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ネタバレ感想&解説!! 映画『グリッドマン ユニバース』サプライズ登場キャラクターは…?

Ⓒ円谷プロ Ⓒ2023 TRIGGER・雨宮哲/「劇場版グリッドマンユニバース」製作委員会

映画『グリッドマン ユニバース』公開

2023年3月24日(金)、映画『グリッドマン ユニバース』が公開された。『グリッドマン ユニバース』は、1994年にTV放送された『電光超人グリッドマン』を原作とし2018年に『SSSS.GRIDMAN』としてTVアニメで新生した「SSSS」シリーズ最新作だ。2021年には第2弾である『SSSS.DYNAZENON』がTV放送され好評を博した。一方で前作『SSSS.GRIDMAN』との直接的な繋がりは描かれなかった為、『SSSS.GRIDMAN』と『SSSS.DYNAZENON』の世界が交わる『グリッドマン ユニバース』はまさにファン待望の作品と言える。

それでは、ネタバレありで早速『グリッドマン ユニバース』の内容を振り返っていきたい。以下の内容はネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『グリッドマン ユニバース』の内容に関するネタバレを含みます。

今後のSSSSシリーズ展開予想

『グリッドマン ユニバース』はまさに「ファンムービー」に徹した映画だ。これまで「SSSS」シリーズを追ってきたファンであれば、一体誰が出るのか、出るとすればどのタイミングなのかということに公開日までやきもきさせられた筈だ。

『SSSS.GRIDMAN』で1、2を争う人気キャラクターである新条アカネは『SSSS.GRIDMAN』劇中世界を作り上げた‟神”だ。TVアニメの最終回で現実世界へと帰還し物語的にはこれ以上ない程の「オチ」がついていた上、事前アナウンスもなかったので『グリッドマン ユニバース』への登場は見込み薄と思われたが、まさかのサプライズ出演を果たした。

まさかと言えば、『SSSS.GRIDMAN』のラスボスであるアレクシス・ケリヴも『グリッドマン ユニバース』ではアカネに手を貸すヒーロー側の立ち位置で登場したことにも驚かされた。

そして、何より驚かされたのは‟姫”の登場だ。『SSSS.DYNAZENON』劇中で、ガウマは5000年前に姫に仕え現世での再会を望んでいたものの結局それが叶うことはなかった。回想シーンで台詞もなく顔も隠された状態で登場したことはあったが、『グリッドマン ユニバース』では暦とともに六花ママの買い出しに付き合ってスーパーへ赴いたガウマの前に突如として姿を現した。蟹の売り子として。

姫の声を務めたのは声優/歌手の内田真礼。言わずもがな『SSSS.GRIDMAN』ED「youthful beautiful」、『SSSS.DYNAZENON』ED「ストロボメモリー」の担当歌手である内田真礼だが、劇中キャラクターの担当声優としては「SSSS」シリーズ初出演。『グリッドマン ユニバース』ではオーイシマサヨシ「uni-verse」がテーマソングとなっている為、内田の出演はないかと思われたがこちらも‟姫”の登場ともどもファンには嬉しい二重のサプライズとなった。

入れ子構造により展開される『グリッドマン ユニバース』

これまでの「SSSS」シリーズ

『グリッドマン ユニバース』の内容を振り返る前に、まず簡単に『SSSS.GRIDMAN』と『SSSS.DYNAZENON』のあらすじを確認しておこう。

『SSSS.GRIDMAN』は、記憶喪失の響裕太が目を覚ますと街に怪獣が現れ、声に導かれるままに裕太はハイパーエージェント「グリッドマン」と一体化して怪獣と戦う。その戦いの中で、次第に自分たちの暮らす街、世界自体が一人の少女(新条アカネ)により作られたものだということが明らかとなっていく。

『SSSS.DYNAZENON』は、街に突如現れた怪獣とそれに対抗するロボットであるダイナゼノンとの戦いが描かれる。その戦いを通じて、偶然ダイナゼノンのパイロットの一人に選ばれた南夢芽がかつて失った姉の死の謎を解きトラウマを回復する過程とキャラクター同士の人間ドラマが描かれた。

『SSSS.GRIDMAN』と『SSSS.DYNAZENON』では登場人物も一新され、全く異なるストーリーが展開された。それでは、両作がクロスオーバーした『グリッドマン ユニバース』は一体どんな物語だったのだろうか。

