注目のドラマ版『スノーピアサー』
『パラサイト 半地下の家族』(2019)で知られる韓国のポン・ジュノ監督が2013年に発表した映画『スノーピアサー』。フランスの同名バンド・デシネ (コミック) を原作に階級社会をテーマにした同作はアメリカでドラマ化され、2020年5月よりテレビ放送が始まった。日本ではNetflixにて5月25日(月)より配信を開始。毎週月曜日に最新話を更新している。
ドラマ版『スノーピアサー』では、原作と映画版をベースに、永久機関列車“スノーピアサー”を舞台にした階級社会を生きる人々を描いている。ドラマ版のあらすじは以下の記事を参照していただきたい。
ドラマ版『スノーピアサー』で全体を統括するショーランナーを務めたのは『オーファン・ブラック 暴走遺伝子』(2013-2017)を手がけたグレーム・マンソン。人類の生き残りが階級はそのままに一つの列車内で共存するというSFアイデアを、ドラマ版では1001車両にまで拡張。クライムサスペンスと組み合わせることで多様な物語を提示している。
グレーム・マンソンが考える“SF”
そのグレーム・マンソンが、SF作品に込めた想いを米Backstageに語っている。このインタビューでMichael Appler記者は、『バベル-17』(1966)で知られるSF作家サミュエル・R・ディレイニーについて触れ、現実とは違う世界 (未来を含む) について思考を巡らせる“スペキュレイティブ・フィクション”としてのSFの一面を紹介している。
だが、グレーム・マンソンはドラマ版『スノーピアサー』へのそうした見方を否定する。曰く、「ベストなSFは現実の世界と肩を並べるもの」だという。
それは、SF的な想像力の背後に存在する自分自身の物語とは一定の距離を保ちながら、社会的な意見を打ち出す方法です。私たちはSF的な未来を目指して進んでいくべきではありません。SFは私たちの世界の上に作られるべきものです。
つまり、グレーム・マンソンは、SFは現実を反映したものであるべきだと考えているのだ。さらにこう続ける。
『スノーピアサー』の大部分は未来やテクノロジーに関するものではありません。人々が背負った罪についての物語、全てを失った人々が抱えるトラウマについての物語です。
グレーム・マンソンは、近未来を舞台にしたSFドラマ『スノーピアサー』で、“人々の未来の姿”を描いているわけではない。現在の人々の姿をフィクションの世界に置き換えることで、現実の写し鏡となる作品を作り出している。
故にドラマ版『スノーピアサー』は、登場人物達が各々の立場 (階級) から最善の行動を選ぼうともがく。スノーピアサーの中に再現された階級社会に、より多くの人々が自分の姿を重ね合わせ、そして自分の生き方を問い直せるような物語が用意されているのだ。
確固たるSF哲学を持つグレーム・マンソンが率いるドラマ版『スノーピアサー』。果たしてどのような終着点を見せてくれるのだろうか。
ドラマ『スノーピアサー』はNetflixで5月25日(月)より毎週月曜日更新で配信中。
シーズン2の制作も決定している。
あらすじは以下の記事から。
Source
Backstage
なお、SF作家のケン・リュウはSF作家が描き出した未来が現実のものにならない理由を語っている。