第7話&第8話ネタバレ解説『仮面ライダーBLACK SUN』「美しい国、日本」の仮面ライダー あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

第7話&第8話ネタバレ解説『仮面ライダーBLACK SUN』「美しい国、日本」の仮面ライダー あらすじ&考察

©️石森プロ・ADK EM・東映

2022年10月28日(金)より全10話が一挙配信されたドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』は、製作陣が仮面ライダーを通して現実を描くと言うだけあって血生臭い描写だけではなく社会にも深く切り込んだ内容となっている。

原点に立ち返るというイメージで企画された『仮面ライダーBLACK』の更なるリメイク・リブートとして注目され、関連ワードがTwitterでトレンド入りするなど社会的な反響も大きい本作。今回も各シーンを解説、考察していく。

以下の内容は第8話までのネタバレを含むため、必ずAmazonプライムビデオで本編を視聴してから読んでいただきたい。また、本作は視聴対象が18歳以上の成人向けコンテンツになっている。また、露骨な残虐描写が含まれるので苦手な方は注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』第8話までの内容に関するネタバレを含みます。

創世王の死

海辺の老人ホームで二つの石を合わせる秋月という老人。彼は周囲に「二つの石を一つにすると現れる神」の話をしているとのことだ。ゴルゴム党ではビルゲニアの捜索をかいくぐり雀怪人・小松俊介とカマキリ怪人・葵がキングストーンを持って脱出しようとしている。党内はどこも死体や血があふれ、怒声や絶叫で騒然としている。

南光太郎は創世王殺害を決意し創世王と対峙するが、死にかけていたはずの創世王は手をあげる。そこで50年前の創世王殺害と同様に、バッタ怪人に変身しても創世王の念動力で吹き飛ばされ脚を折られる。しかし現代の光太郎はバッタ怪人を超えた完全体の仮面ライダーBLACK SUN(ブラックサン)に変身して念動力もものともせずに創世王の首に噛みついて掴みかかる腕を折った。

三神官の翼竜怪人・ビシュムと秋月信彦の死闘も続き、ビシュムはその最中も信彦に創世王になれと説得する。信彦は創世王が存在する限り苦しみは繰り返すと言い返すがビシュムは、信彦は愛した新城ゆかりとの苦しみしか考えておらず、これまで怪人たちが受けてきた無念を知らない自分本位なものと言い切り、投げつけられた信彦の第二の腕も躱して吹き飛ばす。ビシュムは信彦に個人の怒りは何も生まないと吐き捨てる。

怪人というマイノリティの存続のために人間というマジョリティの支配という恥辱に耐え続けたビシュムにとって、ゆかりという一個人の怒りだけを糧に戦う信彦の信念は弱く見えたのだろう。しかし信彦はそれに激昂し、創世王と同じ念動力を覚醒して命乞いするビシュムを痛めつけるが、彼女は信彦の力が創世王と同じものだと確信した。

血に塗れて瀕死の光太郎と創世王。光太郎は50年前とは違い、今日こそ決着をつけると言って創世王の腕を引きちぎり、その心臓に手をかける。そこから伝わる鼓動は過去を思い出させ、祠に祀られた創世王に少年時代の光太郎と信彦は頭を撫でられた記憶が過ぎるが、それを振り切るように創世王の心臓を抉り取る。心臓は未だ鼓動を続けるが創世王の瞳から光が消えた。

革命の行方

路地裏に逃げ出した俊介と葵。その手にはキングストーンが握られている。騒動を知らなかったコウモリ怪人はゴルゴム党内地下で引きちぎられた自分の脚を咥えて血を流して這う光太郎を見つける。彼は50年前にも折られた脚で這うことしかできない光太郎を連れて逃げたのだ。彼の今も続く古傷はこのときの傷によるもので、今回の戦いではとうとう千切れてしまったのだ。

50年前、光太郎と共にコウモリ怪人が逃げようとしたところに新城ゆかりとビルゲニアが現れる。ビルゲニアはゆかりが創世王殺害計画を企てている勘ぐり問い詰めるが、口を割らないゆかりに苛立つビルゲニアは彼女を斬殺。それをコウモリ怪人と光太郎は木の上、オリバー・ジョンソンは物陰から目撃してしまう。そのビルゲニアをダロムとビシュムが追い詰め、ゆかりの遺体を前にオリバーはキングストーンを守る決意を固め逃げた。

