『ジェン・ブイ』第1話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』顔負けのハードなキャンパスライフ あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

『ジェン・ブイ』第1話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』顔負けのハードなキャンパスライフ あらすじ&考察

Amazon Prime

ドラマ『ジェン・ブイ』配信開始

Amazonプライムビデオきっての人気ドラマ『ザ・ボーイズ』(2019-) のスピンオフドラマ『ジェン・ブイ』の配信が2023年9月29日(金) よりスタート。スーパーヒーローの卵たちが通うゴドルキン大学を舞台に本家顔負けのドタバタ劇が繰り広げられることになる。

『ジェン・ブイ』は、配信開始前に公開された米映画レビューサイトのRotten Tomatoesでは38名の批評家全員が高評価をつける「100%」デビューを果たした。前評判は非常に高い『ジェン・ブイ』だがどんな物語が描かれたのか、今回は第1話をネタバレありで解説&考察していく。

なお、以下の内容はネタバレを含むので必ずAmazonプライムビデオで本編を視聴してから読んでいただきたい。また、本作は視聴対象が18歳以上の成人向けコンテンツになっており、露骨な残虐描写及び性描写が含まれる。また、第1話については自殺と自傷の描写を含むため、視聴には注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ジェン・ブイ』第1話の内容に関するネタバレを含みます。

『ジェン・ブイ』第1話「ゴドルキン大学」ネタバレ解説

引き継がれる『ザ・ボーイズ』の精神

ドラマ『ジェン・ブイ』第1話は視聴者に向けた注意書きと共に幕をあける。のだが、この英語の注意書きには字幕がついていない。『ザ・ボーイズ』シーズン3でも第6話と第7話に注意書きが表示されたが日本語字幕がなかった。安心して観られるようにトリガー警告の字幕はつけてほしい。なお、注意書きの内容は、本記事に記載した通り、自殺と自傷の描写を含むという内容である。

第1話のタイトルは「ゴドルキン大学」。英語ではかなり省略した「God U」となっている。「U」は「University」の頭文字だが、書き換えると「God you」、つまり「あなたに神する」のような表現になる。

第1話の冒頭では、ヴォート社のスーパーヒーローチームに入る新人を選ぶスーパーヒーロードラフトのニュースが映し出される。セブンメンバーの写真には一番左にランプライターが写っており、かなり前のニュースであることが分かる。ランプライターはスターライトがセブンに入る前に引退したヒーローで、『ザ・ボーイズ』シーズン2でセージ・グローブ・センターの職員になっていたことが明かされている。

Aトレインがヒーローチーム初の黒人ヒーローだったことも語られているが、実際にはそれはブラック・ノワールのはずだが、公にはされていないのだろう。『ザ・ボーイズ』シーズン3では人種差別への怒りと保身の間で葛藤する姿も描かれたが、Aトレインもそれなりの過去があったようだ。

次に登場したのはシーズン1ラストで退場した当時ヴォート副社長のマデリン・スティルウェル。Aトレインの加入を「人種差別を克服したことの証明」として勲章のように扱っている。マイノリティではなく実はマジョリティの利益を目的に行動しているというあるある。この時点で『ジェン・ブイ』も確かに『ザ・ボーイズ』の魂を引き継いでいることが確信できる。

レッド・リバー研究所

8年前のこの様子をテレビで見ていたのはモロー家の人々。テレビではクランシー・ブラウン演じるゴドルキン大学のリッチ・“ブリンク”・リンカーホフ教授が喜びのコメントを出している姿も映し出されている。そして、妹の写真を撮っているマリーが『ジェン・ブイ』の主人公だ。

初潮がきたマリーは経血に触れると血を操る能力が発動し、意図せず両親を殺してしまう。妊娠する機能の芽生えと共に家族と別れ、スープとして生きていくことになったマリーの凄惨な過去が明かされている。

そして時は8年後。マリーは「私はビッチだけど不安にもなる」と歌うミーガン・ジー・スタリオンの「Anxiety」(2022) と共に目を覚ます。選曲もそうだが、壁にかけてあるカレンダーからは6月22日が水曜日であることが分かり、この時点で2022年が舞台であることが推測できる。

