイヴがストームフロントをボコボコにするシーンで、フレンチーが「Girls do get it done=頼れすぎる女性」と発言していた。AmazonプライムビデオのUK&IE公式も同タイトルの動画を投稿している。

ホームランダーに関してはまだ言ってるのか、という感じだが、息子も大きくなって白髪も生え出したという描写を見ると、セクハラ発言も一周遅れの“女性活躍”的な発言も、なんだか急激におじさん臭が増してしまっている。

「I’ll miss us」

ホームランダーが会場にいると聞き、居ても立ってもいられないブッチャー。元息子のライアンに接触し、ホームランダーと遭遇してしまう。ライアンをホームランダーから引き離したいブッチャーだったが、ライアンはよく教育を受けている。さらにホームランダーはその透視能力を使ってブッチャーの脳が蝕まれていること、余命が半年もないことを見抜く。意外な展開だが、ライアンの方は動揺を隠せない様子だ。

ここでホームランダーは「寂しくなるな」と言っているが、英語では定型文の「I’ll miss you」ではなく、「I’ll miss us(私たちを恋しく思うだろう)」と言っている。自分を入れちゃうのがホームランダーらしさかもしれないが、同時に二人の関係に魅力を見出していたとも取れる発言だ。

立ち去り際にホームランダーが「スマッシュ・マウスは聴き逃せない」と言った後に流れる曲はもちろん、スマッシュ・マウスの「Walkin’ On the Sun」(1997)。「太陽の上を歩いている」というタイトルに調和するように、このシーンではキミコとフレンチーによるスパイ活動が描かれる。

フレンチーがポーチからすり替えたものは、ラベルに「In Vision」と書かれていることから目薬であることが分かる。冒頭のバンのシーンでフレンチーは液体をこの目薬のケースに入れていた。そこに現れたゾーイは口から飛び出す蛇のような器官で警備者を食い殺してしまう。ゾーイはシーズン3で母ニューマンからコンパウンドVを注射されており、母と同じく能力者になっている。

フレンチーを危機一髪のところで助けたのは、こちらも能力者のキミコ。頼りになる。キミコは右腕を千切られながらも、二人は窓から飛び降りて脱出。キミコの腕は蘇生する途中の赤ちゃん状態で、助けに来たスターライトの手を掴めず地面に直撃するも、しっかり復活を遂げる。これまでキミコは攻撃能力が目立ってきたが、蘇生能力を強調する演出だ。

ニューマンとヒューイの「相互確証破壊」

そして、ニューマンはバンにいるヒューイに接触。ヒューイのビビり方が100点満点だ。ブッチャーがライアンとゾーイに遭遇した時に、立ち去るゾーイはスマホでテキストを打っていたので、おそらくあの時点で既に母に連絡していたのだろう。警備員が部屋にいるはずのない母の警護で部屋に来ていたことから、ゾーイは警備員に攻撃したものと思われる。

ニューマンを怪物呼ばわりするヒューイに、ニューマンはシーズン3でヒューイが即効性Vにより瞬間移動能力(衣服は除く)を身につけたことを指摘。ヒューイは家族同然だったと言い、ニューマンは停電の夜に打ち明けようとしたと弁明する。ヒューイはシーズン2のラストでニューマンが指揮する超能力管理局に就職し、シーズン3では当初、ニューマンの右腕として働いていた。

ニューマンは、事実を話して親友だったヒューイを失うのが怖かったと話すが、ヒューイはニューマンに硫酸をかける。しかし溶けたのは服だけ。次にブッチャーが頭を撃つが、これも効いていない様子。無敵か? 理性がある分、ホームランダーよりも厄介な相手かもしれない。

なお、ここでニューマンが挙げている映画『ウォー・ゲーム』は、1983年に公開されたSF映画。コンピュータで制御する戦争を描く作品だ。ニューマンが語る「相互確証破壊」とは、核を保有する国同士、どちらかが相手に向けて核を発射すれば、その弾頭が到着する前にもう一方が核を発射するため、どちらも確実に破壊されるという概念。お互いが相手を破滅させられるが状況、それ自体が抑止力になるという考えだ。