現代、行く当てもなく街を彷徨う葵と俊介。俊介は殺人の罪悪感から嘔吐する。人間が人間を殺す現実に悩む彼を葵は自分もわからないと告げて抱きしめるが、俊介は人間同士が争い、怪人同士が殺し合う同胞殺しに困惑する。「仮面ライダー」シリーズ共通のテーマに少年が戸惑い、背景に映る日本共産党の「いのち・くらし守る」というスローガンを想起させるゴルゴム党のポスターの「あなたの命と暮らしを守る」が深く突き刺さる。

葵は光太郎との約束通りにクジラ怪人のもとへ身を寄せることを告げる。そして俊介に怪人であることを受け容れる手助けをしてくれたことを感謝するが、俊介は何も特別なことはしていない、自分は常に葵の味方だと微笑み、葵は俊介の顔を拭う。そのときの葵と俊介は革命戦士の少年兵と創世王の器ではなく、幼い親友同士に戻っていた。

怪人の起源

ゴルゴム党に残された信彦は創世王の心臓と光太郎が這った跡を見つけるがSATに囲まれ、総理大臣・堂波真一に捕らえられる。真一は信彦を何も変わっていないと嘲笑い、その一方で創世王の遺体をただの抜け殻と評し、今も動き続ける創世王の心臓を見て凄い生命力だと笑った。50年前もビルゲニアと共に三神官に捕らえられた信彦を同じように蹴り、クジラ怪人が苦い顔をするほどいたぶる。

現代の真一は50年前の恨みを今になって晴らすように、信彦に今後の人生は創世王として怪人製造とヒートヘブンの材料になる体液を搾り取られ続ける余生を過ごせと吐き捨てるが、信彦は当然それを拒絶する。そのような信彦をあざ笑うかのように真一は受け入れがたい醜い真実、怪人たちの本当の起源について語りはじめるのであった。

ことのはじまりは1936年。真一の祖父、堂波道之助が異能力を持った改造人間の製造を計画。そこで集められた国内随一の研究者こそ光太郎と信彦の父親であり、真一曰く「怪人とは莫大な予算をかけて戦争の兵器として生み出された無敵の国民」であり、それ以前の彼らの歴史は政府が用意した偽りのものだった。皮肉なことに散々反怪人団体が反日だと罵っていた怪人たちこそ政府の望む国民の理想像だったのである。

この1936年というのは現実の日本の歴史においても重要な年であり、堂波道之助のモデルになったと考えられる岸信介元総理が満州国国務院実業部総務司長に就任して渡満した年である。満洲国国務院とは関東軍から送り込まれた日本人が要職を抑えて満州国の国政を牛耳る最高機関である。ここで現実と虚構がリンクしており、1936年は一人の政治家が軍事力の実権を握り、政治的マイノリティを支配下に置いた時代なのである。

それを聞いて驚きを隠せない信彦。真一は醜い真実を語り続ける。怪人が兵器となった時代は終わり、なおかつ生まれてくる怪人は高い戦闘力を持つ上級怪人ではなく下級怪人がほとんどだったため、真一は方針を変えて怪人たちを諸外国の上流階級に観賞用や愛玩動物、殺人用、はてはセックスドールとして売りさばいてきたのだ。

愕然とする信彦を見て真一は更なる真実を告げる。実は早い段階から政府は創世王の死期が近いことを知っており、その前に早急に王位継承の儀を済ませるため現行の創世王殺害とキングストーン回収を計画、そのためのスパイがゆかりだったのだ。ビルゲニアが彼女を斬殺したことで計画に変更はあったものの最初からすべては政府の掌の上で踊らされていたにすぎず、信彦は堪えがたい真実に怒りを覚えるもただ逃亡するしか道はなかった。

身近な人種差別、ヘイトスピーチ、憎悪犯罪

脱出後、葵とわかれて家路につく俊介は井垣渉ら反怪人団体に絡まれてしまう。俊介は最初こそ我慢していたが井垣の挑発に乗って唾を吐き差別はやめろと叫ぶ。しかし井垣らに取り押えられリンチに遭う俊介。そこで井垣は、自分は差別主義者ではない、差別は人間が人間に行うものであり、自分は差別など行なっていないと言い切る。