そしてマリーがいる場所はレッド・リバー研究所であることが明かされる。レッド・リバー研究所はニューマン議員が育った施設で、ヴォートが母体になっている。『ザ・ボーイズ』シーズン3ではヒューイもこの研究所を訪れている。

グループカウンセリングではスターライトのセブン離脱について語られている。シーズン3のラストではスターライトはセブンとヒーローを引退した。マリーがクラスで机に向かうシーンで奥に瞬間移動で現れた少年は、マデリン・スティルウェルの息子のテディだ。『ザ・ボーイズ』シーズン3にも登場しており、ヒューイを驚かせている。

マリーがメモをとりながら熱心に読んでいるのはリッチ・“ブリンク”・リンカーホフ教授の著書。ブリンクについては、本家のシーズン3第5話でブルー・ホークが「ブリンクコーチから威圧するよう研修を受けた」とAトレインに言い訳していた。

志の高いマリーは自らの血を武器として自在に操れるようになっているが、それでも貧血が辛そう。使えば使うほど自らの身をけずる特殊な能力だ。そんな中、マリーは入所者の子どもが得るマイラ・リハビリセンターという場所に連れて行かれる姿を目にする。字幕には反映されていないが、車には「a Vought Company」とあり、ヴォートの関連会社が運営する施設であることも示されている。

マリーが退かせた少年が見ていたサイトの「Supe Porn」は、クリムゾン・カウンテスが配信をしていたサイトだ。ゴドルキン大学の入学審査結果をチェックしたマリーは合格したことを知り、「セブン初の黒人女性」という夢を語る。

施設の職員は、マリーのように親を殺してしまった過去があると、普通はエルマイラ・リハビリセンターに送られて監禁されるが、ゴドルキン大学を出れば人生をやり直せると助言される。それはつまり、何があってもゴドルキン大学を無事に卒業しなければまともな人生は待っていないということを意味する。「スーパーヒーローになれる」という期待と、「失敗できない」というプレッシャーの中でマリーは学生生活をスタートすることになる。

セブンの面々も

ゴドルキン大学のPVでは、白人青年は「スーパー集中力」という普通の能力が割り当てられているが、性別を変えられるジョーダン・リーは「スーパー包括力(inclusive=多様な人々と共生すること)」、透明人間の学生は「スーパー好奇心(curious=わいせつという意味もある)、車椅子に乗った学生は「スーパー念動力(abled=障がいがあることをdisabledと言うことの反転)」となっている。

学部長のインディラ・シェティは俳優のシェリー・コンが演じるキャラクターだが、キャラ名の通りシェリー・コンはインド系イギリス人の俳優だ。1965年創設のゴドルキン大学からは様々な人材が輩出されており、『リバーデイル』にも出演していることが紹介されている。『リバーデイル』とは2017年に放送を開始したアメリカのミステリー青春ドラマで、2023年に配信されるシーズン7でフィナーレを迎える。

字幕では省略されているが、卒業生の他の出演作品としてティーンドラマの『プリティ・リトル・ライアーズ』(2010-2017) も挙げられている。もう一つ挙げられている『So You Think You’ve Got Super Talent?』は架空の番組だ。

なお、舞台芸術学部にはクリムゾン・カウンテスの名前が冠されており、キャンパスにはクリムゾン・カウンテスの銅像も建てられている。セブン以前のメインヒーローチームだったペイバックのメンバーだったので、英雄的な扱いを受けているのも不思議ではない。

インディラ・シェティは犯罪対策学部からは30年間で全ての学生トップ10を輩出していると紹介。映像ではクイーン・メイヴとAトレインは「1位」と紹介されているが、ディープだけ「6位」になっているのが笑える。そして現在の学生ランキングではゴールデン・ボーイことルーク・リオーダンが1位に、ジョーダン・リーが2位に、アンドレ・アンダーソンが3位につけていることがモニターに映し出されている。こう見るとディープはよくセブンに入れたものだ……。

