第7話ネタバレ解説&考察『アガサ・オール・アロング』神回! ラストの意味は? リリアは何を言っていた? | VG+ (バゴプラ)

第7話ネタバレ解説&考察『アガサ・オール・アロング』神回! ラストの意味は? リリアは何を言っていた?

©2024 Marvel

ドラマ『アガサ・オール・アロング』第7話はどうなった?

ドラマ『アガサ・オール・アロング』は、『ワンダヴィジョン』(2021) のスピンオフとして制作されたMCUドラマ最新作。魔女のアガサ・ハークネスを主人公に、『ワンダヴィジョン』のその後が描かれる。

全9話で構成される『アガサ・オール・アロング』だが、最終週は第8話と第9話が同時配信されるため、第7話が最終回前の最後の週になる。早くもクライマックスを迎え、第7話では更に意外な展開が待っていた。今回は『アガサ・オール・アロング』第7話をネタバレありで解説&考察していこう。

なお、第7話も神回確定のアッと驚く展開が待っているので、必ずディズニープラスで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『アガサ・オール・アロング』第7話の内容に関するネタバレを含みます。

『アガサ・オール・アロング』第7話ネタバレ解説

リリアの物語

『アガサ・オール・アロング』第7話の監督を務めるのは、シリーズ自体を取り仕切るショーランナーのジャック・シェイファー。初週に同時配信された第1話と第2話以来のエピソード監督となる。脚本を手がけるのはジア・キングとキャメロン・スクワイアズで、キャメロン・スクワイアズは『ワンダヴィジョン』第7話「第4の壁を破って」の脚本も手掛けている。

『アガサ・オール・アロング』第7話「死者と手をつなぎ」は意外にもリリア回に。これまで突発的な予言を繰り出してきたリリアの真実が明らかになる。また、「魔女の道のバラッド」の2番から引用されたタイトル「死者と手をつなぎ/Death’s Hand In Mine」も重要な意味を持つ。

第5話でビリーによって沼に沈められたリリアだが、第7話の冒頭ではなぜかクラウンをかぶり、綺麗なドレスを着た状態で黒い闇へと落ちていく。この時点で、リリアが沼に沈められた第5話ラストからの連続性が失われていることが分かる。

一方、沼から復帰したアガサと、ワンダの息子というバックグラウンドが明らかになったビリーは魔女の道を進んでいる。アガサはビリーに「ママの元親友」として振る舞っているが、ビリーは「彼女は母じゃない」と哀しいことを言う。

さらにビリーが「ワンダは本当に死んだ?」と聞く場面は、英語では「ワンダ・マキシモフは本当に死んだ?」とフルネームで呼んでおり、距離感を感じる。この問いにアガサは、死体を見たと答えるのだが、自信はなさげ。それもそのはず、死体を見たのは刑事物の妄想の世界の中でのことだったからだ。

訝しがるビリーにアガサは「ストレートな答えが欲しければ、ストレートな女に聞きな」と言っている。これは身体的性と性自認が一致している異性愛者を「ストレート」と呼ぶことにかけていると思われる。アガサはリオ・ヴィダルとの関係が示唆されたことから、レズビアンまたはバイセクシャルと見られている。

タロットの試練

アガサとビリーはギクシャクした関係のまま試練の“塔”に到着。塔に入ったアガサは『オズの魔法使い』に登場する緑の肌の“西の魔女”エルファバに、ビリーは『眠れる森の美女』のマレフィセントの姿になっている。共に映像化されたクラシックな作品の悪役であると同時に、オリジンを描く映画『ウィキッド ふたりの魔女』(2024)、『マレフィセント』(2014) が制作されたキャラクターでもある。

アガサは「西の魔女のモデルは私」と言っているが、『オズの魔法使い』の発表が1900年であったことを考えれば、1600年代から生きているアガサがモデルになった可能性は十分に考えられる。アガサは新しい装いに満足気だが、リオ・ヴィダルと同じ“緑の魔女”になれたことも嬉しいのかもしれない。