このような言説を視聴者は必ずどこかで見たことがあるはずだ。差別ではなく区別、言葉がうまく理解されなかった、考えに相違があった。そう言って差別発言を繰り返す人間は政治家、テレビ、インターネットのどこにでもいる。井垣は現実の日本の負の側面を映した鏡だ。市民は少年が血まみれで殴られるのを見て見ぬふりをする。これは現代日本の縮図、私たちはスーパーヒーローのいない現実、「美しい国、日本」に引き戻される。

クジラ怪人の車に揺られてかつて怪人たちが暮らしていた村に戻る葵。そこにはニックとノミ怪人が暮らしていた。ニックは今も怪人になりたいらしい。裏切りと改造を詫びるニックとノミ怪人。複雑な感情を抱えながら葵は二人の持つ背景を考え、許す決断をする。そしてノミ怪人は研究所にいる光太郎が危険な状態であることを葵たちに告げる。

傷だらけでアジトに帰ってきた信彦は生き残りの少年兵に出会う。恐怖で逃げ惑い、銃撃の中で唯一生き残ってしまったと涙ぐむ少年兵に自分を責めるなと言って家に帰す信彦。彼はそのまま怪人街に向かう。ここで葵の育ての親・和泉美咲の店がチマチョゴリの専門店であることや、韓国料理店が立ち並ぶなど、怪人の置かれた状況が在日コリアンの人々の置かれた状況とどこかリンクしていることが暗示される。

俊介の家まで行くが帰ろうとする信彦。しかし彼の両親の小松夫妻と会ってしまう。何があったのか知らず、普段のように俊介の帰りが遅いことを心配する小松夫妻に信彦は言葉が詰まる。そのとき、頭上から垂れる血で俊介がリンチの末に殺され、「息の臭い怪人はこうなる‼」という看板と共に吊るされて奇妙な果実になっていることに気が付くのだった。

「奇妙な果実」とはニューヨークの教師が新聞で黒人がリンチの末に吊るされて死んでいる写真を見て書いた詩と、その人種差別を告発するビリー・ホリデイ氏の歌から来た言葉であり、原義は吊るされた黒人の死体を意味する。BLMで再注目されているが『仮面ライダーBLACK SUN』は日本もその例外ではないと訴えてくる構成になっている。泣き叫ぶ小松夫妻と俊介の遺体を前に自分が彼を死なせた事実に呆然となる信彦。そして信彦は決意を固める。

仮面ライダーSHADOW MOON、誕生

かつて怪人が住んでいた村に光太郎はコウモリ怪人によってなんとか連れて来られたが、危篤状態のまま目を覚まさない。光太郎を心配して寄り添う葵にノミ怪人はずっと限界の中で戦ってきたのだから少し休ませてあげようと言うが、クジラ怪人はこの状況でキングストーンを狙って次なる襲撃があるのではないかと危惧していた。

コウモリ怪人がニックらにすべての怪人は腹にストーンを持っているのだと明かす。クジラ怪人はその中でも光太郎と信彦のみが二人の父親からキングストーンを託されたのだと語る。ノミ怪人は父親たちの望みは創世王継承のために争うことだったのか、クジラ怪人は次の襲撃は政府かゴルゴム党かと大人たちが口々に嘆く。葵は光太郎の復讐のためなら誰だって殺すと叫ぶが、幼い彼女は無力感に苛まれるのだった。

俊介の父親・小松茂雄は井垣らの反怪人団体の路上演説会場にいた。茂雄は包丁を隠し持ち、息子の復讐のために井垣へと叫びながら走る。しかし、茂雄よりも先に井垣の前に立ったのは他ならぬ信彦であり、信彦はバッタ怪人の姿のまま井垣の頭を両手でつかみ命乞いを無視して押しつぶす。そして俊介と自分が死なせてしまった少年兵たちのための復讐心を抱き、バッタ怪人から仮面ライダーSHADOW MOON(シャドームーン)に変身するのだった。

