『アガサ・オール・アロング』第3話はどうなった?
MCUドラマ『アガサ・オール・アロング』の配信が2024年9月19日(木) よりディズニープラスでスタート。ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) に登場したアガサのその後を描き、映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) の流れを汲んだ展開が繰り広げられている。
今回は、『アガサ・オール・アロング』第3話について、ネタバレありで解説&考察して行こう。以下の内容は『アガサ・オール・アロング』第3話のネタバレを含むので、必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『アガサ・オール・アロング』第3話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
ドラマ『アガサ・オール・アロング』第3話ネタバレ解説
ティーンの両親は
『アガサ・オール・アロング』第3話のタイトルは「試練が待ち受ける長き旅路」。エピソード監督を務めるのはレイチェル・ゴールドバーグだ。ゴールドバーグは、Amazonドラマ『ザ・ボーイズ』(2019-) のスピンオフ『ジェン・ブイ』(2021-) 第6話「ジュマンジ」でもエピソード監督を務めている。
第2話では、アガサはティーンと共に魔女団のリクルートを進め、予言のリリア、薬のジェン、護衛のアリス、緑のシャロンを集めて魔女の道を開くことに成功した。『オズの魔法使い』の要素を取り入れた展開ではあるが、『アガサ・オール・アロング』では初めから仲間が揃った状態で冒険が始まる。
しかし、第3話の冒頭では魔女達の関係は早速ギスギスしている。アガサとティーン以外はアガサがセーラムの7人に追われていたことを知らなかったので、問題に巻き込まれたと感じているのだ。
ティーンは、「恵も重荷も共有するのが魔女団」と言い切るが、ジェンはティーンの両親に電話するよう提案する。この場面でティーンは「今頃寝てるよ」と答えるのだが、両親の主語は「They are」となっている。第2話ではティーンは「母がローナ・ウーのライブを“彼女が死ぬ前に”見に行ったことがある」と話していたが、この「彼女」とはローナ・ウーのことだったようだ。一応ティーンの両親はご存命みたい。
近隣住民のシャロンについては、「道と無関係」と話すジェンに対し、シャロンは「だからそう言ってるじゃない」と返すが、ティーンは「訓練すれば誰だって魔女になれる」と庇っている。ティーン自身の願いが反映された言葉だろう。
「恐れ」に打ち勝つ
そんな中、リリアはそれぞれが「恐れ」に打ち勝たなければならないと予言する。魔女の道では試練を乗り越えなければならず、それぞれの能力に一つの試練が待ち受けているという。アガサの魔女団は全員力を失っているが、ティーンはアナログで労働集約型でマニュアルの魔法で乗り越えられると助言する。
一同は、魔女ではないのに魔法に関する知識が豊富なティーンに注目するが、やはりティーンは自分のことを話しても周囲には聞こえないように魔法がかけられている。リリアはこの魔法を「シジル」だと言う。シジルはカオスマジック(混沌魔術)などの西洋魔術で使われるシンボルの一つで、ここでは何かを隠すための魔術と紹介されている。やはりティーンは誰か別の魔女によって魔法をかけられ守られているようである。
ティーンの背後に控えているものは分からないが、目的は道の果てにたどり着くことだ。そうすることで、ジェンは呪縛から解き放たれ、リリアは不運を逆転させ、アリスは死んだ母の真実を知ることができる、アガサはそう説得するのだった。
しかし、ここで唯一目的を持たないシャロンが消えてしまう。はぐれたシャロンは森にバッグを取り込まれていた。シャロンはバッグを「ブランド物」と言っているが、英語では「タルボット」とブランド名を挙げている。タルボットは中高年の婦人をターゲットとした米国のブランドである。
シャロンはアリスに助けられ、一同は「道を外れず」というルールを確認する。これは、第2話終盤で歌われた「魔女の道のバラッド」にも登場する歌詞であり、今後もバラッドの歌詞に沿って物語が展開していくことが示唆されている。ちなみにその歌詞の中には「死と手を繋ぎ」「使い魔たずさえ」「闇を進め」といった言葉がある。
元ネタはあのドラマ?