第7話の試練はタロット。しかし、ビリーもアガサもタロットを扱いきれず、天井に刺さった剣が次々と落下して二人を襲う。さらに剣だらけの天井が降りてくる危機的展開に。やはり魔女の道の試練は魔女団の仲間がいないと切り抜けられないようだ。

リリアの能力が判明

リリアが待望される中、沼に沈んだリリアとジェンは地下の道を歩いている。リリアはジェンに「闇を進んで棚を探せ」という予言を与え、ティーンがスカーレット・ウィッチの息子だということもジェンに教えたようだが、その記憶がない。

ジェンが「イカれてる。不気味」とリリアに言うと、第4話でリリアが突然アリスに「私はイカれてる? それとも不気味?」と聞いた場面に飛んでしまう。話していた相手がアリスであることに気づいたリリアは、「やめて(Don’t)」と言うが、その瞬間に場面は第3話でリリアが「アガサを助けようとするのを(Try to save Agatha.)」と突然発したシーンに切り替わる。

つまりリリアは第5話でアリスがアガサを助けようとしてパワーを使い、そのパワーを吸い取られて死ぬという未来を知っていたため、アリスにアガサを助けようとしないよう忠告していたのだ。だが、リリアの意識は次々と切り替わってしまうため、「Don’t try to save Agatha.(=アガサを助けようとしないで)」という文章が区切られてしまい、意味をなさなかったのである。

リリアはこうして意識が時間を超えていたがために、発作的に予言を言って記憶を失っていたように見えていたのだ。さらに場面は16世紀のイタリア、リリアの少女時代に。クレジットでは“マエストラ”(先生)となっている人物からレッスンを受けているリリアは、「時を超えていたね」と言われている。意識が時を超えるというのが、リリアの幼少期からの能力だったのだろう。

「茶葉占いが苦手だった」と言うリリアに、マエストラは「昔も今も嘘をついている」とダメ出しをする。地下道に戻ったリリアは、ジェンに「セイラムの7人」が追ってくると伝えたようで、やはり情報が前後している。

するとリリアは、時間の流れについて話を始める。よく見ればこの地下道の壁に走る木の根っこのような黄色いラインは、ドラマ『ロキ』(2021-) や映画『デッドプール&ウルヴァリン』(2024) で紹介された枝分かれするタイムラインに似ている。

リリアは、時間の流れは幻想だとしたて、幼少期に「人生の時間がバラバラ」だったと明かす。それが再発して悪化している、終わりが近いのかもしれないというのがリリアの考えだった。「時間の流れは幻想」するリリアの考えは、時間軸は一方通行ではなく、同時に発生しているというTVA(時間変異取締局)によるタイムラインの捉え方と一致する。リリアの能力は、コントロールはできないものの、タイムラインの縦軸を移動する力と見ていいだろう。

コスチュームの元ネタは?

すると場面は試練の塔に切り替わる。リリアとジェニファーは装い新たにアガサとビリーと共にいる。これまでリリアを外部から見てきた私たちも、第7話ではリリアと同じ視点で物語を経験している。他者からしたら「変人」で片付けられてしまう人でも、当事者にとってはどれだけ混乱した状況であるかを示す優れた演出だ。

塔の中では、ジェニファーは『白雪姫』の魔女の格好に、リリアは『オズの魔法使い』の“北の魔女”グリンダの格好になっている。『オズの魔法使い』では、西の魔女は悪い魔女として、北の魔女は良い魔女として登場する。二人の出会いを描く映画『ウィキッド ふたりの魔女』は2024年11月22日に米国で、2025年春に日本で公開されるが、こちらはディズニーではなく舞台化から出資を行なっているユニバーサル・ピクチャーズの作品である。

人生を不規則な流れで経験するリリアの事情を知ったジェンは、ビリーとの問題について「忘れることにした」と丁寧に説明してやっている。そこにアガサが「忘れるのは得意でしょ、ドリー」と茶々をいれるのだが、ドリーは「ファインディング・ニモ」シリーズの健忘症を持つキャラクターだ。