「グリッドマンユニバース」という世界観設定

『グリッドマン ユニバース』は、『SSSS.GRIDMAN』から一年後の世界から物語が始まる。アカネが去り、残された裕太や六花、内海たちは高校二年生になっていた。裕太はかつて「グリッドマン」として戦った記憶を失っているが、六花と内海だけはその日々を覚えており、文化祭の演目としてグリッドマンをテーマとした舞台演劇をやる為に共同で脚本を執筆中だ。

つまり、この時点で作中には「三つの世界」が存在している。一つはアカネの居る「現実」世界、二つ目は裕太たちの居る電脳世界、そして三つ目が高校演劇として描かれる劇中劇「グリッドマン物語」の世界だ。まずはこの点を確認しておこう。

そこに更に『SSSS.DYNAZENON』世界から蓬、夢芽、ちせ、暦の四人がやって来る。原因は不明ながら、「新世紀中学生」のマックスによると怪獣の居る世界と居ない世界が重なり合う「ビッグクランチ」が起きているらしいとのことだ。それによって別の世界の住人である蓬たちが裕太たちの世界に迷い込んでしまったらしい。

そして、劇中で語られたところによれば、どうやらすべての世界はグリッドマン自体が宇宙となり作り上げられた「グリッドマンユニバース」だということらしい。つまり、『SSSS.DYNAZENON』世界も文字通り「グリッドマンユニバース」の一部ということだ。まるでマトリョーシカのように、一つの世界の蓋を開けてみればそこにはまた別の世界があり、その世界にはまた別の世界が……という入れ子構造になっている。

『グリッドマン ユニバース』における作品テーマ

続編製作に伴う困難

『グリッドマン ユニバース』は、作品世界の創造主、文字通り‟神”としての新条アカネが自らの心の傷を癒し現実世界へと帰還した『SSSS.GRIDMAN』ラストの後日談として描かれる。人気作の続編が難しいのは、本編での問題解決が鮮やかであるほど続編で解決すべき新たな問題がどうしても後付けのように感じられてしまうためだろう。

筆者自身、初見ではグリッドマンを利用して宇宙を混沌へと導こうとする本作のラスボスである「マッドオリジン」の描かれ方に違和感を抱きもした。それは新条アカネなき世界で物語を成り立たせるための「危機」として無理矢理設定されたものではないのか、と。

「物語の力」を信じる作劇

しかし、そのように感じる筆者のような見方は『グリッドマン ユニバース』においてはあらかじめ織り込まれていたものだろうと思い当たった。前述したように『グリッドマン ユニバース』は極めて複雑な入れ子構造の物語だ。

大別すればアカネの居る現実世界、裕太や六花の暮らす電脳世界、そして六花と内海が書く高校演劇「グリッドマン物語」の脚本世界の三つの世界である。そこに更に『SSSS.DYNAZENON』の世界、そして「あらゆる‟グリッドマン”の存在した世界(マルチバース)」がグリッドマン自身の合体能力の延長において重ねられ、統合されて一つの宇宙となった「グリッドマンユニバース」が絡んでくる。

その「グリッドマンユニバース」こそがまさに映画『グリッドマン ユニバース』の舞台であるという、改めて文字に起こしてみてもなかなか咄嗟には理解が困難な複雑さだ。

だが、この複雑な舞台設定には確かに必然性がある。どういうことか。六花と内海の書く「グリッドマン物語」の台本にダメ出しするなみこはその理由として「リアリティのなさ」を挙げる。この視点はまさにマッドオリジンを「後付けの嘘」として素直に受け取ることができなかった初見の筆者のような観客の視点を代弁するものではないだろうか。

グリッドマンのフィクサービームの効果により怪獣の記憶そのものを失っているなみこにとって、怪獣はあくまでも絵空事だ。そしてそれは観客席でスクリーンに映される「絵空事」を観ている筆者の視点と重なる。

そして、『グリッドマン ユニバース』で「自分たち(の世界)がグリッドマンを元に作られた」ことを知らされた蓬はそれでも自分が何をするかは自分で選んだつもりだと言い、2代目はそれを受けて「人間は事実のみを信じている訳ではない」と語る。

そう、まさにそれこそが『グリッドマン ユニバース』という作品のテーマだろう。たとえそれが絵空事でも、嘘でも、リアリティがなくても、それでもそんな「空想」が、物語が人の胸を熱くさせ、生きる希望を与えることもある

実際、劇中でもウルトラマンショーのDVDに内海は涙し、片や裕太は高校演劇の舞台に涙した。そこには物語や表現の持つ「リアリティ」=もっともらしさを超えた原初的な力が表現されているだろう。