ヒューイは、ニューマンが能力者という秘密を知っているため、お互いが破滅しないためには停戦しかないと話すのだった。ここで、「アリゾナも勝利」という一報がニューマンに入る。現実においては、アリゾナは以前は共和党の盤石地区だったが、今では激戦区になり、直近の知事選は民主党候補が勝利。2024年5月には、ホッブス新知事のもと1864年に制定された中絶禁止法を廃止した。

CIAで登場したのは…

ようやく出てきたオープニングクレジットの後に映るのは「スーザン・レイナー」を追悼する楯。スーザン・レイナーはブッチャーの元同僚のCIA副長官で、シーズン2で頭を爆破されて死亡した。振り返れば、ニューマンの仕業だったことが分かる。この盾があるということは、スーツ姿のMMがいるのはCIA本部だ。

ザ・ボーイズのリーダーを務めているMMは、CIA長官のグレースと、ロバート・シンガー大統領候補と会っていた。意外にもザ・ボーイズをニューマン討伐の任務に駆り出していたのはロバート・シンガーだったのだ。それで警備もボーイズに協力的だったということだ。ロバート・シンガーは1月6日に大統領選の結果が承認されれば、ニューマンが正式に副大統領になり、シンガーが暗殺されればニューマンが大統領になれる状況が整うということを理解していた。ニューマン副大統領の誕生、即ちシンガーの死という状態なのだ。

モニークからの着信でMMのスマホから流れる着信音は、リック・アストリーの「ギヴ・ユー・アップ」(1987)。原題は「Never Gonna Give You Up」で、「決して諦めない」という意味になる。MMはシーズン1からずっとこの着信音を使っており、別れた妻のモニークへの未練が表現されている。

一方、会議室に入れてもらえなかったブッチャーは、ジョー・ケスラーという人物と遭遇。演じているのは『スーパーナチュラル』(2005-2010)のジョン・ウィンチェスターや『ウォーキング・デッド』(2010-)のニーガンを演じた俳優のジェフリー・ディーン・モーガンだ。ジェフリー・ディーン・モーガンはかねてより『ザ・ボーイズ』への出演を熱望しており、ようやくシーズン4で出演が実現した。

ジョー・ケスラーは、原作コミックに登場するモンキーことハワード・ケスラーをベースにしたキャラクターで、コミック版ではCIAの分析官だった。ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4では、ケスラーはブッチャーを引き抜こうとしている様子。ケスラーは、シンガーの意向でニューマン暗殺がCIAのトッププライオリティーになったことを嘆いているようだ。

ブッチャーは「グレースは政治に意欲的」と非難しているが、スピンオフドラマ『ジェン・ブイ』では、グレースはゴドルキン大学のインディラ学部等からの能力者を殺せるウイルスの提供を「虐殺」になると断っていた。それに、ブッチャーのような人間を生みたくないと、インディラを諭すなど、人間的な側面を持っている。

ブッチャーの狙いはあくまでホームランダー。残り時間も少ない中、増長するホームランダーを葬って決着をつけたいのだ。ケスラーにとってブッチャーは、アフガンでの任務の恩人らしく、「能力者たちが俺たちを収容所に放り込む前に」と手を組むことを持ちかけるのだった。

ホームランダーの憂鬱

スーツのままモニークのもとを訪れたMMは、「プロムに行くの?」と言われているが、プロムとは高校を卒業する前に開かれるパーティのこと。それくらいMMがネクタイをする姿を見たことがないということだろう。

MMの娘のジャニーヌは学校でトラブルを起こしたらしく、モニーク曰く、ジャニーヌが精神的に不安定になっている原因はモニークの元恋人のトッドを追い出したからだという。シーズン3ではトッドがホームランダーの傾倒して陰謀論者になっていく様子が描かれた。モニークはそんなトッドを追い出したというがその後行方不明になっているといい、MMは未来の大統領の暗殺任務の一方で、トッド捜索というプライベートな任務を背負うのだった。

夢を見るホームランダーは、自分の過去の残虐行為と共に「心の奥底は人間だ」という声に苛まれていた。日中は本名の“アニー・ジャニュアリー”で活躍し始めたスターライトの様子や、タコとの関係を元妻のカサンドラに暴露されたディープのインタビューを観てウンザリしていた。ミッドライフクライシス(中年の危機)と呼ばれる中年期の落ち込みのような雰囲気だ。