リリアは自分を沈めたビリーに詰め寄るが、どうやら和解は済んでいる様子。このシーンではビリーはリリアの心を読みながら会話をしている。ビリーの力が解放されたことを知ったリリアは、第6話で描かれたバル・ミツヴァ(成人の儀式)のことを思い出す。

ビリーにシジルをかけたのはリリアだったが、それは何者かに操られての行動ではなく、未来で起きることを自分で経験したが故の行動だった。意識が不規則に時間軸を移動するリリアは、ビリーの力が解放される未来を見て、ビリーがスカーレット・ウィッチの息子であることを知った後に、時間稼ぎをするためにシジルをかけていたのだ。

アガサは、シジルはかけた者にもかかり、シジルをかけたことを忘れてしまうと話していた。第3話や第4話で時折リリアに未来の意識が乗り移った時には、シジルの記憶は失われているものと考えられる。

制御するより見通すこと

天井の剣が迫り来ると、リリアの意識は第3話の試練、次に第2話のアガサ宅へと飛び、最後に16世紀の少女時代へと戻る。マエストラは「魔女には仲間が必要」と助言するが、リリアは「一度目はしくじった隠者でいる方がいい、偽物だから」と自尊心を失っている様子だ。

リリアは時を超える力を制御する方法を教えてもらおうとするが、「見通すことが務め」と言われてしまう。自分が抱える問題を制御することよりも、それとうまく付き合っていくことの方が大事ということは現実でもある話だ。

また地下道へ戻ったリリアは、先程までよりも冷静になって状況に向き合おうとしていることが分かる。そこでリリアが拾ったのは、第5話で失くしたと言っていたビリーの魔法書だった。そしてリリアは、死ばかりが見えたことで、時を超える力を無視するようになったと明かす。今回リリアは、仲間を生かすために自分の力を使うことになる。

二人は“棚”を発見。先程リリアは塔の中に入った後の時間軸に意識があったので、塔の内部に繋がる棚を探して歩いていたのだ。タロットを目にしたリリアは「相談者(querent)は誰?」と聞き、ビリーが「クィアレント(queer-ent)」として名乗り出る。クィアは性的マイノリティを意味する言葉で、タロットの相談者を意味する「クィアレント(querent)」とかけたジョークになっている。

繋がるこれまでの伏線

ビリーは、自分はウィリアムかビリーかという質問を行い、リリアはタロットの①旅人自身②求めるもの:旅する理由、③過去:傷や教訓、④未来:成長と発見の余地、⑤困難⑥褒美⑦目的地という要素を説明していく。

ビリーが引いた①のカードは「魔術師」で、リリアはビリーが大いなる可能性を秘めていると評価する。MCUきっての魔法使いとして大成する未来もありそうだ。②のカードは「再会」を意味する「太陽」で、トミーを指していると考えられる。

ビリーが③の過去のカードを引こうとしたところでリリアの頭上に剣が落ちてきて、リリアはまたも意識が飛んでしまうことに。第2話ラストで「魔女の道のバラッド」を歌う場面でリリアが「来ないで!」と言ったのは、剣が落ちてきてアガサがリリアを守ろうと駆けつけようとしていたからだった。第4話終盤で「最初は不仲だったけど……」と話す場面、第3話で「皆を愛してる」と話す場面がつながり、やはり最後はマエストラとの対話に戻る。

そこでリリアは旅に出た理由を問われ、力を取り戻すことは本当の目的ではないと指摘される。自分を「忘れられた女」と言うリリアだったが、まずは自分が思い出すよう助言されると、マエストラの死や魔女団の全滅を見たが「何も変えられなかった」と苦悩を明かす。マエストラは「死は全員に訪れる」というが、第5話のラストではリリアも「死は私たち全員に訪れる」と予言している。

そしてリリアは、「落ちていた」という記憶を思い出す。第7話の冒頭で描かれた、リリアが黒い背景に向かって落ちていく場面のことだ。リリアはここで、死は確定しているのなら、残された時間で何をするかということが大事なのだと気づいたのだろう。