すると道が開け、アガサ達は豪華な館へと導かれる。一度そこに足を踏み入れると、魔女の一団はおしゃれで洗練された服装に。ニコール・キッドマンらが出演したドラマ『ビッグ・リトル・ライズ』(2017-) を意識した演出だろう。同作はカリフォルニアの高級住宅街に住むセレブたちによるミステリードラマだ。
字幕では「あのドラマみたい」という会話が交わされているが、英語では「『ヒュージ・タイニー・ライズ (Huge Tiny Lies?)』みた?」と言っている。ヒュージ=ビッグ(大きい)、タイニー=リトル(小さい)と意味は同じなので、パロディ元のタイトルを言い換えて元ネタを示唆していることが分かる。
一方で、この家はドアも窓も塞がれており、そこには最初の試練への招待状が置かれていた。そこには、「年齢に価値があり、一人では退屈。頭を惑わせる、その手口が有名なのは?」というなぞなぞが書かれていた。しかし、ミス・ハートことシャロンの発見によって、その答えが「ワイン」であることがあっさりと分かってしまう。
ワインのボトルオープナーを探す間、ジェンはティーンにアガサの隠された過去について話し始める。アガサが「禁断の書と息子を交換した」というのは有名な話だと言うのだ。ここで言う「禁断の書」とは、もちろんダークホールドのことだろう。ドラマ『ワンダヴィジョン』でアガサがダークホールドを持っていた経緯は語られていなかったが、この話は事実なのだろうか。
『アガサ・オール・アロング』第1話では、魔法にかけられたアガサの自宅に息子のものと思われる合唱コンクールの優勝盾が置かれていた。シリアスな面持ちで子ども部屋を眺めるアガサの姿が描かれたのは、アガサが図書館から借りられた本『対話と修辞学:学びと討論の歴史』の頭文字が「DARK HOLD=ダークホールド」であることを発見した直後だった。
あのシーンで、アガサがダークホールドという言葉から息子の存在を連想していたのだとすれば、アガサの息子とダークホールドに何らかの関係があったことは確実だろう。ジェンは続けて、アガサの息子は死んだか、メフィストの手先になったかもしれないと話す。メフィストとはマーベル・コミックに登場する大物ヴィランで、原作コミックではワンダの双子の子どもは実はメフィストによって生み出されたことになっており、MCUへの登場も待望されている。
ジェンは「アガサを母に持つとはそういうこと」と語り、アガサは自分の息子の顔も忘れているだろうと語る。この時、ティーンの表情には明らかな動揺が見られる。ティーンがアガサの息子で、シジルの呪文をかけたのはアガサだった、という展開もあり得るだろうか。
魔女の定義
魔女の5人は訝しがりながらもワインで乾杯。ティーンは未成年なので飲めない。アメリカでは飲酒と喫煙は21歳になってからだ。謎のカウントダウンが始まる中、魔女達はワインに口をつけていく。アガサはワインを捨てるも、グラスは勝手に満たされている。
ティーンはアリスから13歳の時に腕の紋章を母に入れられたという話を聞く。ティーンも13歳の時は辛かったと話しているが、13歳というのは英語で「teen」がつき始める年齢(11歳はeleven、12歳はtwelveでteenがつかない)で、ティーンエイジャーの入り口である。二人は少し打ち解けたようで、娘としてのアリスと息子としてのティーンの関係は今後鍵になっていきそうだ。
そして、『アガサ・オール・アロング』第3話では、シャロンが口火を切って魔女の定義について議論が交わされる。「魔女って悪い女のこと?」と聞くシャロンに、リリアは画一的ではないと反論。とんがり帽子にホウキは時代遅れだと主張している。ステレオタイプの例として「緑の肌」を挙げているが、このイメージは1939年の映画『オズの魔法使い』で西の悪い魔女ことエルファバの肌が緑色で描かれたことで定着した。特に米国ではハロウィーンの飾り付けなどで緑の肌の魔女が描かれることが多い。
そんな話をしていると、一足早くワインを飲んだシャロンの顔が腫れ上がり、アガサ以外の他の魔女達の顔も腫れ上がっていく。唯一ワインを飲まず抜け駆けしたアガサが顔を隠している様子が可笑しい。
薬の魔女の試練
顔の腫れは急速に引いていくが、“薬の魔女”であるジェンはこのワインに盛られた毒が「女主人の復讐」だと見抜く。この毒は、目眩や錯乱、運動機能の低下、最終的には死を招くという。アガサは「全員が苦しむ必要はない」とワインを飲まずに逃げようとするが、ここは魔女の試練。避けて“道”の果てに向かうことはできない。