なお、ディープがインタビューを受けているのはヘイリー・ミラーという人物で、シーズン3でもホームランダーとスターライト、ニューマン議員を迎えてインタビューをしていた。『ジェン・ブイ』では主人公のマリーがインタビューを受けている。

セブンの会議室には、シーズン3でホームランダーに殺されたはずのブラック・ノワールが登場。ホームランダーもちょっと反応している。アシュリーはホームランダーにゴドルキン大学で助けてもらったことにお礼を言っているが、これは『ジェン・ブイ』クライマックスでの出来事を指している。

セブンは現行メンバーがホームランダー、Aトレイン、ノワール、ディープの4人だけとなり、3人の補充が必要となっている。好き勝手なことを言って候補を落としていく一同だが、その中の一人、シスター・セージについてAトレインはその能力を「世界一賢い」と説明する。この時も、ホームランダーは少し反応している。そう、ホームランダーは賢い人物を求めているのだ。

ホームランダーは、彼の一声で意見を変えるアシュリーや言われた通りになんでもやろうとするディープたちにウンザリしていた。「ゴマスリとバカしかいない」という発言にさえ「素晴らしい指摘です」と答えるディープは“ゴマスリでバカ”というどうしようもなさ。誰もホームランダーに意見できない状況を嘆くホームランダーだったが、これは本来彼が望んだことのはず。アシュリーは困惑を隠せない。

つまり、ホームランダーの周囲が変わったのではなく、ホームランダーが変わったのだ。歳をとって性格が変わりつあるのかもしれないが、それ以上にブッチャーとの戦いが終わるということ、自分に追い詰められるような相手がいなくなるという事実への喪失感を感じているのかもしれない。

テレビではホームランダーの裁判を応援する内容が流れている。ヴォート・ニュースのテロップには、「ストームチェイサーが全国の地方選挙に参戦」と書かれており、ストームフロントの死後も極右の台頭は止まっていないようだ。

そして、アイススケートショーの『ヴォート・オン・アイス』の宣伝。「来たる12月7日」と表記されていることから、大統領選の結果が承認される1月6日までは1ヶ月以上は残されていることが分かる。また、ファイアクラッカーというヒーローは、ホームランダーに殺害された男性が姪の裸の写真を持っていたと糾弾している。そうだったとしても殺人事件とは何の関係もないのだが、リベラル勢は皆小児性愛者だというのが、オルタナ右翼に広まっている陰謀論だ。

ブッチャーの決断

アニーは電気を使って空を飛ぶ練習をしている。ブッチャーは「飛ぶたびに電力を使っていたらグレタが怒るぞ」と憎まれ口を叩いているが、グレタとは環境活動家のグレタ・トゥーンベリのことだろう。ニューマンの目薬に仕込んだらしいフレンチーの酸も効かなかったらしく、ヒューイは父からの電話に出ない。MMもすぐに電話には出れなかったし、なんだか各々が大事なものを後回しにしている気がする。

その上、ヒューイ以外はブッチャーを追放すべきだと考えていた。そのブッチャーはニューマンと密会。ここの協力が残されていたか。ブッチャーが口にした「ゴドルキンのウイルス」とは、スピンオフドラマ『ジェン・ブイ』で物語の鍵になった、ゴドルキン大学の地下で開発されていた対能力者用のウイルスだ。最終話のラストでは、ブッチャーがこのウイルスの存在に辿り着いていた。

ニューマンはホームランダーを抑え込むためにこのウイルスを利用したがっていたが、このウイルスではまだホームランダーを倒すことはできないらしい。二人が協力を結ぶ条件として、ニューマンはヒューイが盗んだ情報(=ニューマンが能力者だという証拠)を差し出すよう要求する。証拠がなければ、ニューマンの秘密は陰謀論として処理できるというのだ。

ヒューイの父が入院する一方、ファイアクラッカーはインスタリールも投稿していて、こちらでは性犯罪被害者の10代の子ども達を保護するアニーの施設に対し、「LBGT運動で搾取される」と攻撃している。日本でのColabo叩きを思い出す内容だ。アニーの方は、その施設で知名度とキャッチーさからスターライトとしての活動を求められている。本来の姿よりもかつての偶像を求められるしんどい状況だ。