1972年から2002年

1972年、監禁され鎖で磔にされて拷問を受ける信彦とビルゲニア。信彦の脇腹にはサーベルタイガー怪人・バラオムの爪跡が深々と残り、その姿も合わせてイエス・キリストを連想させる。ビシュムとバラオムは信彦にキングストーンのありかを聞くが、彼は口を閉ざす。ビルゲニアはビシュムらに政府ではなく自分たち側に着くように説得するが、ビシュムは信彦がそれを許さないだろうと冷たく返す。

裏切り者であるゆかりを斬り捨てたことに後悔がないビルゲニアは、食べたいぐらい愛していたのだからゆかりの死体でヒートヘブンでも作って食べさせてやれと信彦を挑発。信彦はビルゲニアに殺してやると叫ぶが、それもむなしく信彦とビルゲニアは同じ房に囚われ、バラオムから光太郎の死も伝えられたことにより信彦の希望は完全に断たれてしまった。

2002年、若かりし頃の川本夫妻はある教会を訪ねる。そこには表舞台にまったく顔を出さないが活動を続けるオリバーとその息子の姿があった。教会にはゆかりの言葉「人間も怪人も命の重さは一緒。1グラムだって命の重さに違いはないのです」が貼り出されている。オリバーは川本夫妻を呼びつけたのは現在の活動の真の目的のためだと語る。

オリバーは真の目的は怪人が日本発祥であることを国際社会に発表し、政権与党・民の党を倒閣し、怪人の歴史を終わらせることだと明かす。だが、それが幸福かどうかを決めるのは人間ではなく怪人であり、オリバーは怪人が結論を出すまでの間、川本夫妻にキングストーンを守ってほしいと託す。オリバーは30年間、ゆかりの言葉を忘れずにいたのだ。なお、堂波道之助から真一まで堂波一族が三代所属する民の党のモデルが自民党なのは明らかだ。

内部からの革命

コウモリ怪人は焚き火を囲み、虫を焼いて食べながらニックにゴルゴム党は自分が創ったことや四神官だったが柄ではないのでやめたと吹聴するがどこまでが真実かわからない。クジラ怪人はノミ怪人が創世王の体液を隠し持っていたのを見つけ、二人はニックに怪人になれるかもと話し、ニックは怪人になれるならバッタが良いと盛り上がる。

母の墓前に花を供える葵。そこにノミ怪人がやってきて葵の母親・莉乃が聡明な女性だと語る。莉乃は捕らえられている一瞬の隙にノミ怪人の心がゴルゴム党から離れていることを見抜き、ビルゲニアが用を足しに行っている間に死を覚悟して鍵を託したことを告げた。そこには葵の両親が隠した資料があるという。その間に光太郎が目覚めたと知らされる。光太郎は真っ先に葵の身を案じ、葵はキングストーンを守り抜いたと伝えるのだった。

ゴルゴム党では自ら乗り込んできた信彦を捕らえ、王位継承の儀が執り行われていた。宣誓が行なわれるがそれには真一への忠誠が含まれており、それに憤慨したのは「総理の犬」と呼ばれたビルゲニアだ。ビルゲニアの心は今も創世王にあり、創世王は人間ではなく創世王の力に守られたと叫ぶ。一時は創世王が死んでもいいと思っていると評されたビルゲニアだが、その行動から創世王という神、あるいはその概念への信仰心があるようだ。

信彦はゴルゴム党員たちに仲間を売り飛ばし僅かなヒートヘブンを得る現状で良いのかと語る。怪人存続のために従属の道を選んだダロムはバランスのためには多少の不遇や犠牲はやむを得ないというが、信彦はこれまでの屈辱は多少の不遇や犠牲ではないと切って捨てる。ダロムは黙り込んだ後、信彦に怪人の未来を守れるか、他の怪人も人間にすり寄って甘い汁を吸ってきたと返すが、信彦はそこには差別のない未来が前提にあったと話す。

信彦は鎖の拘束を自力で外し、怪人と人間の共存共栄はもはやあり得ず、怪人が怪人らしくそのままの姿で暮らす世界を築くには怪人が人間の上位に立つ世界をつくるしかないのだと説く。そして変身の構えを取り、白い指ぬきグローブをつけた拳をギリギリと鳴らすと、変身と呟いて白いバッタ怪人から完全体の仮面ライダーSHADOW MOONへと変身した。