ホームランダーの銅像を横目で見つつマリーは、ザ・ドナスの「Dancing With Myself」(2004) と共に大学に入り、新生活に胸を高ならせている。先ほどの透明人間は寮長のマーベリックだったようで、性的同意セミナーへの参加を呼びかけている。

フェイクにまみれたニュース

ニュースではホームランダーの裁判が進行中であることが示されている。『ザ・ボーイズ』の公式Twitterでは、『ジェン・ブイ』のタイムラインが『ザ・ボーイズ』シーズン3とシーズン4の間であることが明かされている。

また、公式YouTubeチャンネルではホームランダーはシーズン3ラストで民間人を目から出したビームで殺したことについて殺人罪で起訴されていることがも明かされている。ヴォート社のCEOのアシュリーは、社をあげてホームランダーをバックアップすることを表明し、「アメリカの司法を信じている」とコメントしている。どうやら息子を守るために凶悪なスターライト支持者に抵抗したという線でストーリーを作ろうとしているらしい。

『ジェン・ブイ』第1話のニュース映像では、「ロシアがセブンタワーを攻撃」というテロップが出ている。ボロボロになったセブンタワーは、実際にはソルジャーボーイが大爆発を起こした結果だが、何から何まで都合よく改ざんして報じるヴォートのスタイルは変わっていない。また、メイヴはソルジャーボーイの爆発を受けて力を失い引退したが、世間的にはまだ死んだことになっているようだ。

ピューディパイとは

ターマイトのように小さくなれる能力を持つエマは、ネズミのデビッド・カルーソと戦って動画を撮っている。デビッド・カルーソはドラマ『CSI:マイアミ』(2002-2012) のホレイショ・ケイン役などで知られる著名な俳優と同名である。エマは「『ジェイド』見てない?」と聞いてるが、デビッド・カルーソは1995年に映画『死の接吻』と『ジェイド』に立て続けに主演。両作で色気のあるセクシーな俳優として世間に知られることになった。

マリーのルーミーになったエマは、YouTubeをやっており、自分の別名「リトル・クリケット」を「ピューディパイ」みたいなものと説明するが、マリーは全く意味が分からない様子。ピューディパイとはチャンネル登録者数1億人超を誇るスウェーデン生まれのYouTuberで、2023年から日本に移住している。

なお、エマは英語で「私はナチの要素がないピューディパイみたいな感じ」と話しているが、ピューディパイは2016年から2017年にかけて反ユダヤの言説やナチスの画像を含む動画を複数投稿し、ディズニーから契約を解除されている。「30歳以下の人にとっては世界で最も有名」と言われるピューディパイをマリーは知らず、家の状況を説明するが、レッド・リバー出身であることは伏せている。

ミッシー・エリオットの「WTF (Where They From) feat. Pharrell Williams」(2015) が流れる中、二人はスタジアムに出かけると、そこにはゴールデン・ボーイが。恋人のケイトに“森の中にいる夢”を繰り返し見ていると話し、伏線を張っている。ゴールデン・ボーイはインクレディブル・スティーブとの“試合”に臨み、マーベルのヒューマン・トーチと同じような力を見せる。炎人間だ。

ゴールデン・ボーイことルーク・リオーダンを演じるのはパトリック・シュワルツェネッガー。父はアーノルド・シュワルツェネッガーで、元米大統領ジョン・F・ケネディは母方の親戚でもあるセレブだ。ケイト・ダンラップを演じるのはマディー・フィリップスで、こちらは『ザ・ボーイズ』を指揮するエリック・クリプキ監督が手が変えたドラマ『スーパーナチュラル』(2005-2020) に複数回出演している。『ザ・ボーイズ』ユニバースはエリック・クリプキ監督が以前仕事をした俳優を再起用することが多くなっている。

トップを目指すと宣言したマリーだが、まだスマホも持っていない。エマは「アーミッシュなの?」と聞いているが、アーミッシュとは聖書の教えを忠実に生きるキリスト教系の宗教集団で、昔の暮らしを重んじてテクノロジーを避け、自給自足で生きるミニマリストでもある。2020年にはアーミッシュの閉ざされたコミュニティ内で性的虐待が繰り返されてきたと告発を受けている。