アガサがワインを飲まないならとティーンが飲もうとするが、アガサはティーンをかばって自分で飲み干す。アガサの優しさが垣間見えた瞬間だ。ティーンが初めてアガサに逆らったように見えたのは、先ほどジェンからアガサの息子に関する話を聞いたからだろうか。
シャロンは幻覚を見て「ワンダ、夫に息をさせて」と言い倒れてしまう。『ワンダヴィジョン』第1話では、ハート夫妻がワンダの家に招かれ、夫のアーサーがワンダに「なぜこの町に来た?」と尋ねると食べ物を喉に詰まらせて息ができなくなってしまった。ハート夫人ことシャロンは笑いながらもワンダに「やめて」と繰り返し、ヴィジョンがアーサーを助けてことなきをえている。
そして、アガサはジェニファーに解毒剤を作ることを提案。『アガサ・オール・アロング』第3話での魔女の試練は、「薬の魔女」のためのものだったのだ。解毒剤の精製に必要なのは乳香オイル、社会性昆虫の内臓、3,000万年以上腐敗している死体(動物プランクトン)、そして特大の大釜だという。
社会性昆虫とは、蜂や蟻のように集団を作る昆虫のことである。アガサとリリアは石油から動物プランクトンを得るために、ジェンのブランドであるケール・ケアの化粧品を使うことに。オーガニックと謳っていたが石油系成分が含まれているのだ。
この時、リリアには「アガサを助けよ」という予言が降りてくる。突発的に降りてくるリリアの予言は、本人もその発言に気づかないようで、アガサはこれを予言と認識していない様子だ。ティーンとアリスはユーカリの匂いを追って精油を探し、ジェンは「イモリの目」(マスタードの種の別名)を発見。アイテム集めは順調に進んでいるように見えたが、ここから第3話は急にホラー展開へと入っていく。
魔女を襲う過去の亡霊
リリアは廊下で16世紀ヨーロッパの服装の人物を見かける。この人物が話しているのはイタリア語だ。16世紀といえばフランスと神聖ローマ帝国の間で繰り広げられたイタリア戦争の時代である。一方のアリスは死んだはずの自分の母と、ジェンは「使えない女だ」と罵倒してくる男性と遭遇する。
さらにリリアはガイコツと遭遇し、ジェンは男にシンクに沈められそうになるが、突如として亡霊たちは姿を消す。アガサと遭遇したリリアの口から咄嗟にもれたのはシシリアン(シチリア語)。シチリアはイタリア領の島であり、先程の亡霊はリリアのルーツに関連しているものであることが示唆されている。
ここで現れた亡霊は皆、魔女団メンバーの過去に関係する幻覚だったのだろう。この時点ではワインを飲んでいないティーンと、遅れてワインを飲んだアガサの前には亡霊は現れていない。
「社会性昆虫の内臓」は蜂蜜の隠語だったらしく、材料は揃った。タイムリミットが迫り、館が海水で覆われる中、解毒剤の作成が進められる。しかし、一足遅くワインを飲んだアガサに一番大事なところで幻覚症状が現れる。アガサが赤ん坊の泣き声を辿ってブランケットをめくると、そこに置かれていたのはダークホールドだった。息子とダークホールドを引き換えにしたというアガサの負い目が見せた幻覚だったのだろうか。
ティーンを含む魔女団は、手を繋ぎ意思を一つにして薬を完成させようとしたが、最後の一手が足りない。ジェンは「彼」が魔力を奪ったと話し、先程幻覚で見たDV男が過去にジェンの魔力を奪ったことを示唆している。ちなみにこのシーンは第2話のクライマックスで扉を開くために手を取ってバラッドを歌ったシーンの反復になっている。今回はそこにティーンも加わっており、様々な立場にある魔女たちが力を合わせて道を切り拓いていく様子が描かれている。
アガサのエンパワメント
しかし、こことでアガサはジェンに「本当の仕事」をするように言い、「またあの魔女に戻れる」と励ます。感動的なのは、「力を奪えても知識は奪えない」というセリフだ。「力 (power)」は社会における権力に置き換えることもできる。例え男があなたの社会的な地位を奪ったとしても、知識を奪うことはできない、やり直すことができると励ましているかのようだ。力を奪われた魔女同士のエンパワメントは、『アガサ・オール・アロング』の見どころの一つになっていきそうだ。
そしてジェンは、最後の一手が「毒されていない者の血」であることを思い出す。唯一ワインを飲んでいないティーンの血を入れて解毒剤は完成。それぞれが解毒剤を飲み、倒れていたシャロンにも薬を飲ませると、館に水が流れ込む中でオーブンが開く。嫌な感じはするがオーブンがこの館の出口なのだ。