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世紀王復活

緑色に煌めくバッタ怪人の姿、そこからの二段階変身、白い指ぬきグローブと拳をギリギリと鳴らす演出など『仮面ライダーBLACK』(1987-1988)を踏襲しているものの、変身ポーズやもぎとられた第二の腕、色や構えなどすべてが仮面ライダーBLACK SUNと反転したものになっている。それは葵を通して人間との共存共栄や、未だにゆかりの言葉を信じてキングストーンを守る光太郎と真逆の存在であることを意味している。

信彦は自分に従うか、人間にこびへつらうか選べと言って創世王と同じ念動力でダロムを吹き飛ばすとゴルゴム党及び五流護六は自分が指導者となり人間に従属せずに怪人を守ると宣言する。困惑が広がる中、最初に忠誠を誓ったのは創世王を守る剣を携え、かつて怪人の指導者の座を託され、信彦の愛する人を斬殺したビルゲニアだった。彼の忠誠をきっかけに皆SHADOW MOONへ忠誠を誓い始める。

ダロムも怪人たちの意志を尊重し自分も信彦へ忠誠を誓うが、その瞬間ダロムの胸を聖剣が貫く。その剣はビシュムのものであり、恥辱に耐えて怪人を守ってきたダロムをなぜ殺したのかバラオムは問うが、彼は従属に慣れ過ぎたとビシュムは吐き捨てる。そのような行動をする怪人へ忠誠を誓えないというバラオムを冷酷に反逆者として捕えさせるビシュム。

時は遡り、同じ房に囚われていた頃の信彦とビルゲニア。彼らを訪ねてきたのは今度の総裁選で当選確実と言われていた世襲議員となった真一で、彼は汚れ仕事に就くものを探しているとのことだった。信彦は当然拒絶するが、ビルゲニアは真一に忠誠を誓い、その証として命令通り舌を噛み切ってみせる。さながらイエスに代わって赦免を得て解放されたバラバのように自由を得たのがビルゲニアだったのだ。

信彦とビルゲニア、仇敵同士が手を組むと思いきや完全にSHADOW MOONと化した信彦は念動力でビルゲニアを吹き飛ばして痛めつけ、ビルゲニアには人間の臭いが沁み付き過ぎたと罵る。信彦に向けて聖剣を抜こうとするビルゲニアだったが、党員すべてが信彦についたことを悟り、多勢に無勢なのを感じ逃走。それによってSHADOW MOONによる新体制の五流護六が完成した。

「美しい国、日本」

怪人売買マーケットの裏サイトを見ながら官房長官・仁村勲に「お前怪人になれよ」と軽口を叩く真一。真面目に返答する勲を「パワハラになっちゃうじゃないか、つまんないやつだな」と評する。人身売買を行ない、人種差別など差別発言や差別的政策を平然と繰り返す男がパワハラを気にする。この妙なところでハラスメントを理解したつもりになっているのが現実的で生々しく既視感を感じさせる演出だ。

そこに這う這うの体で入ってくるビルゲニア。彼はゴルゴム党内で信彦によるクーデターが勃発したことを報告するが、それを何とかするのがお前の仕事だと真一は罵り、ビルゲニアを更に暴行する。節々で勲が真一のこの性格に怯えているのか固まる場面や目を伏せる場面が入るのも生々しい。真一はこうして社会的な自身のポジションを暴力で強調するのだ。

小松家を訪ねに怪人街に行った葵は閉店した美咲の店で彼女の死を実感し、追い打ちをかけるように俊介の死を知る。無惨な俊介の遺体と泣きわめく小松夫妻に葵は声も出ない。そこに怪人犯罪課で怪人に理解を示す黒川一也が警官を引き連れて現れ、涙を押し殺して事件性があるので俊介の遺体を解剖に回すと伝える。一也にもっと早くお前らが反怪人団体を逮捕していればと詰め寄る茂雄と遺体を渡すことを拒む母親・佐の声が空しく響く。

現代日本でも殺人まで発展してはいないものの憎悪犯罪を防ぐためにヘイトスピーチ規制条例が施工されるなどしているが、成功しているとは言い難い。議員すらSNSで差別発言をする。それが「美しい国、日本」の現状だ。安倍晋三元総理と自由民主党が2012年に掲げた「日本を、取り戻す。」を模した民の党のポスターの「美しい祖国を取り戻す」というキャッチコピーが虚構と現実の日本の醜さに拍車をかける。