ジョーダンとアンドレ

マリーは犯罪対策学部へ向かい、ランキング2位のジョーダン・リーと出会う。ここで流れている曲はリル・ヤマハの「BOSS¥」(2020)。リル・ヤマハはバーチャルクマの姿をした音楽プロデューサーだ。

犯罪対策の入門講座に入れなかったマリー・モロー。公平に授業を受けられるわけではなく、実践経験やフォロワー数で選別は始まっているというのだ。そこに現れたのはマリーの憧れの存在であるブリンク教授。アシュリー・バレットから講演依頼も人気番組『グッド・モーニング・アメリカ』(1975-) からのインタビュー要請も断る大物ぶりを見せるブリンクに、マリーは入門講座の受講を要請する。

なお、姿を変えるジョーダン・リーをなんと呼べばいいか迷ったマリーは「She, he, I mean they…」と代名詞を呼び替えている。現在のアメリカでは三人称単数形の「They」は男性と女性に限らない性を持つ人物の呼び方として定着している。

「重要なのは才能ではなく意欲」とスピーチしたマリーだが、ブリンクには「舞台芸術学部で成功すればいい」と演技を専攻するように嫌味を言われてしまう。現実に打ちのめされる中、一人の学生が“薬物”の影響で暴走し、追われる場面に出くわす。この学生の確保に協力した3位のアンドレは磁気を操る力を用いている。学生は「森なんかに戻らない」と言うが、森の写真が貼られた独房へと連れていかれる。ゴールデン・ボーイが夢で見ていた森と同じものなのだろうか。

「今、ここ」

舞台芸術学部の学生ジャスティンは、ヴォートプラスの配信ドラマに出演が決まったと話しており、『Scrubs〜恋のお騒がせ病棟』(2001-2010) の主演で知られるザック・ブラフが監督を務めるという。ジャスティンと友人というザック・ブラフは、近年は21歳年下のフローレンス・ピューと交際していたことも話題になった。

そのドラマは「スーパーヒーローものの悲しみをテーマに展開されるシットコム」で、英語では「70年間のシットコムを通して悲しみを扱う」と表現されている。どこかマーベルドラマ『ワンダヴィジョン』(2020) を思わせる設定だ。「ドラマシリーズ」ではなくシーズンが更新されない「リミテッドシリーズ」とされている点も共通している。

エマは『シカゴ・ファイア』(2012-) で火傷する役で出演したことを明かしているが、YouTuberとしての“リトル・クリケット”としても知られている様子。だがエマは浮かない顔を見せている。マリーは「あなたはどこで見たんだっけ」と言われ、「今、ここ」としか答えられない。けれど、今ここに存在するのが自分です、というのは正しい感覚でもある。だがエマは街を守れるのは5人くらいで、残りは歌ったり踊ったり、それが現実だと話すのだった。

ゴールデン・ボーイはブリンク教授との幼い頃からの交流が示される。ホームランダーを超えることを期待されているゴールデン・ボーイに、ブリンクは高温でも溶けない素材の炭化ハフニウム合金のスーツデザインを見せる。ゴールデン・ボーイは作るのに「8桁いる」と言っているが、日本円でいうと10億円以上ということになる。そのお金はヴォート本社があるニューヨークが負担するという。

ゴールデン・ボーイはドラフトを経ず、コネでのセブン入りを約束されるが、浮かない表情を見せている。それでも表情を作ってブリンクとハグしたゴールデン・ボーイは、「ルーク……」と呼ぶ声を耳にする。ブリンクは何を隠しているのだろうか。

学生のリアル

マリーは昨夜共闘したアンドレと遭遇。「ブラッディ(血の)・マリー」というヒーロー名を提案される。ブラッディ・マリーはトマトジュースを用いたカクテルの名前。また、アメリカの都市伝説で鏡の前で名前を三回呼ぶと現れるとされる幽霊の名前でもある。次に呼んだ「コアギュラ」は血液の“凝固”を意味する言葉。血を武器にしていることから考えたのだろう。