『グリッドマン ユニバース』の原作である『電光超人グリッドマン』(1993)の頃から、そもそも「グリッドマン」自体は正体不明な存在だった。そうであれば、同じく世界の危機が原因不明なものだとしてもそれほど不都合はないだろう。

蓬の言うように、大切なのは辿り着くことのできない「原因」を探すことよりも、今目の前にある状況を生きていく為に何を選びどう行動していくかということなのだ。その行動の「実感」は物語にお仕着せの「リアリティ」を上回るものに違いない。そして、『グリッドマン ユニバース』における裕太の、六花の、夢芽の、蓬たちの生き様は筆者に十分その実感を与えてくれた。

「空想」だからこそヒーローであるグリッドマン

『グリッドマン ユニバース』パンフレットで、監督である雨宮哲はラスボスであるマッドオリジンに自らを重ね合わせながら「グリッドマンを独り占めする敵を皆の力で倒す展開にしたかった」と語っている。「グリッドマンユニバース」という世界設定は、そうしたコンセプトを具現化するために作り出されたものだろう。

複雑な入れ子構造のそれぞれの整合性を取るという手法を雨宮監督は選ばなかった。むしろ私たちの生きるこの現実世界に生まれた『電光超人グリッドマン』という作品、そしてそこから『グリッドマン ユニバース』に至るまでに生み出され続けたすべての「グリッドマン」作品を「グリッドマンユニバース」という一つの世界に強引にまとめてしまうことで、メタ的に「概念としてのグリッドマンを独占しようとする」マッドオリジンという敵を作り上げた。

マッドオリジンとは直訳すれば「狂気の起源」という意味になるだろう。つまり、それこそが「空想の元」であり、クリエイターが最初に持つべき資質だという含意もあるのかも知れない。しかしそのクリエイターの才能が暴走してしまうことで、作品を自分一人のものとして私物化してしまう。

そのようなクリエイターの暴走を止めるのが、外ならぬそのクリエイターの「狂気」から生まれた「グリッドマン」なのである。ここでの「狂気」とは、何もクリエイターの専売特許ではない。むしろそれは人間誰しもが持つ普遍的な想像力のことだ。その実体のない想像力は、人を救いもすれば追い詰めもする。その想像力を暴走させてしまったマッドオリジンに対して、同じく人の想像力から生まれたグリッドマンが対置されている。実体がなく、一見役に立たない想像力。しかし、「空想の産物であるからこそグリッドマンはヒーローなのだ」というメッセージが届けられている。

最後に、『電光超人グリッドマン』の頃からグリッドマン役を務めている声優の緑川光は、初日の舞台挨拶で「『電光超人グリッドマン』の頃は僕とグリッドマンの距離は狭いブース一室だけだった。それが30年経って、今日はこんなに多くのお客さんに観てもらえている。感無量です」と語っていた。

「グリッドマン」という作品は、作り手も受け手も含めてこれだけ多くの人に「生きる力」を与えてきたからこそ、30年という時を超えて今なお多くの人々に支持され続けているのだろう。改めて、素敵な作品を世に送り出してくれたことに感謝したい。

パンフレットで雨宮監督は「皆さんの応援があれば続けられますというラストにしたかった」と語っている。今後も「SSSS」シリーズが続いていくこと、その為にもまずは『グリッドマン ユニバース』の大ヒットを願わずにいられない。複雑な入れ子構造の物語なので、2度、3度と観る内に新たな発見もあるに違いない。グリッドマンファンは未見の友人を誘って何度も劇場に足を運んではいかがだろうか。

映画『グリッドマン ユニバース』は2023年3月24日(金)より全国東宝系劇場他にて公開中。

『グリッドマン ユニバース』公式サイト

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水沢夢によるノベライズ版『グリッドマン ユニバース』は2023年4月19日(水)発売で予約受付中。

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映画『グリッドマン ユニバース』登場人物の紹介はこちらから。

ラストのネタバレ解説&シリーズの今後についての考察はこちらから。

アニメ『SSSS.ダイナゼノン』最終話のネタバレ感想はこちらから。

【ネタバレ注意】『シン・仮面ライダー』の解説&考察はこちらの記事で。

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普段は自転車で料理を運んで生計を立てる文字通りの自転車操業生活。けれど真の顔は……という冒頭から始まる変身ヒーローになりたい。文学賞獲ったらなれるかな? ラップしたり小説書いたりしてます。文章書くのは得意じゃないけどそれしかできません。明日はどっちだ!
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