うなだれる葵からキングストーンを奪還すべく現れるビルゲニア。五流護六、ゴルゴム党、政府、そのすべてに居場所を失ったビルゲニアにはこの道しかない。復讐に燃える葵と衝突するが葵の鎌が腹を裂いて勝利し、いつでも殺せる、私を舐めるなと脅す。ここでビルゲニアが怪人たちの指導者であり創世王の守護者であった聖剣を落としてしまい、倒れ込んで立ち上がれないのは象徴的だ。もう彼は1972年の誓いを文字通り地に落としたのだ。

仮面ライダーBLACK SUNの敗北

研究所では片足を失い車椅子に座る光太郎とクジラ怪人がもう誰が敵かどうかは関係ないと話す。クジラ怪人は50年前も同じように光太郎たちを追い、そして光太郎は五流護六に敗れたと語る。彼は負け続けても戦う光太郎に希望を抱いたのだ。後ろで最初の「差別と戦う」という理念の証だった皆既日食の描かれた全国五流護六共闘会議の旗がたなびいているのが印象的だ。近づく信彦を感知した光太郎はクジラ怪人に逃げるように忠告する。

かつてオリバーがいた教会を訪ねる葵。オリバーの墓前で手を合わせると、その墓の中に隠されたオリバーと川本夫婦が集めた資料を見つける。その中のトランクに母の遺した鍵を刺し込む。そこには「THE REPORT OF KAIJIN」と銘打たれた惨たらしい人体改造による日本の怪人製造の歴史と創世王の写真、そして真一の祖父の堂波道之助の名と集合写真が残されていた。そして隠されていた写真に写っていたのは光太郎と信彦の父親だった。

ここでよく見ると道之助の肩書が「~業部総務司長」と書かれている。前述の通り真一が道之助が改造人間という兵器の研究に着手したと信彦に語ったのが1936年。同年、現実の日本では岸信介元総理が満州国国務院実業部総務司長の座に就いている。ここでも堂波道之助のモデルが「昭和の妖怪」と呼ばれた岸信介元総理であることが示される。

自分たちが生まれた因縁の土地に着く信彦。研究所で光太郎、クジラ怪人、コウモリ怪人、ノミ怪人へ信彦は、怪人として満たされなかったのは一つの世界に二つの価値観と考えを持つ種族が存在しているからだと語る。怪人だけの世界を創りたいのかと返す光太郎。信彦は人類がしてきた排除と排斥を怪人もすると言い、光太郎に次期創世王を勧めるが光太郎は共存を信じ拒絶。信彦はわかっていたかのように仮面ライダーSHADOW MOONに変身する。

怪人たちは変身して抵抗するが信彦はそれを念動力で一掃。車椅子のまま変身の構えを取る光太郎の腕をつかみ、それを阻止する。光太郎の説得も空しく信彦は立てない彼を蹴りつけ、光太郎が駄目なら葵を器にすると言い、かつての仲間の声も無視して仮面ライダーBLACK SUN・光太郎に止めをさす。キングストーンは一つ奪われたものの、寸前ところでもう一つはコウモリ怪人が持ち去り、変身した光太郎はクジラ怪人とノミ怪人が連れて逃げることに成功する。

秋月博士の居場所を突き止めて海辺の老人ホームへ向かう葵だったが、ビルゲニアが彼女をつけていた。しかしビルゲニアは秋月博士を見ると葵を無視して駆け寄りどこで道を間違ったのかと心中を吐露する。クジラ怪人はノミ怪人に見送られて仮面ライダーBLACK SUNともぎとられた彼の足を抱えて海へ潜る。クジラ怪人は『仮面ライダーBLACK』でBLACKを洞窟に匿い、命のエキスで彼を蘇生させている。怪人たちの群像劇は最終局面を迎える。

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第1話&第2話のネタバレ解説はこちらから。

第3話&第4話のネタバレ解説はこちらから。

第5話&第6話のネタバレ解説はこちらから。

第7話&第8話のネタバレ解説はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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