一同はなんとか脱出に成功し、はちゃめちゃなウォータースライダーのように森の中へと帰ってくる。全員が道に戻ることができたかに思われたが、シャロンは死んでしまっていた。まさかの展開。そして、アガサが「シャロンって誰?」と問いかけて『アガサ・オール・アロング』第3話は幕を閉じる。
最後のアガサは持ち前の冷徹さが現れただけだったのか、それとも記憶を失ってしまったのだろうか。少なくとも直前にはジェンに対して「腕が鈍った?」と皮肉を言っていたので、記憶喪失ではないようだ。第3話はワインを飲もうとするティーンを庇ったり、ジェンを励ましたりする良いところを見せてしまったので、最後に“アガサらしさ”を見せたということだったのかもしれない。
第3話のエンディングで流れる曲はヤー・ヤー・ヤーズ「ヘッズ・ウィル・ロール」(2009)。実はこの曲はドラマ『ジェン・ブイ』第7話でもエンディング曲として使用されている(『アガサ・オール・アロング』第3話のエピソード監督レイチェル・ゴールドバーグが手掛けたのは『ジェン・ブイ』第6話)。
その歌詞は、「頭が転がる」「死ぬまで踊れ」と歌われている。「Head will roll」には「厳しい処分が下される」という意味があり、今回の場合はおそらくシャロンの死を指して、魔女の道が厳しい道のりであることを示しているのだろう。
『アガサ・オール・アロング』第3話ネタバレ考察&感想
アガサの過去は?
期待に違わぬ“魔女の試練”を見せてくれた『アガサ・オール・アロング』第3話。その中で徐々に魔女たちの過去が明かされていく展開が面白い。今後も各話で試練に挑戦しつつ、その中で魔女たちの過去を明かしていくという構成になるのだろうか。
第3話では薬の魔女であるジェニファーが試練の中心となり、その力を取り戻したように思われる。チームメンバーが順々に力を取り戻すという展開もゲームっぽくて興味深い。
気になるのは、リリアの「アガサを助けよ」という予言だ。完全な予言にはなっていないようで、この言葉にはまだ続きがあるのかもしれないが、第3話ではアガサもまた困難というかトラウマを背負っていることが示唆された。
それはやはりアガサの息子に関するものだった。アガサは、ジェンが言う通りダークホールドを手に入れるために息子を犠牲にしたのだろうか。アガサがあの館で見た幻覚は、子どもの代わりにダークホールドが置かれているというもので、アガサの中に後ろめたさがあることが示唆された。
あるいは、アガサは息子を失い、息子を取り戻すためにダークホールドを手に入れたという可能性もある。失われた子どもに会うためにダークホールドを使うというのはワンダがやったことで、ダークホールドを使えば別ユニバースの自分に成り替わる“ドリームウォーク”が使えるということが『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』では紹介されている。
第3話の冒頭では、リリアが「恐れ」に打ち勝たなければならないと予言しており、少なくとも息子との過去がアガサの「恐れ」であるということは予想できる。リリアは16世紀イタリアでの過去、アリスは死んだ母の過去、ジェンは力を奪った男との過去にそれぞれ「恐れ」を抱いていて、それを乗り越えていかなければならないのだろう。
また、ティーンのバックグラウンドについては、両親は生きていること、アガサだけでなく他の魔女にもティーンの情報は伏せられていることが明らかになった。ティーンに秘密の魔法をかけたのは誰なのか。ワンダなのか、意識を奪われていたアガサ自身なのか、それとも、いよいよメフィストが登場するのか……。
第3話まででかなりのワクワクを提供してくれているドラマ『アガサ・オール・アロング』。全9話の3分の1が終わったところだが、まだまだ目が離せない。
ドラマ『アガサ・オール・アロング』は2024年9月19日(木) 午前10時よりディズニープラスで配信中。
『ワンダヴィジョン』のBlu-rayは、4K UHD コレクターズ・エディション スチールブックが発売中。
『アガサ・オール・アロング』第4話のネタバレ解説はこちらから。
シャロンは死んだのか? ショーランナーと俳優が語った内容はこちらから。
第2話のネタバレ解説はこちらから。
第1話のネタバレ解説はこちらから。
第1話でアガサが裸になったシーンの裏側はこちらの記事で。
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