シスター・セージの助言

白髪の陰毛をストームフロントの写真と保管しているホームランダーは、「世界一賢い」と言われていたシスター・セージに注目していた。シスター・セージは本を読みながら音声でも勉強しており、インプットする力もすごいみたい。早速セージに会いに行ったホームランダーは、毛染めを使っていること、頻尿になっていること、年老い始めていることを見抜かれる。「父親に殺されそうになった」というのは、ソルジャー・ボーイのことだ。

ホームランダーはすべてが無意味に思える満たされない感覚を味わっており、セージに助言を求めに来ていた。「息子に何かを遺したい」とも言っており、親になってちょっと成長したのではないだろうか。

しかし、セージはホームランダーに、ローマもギリシャも民主主義が崩壊したのは民衆が愚かだったから、民衆を殺し合わせ、それを救えばいいと吹き込む。これもセージの作戦だろうか。セージはセブンに入れと言われて一度は断るが、「ちゃんと助言を聞く」「君の理論を世界規模で実証してもいい」と口説かれてセブン入りを決めるのだった。

ヒューイは、父が脳卒中になったとして、先ほど電話に出なかった件で自分を責めていた。「J・パタースンの小説の話を聞いてやれなかった」と話しているが、ジェイムズ・パタースンは『ナッシュヴィルの殺し屋』(1976) や、ドラマ化もされた『あの頃、ティファニーで』(2008) などで知られるアメリカの作家だ。

一方で、話し相手のブッチャーの手が震えているが、それには目を伏せて父の元へと急ぐ。ヒューイは、実は目の前のブッチャーも失いつつあることに気づけていない。ブッチャーの方はそんな状況にあるヒューイにハグをするふりをしてUSBを盗むのだった。シーズン4になっても、ザ・ボーイズはやっぱりそれぞれに問題を抱えている……。

MMはCIAのデータにアクセスしてトッドの居場所を突き止めていた。やっぱりMMは優先順位を間違えていない。トッド追跡について来ていたキミコは、フレンチーが依存症のグループミーティングで出会い、アニーの施設の職員として推薦したコリンと良い感じな気がしていて、「コリンといて幸せならコリンといて」と伝える。キミコの優しさが現れているが、フレンチーもはっきりしてほしいところだ。ちなみにこの一連のやり取りは、手話での会話だからMMには聞こえていない。

一同はトッドを発見するが、会っていたのはシスター・セージで、トッドらホームランダー支持者の3人はディープ、ノワール、Aトレインがいる場所に連れて行かれると、ホームランダーはトッドらをバットで殴り殺すよう指示。トッドはこれで殺されてしまう。ちなみにブラック・ノワールは喋らない設定だが、ここでは声出して発言してしまっている。

裁判所ではホームランダーへの判決が言い渡されるらしい。それを報じるテロップでは、シーズン1に登場した宗教団体を率いるヒーローのエゼキエルのコメントとして「司法が正しい判断をすることを祈る」という旨の言葉が紹介されている。

判決の日、ホームランダーに無罪が言い渡されると、スターライト支持者を装ったシスター・セージが暴動をけしかける。セージ、やっぱりあんまり賢いとは思えず、何か別の狙いがあるようにも感じる。コリンを助けたフレンチーはコリンに口付けをするまさかの展開。フレンチーがコリンを遠ざけていたのはキミコの存在があったからだったのだ。

暴動の最中の策謀

暴動の中、アニーが空を飛んで登場。支援者のキアラがリンチに遭う一方で、Aトレインが撲殺されたトッドらの遺体を現場に置いていく。新たな策謀だ。スターライト支持者を殺したホームランダーに無罪が言い渡されたのと同時に、ホームランダー支持者の3名が死亡したのだ。

だが、この事件の真相に迫る証拠を押さえている人物がいた。トッドを追い、トッドとセージが一緒にいる場面の写真を撮っていたMMだ。MMはトッドらが入っていった建物からホームランダーが出てくるところも目撃しており、これが謀略であることを理解したはずだ。

一方、ホームランダーはライアンと共に無罪判決のお祝いで大好きなミルクを飲んでいた。しかし、ライアンは、ブッチャーに死んでほしくないと気持ちを吐露。ママがブッチャーを愛していたからだと語る。これはホームランダーが経験したことのない感情だ。自分しか基準が存在しないから、「自分自身はどうなんだ?」と聞くことしかできないのだ。