ここでマリーは夜にゴールデン・ボーイらとキャンパスを抜け出して遊びに行くことを提案される。一度は断ったものの、ルーミーのエマから背中を押されると、結局服を借りて出かけることになる。ヒエラルキートップの学生たちとのハングアウト。「絶対に失敗できない」という人生のリスクを背負いながら、マリーは一歩を踏み出す。

Dexx! Turner & ADGRAMS「Into My Bag」(2021) が流れる中、ゴドルキンのエリートたちはセブンタワーの屋上でドラッグパーティを開いていた。そんな中マリーは、ゴールデン・ボーイに幼少の話を聞かれ、嘘を重ねていく。

だが、それに耐えきれなくなったマリーは、両親は死んだということ、生き残った妹のために努力していることだけはシェアする。ルークも弟を失ったと話しているが、ルークも攻撃タイプの能力であるが故、弟のことを殺してしまったのかもしれない。ルークはマリーに「ヒーローになることは想像とは違う。なるなら自分のためにやれ」という助言を授けるのだった。

一方のエマは自分のYouTubeチャンネルに大量のアンチコメントが来る状況と対峙していた。そんな中で大ファンというリアムと会って関係を持つことになるが、リアムが求めているのはエマの能力を利用したプレイだった。

アンチコメに晒される中で、ファンからの希望を断れないエマは、小さくなるためにトイレへ。服を脱ぎ、喉に指を突っ込み、吐いて小さくなるというリアルな能力者の姿が描かれている。これは、求められるスリムな体型を吐いてでも維持しようとするモデルや若者の比喩だろう。

エマは相手の性的な要求に合わせるためになんでもやってしまう。断ることができないのだ。かなり衝撃的なプレイシーンも第1話から収められているが、『ザ・ボーイズ』でも同じく小さくなれるターマイトのプレイがシーズン3第1話で登場したことのオマージュだろうか。

怪物じゃない

マリーたちはクラブに来ると、入口でケイトが触れた相手の意思を操る。この能力があるため、ケイトはスタジアムでルークに触れる際には手にグローブをつけていた。一行はドラッグで盛り上がる一方、気分によって性別を変えられるジョーダンは「紛らわしいから1位は無理」と吐露する。自分が大学のPVに出てるのも「進歩的だと思われるから」だという。セクシュアルマイノリティが直面する現実が比喩的に描かれている。

トップ3の忌憚のないリアルな会話。この社会でマイノリティである時、たとえ優秀でも自分自身が評価されるのか、評価されているのは自分自身なのかということが分からなくなる。それでも認め合い、称賛し合う仲間の声はリアルだ。スープスたちも意外と私たちと変わらない青春を過ごしているようにも思える。

ドラッグが回ってきたルークがあの“森”で助けを求められている幻覚を見る一方、ナンパをしていたアンドレはその能力で女性客の動脈を切ってしまい、一同は逃げ出すことに。しかし、その姿を見て母の姿を思い出したマリーは、その客の血を操り出血を止め、命を救うことに成功する。他人の血液も操ることができたのだ。この映像が拡散されるとマリーはブリンクに呼び出され、称賛されるかと思いきや、なんと退学を言い渡される。

英国スカボローのフレッドという自らを犠牲にして溺れていた犬を救った人物を例に挙げて、真のヒーローは「栄光を得ることではなく犠牲を払うこと」と語ると、ルーク、アンドレ、ジョーダンの代わりにマリーは罪を被れと迫るのだ。

自分は研究者だと主張するブリンクだが、「血の能力は受けが悪く売り込みができない」とマーケティングのことしか頭にない。この考えは、公の場で生理の話題が避けられがちな状況とも重なる。それにブリンクはマリーの生い立ちを知っており、マリーを切り捨てることに躊躇はなさそうだ。

マリーはパーティに行かせたエマに怒りをぶつけると、母の命を奪ってしまい、妹から「怪物」と言われたシーンを回顧する。今度は命を助けても認めてもらえず、マリーは手のひらを切る自傷行為に及ぶ。だがマリーにとって手のひらを切ることは、自らの武器を作ることでもある。決心したマリーは、「私は怪物じゃない」と言い聞かせ、再びブリンクの元へと向かうのだった。

