『ブラック・ミラー』は社会への警告ではない——プロデューサーがシリーズの狙いを明かす | VG+ (バゴプラ)

『ブラック・ミラー』は社会への警告ではない——プロデューサーがシリーズの狙いを明かす

©️Netflix

『ブラック・ミラー』の狙いは?

シーズン5が公開

Netflixが誇る大人気SFドラマ・アンソロジーシリーズ『ブラック・ミラー』の最新シリーズ、シーズン5が2019年6月5日(水)より配信を開始する。視聴者が展開を選べるインタラクティブ要素を取り入れた特別編『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』(2018)から約半年ぶり、シーズン4からは1年半ぶりの最新作とあって、シーズン5に対するファンの期待も高い。

独特の後味の悪さが魅力

『ブラック・ミラー』は近未来SFでありながら、どこか後味の悪さが残るダークなストーリーが特徴だ。時にはハッピーエンドを迎えるエピソードも登場するが、あくまでサプライズ程度のもの。作品が終わった後の視聴者の顔を写し出すスマホやテレビ、パソコンの真っ暗な画面を“ブラック・ミラー”と形容することで、単なるフィクションではなく、視聴者が生きる社会にも警鐘を鳴らすシリーズだと捉えられてきた。しかし、『ブラック・ミラー』シーズン5の配信開始を前にして、プロデューサーのチャーリー・ブルッカーとアナベル・ジョーンズが同シリーズの真の狙いを明らかにしている。

ブラック・ミラーが描き出すもの

チャーリー・ブルッカーが英インディペンデント紙に話したところによると、「ブラック・ミラーの物語は社会への警告ではない」というのだ。彼はこう話している。

テクノロジーの進歩は、決して避けることのできないものです。私たちはどちらかというと人間の特性について描いているのです。社会に警告しているというわけではないんです。私にとっては、私たちがやっていることはとても前向きなことですよ。

私は印刷が興った時代と同じようなものだと思っているんです。かつては、人々はおそらくそれを風変わりで煽情的なものだという考えを広めたでしょう。様々な類の混乱が生じたはずです。長期的には私たちは過渡期にあり、私たちはちょうどその真っ只中に生きているのです。

プロデューサーの世界の捉え方

つまり、新たなテクノロジーと向き合う人間の心情を描いているのであり、決してテクノロジーの台頭に対して警鐘を鳴らしているわけではないというのだ。チャーリー・ブルッカーは、現在の世界の在り方について、こう続けている。

私たちは、人々が頭の中で何を考えているかを探る時代に生きているのだと思います。極端な考え方ばかりが誇示されていますが、世界の実際の姿よりも二極化してしまっているように思います。

裏を返せば、実際には世界はそれほど分断されているわけではないと、チャーリー・ブルッカーは考えているということだ。同時に、彼が『ブラック・ミラー』の物語を、極端な世界観を描くのではなく、より現実味のあるリアルなものにしようとしているということも読み取れる。

変化していく人間

一方で、シーズン1からチャーリー・ブルッカーと共同プロデューサーとして『ブラック・ミラー』の製作を手がけてきたアナベル・ジョーンズは、こう付け加える。

人々が動き始めていることを見過ごすべきではありません。#MeToo ムーブメント気候変動に関するキャンペーンも起きています。これらの人々は突如として声を持つようになったのです。彼女ら/彼らは商業的な立場にありますが、環境破壊を続ける資本家に対して変化をもたらそうとしています。

ハリウッドにおけるポジティブな動きにも触れ、テクノロジーもその一助となったことで、人々の動き方が変化したことを称えている。

実は5月には、民間団体がドイツで「ブラック・ミラーを超えて——中国の社会信用システム」と銘打ったシンポジウムを開催している。そこでも『ブラック・ミラー』は、ジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984』(1949)と並び、社会へ警鐘を鳴らす作品として扱われていた。しかし、同作の製作陣は思いの外、世界に対するポジティブな姿勢を持ち続けているようだ。来たるシーズン5ではどのような“人間”が描かれるのか、刮目しよう。

『ブラック・ミラー 』シーズン5はNetflixにて、2019年6月5日(水)より配信開始。

『ブラック・ミラー』(Netflix)

Source
Independent

VG+編集部

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