場面は沼から落ちた直後に移り、リリアは理路整然とジェンに状況を伝えて塔を目指す。どれだけ状況が変わっても、もうリリアは落ち着いていてやるべきことをやろうとしている。しかもここで「すぐ忘れるから話しておく」と、自分が未来で見たことを全てジェンに伝えていたことで、リリアは正しい道を進み、ジェンの口からヒントを得ることもできた。仲間の存在によってリリアの抱える問題は武器になったと言える。

二人は魔女の道の出口を発見。「METRO」とか書かれた電車を目にする。二人はさらにセイラムの七人が通りすぎるのを見るが、リリアはアガサとビリーを助けるために魔女の道を進むことを決意。「魔法で繋がった姉妹」として、ジェンにも協力を求め、ジェンも出口を諦めて魔女の道を進むことを決めたのだった。

このやり取りを見れば、第7話の全体を通してジェンがリリアに寄り添っている理由が見えてくる。リリアからジェンに手を差し伸べ、シスターフッドで結ばれたからこそ、リリアの記憶がなくなってもジェンはリリアに寄り添っていたのだろう。

リリアのタロットの意味

占われなければならない旅人が自分自身であることに思い至ったリリアは、これまでの記憶から①の“旅人”が少女時代に見た「聖杯(カップ)」の女王/共感と直感に優れた信頼できる内なる声、②の“求めるもの”が第2話でアガサに魔女団の名前を書いた時に見た「ペンタクルの3」/協調=魔女団、③の“過去(傷)”が第5話でアリスが見せた「棒の騎士」としての姿/勇敢な戦い、④の“未来”が第3話でリリアがジェンに見た「女教皇」としての姿/計り知れない力の封印、⑤の“困難”が第4話でリリアがアガサに見た「剣の3」/悲しみ、⑥の“褒美”が第6話でウィリアムを占った時に現れた逆さの「塔」/災害の逆転・奇跡的な転換であることを占う。

リリアがこれまで歩んできた道は、全ての経験はこのタロットに繋がっていたのだ。シリーズ全体にわたる伏線と、リリアという魔女の人生を総括する名シーン。MCU全体を通しても有数の名場面に仕上がっている。

そして、リリアは⑦の“目的地”のカードを引こうとしたところで、意識は沼に落ちた直後に飛んでしまう。地下道に最初に現れたのは、第5話以降姿を消していたリオ・ヴィダルだった。フラッシュバックでは、第4話でリオが蘇った死者のように地中から召喚されたこと、リオが「死体を頂く」と発言したこと、第5話でウィジャが「死=DEATH」を指したことが回想される。

“緑の魔女”とされていたリオ・ヴィダルは、いつも「死」と結びついていたのだ。リオ・ヴィダルが「すべての道は私に行き着く」と発言すると、リリアがタロットで引いたカードは「死神=DEATH」だった。死、それは誰もが平等に行き着く場所。「死は全員に訪れる」というマエストラの言葉が、リオの強力さを補強することになる。

そして、リリアがタロットで引いたカードは、①がリリア、②が魔女団、③がアリス、④がジェニファー、⑤がアガサ、⑥がビリー、⑦がリオを通して見た予言であったことが明らかになる。『アガサ・オール・アロング』第7話、ものすごい伏線回収である。リリアがこの試練を乗り越え、次への扉が開くことになった。

デス登場、コミックの設定は?

だが、驚きなのはリリアの“答え”が示されたことだけではない。原作コミックに登場していなかったグリーン・ウィッチことリオ・ヴィダルが、“デス”というキャラクターであることが明かされたのだ。「緑の魔女」というのはやはり『オズの魔法使い』の“悪い魔女”を意味していたようで、リリアが「最古の緑の魔女」と表現している。そして、アガサはそれを知っていたようだ。

リオの正体については、日本語では「死神」と表記されているが、マーベルコミックには「デス」という名の“死”を司るキャラクターが存在している。MCUではサノスは資源をめぐって争いが起きることを憂い、全宇宙の人口を半減させることを決めた。しかし、原作コミックではサノスはデスに惚れて殺戮に手を染めるようになる。