ディープは、自室でタコのアンブロシウスと話をしている。処分したというのは嘘だったのだ。アンブロシウスはディープがシーズン3でヒーロガズムから連れてきたタコだ。コリンと寝ていたフレンチーは、コリンの家族写真を見ている。ここに来てフレンチーとキミコの関係が複雑になりつつある。

ヒューイは父ヒューが眠る病室で、楽しそうにジェイムズ・パタースンの小説『デッドリー・クロス』(2020) の話をする父の留電を聞いている。微笑ましい話だが、その尊さは失ってから気づくものだ。そして、そこに現れた人物に、ヒューイは「母さん?」と声をかける。ヒューイは父子家庭で育っており、母はこれまで登場していない。

ラストシーンの画像の意味は?

『ザ・ボーイズ』シーズン4第1話のラストシーンでは、ブッチャーは死んだ妻のベッカの幻聴を聞いていた。ベッカは、ブッチャーがヒューイを裏切ってニューマンにファイルを送ろうとしていることを非難している。

過去のシーズンでは、ブッチャーはヒューイに死んだ弟のレニーの姿を重ね合わせていた。レニーは父の暴力から逃れるためにブッチャーがレニーを置いて家を出たことで自死しており、今度もファイルをニューマンに送るということは、自分は手を下さずとも「相互確証破壊」の状況を崩してヒューイの命を奪うことに直結する。しかし、ブッチャーはシーズン3でホームランダーを殺せたのにライアンを助ける方を選び、結局何も得られなかったことを悔やんでいた。

葛藤するブッチャーだったが、ニューマンにファイルを送る。ニューマンがファイルを開くと、それはニューマンが能力者であるということの証拠となる画像……ではなかった。この場面、画面にはモザイクがかかっているが、英語の音声ガイドを聞くと答えが分かる。(広告がバンされないように)平たく言うと、誰かの「お尻の穴」が表示されているとのことだ。ブッチャーはヒューイを裏切らなかったのだ。

最後に酒を飲むブッチャーの顔がアップになるが、その額に浮かんだ血管のような筋がミミズのように動いている。ブッチャーの死が近づいていることを暗示して、『ザ・ボーイズ』シーズン4第1話は幕を閉じる。エンディングで流れている音楽は、オープニングと同じセックス・ピストルズ「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」。「No future」と繰り返される歌詞は、ブッチャーに時間が残されていないことを表している。

『ザ・ボーイズ』ネタバレ感想&考察

『ザ・ボーイズ』シーズン4で皆戻って来たけれど、なんだかやっぱり皆問題を抱えることになっている。中でもホームランダーには老いが、ブッチャーには死が迫っていると同時に、ホームランダーは長年競り合ってきたブッチャーを失い、ブッチャーは長年追ってきたホームランダーを逃す危機に直面している。

『ザ・ボーイズ』のシリーズ指揮するエリック・クリプキは、本作をブッチャーとホームランダーの物語としており、その決着がつくシーズン5で本シリーズを終了させると明言している。『ザ・ボーイズ』と世界観を共有するスピンオフ作品は継続して制作されるということなので、やっぱり『ザ・ボーイズ』はブッチャーとホームランダーに注目して観ていきたいところだ。

もちろん、他のメンバーについても、ハリウッドでの大規模ストライキを経て配信されたシーズン4第1話は、なんだか実家のような安心感と、同窓会のような懐かしさを持って観ることができた。相変わらず人間臭くて、すれ違っていく一同がシーズン4のフィナーレではどんな状態になっているのか。とりあえず全員無事であることを願って、まずは、初週同時配信の第3話までを引き続き観ていこう。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第2話のネタバレ解説&考察はこちらから。

ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4はAmazonプライムビデオで配信中。初回は3話同時配信。

原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから第6巻まで発売中。

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シーズン4第3話のネタバレ解説&考察はこちらから。

シーズン3最終話のネタバレ解説&考察はこちらから。

スピンオフドラマ『ジェン・ブイ』シーズン1最終回のネタバレ解説&考察はこちらから。

 

『ザ・ボーイズ』のシーズン5での終了についてエリック・クリプキ監督が語った内容はこちらの記事で。

『ジェン・ブイ』シーズン2についての情報はこちらから。

「ザ・ボーイズ」フランチャイズの更なるスピンオフ展開についてはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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