衝撃のラスト

一方のルークはまた森の中にいる幻覚を見ていた。だが、ルークに助けを求めて呼びかけるサムはこれは幻覚じゃないと主張する。サムはこの大学のどこかに捕えられているのだ。ルークはブリンクの元へ向かうと、マリーはそこに鉢合わせ、ブリンクを焼くルークの姿を見てしまう。まさかの急展開だ。

ルークも「寝タバコで焼け死んだ」はちょっと無理があると思ったのか、“目撃者”となったマリーを追うことに。ジョーダンがこれに割って入ると、ゴドルキン大学の1位と2位による戦いが始まる。ジョーダンは、防御特化とスピード特化+衝撃波の能力を切り替えてルークと対等に渡り合っている。

それでもルークはジョーダンを退けると、外で撮影中のアンドレと遭遇。親友のハグで我を取り戻すが、カメラで撮影されており、マリーがルークがブリンクを殺したと発言したこともあったのだろう、最終的には空中で自身を爆発させてしまう。なんと第1話から大学のナンバーワンスープが死んでしまう衝撃の展開だ。ちなみに『ザ・ボーイズ』でも炎を操れるランプライターが焼身自殺している。

とんでもない入学を迎えたマリー。エンディングで流れるのはホール「Celebrity Skin」(1998)。「何を望むのかに気をつけて/死んでも手に入れる価値があるべき」と歌われ、「売春婦もウェイトレスもモデルも俳優も甘くない」とも歌われている。『ジェン・ブイ』第1話の曲は女性ラッパーの曲が中心になっていたが、この曲の歌詞も女性について歌われている。

そして、『ジェン・ブイ』第1話にはミッドクレジットシーンが。ヴォート社CEOのアシュリーが、今回の事件について、ゴールデン・ボーイの薬物の常用による錯乱であると説明する内容だ。何から何まで嘘にまみれている。そして、今学期の概要と称して第2話以降の予告が流れるのだった。

『ジェン・ブイ』第1話ネタバレ感想&考察

第1話から衝撃の展開を見せた『ジェン・ブイ』。『ザ・ボーイズ』の精神をバリバリ引き継いでいるように思えるが、本作は第1話のみエピソード監督としてエリック・クリプキが加わっている(エヴァン・ゴールドバーグとクレイグ・ローゼンバーグとの共同監督)。

一方で、大きな政治的話題というより、地に足のついたティーネージャーや大学生が抱える問題にフォーカスした風刺に寄せた内容になっている。SNS社会で学生たちが外部の目に晒されながら生きていく様子は、能力者というレンズを通して誇張されてはいるが、誇張されて射程範囲が広がった分、多くの人にとって覚えのある内容を捉えることができている。

『ザ・ボーイズ』との明確な違いは、思い上がった悪意のスープが基本的にはいないことと、一般人がほとんど出てこないことだろう。非能力者ではブリンク教授が早くも第1話で退場することになった。学生のスープスはみんな普通の若者のようにも見え、あんなクズヒーローたちが生まれるのが不思議なくらいだ。ヒーローたちもどこかにきっかけがあって道を踏み外していくのだろう。

教育機関という観点では、『ジェン・ブイ』第1話では“大人”の不在も目立った。繰り返し学内のモニターで流されるインディラ・シェティ学部長の標語は、むしろ大義名分だけ流しておけばいいという無責任さを感じさせる演出にもなっていたように思える。事件ももみ消してしまうような大人たちが率いるゴドルキン大学で、マリーたちはどんな真実に遭遇することになるのか。引き続き『ジェン・ブイ』を追いかけていこう。

ドラマ『ジェン・ブイ』はAmazonプライムビデオで独占配信中。

『ザ・ボーイズ』原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから発売中。

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『ジェン・ブイ』第2話のネタバレ解説はこちらから。

『ザ・ボーイズ』シーズン3最終話のネタバレ解説はこちらから。

シーズン3までの経緯とYouTube配信のスピンオフ番組の内容、アニメ版の注目エピソードはこちらの記事で。

『ザ・ボーイズ』シーズン4についての情報はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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