一方、デスはデッドプールを愛しており、嫉妬したサノスはデッドプールを死から遠ざけるために不死の呪いをかけた。デッドプールにはウルヴァリンの治癒因子由来のヒーリング・ファクターによる治癒能力もあるが、死ねなくなった理由はサノスとデスとの三角関係によるものである。また、デスが誘拐された時にはサノスとデッドプールはコンビを組んだこともあり、 中沢俊介の翻訳で『デッドプール VS. サノス』として刊行されている。

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僭越ながら、筆者が翻訳した『デッドプール 30th Anniversary Book』でもデッドプールとデスの関係については解説されている。

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MCUにもついにデスが登場したということで、サノスのストーリーラインの復活や、『デッドプール&ウルヴァリン』でMCUデビューを果たしたデッドプールの新展開もあり得るかもしれない。この時点で『アガサ・オール・アロング』は、ビリーだけでなくデスという重要なキャラクターを紹介する特別な作品になった。

ラストの意味、エンディングの曲は?

リリアの活躍で試練をクリアした一同だったが、そこにセイラムの七人が迫っていた。リリアは一同に「鉄の処女(アイアン・メイデン)」へと逃げるよう助言する。「鉄の処女」とは中世の拷問器具のことだが、これも何かの予言だろう。アガサには個別に「“臆病者”で伏せて」という助言を与えている。また、リリアは地下道で拾った魔法書をビリーに返してやっている。

ジェンには、ジェンが「未来」だと告げる。先ほどのタロットではジェンは「女教皇」という未来が予見されていた。その意味は「封印された力」となっていたが、デスとの戦いでジェンの力が発揮されることになるのだろうか。

一同を行かせ、自分だけ塔に残ったリリアは、セイラムの七人と対峙する。リリアは、試練を乗り越えた時に長居する客は「災害・破壊・突然の激変」に直面すると宣言するが、これの先ほどのタロットの“褒美”で引いた「塔」のカードの内容である。そして、リリアが「塔」のカードを逆さにすると塔は逆さまになり、予言されていた「災害の逆転・奇跡的な転換」が実現するのだった。

セイラムの七人は天上の剣に刺さっていき、台に捕まっていたリリアもついに手が離れて落下する。第7話最初のシーン、リリアが落ちていく姿はこの場面だったのだ。だが、最初にあのシーンが描かれたということは、リリアの意識はここで飛ぶということでもある。その意識は16世紀の少女時代に戻り、そこには笑顔でマエストラのレッスンを受けるリリアの姿があった。

リリアは人とは違って時系列に人生を生きるわけではないから、これからまた少女時代を過ごすことになるのかもしれない。「必ず最後には死が待っている」というデスの優位性に負けない、そんな自由さと軽やかさが感じられる。リリアがずっと抱えてきた困難は、それを受け入れて未来を見通すことでリリアの力となった。

エンディングで流れる曲はジム・クロウチ「Time In a Bottle」(1973)。ジム・クロウチはイタリア系アメリカ人の歌手で、1973年9月に人気絶頂の中、飛行機事故で死去した。「Time In a Bottle」はその2ヶ月後にアルバム『ジムに手を出すな』からシングルカットされ、全米ナンバーワンのヒットを記録した。

この曲では「時間をボトルに閉じ込められたなら、君と過ごすために毎日を残しておきたい」と歌われている。人と違う時間を生き、死の直前に少女時代を過ごすことになったリリアにぴったりの選曲だと言える。

『アガサ・オール・アロング』第7話ネタバレ考察&感想

ここに来て神回

なんという完璧なエピソード。第7話はショーランナーのジャック・シェイファー自らが指揮しただけあって、これまでの『アガサ・オール・アロング』と、リリアというキャラクターを総括する素晴らしいエピソードになっていた。

魔女団の中でも奇妙な存在として見られていたリリアのバッググラウンドが分かり、仲間がそれに寄り添うことで、魔女団は危機を脱することができた。視聴者にとってもよく分からない存在だったリリアが、視点を変えることでみるみる内に感情移入できるキャラクターになっていった。演じたパティ・ルポーンの演技も見事だった。

リリアには、最後には「魔女でいれてよかった」と言い、少女時代に戻るハッピーエンドが待っていた。アガサやビリーの物語だと思い込んでいたこちらとしては、嬉しいやら悔しいやら……。少なくとも、自分が理解できない相手も何らかの苦悩と困難を背負っており、誰かが寄り添うことで良い方向に向かうことができるという教訓を得られた。

第7話の「死者と手をつなぎ/Death’s Hand In Mine」というタイトルについては、リリアが亡くなった先生と時を超えて対話して困難を乗り越えていくという意味と、デス(Death)の登場という二つの意味があった。ダブルミーニングのニクいタイトルだ。

デスはどうなる?

『アガサ・オール・アロング』第7話が非常にMCUらしいのは、一つの物語の終わりと共に新たな展開の幕が開いていることだ。オーブリー・プラザという人気俳優を起用しながら、リオ・ヴィダルは無名のキャラということはやっぱりなくて、デスというコミック出身の重要キャラであることが明かされた。

MCUではこれまで、“概念司り系”のキャラクターは何人か登場してきた。映画『ソー:ラブ&サンダー』(2022) では、“永遠の門(gate of Eternity)”で原作コミックに登場するエタニティというキャラクターのシルエットが登場した。宇宙そのものを司るキャラクターであり、デスと対をなすキャラともされている。

また、『ソー:ラブ&サンダー』では“ラブ”と呼ばれるキャラクターがソーの娘になった。ラブは原作コミックには登場しないが、ゴアの娘がエタニティの力で生き返った姿であり、MCUでは具現化していないエタニティに代わってデスと対峙する展開もあり得るかもしれない。

『アガサ・オール・アロング』では思わぬ大物が登場することになったが、セイラムの七人がリリアに一掃されたことにより、デスがラスボスになる可能性は高い。また、第1話で“ワンダの遺体”と共にデスがアガサの前に現れたことにも何か意味がありそうだ。

デスがワンダの死を知っていたのは、死神だからということなのかもしれない。とすると、ワンダはやはり映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) で死んだということになる。流石に死神から死を欺くことはできないはずだ。

だが、デスが死神であるが故に、ワンダの死を拒否することもできるのではないだろうか。あるいは死んだワンダと繋がり、二人が手を組む展開もあるかもしれない。死んだとされていたアガサの息子についても、デスが命運を握る展開になれば興味深い。

『アガサ・オール・アロング』は残すところ第8話と第9話のみとなったが、両話はハロウィーンの10月31日(木) に2話同時に配信される。つまり来週が最終週ということになる。なんだかあっという間だったが、どんなラストが待っているのだろうか。

第7話では、ビリーがアガサを相手にタロットをやってみた時、スフィンクス2頭を従えた絵と、裏切りを意味する剣の逆位置=誠実のカードが出た。2頭のスフィンクス=ビリーとジェンを伴ったアガサが、最後は誠実さを見せるのだろうか。最終回の配信が待ちきれない……!

ドラマ『アガサ・オール・アロング』はディズニープラスで独占配信中。

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『ソー:ラブ&サンダー』ラストのネタバレ解説&考察はこちらから。

『アガサ・オール・アロング』第6話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第5話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第4話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第3話のネタバレ解説&考察はこちらから。

シャロンは死んだのか? ショーランナーと俳優が語った内容はこちらから。

『アガサ・オール・アロング』第2話のネタバレ解説はこちらから。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

第1話でアガサが裸になったシーンの裏側はこちらの記事で。

 

ドラマ『ワンダヴィジョン』最終話のネタバレ解説はこちらから。

ドラマ『ヴィジョン・クエスト(仮)』についての情報はこちらの記事で。

 

【ネタバレ注意】映画『デッドプール&ウルヴァリン』ラストのネタバレ解説はこちらから。

【ネタバレ注意】ドラマ『エコー』最終話のネタバレ解説&考察はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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